ATRは軽水炉とは異なる日本独自の技術で、既に原型炉「ふげん」は福井県で運転されており、電発の役割は実用化へ一段階進んだ実証炉の開発だった。
 ようやく自前の原発を持つことになった電発が立地地点としたのが、地元商工会が原発誘致を打ち出していた大間町だった。
 新型転換炉でも頓挫
 ATRはMOX燃料も燃やし、使用済み核燃料から抽出したプルトニウムを再利用する核燃料サイクルの一翼を担った。
電発は85年、最大出力60万6千`h、建設費3960億円のATR実証炉計画をまとめたが、地元漁協に反対が強く、漁業補償がまとまったのは9年後の94年だった。
 ところが建設費は5800億円に膨れ、翌95年、電事連は「経済性に見通しが得られない」として計画から撤退する意向を表明。
代わりにフルMOXの「改良型沸騰水型軽水炉(ABWR)」の建設を求めた。
これを受けて原子力委員会はATR計画の中止と、大間町でのフルMOXのABWR建設方針を決めた。
 フルMOXでのプルトニウム消費量は年1.1dと一般の軽水炉(年0.3d)より多い。
核燃料サイクルのほころびにより増える一途の日本のプルトニウム保有量の抑制と、電力会社が負担するサイクルのコスト軽減につながる。
 フルMOX商業炉は世界初だが、過去の研究成果を踏まえて実証炉以前の段階を省き、一気に実用化段階の「商用炉」とされた。
ここでも国策会社として、9電力より一歩進んだ技術の追求が求められた格好だ。
 フルMOXに賭ける
 フルMOXの大間原発は95年の原子力委員会決定で「軽水炉によるMOX燃料利用計画の柔軟性を拡げる」と政策的に位置付けられ、
ATR同様核燃料サイクルの中で重要な役割を担うことになった。
引き続き電発が実施主体となり「国及び電気事業者の適切な支援の下」で確実な計画実施を期待するーとされた。
 ABWRの大間原発の建設費は4690億円。
最大出力は138万3千`hと倍増し、取水・排水量が増えて電発は漁業補償協定を結び直した。
ただ、原子炉付近の民有地が買収できず配置変更を余儀なくされるなどし、大間町などにABWRへの計画変更を申し入れてから2008年の着工までに13年を要した。
 さらに着工3年後の東日本大震災による中断をはさんで工事は長引き、安全対策費1300億円が追加された。
「長年の悲願」である大間原発運転開始の目標について電発は「24年後ごろ」としているが、4度延期され定かではない。