沈黙は続く。

私は何と答えればいいのだろう。
私がこのままはぐらかせば、船見さんは無理に追求しては来ない気がする。
彼女は優しい人だから。

でも、秘密を抱えたまま彼女とこのまま友人でいられるだろうか。

いくら頭の中で考えてみても肝心の言葉が出てこない。
……この期に及んで、私は自分の事しか考えていない。


この沈黙は永遠に続くのではないか。
そう思ったとき、ピーとよく通るホイッスルの音が鳴った。

続いて何人かの笑い声が聞こえてくる。
陸上部かテニス部の休憩時間、だと思う。
私への視線を外し、代わりに窓の外を見る船見さんの気配。
それに少しホッとしてしまった自分が、嫌だった。

ふと私の肩から重みがなくなる。
顔を上げると、私が床に散らした資料。
船見さんがしゃがんで、それを拾い始めていた。


「あ……」

「いいよ、座ってて」


ーーその声色は優しくて。
ーーその優しさすら無下にしている自分がひどく醜く思えて。

私はまた、顔を伏せた。