私はテーブルの上の蝋燭に目をやる。
蝋燭はもう1センチ程の長さしか残っていなかった。
本当にギリギリだったらしい。


私は少女と向き合う。


「私は、これまでに見付けた手懸りから、このスープを飲めば元の世界に帰れるんじゃないかと思ってる」

「…………」


「薄々気付いてたかもしれないけど、さっきの黒い液体。あれ、毒だ。飲んだら死んじゃうかもしれない」

「…………」


「それでも、私はこのスープを飲もうと思う。元の世界に帰りたいから。それでね……私は、あなたにもこのスープを飲んでもらいたい」

「…………」


「これは頼みじゃなくて……願い。あなたがスープを飲みたくないのなら、そう言って欲しいの。あなた自身の思いを、聞かせて欲しい」

「…………」


伝えたい事はすべて伝えた。

メモに書いてあったことが本当なら、少女に飲めと一言命令すれば飲んでくれるのだろう。
自分の意思とは無関係に。

でも、それではダメなんだ。

私を救ってくれた少女。


この子自身の意思で、決めて欲しい。