共謀罪施行で「撮り鉄」が制限される日が来るかもしれない

美しい港の景色をスケッチしていると、どこからともなく現れた憲兵にスパイと疑われて連行されそうになった――
女優・のんさん(元・能年玲奈)が声優を務めたことでも話題になった大ヒット映画「この世界の片隅で」の作中に
描かれているワンシーンだ。

主人公・すずは、絵を描くことが好きな19歳の女の子。同作品は1944(昭和19)年〜1945(昭和20)年の広島県広島市と
呉市を舞台にしており、すずは呉港の風景をスケッチしているときに憲兵にそれを咎められた。

(中略)

軍機保護法は敗戦しポツダム宣言を受託したことで廃止された。今般、わずかに運行されている米軍の燃料輸送や
自衛隊輸送といった国家防衛上で重要と思われる列車や鉄道施設を撮影・スケッチしても大問題には発展しない。

ところが、7月11日にテロ等準備罪(通称:共謀罪)が施行されたことで雲行きが怪しくなっている。同法案を審議した
国会では、金田勝年法務大臣の答弁が二転三転した。共謀罪の議論は深まらず、何をしたら共謀罪に該当するのかが
不明のまま法案は採決されている。

共謀罪の国会審議で注目されたのが、金田法務大臣が「花見の席で地図を広げることや双眼鏡を覗き込むことは
テロの準備行為に該当する」と答弁したことだ。金田発言により、花見が罪になる可能性が示唆された。

とはいえ、共謀罪が施行されたからといって捜査機関が即座に花見客を片っ端から逮捕することはあり得ない。
しかし、これらの行為が共謀罪に抵触するならば、逮捕されるか否かは捜査機関の胸先三寸によって決められるになる。

そうした疑問を法務省刑事局にぶつけてみると、「個別のケースについてお答えできません」と前置きしながらも
「鉄道を撮影することや時刻表を広げているだけでテロ行為ではありませんので、逮捕されることはありません」と断言した。

その一方で、「テロ等準備罪では、基本的に現場の捜査機関が判断します」とも付け加えた。要するに、捜査機関の
判断が優先されるということになるので、いくら法務省刑事局が鉄道撮影は共謀罪が適用されないと断言してもあまり
意味をなさない。

(中略)

花見で双眼鏡や地図を手にしていることが共謀罪に該当する恐れがあるのだから、電車や駅を撮ったり、時刻表を
広げたりという行為も当然ながらテロ行為とみなされる恐れがある。

新しい車両がお目見えするときやラストランなどに大挙して押し寄せる鉄道ファンに世間の風当たりは冷たい。
鉄道マニアの行為に対して、「むしろ、共謀罪を歓迎します!」なんて極端な意見が出てくることがあるかもしれない。

しかし、鉄道マニアじゃなくても、旅行先で観光列車を背景に記念撮影することはある。珍しい列車に乗ったら、
思わずSNSに写真をあげたくなるだろう。それらも禁止されたら、せっかくの楽しい旅が台無しになってしまう。

「この世界の片隅で」は戦前の話――で済まなくなるかもしれない。

https://www.news-postseven.com/archives/20170717_590473.html
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