沈黙が苦しい。
船見さんからそれ以上の言葉はなかった。
ただ静かに私の返答を待っている。
間髪入れずに「なんでもないわ、大丈夫よ」とでも言っておけばよかった。
ーーーちょっと驚いただけ。さぁ帰りましょう。
これでだけで済んだかもしれないのに。
どうして私は肝心なところで機転が利かないのだろう。
別に船見さんが嫌いだとか、信用できないだとか、そんなことはない。
むしろ、その逆。
船見さんは思いやりのあるいい人だ。
さっきだって、千歳を気遣って自ら率先して仕事を引き受けてくれていた。
一見クールなように見えて常に周りに気を配っている。
そういうところが素敵だと思うし、私もそうであれたらと羨ましく思う。
友人……だと思っている。私だけかもしれないけれど。
ただ、それとこれとは話が別だ。
例え相手が誰であっても話すことはできない。
むしろ親しい人であればあるほど、話すわけにはいかない。
特に、あの魔術については。
誰にも話さず、譲渡せずに、私一人で抱え込まなければならない。
好奇心を抑え切れずに、危険と分かっていたにも関わらず。
しばらく眠ることも忘れて、記述を読みふけってしまった、私の責任なのだから。