夕暮れの教室に再び沈黙が訪れた。

ただし、その沈黙は先ほどのものとはまた意味合いが違うもので。
やがて静かに彼女が切り出す。


「知らなかったら、それでいいよ。私からは、もうなにも言わないから」


ハッと顔を上げ、彼女の顔を見る。
やはりそこには普段と変わらぬ彼女の顔があった。

話すも自由。黙るも自由。
船見さんは、発言のすべてを私にゆだねてくれている。


「わ、私は……!」


『これを逃せばもう機会はない』

彼女の言葉をそう捉えてしまった。
そして今、私はそれをひどく恐れている。

ーーー私は、この話を誰かに聞いて欲しいのだと。

……そう気づいてしまった。


「…………知って、いるわ。ひとつだけ」


限界だった。

思い出すのは一ヶ月前の、あの日のこと。