「船見さんって、男の子だったらよかったのにって言われない? もちろん女の子から」


考えにふけっていると綾乃からそんなことを言われた。
少々いたずらっぽい口調だった。
さっきまでの自分の行動を振り返る。


「…………ノーコメントで」


楽しそうに笑う綾乃。

弱々しい茜色で染まった教室。
夕日はもう沈み掛けている。
赤くなった頬を隠すには、少々もの足りなかった。


それを誤魔化そうと視線を泳がす。

時計を見ると18時を過ぎていた。
そろそろ帰らなくてはいけないだろう。
運動部もすでに練習を終えているようだ。

そのままぐるりと目で教室を一周。

窓。

ロッカー。

扉。


そこで私は硬直した。