1.

>>458

2.

それから何事もなく学校は続き、冬を過ぎて三学期になった頃
急に未来がぱったりと学校に来なくなった。最初は風邪をひいたと聞いていたが
一週間が過ぎ二週目の中頃になった時に、これは何かあったなと思った
いろんな想像が現れては消える。肝心なところで消える。その思いつく最後の最後で
恐ろしい結末の前に「どうしたんだろうね。」と誰からともなく救いの手は差し伸べられる
優しい手が目を覆って何も見えなくなる。言葉は強い。その具体的で直接耳に刺さる力の前には
人間の漠然とした思考など校舎裏でけぶる焚火の残り火に等しい
思い返してもなんで未来がこんなことになったのかわからなかった。去年と同じように
年賀状は届いたし、一緒に近所の神社に初詣にも行った。学校が始まってからも
何も変わることもなく大掃除をして、冬休みの宿題を出して、三学期の過ごし方や
三年生に向けての話などを聞いた。程なくして通常授業が始まりその後しばらくしてからの
出来事だった。お世辞にも十分とは言えない宿題の出来と、去年はやった病気のせいで
大幅に狂ったものすごい詰め込み様の勉強量などが積み重なってまいってしまったのではないか
という人もいた。それくらい急なことだったし、それくらいいつもと変わらない元気な未来だった
でも、本当はなんとなく気づいていたのだ。未来を苦しめていたのは去年から続く変則的で
無茶な学習課程でも過大な自宅学習量でもなく、ましてや終わらなくて再提出を命じられた
冬休みの宿題などでもない
あの事件があってから学校に心理カウンセラーとかいう人が居るようになった
先生たちは何か悩みがあったり、相談したいことがあったりしたらぜひその先生に相談してねと
もううんざりするほど、ことあるごとに言っていた。急にどうしたのか。何を相談しろというのか
新しい先生はとても親切で本当に親身に接してくれたが、正直わたしはなんとも言えない
居心地の悪さを感じてだめだった。決してこの先生が悪いわけではない。親切なこの先生の前に
ただ上っ面の薄い小学低学年らしさを諳んじる自分の冷淡無情さに気分が落ち込むだけだった
二月に入ってしばらくした頃にわたしはこの先生の元を訪ねた。先生はすぐに察しただろうが
もちろん未来のことについてだった。私の質問に対して先生は丁寧に、とても気を使って
答えてくれていたのだろう。何人かの生徒がやはりわたしと同じような相談に訪れていたらしい
結局わたしは当たり障りのない受け答えをして、先生もきっと悪い意味ではなく当たり障りのない
言葉で包んでくれたのだろう。具体的にどのようなことを話したのかもう覚えていない