今は何時くらいなのだろう。

左の手首をさすってみる。
時計は確かにそこにあったが、肝心の針が見えなかった。

そこでまたもや異変に気づく。
私は左手を自分の耳の方へとそっと近づけた。


秒針の進む音が聞こえない。


時計が、止まっている?


「勘弁してよ、もう…………!」


先ほどからこんなことばかりだ。
考えても考えても思考の渦から抜け出せない。
私はそっと目を閉じる。
目を開いていようが閉じていていようが、見えるものは変わらない。

闇。ただそれだけ。

五感の一つを奪われるということ。
それはこれほどまでに心細いのか。

再び思考の渦へと飛び込もうとした、その時。


………ァ…………



微かな音。