「……ここ、どこだ?」
気が付いたら見知らぬ場所にいた。
いつも通りの日常。
いつも通りの時間に目覚め、いつも通りに授業を受け、放課後はいつも通りに部室で京子たちと過ごした。
雨が降っていたので早めに解散し、帰宅後すぐにシャワーを浴びた。
買い物はしていなかったので夕食は買い置きのパスタを茹でて食べた。
ベッドの上でスマホをいじりながらだらだらしていたら眠くなって、それから……。
「ダメだ……思い出せない」
覚醒し切らない頭がもどかしい。
大きく息を吸い、吐き出す。
しっかりしろ、これは異常事態だ。
ゆるゆりクトゥルフ [無断転載禁止]©2ch.net
1名無しの七森
2016/09/13(火) 04:12:16.43102名無しの七森
2016/09/15(木) 03:21:44.36 自宅まであと中ほどまで差し掛かった時、信号に捕まった。
国道に掛かったこの信号はなかなか色が変わらない。
普段なら大人しく待つのだが、このまま雨に打たれるのは癪だ。少しイライラする。
カチッ カチッ カチッ
私は信号機のボタンを続けて3度押した。
こんなことをしても意味など全くないのだろうが。
しばらくして信号が青へと変わる。
やはりここの信号は色が変わるまでが長い。
空を見ると雨雲はさらに近づいているように思えた。
家路を急ぐ。
国道に掛かったこの信号はなかなか色が変わらない。
普段なら大人しく待つのだが、このまま雨に打たれるのは癪だ。少しイライラする。
カチッ カチッ カチッ
私は信号機のボタンを続けて3度押した。
こんなことをしても意味など全くないのだろうが。
しばらくして信号が青へと変わる。
やはりここの信号は色が変わるまでが長い。
空を見ると雨雲はさらに近づいているように思えた。
家路を急ぐ。
103名無しの七森
2016/09/15(木) 03:31:47.53 横断歩道を渡ってほどなくした頃。
私は言い知れぬ不安に襲われ立ち止まった。
思えば信号待ちをしていた時から何かがおかしかったような気がする。
私はあそこで数分立ち往生をしていた。
私が目の前までやって来た途端に信号の色が赤へと変わったのだから間違いない。
しかしその間、車が1台でも通っただろうか?
チラリと左腕に付けた時計に目を向ける。
夕方5時、少し前。
普段ならせわしなく車が行き来している時間だ。
そんなことがあり得るのか?
私は周囲を見渡す。
駅に近いこともあり、この往来は人通りがとても多い。
実際、自宅から本屋へと向かう途中にもたくさんの人を見た。
「どうして誰もいないの……!?」
しかし今は人影一つ見当たらない。
車の排気音すら聞こえない。
夕暮れの街はあまりにも静かすぎた。
背中に冷たいものを感じる。
突如、けたたましい音が鳴り響く。
私は言い知れぬ不安に襲われ立ち止まった。
思えば信号待ちをしていた時から何かがおかしかったような気がする。
私はあそこで数分立ち往生をしていた。
私が目の前までやって来た途端に信号の色が赤へと変わったのだから間違いない。
しかしその間、車が1台でも通っただろうか?
チラリと左腕に付けた時計に目を向ける。
夕方5時、少し前。
普段ならせわしなく車が行き来している時間だ。
そんなことがあり得るのか?
私は周囲を見渡す。
駅に近いこともあり、この往来は人通りがとても多い。
実際、自宅から本屋へと向かう途中にもたくさんの人を見た。
「どうして誰もいないの……!?」
しかし今は人影一つ見当たらない。
車の排気音すら聞こえない。
夕暮れの街はあまりにも静かすぎた。
背中に冷たいものを感じる。
突如、けたたましい音が鳴り響く。
104名無しの七森
2016/09/15(木) 03:37:52.73 「ヒッ!」
飛び上がらんばかりに驚く。
不意を突かれ腰が抜けそうになった。
身体を硬直させ音に耳を傾けていると、すぐその正体に気付く。
(お、脅かさないでよ……!)
音の正体、それは17時の訪れを知らせるチャイムだった。
誰もが知っている童謡。
聞き慣れたはずのそれは、どこか不気味に思えた。
考えみれば、先ほど時計を見たばかりだったじゃないか。
……少し神経質になり過ぎているのかもしれない。
車が通らなかったのも、
周囲に人影が見当たらないのも、
すべては偶然。
たまにはこういう日もある。
無理やりにでもそう思うことにした。
飛び上がらんばかりに驚く。
不意を突かれ腰が抜けそうになった。
身体を硬直させ音に耳を傾けていると、すぐその正体に気付く。
(お、脅かさないでよ……!)
音の正体、それは17時の訪れを知らせるチャイムだった。
誰もが知っている童謡。
聞き慣れたはずのそれは、どこか不気味に思えた。
考えみれば、先ほど時計を見たばかりだったじゃないか。
……少し神経質になり過ぎているのかもしれない。
車が通らなかったのも、
周囲に人影が見当たらないのも、
すべては偶然。
たまにはこういう日もある。
無理やりにでもそう思うことにした。
105名無しの七森
2016/09/15(木) 03:39:38.02 期待
106名無しの七森
2016/09/15(木) 03:43:01.94 見慣れた道を行く。
反響する足音だけがやけに大きく聞こえる。
自宅まで、こんなに遠かっただろうか?
早く家に帰りたい。
周囲には相変わらず人の気配はない。
気付けば私は走り出していた。
この焦燥感はなんなのだろう。
走る。走る。走る。
あの角を曲がって、少し行けば我が家だ。
「はぁ……はぁ……! ふぅ……」
あっけなく自宅の前まで着いた。
私は安堵のため息をもらす。
そら見たことか。
やはり私の考えすぎだったのだ。
先ほどまでの自分の焦りようを思い出し、苦笑する。
まずはシャワーを浴びよう。汗を掻いてしまった。
せっかく買った参考書だが、読むのはまた明日にしよう。
それから……。
ドアノブを回す。
ドアが、開く。
そこで私の意識は暗転した。
反響する足音だけがやけに大きく聞こえる。
自宅まで、こんなに遠かっただろうか?
早く家に帰りたい。
周囲には相変わらず人の気配はない。
気付けば私は走り出していた。
この焦燥感はなんなのだろう。
走る。走る。走る。
あの角を曲がって、少し行けば我が家だ。
「はぁ……はぁ……! ふぅ……」
あっけなく自宅の前まで着いた。
私は安堵のため息をもらす。
そら見たことか。
やはり私の考えすぎだったのだ。
先ほどまでの自分の焦りようを思い出し、苦笑する。
まずはシャワーを浴びよう。汗を掻いてしまった。
せっかく買った参考書だが、読むのはまた明日にしよう。
それから……。
ドアノブを回す。
ドアが、開く。
そこで私の意識は暗転した。
107名無しの七森
2016/09/15(木) 09:01:50.42 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど なもり 同人
108名無しの七森
2016/09/15(木) 11:14:15.45 ええな
109名無しの七森
2016/09/15(木) 15:02:22.83 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり
110名無しの七森
2016/09/15(木) 16:06:21.28 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり
111名無しの七森
2016/09/15(木) 17:30:31.21 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり
112名無しの七森
2016/09/15(木) 17:49:01.08 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり
113名無しの七森
2016/09/15(木) 17:55:11.36 続き気になる
114名無しの七森
2016/09/15(木) 18:01:08.66 綾乃は対処できないタイプ
115名無しの七森
2016/09/15(木) 18:35:12.81 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり
116名無しの七森
2016/09/15(木) 19:00:09.80 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり
117名無しの七森
2016/09/15(木) 19:17:49.03 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり
118名無しの七森
2016/09/15(木) 19:38:47.78 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり
119名無しの七森
2016/09/15(木) 19:47:04.63 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり
120名無しの七森
2016/09/15(木) 21:54:55.93 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり
121名無しの七森
2016/09/15(木) 23:02:45.18 ワクテカ
122名無しの七森
2016/09/15(木) 23:44:26.97 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり
123名無しの七森
2016/09/16(金) 00:11:16.53 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり
124名無しの七森
2016/09/16(金) 01:46:24.39 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり
125名無しの七森
2016/09/16(金) 02:11:34.68 ちゃんと続いてて嬉しい
126名無しの七森
2016/09/16(金) 02:58:51.75 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり
127名無しの七森
2016/09/16(金) 03:05:37.24 街の様子がおかしかった。
静かすぎる街。
私一人が世界から取り残されたかのような感覚に陥った。
そこから逃げるようにして走った。
家に着き、安心したのも束の間。
中へ入ろうとした瞬間。意識が飛んだ。
(な、なんなの……私は一体、どうなったの……!?)
どこまでも続く暗闇。
その中で私は目を覚ました。
必死で目をこらす。なにも見えない。
耳に神経を研ぎ澄ませる。なにも聞こえない。
しいてあげるならば、自分の心音と呼吸の音。
微かにそれだけが聞こえた。
静かすぎる街。
私一人が世界から取り残されたかのような感覚に陥った。
そこから逃げるようにして走った。
家に着き、安心したのも束の間。
中へ入ろうとした瞬間。意識が飛んだ。
(な、なんなの……私は一体、どうなったの……!?)
どこまでも続く暗闇。
その中で私は目を覚ました。
必死で目をこらす。なにも見えない。
耳に神経を研ぎ澄ませる。なにも聞こえない。
しいてあげるならば、自分の心音と呼吸の音。
微かにそれだけが聞こえた。
128名無しの七森
2016/09/16(金) 03:11:17.01 身動きを取ろうと身体をくねらせる。
手足は問題なく動いた。
狭い。
伸ばした腕がなにかにぶつかった。
どうやら壁のようだ。
反対側の腕でも確認してみると、やはりすぐ壁に触れる。
この空間は、異様に左右に狭い。
圧迫感に息苦しさを覚える。
それはまるで、自分が今、
空間と空間の、ほんのわずかな隙間、
そのわずかな隙間の中にいるような……
ーーーー壁の中にいる。
そんなフレーズが私の頭の中をよぎった。
手足は問題なく動いた。
狭い。
伸ばした腕がなにかにぶつかった。
どうやら壁のようだ。
反対側の腕でも確認してみると、やはりすぐ壁に触れる。
この空間は、異様に左右に狭い。
圧迫感に息苦しさを覚える。
それはまるで、自分が今、
空間と空間の、ほんのわずかな隙間、
そのわずかな隙間の中にいるような……
ーーーー壁の中にいる。
そんなフレーズが私の頭の中をよぎった。
129名無しの七森
2016/09/16(金) 03:13:41.36 伸ばした腕で頭上を確認する。
天井の高さはそこそこあるようだ。
壁を支えにしながら、私は恐る恐る立ち上がった。
カラカラに渇いた喉から声をしぼり出す。
「すみません! 誰か、誰かいませんか!?」
静寂。
期待むなしく、それに応えてくれる声はない。
静寂の中、私はひとり呆然と立ち尽くす。
なんでも理屈っぽく考えてしまうのは私の悪い癖だ。
数少ない友人は、それも長所だと言ってくれたのだが。
ただ、今はその癖を呪う。
気付いてしまったのだ。
天井の高さはそこそこあるようだ。
壁を支えにしながら、私は恐る恐る立ち上がった。
カラカラに渇いた喉から声をしぼり出す。
「すみません! 誰か、誰かいませんか!?」
静寂。
期待むなしく、それに応えてくれる声はない。
静寂の中、私はひとり呆然と立ち尽くす。
なんでも理屈っぽく考えてしまうのは私の悪い癖だ。
数少ない友人は、それも長所だと言ってくれたのだが。
ただ、今はその癖を呪う。
気付いてしまったのだ。
130名無しの七森
2016/09/16(金) 03:15:21.67 私は自分の横に手をやる。
そこには確かに壁があった。
パンッ
小さく手を叩く。
パンッ パンッ
続けてもう2度。
静寂。
私は自分の考えに確信を持つ。
反響が、ない。
音は跳ね返って来ず、響きもしなかった。
それは、どこまでも広大な空間で音を出したかのようで……
「ありえない…………!」
この場所が超常的かつ、異常な空間だということ。
それを本能的に感じ取った。
そこには確かに壁があった。
パンッ
小さく手を叩く。
パンッ パンッ
続けてもう2度。
静寂。
私は自分の考えに確信を持つ。
反響が、ない。
音は跳ね返って来ず、響きもしなかった。
それは、どこまでも広大な空間で音を出したかのようで……
「ありえない…………!」
この場所が超常的かつ、異常な空間だということ。
それを本能的に感じ取った。
131名無しの七森
2016/09/16(金) 11:12:44.54 柏手兎
132名無しの七森
2016/09/16(金) 15:19:55.22 こっわ
133名無しの七森
2016/09/16(金) 16:09:13.70 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり
134名無しの七森
2016/09/16(金) 16:25:45.09 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり
135名無しの七森
2016/09/16(金) 17:06:24.08 おっ更新きたで
136名無しの七森
2016/09/16(金) 17:53:00.51 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり
137名無しの七森
2016/09/16(金) 19:15:10.32 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり
138名無しの七森
2016/09/16(金) 19:42:53.77 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり
139名無しの七森
2016/09/16(金) 19:54:04.54 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり
140名無しの七森
2016/09/16(金) 20:06:12.33 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり
141名無しの七森
2016/09/16(金) 20:20:41.41 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり
142名無しの七森
2016/09/16(金) 20:56:42.86 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり
143名無しの七森
2016/09/16(金) 21:08:07.46 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり
144名無しの七森
2016/09/16(金) 21:19:32.86 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり
145名無しの七森
2016/09/16(金) 21:31:43.41 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり
146名無しの七森
2016/09/16(金) 21:44:53.47 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり
147名無しの七森
2016/09/16(金) 21:55:03.84 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり
148名無しの七森
2016/09/16(金) 22:05:38.67 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり
149名無しの七森
2016/09/16(金) 22:16:32.13 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり
150名無しの七森
2016/09/16(金) 22:27:55.18 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり
151名無しの七森
2016/09/16(金) 22:37:59.36 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり
152名無しの七森
2016/09/16(金) 22:48:36.07153名無しの七森
2016/09/16(金) 22:58:35.88 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり
154名無しの七森
2016/09/16(金) 23:13:35.16 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり
155名無しの七森
2016/09/16(金) 23:24:00.32 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり
156名無しの七森
2016/09/16(金) 23:37:32.63 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり
157名無しの七森
2016/09/17(土) 00:00:27.79 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり
158名無しの七森
2016/09/17(土) 00:12:00.48 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり
159名無しの七森
2016/09/17(土) 00:25:12.76 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり
160名無しの七森
2016/09/17(土) 07:08:29.94 そのとき私はハッと思い出す。
肩に掛かった重み、鞄の存在を。
慌てて鞄の中を探る。
手探りとなるが元よりそれほど物は入れていない。大丈夫なはずだ。
これは……違う、参考書。
これは……傘。
もっと奥の方に……。
薄く角ばった感触。
あった! 携帯電話!
私は手に取ったそれの電源を入れる。
(嘘でしょ……! ホラー映画じゃないんだから!)
ボタンを何度も押してみても反応がない。
液晶画面は暗いままだった。
充電は十分にしてあったはずなのに。
しばし携帯とのむなしい格闘が続いた。
肩に掛かった重み、鞄の存在を。
慌てて鞄の中を探る。
手探りとなるが元よりそれほど物は入れていない。大丈夫なはずだ。
これは……違う、参考書。
これは……傘。
もっと奥の方に……。
薄く角ばった感触。
あった! 携帯電話!
私は手に取ったそれの電源を入れる。
(嘘でしょ……! ホラー映画じゃないんだから!)
ボタンを何度も押してみても反応がない。
液晶画面は暗いままだった。
充電は十分にしてあったはずなのに。
しばし携帯とのむなしい格闘が続いた。
161名無しの七森
2016/09/17(土) 07:16:42.85 壁に背を預け、その場に座り込む。
そのまま膝をかかえ、身体を丸めた。
固い床だ。座り心地が悪い。
無駄な時間を過ごした。
いくら触っても反応しない携帯電話は再びバッグの中へと仕舞っておいた。
これからどうするべきなのだろう。
このまま闇の中でじっとしていてもいいのだろうか。
ここで誰かの助けを待つというのもひとつの手だ。
山での遭難者はその場から出来るだけ動かずにいるのが正解だという話を聞いたことがある。
焦って動き出したばかりに体力を消耗してしまったり、あるいはそのまま滑落してしまったり。
そういったケースがとても多いのだとか。
(でも、救援の望みは……薄いでしょうね……)
この空間が常識では測れない、異質なものであるという事を感じてしまったのだから。
オカルトの類いは微塵も信じていない私でも、心の中でなんとなくそれを認めてしまっている。
理屈。常識。セオリー。
私が今までに培ってきたもの。
その外付けの視界は、この状況ではあまりにも頼りなかった。
そのまま膝をかかえ、身体を丸めた。
固い床だ。座り心地が悪い。
無駄な時間を過ごした。
いくら触っても反応しない携帯電話は再びバッグの中へと仕舞っておいた。
これからどうするべきなのだろう。
このまま闇の中でじっとしていてもいいのだろうか。
ここで誰かの助けを待つというのもひとつの手だ。
山での遭難者はその場から出来るだけ動かずにいるのが正解だという話を聞いたことがある。
焦って動き出したばかりに体力を消耗してしまったり、あるいはそのまま滑落してしまったり。
そういったケースがとても多いのだとか。
(でも、救援の望みは……薄いでしょうね……)
この空間が常識では測れない、異質なものであるという事を感じてしまったのだから。
オカルトの類いは微塵も信じていない私でも、心の中でなんとなくそれを認めてしまっている。
理屈。常識。セオリー。
私が今までに培ってきたもの。
その外付けの視界は、この状況ではあまりにも頼りなかった。
162名無しの七森
2016/09/17(土) 07:23:02.84 今は何時くらいなのだろう。
左の手首をさすってみる。
時計は確かにそこにあったが、肝心の針が見えなかった。
そこでまたもや異変に気づく。
私は左手を自分の耳の方へとそっと近づけた。
秒針の進む音が聞こえない。
時計が、止まっている?
「勘弁してよ、もう…………!」
先ほどからこんなことばかりだ。
考えても考えても思考の渦から抜け出せない。
私はそっと目を閉じる。
目を開いていようが閉じていていようが、見えるものは変わらない。
闇。ただそれだけ。
五感の一つを奪われるということ。
それはこれほどまでに心細いのか。
再び思考の渦へと飛び込もうとした、その時。
………ァ…………
微かな音。
左の手首をさすってみる。
時計は確かにそこにあったが、肝心の針が見えなかった。
そこでまたもや異変に気づく。
私は左手を自分の耳の方へとそっと近づけた。
秒針の進む音が聞こえない。
時計が、止まっている?
「勘弁してよ、もう…………!」
先ほどからこんなことばかりだ。
考えても考えても思考の渦から抜け出せない。
私はそっと目を閉じる。
目を開いていようが閉じていていようが、見えるものは変わらない。
闇。ただそれだけ。
五感の一つを奪われるということ。
それはこれほどまでに心細いのか。
再び思考の渦へと飛び込もうとした、その時。
………ァ…………
微かな音。
163名無しの七森
2016/09/17(土) 07:27:49.32 瞬間、底に沈みかけていた意識を引き上げる。
今、微かに音が聞こえた。
発生源は……どこ?
周囲の気配を必死で探る。
しかし、それらしい気配はどこにもない。
空耳?
いや、そんなはずはない。
いつもより機敏になった耳が確かに捉えた音だ。空耳であるはずがない。
「まさか……」
とてつもなく嫌な予感がする。
音の発生源にひとつ、心当たりがあった。
確認するのが怖い。
だってそうじゃない。
もしそうなら、私の、私のすぐそばに狂気が潜んでいたことになるんだもの。
冷や汗が出る。心拍が激しくなる。
そんな意思とは裏腹に、身体が勝手に動く。
私はそっと傍らの壁に聞き耳を立てた。
今、微かに音が聞こえた。
発生源は……どこ?
周囲の気配を必死で探る。
しかし、それらしい気配はどこにもない。
空耳?
いや、そんなはずはない。
いつもより機敏になった耳が確かに捉えた音だ。空耳であるはずがない。
「まさか……」
とてつもなく嫌な予感がする。
音の発生源にひとつ、心当たりがあった。
確認するのが怖い。
だってそうじゃない。
もしそうなら、私の、私のすぐそばに狂気が潜んでいたことになるんだもの。
冷や汗が出る。心拍が激しくなる。
そんな意思とは裏腹に、身体が勝手に動く。
私はそっと傍らの壁に聞き耳を立てた。
164名無しの七森
2016/09/17(土) 07:32:33.87 ごく小さな音がノイズのように聞こえる。
……ガ………………………………………
それは一定の言葉を刻んでいるようだった。
よく聞き取ろうと耳を澄ませる。
……ガ……………………ァ…………………
泡が囁くような、人間の物とは思えない不気味さ。
不快かつ、忌々しい発音の言葉。
……ガ……………………ァ…………………ン………………
それは決して音ではなく、言葉であるはずなのに。
私にはその言葉がなにを意味するのかがわからなかった。
むかむかとするような感覚と、理解できないものへの恐れで胸が支配される。
「…………ヒッ……!」
堪えきれず壁から耳を離す。
先ほどまで聞こえていた音がまだ、耳鳴りのように聞こえた。
……ガ………………………………………
それは一定の言葉を刻んでいるようだった。
よく聞き取ろうと耳を澄ませる。
……ガ……………………ァ…………………
泡が囁くような、人間の物とは思えない不気味さ。
不快かつ、忌々しい発音の言葉。
……ガ……………………ァ…………………ン………………
それは決して音ではなく、言葉であるはずなのに。
私にはその言葉がなにを意味するのかがわからなかった。
むかむかとするような感覚と、理解できないものへの恐れで胸が支配される。
「…………ヒッ……!」
堪えきれず壁から耳を離す。
先ほどまで聞こえていた音がまだ、耳鳴りのように聞こえた。
165名無しの七森
2016/09/17(土) 08:05:45.92 ここでSANチェックの時間です
166名無しの七森
2016/09/17(土) 08:06:56.96 お股もチェックしろ
167名無しの七森
2016/09/17(土) 09:44:23.23 前作で結衣がゲロ吐いてるからワンチャン
168名無しの七森
2016/09/17(土) 10:22:36.39 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり
169名無しの七森
2016/09/17(土) 11:00:19.08 綾乃ちゃんには荷が重いで
170名無しの七森
2016/09/17(土) 11:04:40.50 これはビヤーキーですわ(適当)
171名無しの七森
2016/09/17(土) 11:13:26.63 綾乃SAN値低そう
172名無しの七森
2016/09/17(土) 11:36:36.23 SAN値直葬ですわ
173名無しの七森
2016/09/17(土) 11:52:17.50 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり
174名無しの七森
2016/09/17(土) 12:05:14.81 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり
175名無しの七森
2016/09/17(土) 12:18:12.70 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり
176名無しの七森
2016/09/17(土) 14:36:23.34 アカリリ
アカリリ
アカリリ
177名無しの七森
2016/09/17(土) 17:42:18.84 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり
178名無しの七森
2016/09/17(土) 19:18:03.64 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり
179名無しの七森
2016/09/17(土) 21:43:01.57 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり
180名無しの七森
2016/09/18(日) 02:09:56.38 恐怖のあまり歯の根が合わない。
誰かに心臓を鷲掴みにされているような、そんな感覚に陥る。
おとなしく助けを待つ?
冗談じゃない。そんなことを言ってる場合じゃない!
ーーーーなにかが、壁の中にいる。
うじうじと考えて込んでいる暇など最初からなかったのだ。
おそらく私は『何者か』の手によりこの空間へと連れて来られた。
どうやってだとか、その目的だとか、そんなことは今はどうでもいい。
私の身に危機が迫っている。
それも、すぐ目前まで。
揺るぎないのはその事実。
一刻も早くこの空間から出なければならない。
……出口など、あるのかわからないが。
壁を支えになんとか立ち上がると、私は壁をつたって歩き始めた。
闇の中へと一歩、また一歩。
少しずつ進んで行く。
誰かに心臓を鷲掴みにされているような、そんな感覚に陥る。
おとなしく助けを待つ?
冗談じゃない。そんなことを言ってる場合じゃない!
ーーーーなにかが、壁の中にいる。
うじうじと考えて込んでいる暇など最初からなかったのだ。
おそらく私は『何者か』の手によりこの空間へと連れて来られた。
どうやってだとか、その目的だとか、そんなことは今はどうでもいい。
私の身に危機が迫っている。
それも、すぐ目前まで。
揺るぎないのはその事実。
一刻も早くこの空間から出なければならない。
……出口など、あるのかわからないが。
壁を支えになんとか立ち上がると、私は壁をつたって歩き始めた。
闇の中へと一歩、また一歩。
少しずつ進んで行く。
181名無しの七森
2016/09/18(日) 02:13:19.95 闇の中を進む。
どれほど歩いただろうか。
代わり映えのない景色は私の距離感を狂わせる。
……歩数を数えておけばよかった。
そう思ったところでもう遅い。
歩みのペースは一定だ。
もし、一歩先が深い穴だったら。
もし、得体の知れない存在と鉢合わせてしまったら。
そんな事ばかりを考えてしまう。
相変わらず両端は狭く、息苦しい。
この闇はどこまで続いているのだろう?
私は足を進め続ける。
しばらく進んだところで、前方から少し不穏な空気を感じ取った。
躊躇しながらも歩みを止めるわけにはいかない。
さらに進んでいくとその正体が明らかになる。
「そんな……行き止まり……!?」
前方には巨大な壁のようなものが行く手を阻んでいた。
どれほど歩いただろうか。
代わり映えのない景色は私の距離感を狂わせる。
……歩数を数えておけばよかった。
そう思ったところでもう遅い。
歩みのペースは一定だ。
もし、一歩先が深い穴だったら。
もし、得体の知れない存在と鉢合わせてしまったら。
そんな事ばかりを考えてしまう。
相変わらず両端は狭く、息苦しい。
この闇はどこまで続いているのだろう?
私は足を進め続ける。
しばらく進んだところで、前方から少し不穏な空気を感じ取った。
躊躇しながらも歩みを止めるわけにはいかない。
さらに進んでいくとその正体が明らかになる。
「そんな……行き止まり……!?」
前方には巨大な壁のようなものが行く手を阻んでいた。
182名無しの七森
2016/09/18(日) 02:15:15.23 私は目の前が真っ暗になったような感覚に陥った。
実際、周囲は真っ暗だったのだけれども。
(こんなのって、あんまりじゃない……!)
自分が歩いて来たばかりの道を振り返る。
暗闇。
またあの道を戻らなくてはいけないのか。
頭が痛くなる。
自らを鼓舞してなんとかここまでやって来たものの、私の心は確実にすり減っていた。
行き場をなくした私は目の前の壁にそっと触れてみる。
(なに、これ……?)
横の壁や床とは全く違う感触。
壁はとても柔らかく、あたたかい。
まるでふわふわとした毛皮か、
上質の毛布を撫でているかのような感触。
その感触にどこか懐かしいような、安心感を覚えた。
実際、周囲は真っ暗だったのだけれども。
(こんなのって、あんまりじゃない……!)
自分が歩いて来たばかりの道を振り返る。
暗闇。
またあの道を戻らなくてはいけないのか。
頭が痛くなる。
自らを鼓舞してなんとかここまでやって来たものの、私の心は確実にすり減っていた。
行き場をなくした私は目の前の壁にそっと触れてみる。
(なに、これ……?)
横の壁や床とは全く違う感触。
壁はとても柔らかく、あたたかい。
まるでふわふわとした毛皮か、
上質の毛布を撫でているかのような感触。
その感触にどこか懐かしいような、安心感を覚えた。
183名無しの七森
2016/09/18(日) 02:16:10.28 あかん
184名無しの七森
2016/09/18(日) 02:17:40.08 しばらく無心で壁を触っていた私だったがふと我に返った。
(なにをやっているのよ、私は!)
あらためて壁の様子を確認する。
この壁は明らかに異質だ。
しかし、不思議と恐怖は感じない。
やはりどこか懐かしいような、そんな感じがする。
今度は壁を軽く押してみる事にする。
私の手はまるでトランポリンの上で跳ねたかのようにふわりとやさしく押し返された。
いずれにせよ、やはりこの先に進む事は出来ないようだ。
少し考えて、私は来た道を引き返すことに決めた。
少しだけ心が落ち着いたようだ。
今度は歩数を数えて行くとしよう。
踵を返し、私は再び闇の中へと進み始めた。
(なにをやっているのよ、私は!)
あらためて壁の様子を確認する。
この壁は明らかに異質だ。
しかし、不思議と恐怖は感じない。
やはりどこか懐かしいような、そんな感じがする。
今度は壁を軽く押してみる事にする。
私の手はまるでトランポリンの上で跳ねたかのようにふわりとやさしく押し返された。
いずれにせよ、やはりこの先に進む事は出来ないようだ。
少し考えて、私は来た道を引き返すことに決めた。
少しだけ心が落ち着いたようだ。
今度は歩数を数えて行くとしよう。
踵を返し、私は再び闇の中へと進み始めた。
185名無しの七森
2016/09/18(日) 02:26:47.95 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり
186名無しの七森
2016/09/18(日) 02:48:37.33 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり
187名無しの七森
2016/09/18(日) 03:27:02.97 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり
188名無しの七森
2016/09/18(日) 05:09:27.45 素敵な出会いかな?(すっとぼけ)
189名無しの七森
2016/09/18(日) 07:37:07.83 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり
190名無しの七森
2016/09/18(日) 08:22:16.27 そのまま前方に400歩ほど歩いた。
歩数を数えているだけで幾分か心持ちが楽だった。
私が最初にいた場所はとうにすぎたはずなのだが、視界はまだ開けない。
ずっと同じ場所をぐるぐると回っているような気さえする。
ふと壁に当てた自分の手の方を見やる。
伝わるのは冷たく、固い壁の感触。
(……もう一度、音を聞いてみようかしら)
一瞬そう思うも、慌てて頭を振る。
……やめておこう。
そんなことをしても、何の意味もない。
聞いているだけで精神を刻まれるような、あの不気味な音を思い出してしまった。
身震いがした。
その時。
ばさばさという羽音のような音。
近い。
その音を認識しつつも、私は身体を動かすことが出来なかった。
歩数を数えているだけで幾分か心持ちが楽だった。
私が最初にいた場所はとうにすぎたはずなのだが、視界はまだ開けない。
ずっと同じ場所をぐるぐると回っているような気さえする。
ふと壁に当てた自分の手の方を見やる。
伝わるのは冷たく、固い壁の感触。
(……もう一度、音を聞いてみようかしら)
一瞬そう思うも、慌てて頭を振る。
……やめておこう。
そんなことをしても、何の意味もない。
聞いているだけで精神を刻まれるような、あの不気味な音を思い出してしまった。
身震いがした。
その時。
ばさばさという羽音のような音。
近い。
その音を認識しつつも、私は身体を動かすことが出来なかった。
191名無しの七森
2016/09/18(日) 08:25:50.53 慌ただしく翼をはためかせたそれは、私の足元まで来て止まったようだ。
続けてピヨィピヨィという鳴き声。
「と、鳥……!? どうしてこんなところに……」
私の声に反応したのか。
それは再び翼をはためかせ、私の周囲を飛び始める。
夜目が利く種類の鳥なのだろうか?
暗く狭い通路に身体をぶつけることもなく、器用に飛んでいるようだ。
少し上空からばさばさという羽音が聞こえる。
ほどなくして、ゆっくりと降下してくる気配。
それは私の肩へと止まった。
「な、なに!? なんなのもう!!!」
私は慌ててそれを振りほどく。
鳥はふわりと飛び上がり、少しの旋回のあと今度は私の足元へと降りてきた。
そこから飛び立つ気配はない。
ピヨィ
ひと鳴き。
その声は少しだけ寂しげに聞こえた。
続けてピヨィピヨィという鳴き声。
「と、鳥……!? どうしてこんなところに……」
私の声に反応したのか。
それは再び翼をはためかせ、私の周囲を飛び始める。
夜目が利く種類の鳥なのだろうか?
暗く狭い通路に身体をぶつけることもなく、器用に飛んでいるようだ。
少し上空からばさばさという羽音が聞こえる。
ほどなくして、ゆっくりと降下してくる気配。
それは私の肩へと止まった。
「な、なに!? なんなのもう!!!」
私は慌ててそれを振りほどく。
鳥はふわりと飛び上がり、少しの旋回のあと今度は私の足元へと降りてきた。
そこから飛び立つ気配はない。
ピヨィ
ひと鳴き。
その声は少しだけ寂しげに聞こえた。
192名無しの七森
2016/09/18(日) 08:32:25.31 「あ……その、ごめんなさい……」
その声を聞いて、つい謝ってしまった。
相手は、鳥なのに。
私のとっさの一言に、足元のそれは相槌を返すかようにまたピョイと鳴いた。
(私の言葉を理解しているの?)
にわかには信じがたい。
しかし、その鳴き声は先ほどの寂しげな声色とも違うものだった。
まるで、「いいよ」とでも返されたかのような……
小さな頃、私は文鳥を1羽飼っていた。
昔から私は友達を作ることが苦手で、いつも家の中で本ばかりを読んでいた。
それを見かねた両親がペットショップで買ってきてくれた、オスの文鳥。
私はそれにすら最初はひどく怯えていたっけ。
その声を聞いて、つい謝ってしまった。
相手は、鳥なのに。
私のとっさの一言に、足元のそれは相槌を返すかようにまたピョイと鳴いた。
(私の言葉を理解しているの?)
にわかには信じがたい。
しかし、その鳴き声は先ほどの寂しげな声色とも違うものだった。
まるで、「いいよ」とでも返されたかのような……
小さな頃、私は文鳥を1羽飼っていた。
昔から私は友達を作ることが苦手で、いつも家の中で本ばかりを読んでいた。
それを見かねた両親がペットショップで買ってきてくれた、オスの文鳥。
私はそれにすら最初はひどく怯えていたっけ。
193名無しの七森
2016/09/18(日) 08:36:53.77 その子に心を許すのに時間は掛からなかった。
切っ掛けは覚えていない。
気がつけば、寝ても覚めても一緒にいる。そんな存在になっていた。
そんな私の姿を見て両親も喜んでいたように思う。
別れは突然やって来た。
私が小学校に上がったばかりの頃だっただろうか。
学校から帰り、いつものように文鳥に餌をあげようと自室に入った。
そこに文鳥の姿はなかった。
そこにあったのは荒らされたゲージと、散乱した白い羽。
窓が、開いていた。
「野良猫の仕業だろう」
お父さんはそう言っていた。
私は自分を責めた。
窓を開けておいたのは私だったからだ。
近くで空を見れた方が、この子も喜ぶだろうと。
常識を知らぬ子供の、浅はかな考えだった。
それから…………。
切っ掛けは覚えていない。
気がつけば、寝ても覚めても一緒にいる。そんな存在になっていた。
そんな私の姿を見て両親も喜んでいたように思う。
別れは突然やって来た。
私が小学校に上がったばかりの頃だっただろうか。
学校から帰り、いつものように文鳥に餌をあげようと自室に入った。
そこに文鳥の姿はなかった。
そこにあったのは荒らされたゲージと、散乱した白い羽。
窓が、開いていた。
「野良猫の仕業だろう」
お父さんはそう言っていた。
私は自分を責めた。
窓を開けておいたのは私だったからだ。
近くで空を見れた方が、この子も喜ぶだろうと。
常識を知らぬ子供の、浅はかな考えだった。
それから…………。
194名無しの七森
2016/09/18(日) 08:42:28.54 ピョイ
その声で私はハッと顔を上げる。
少し、昔のことを思い出していたようだ。
その間、足元のそれはなにをするでもなく、ずっとそこにいたらしい。
敵では……ないのかもしれない。
というより、敵であれば今ごろ私はとっくに攻撃されていたはずだ。
(しっかりしなさいよ、綾乃……)
迂闊な自分を心の中で叱る。
私は未だに得体の知れぬ闇の中にいるのだ。
気を抜いていていいはずがない。
その声で私はハッと顔を上げる。
少し、昔のことを思い出していたようだ。
その間、足元のそれはなにをするでもなく、ずっとそこにいたらしい。
敵では……ないのかもしれない。
というより、敵であれば今ごろ私はとっくに攻撃されていたはずだ。
(しっかりしなさいよ、綾乃……)
迂闊な自分を心の中で叱る。
私は未だに得体の知れぬ闇の中にいるのだ。
気を抜いていていいはずがない。
195名無しの七森
2016/09/18(日) 08:47:36.64 足元のそれは再び翼をはためかせると、そのまま飛び上がる。
上空からばさばさという羽音。
先ほどと同じ状況だ。
ゆっくりと降下しながら私の肩へと止まったそれを、今度は振りほどかなかった。
ピョイ
小さく鳴いたそれは、そのまま私の頬へと身体を寄せてきた。
(あたたかい…………)
先ほどの決意はどこへやら。
この異様な状況の中ですら、私の心は暖かいもので満たされていた。
とても、落ち着く。
「………一緒に来てくれるの?」
独り言を呟くかのように、そう訪ねる。
くどいようだが、相手は鳥だ。
ピョイ
歯切れのよい鳴き声がひとつ、返ってきた。
上空からばさばさという羽音。
先ほどと同じ状況だ。
ゆっくりと降下しながら私の肩へと止まったそれを、今度は振りほどかなかった。
ピョイ
小さく鳴いたそれは、そのまま私の頬へと身体を寄せてきた。
(あたたかい…………)
先ほどの決意はどこへやら。
この異様な状況の中ですら、私の心は暖かいもので満たされていた。
とても、落ち着く。
「………一緒に来てくれるの?」
独り言を呟くかのように、そう訪ねる。
くどいようだが、相手は鳥だ。
ピョイ
歯切れのよい鳴き声がひとつ、返ってきた。
196名無しの七森
2016/09/18(日) 09:26:06.74 ピョイかわいいよピョイ
197名無しの七森
2016/09/18(日) 12:12:31.58 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり
198名無しの七森
2016/09/18(日) 15:00:00.93 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり
199名無しの七森
2016/09/18(日) 15:14:08.52 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり
200名無しの七森
2016/09/18(日) 15:27:43.64 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり
201名無しの七森
2016/09/18(日) 15:51:11.02 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり
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