ゆるゆりクトゥルフ [無断転載禁止]©2ch.net
168名無しの七森
2016/09/17(土) 10:22:36.39 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり
169名無しの七森
2016/09/17(土) 11:00:19.08 綾乃ちゃんには荷が重いで
170名無しの七森
2016/09/17(土) 11:04:40.50 これはビヤーキーですわ(適当)
171名無しの七森
2016/09/17(土) 11:13:26.63 綾乃SAN値低そう
172名無しの七森
2016/09/17(土) 11:36:36.23 SAN値直葬ですわ
173名無しの七森
2016/09/17(土) 11:52:17.50 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり
174名無しの七森
2016/09/17(土) 12:05:14.81 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり
175名無しの七森
2016/09/17(土) 12:18:12.70 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり
176名無しの七森
2016/09/17(土) 14:36:23.34 アカリリ
アカリリ
アカリリ
177名無しの七森
2016/09/17(土) 17:42:18.84 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり
178名無しの七森
2016/09/17(土) 19:18:03.64 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり
179名無しの七森
2016/09/17(土) 21:43:01.57 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり
180名無しの七森
2016/09/18(日) 02:09:56.38 恐怖のあまり歯の根が合わない。
誰かに心臓を鷲掴みにされているような、そんな感覚に陥る。
おとなしく助けを待つ?
冗談じゃない。そんなことを言ってる場合じゃない!
ーーーーなにかが、壁の中にいる。
うじうじと考えて込んでいる暇など最初からなかったのだ。
おそらく私は『何者か』の手によりこの空間へと連れて来られた。
どうやってだとか、その目的だとか、そんなことは今はどうでもいい。
私の身に危機が迫っている。
それも、すぐ目前まで。
揺るぎないのはその事実。
一刻も早くこの空間から出なければならない。
……出口など、あるのかわからないが。
壁を支えになんとか立ち上がると、私は壁をつたって歩き始めた。
闇の中へと一歩、また一歩。
少しずつ進んで行く。
誰かに心臓を鷲掴みにされているような、そんな感覚に陥る。
おとなしく助けを待つ?
冗談じゃない。そんなことを言ってる場合じゃない!
ーーーーなにかが、壁の中にいる。
うじうじと考えて込んでいる暇など最初からなかったのだ。
おそらく私は『何者か』の手によりこの空間へと連れて来られた。
どうやってだとか、その目的だとか、そんなことは今はどうでもいい。
私の身に危機が迫っている。
それも、すぐ目前まで。
揺るぎないのはその事実。
一刻も早くこの空間から出なければならない。
……出口など、あるのかわからないが。
壁を支えになんとか立ち上がると、私は壁をつたって歩き始めた。
闇の中へと一歩、また一歩。
少しずつ進んで行く。
181名無しの七森
2016/09/18(日) 02:13:19.95 闇の中を進む。
どれほど歩いただろうか。
代わり映えのない景色は私の距離感を狂わせる。
……歩数を数えておけばよかった。
そう思ったところでもう遅い。
歩みのペースは一定だ。
もし、一歩先が深い穴だったら。
もし、得体の知れない存在と鉢合わせてしまったら。
そんな事ばかりを考えてしまう。
相変わらず両端は狭く、息苦しい。
この闇はどこまで続いているのだろう?
私は足を進め続ける。
しばらく進んだところで、前方から少し不穏な空気を感じ取った。
躊躇しながらも歩みを止めるわけにはいかない。
さらに進んでいくとその正体が明らかになる。
「そんな……行き止まり……!?」
前方には巨大な壁のようなものが行く手を阻んでいた。
どれほど歩いただろうか。
代わり映えのない景色は私の距離感を狂わせる。
……歩数を数えておけばよかった。
そう思ったところでもう遅い。
歩みのペースは一定だ。
もし、一歩先が深い穴だったら。
もし、得体の知れない存在と鉢合わせてしまったら。
そんな事ばかりを考えてしまう。
相変わらず両端は狭く、息苦しい。
この闇はどこまで続いているのだろう?
私は足を進め続ける。
しばらく進んだところで、前方から少し不穏な空気を感じ取った。
躊躇しながらも歩みを止めるわけにはいかない。
さらに進んでいくとその正体が明らかになる。
「そんな……行き止まり……!?」
前方には巨大な壁のようなものが行く手を阻んでいた。
182名無しの七森
2016/09/18(日) 02:15:15.23 私は目の前が真っ暗になったような感覚に陥った。
実際、周囲は真っ暗だったのだけれども。
(こんなのって、あんまりじゃない……!)
自分が歩いて来たばかりの道を振り返る。
暗闇。
またあの道を戻らなくてはいけないのか。
頭が痛くなる。
自らを鼓舞してなんとかここまでやって来たものの、私の心は確実にすり減っていた。
行き場をなくした私は目の前の壁にそっと触れてみる。
(なに、これ……?)
横の壁や床とは全く違う感触。
壁はとても柔らかく、あたたかい。
まるでふわふわとした毛皮か、
上質の毛布を撫でているかのような感触。
その感触にどこか懐かしいような、安心感を覚えた。
実際、周囲は真っ暗だったのだけれども。
(こんなのって、あんまりじゃない……!)
自分が歩いて来たばかりの道を振り返る。
暗闇。
またあの道を戻らなくてはいけないのか。
頭が痛くなる。
自らを鼓舞してなんとかここまでやって来たものの、私の心は確実にすり減っていた。
行き場をなくした私は目の前の壁にそっと触れてみる。
(なに、これ……?)
横の壁や床とは全く違う感触。
壁はとても柔らかく、あたたかい。
まるでふわふわとした毛皮か、
上質の毛布を撫でているかのような感触。
その感触にどこか懐かしいような、安心感を覚えた。
183名無しの七森
2016/09/18(日) 02:16:10.28 あかん
184名無しの七森
2016/09/18(日) 02:17:40.08 しばらく無心で壁を触っていた私だったがふと我に返った。
(なにをやっているのよ、私は!)
あらためて壁の様子を確認する。
この壁は明らかに異質だ。
しかし、不思議と恐怖は感じない。
やはりどこか懐かしいような、そんな感じがする。
今度は壁を軽く押してみる事にする。
私の手はまるでトランポリンの上で跳ねたかのようにふわりとやさしく押し返された。
いずれにせよ、やはりこの先に進む事は出来ないようだ。
少し考えて、私は来た道を引き返すことに決めた。
少しだけ心が落ち着いたようだ。
今度は歩数を数えて行くとしよう。
踵を返し、私は再び闇の中へと進み始めた。
(なにをやっているのよ、私は!)
あらためて壁の様子を確認する。
この壁は明らかに異質だ。
しかし、不思議と恐怖は感じない。
やはりどこか懐かしいような、そんな感じがする。
今度は壁を軽く押してみる事にする。
私の手はまるでトランポリンの上で跳ねたかのようにふわりとやさしく押し返された。
いずれにせよ、やはりこの先に進む事は出来ないようだ。
少し考えて、私は来た道を引き返すことに決めた。
少しだけ心が落ち着いたようだ。
今度は歩数を数えて行くとしよう。
踵を返し、私は再び闇の中へと進み始めた。
185名無しの七森
2016/09/18(日) 02:26:47.95 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり
186名無しの七森
2016/09/18(日) 02:48:37.33 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり
187名無しの七森
2016/09/18(日) 03:27:02.97 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり
188名無しの七森
2016/09/18(日) 05:09:27.45 素敵な出会いかな?(すっとぼけ)
189名無しの七森
2016/09/18(日) 07:37:07.83 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり
190名無しの七森
2016/09/18(日) 08:22:16.27 そのまま前方に400歩ほど歩いた。
歩数を数えているだけで幾分か心持ちが楽だった。
私が最初にいた場所はとうにすぎたはずなのだが、視界はまだ開けない。
ずっと同じ場所をぐるぐると回っているような気さえする。
ふと壁に当てた自分の手の方を見やる。
伝わるのは冷たく、固い壁の感触。
(……もう一度、音を聞いてみようかしら)
一瞬そう思うも、慌てて頭を振る。
……やめておこう。
そんなことをしても、何の意味もない。
聞いているだけで精神を刻まれるような、あの不気味な音を思い出してしまった。
身震いがした。
その時。
ばさばさという羽音のような音。
近い。
その音を認識しつつも、私は身体を動かすことが出来なかった。
歩数を数えているだけで幾分か心持ちが楽だった。
私が最初にいた場所はとうにすぎたはずなのだが、視界はまだ開けない。
ずっと同じ場所をぐるぐると回っているような気さえする。
ふと壁に当てた自分の手の方を見やる。
伝わるのは冷たく、固い壁の感触。
(……もう一度、音を聞いてみようかしら)
一瞬そう思うも、慌てて頭を振る。
……やめておこう。
そんなことをしても、何の意味もない。
聞いているだけで精神を刻まれるような、あの不気味な音を思い出してしまった。
身震いがした。
その時。
ばさばさという羽音のような音。
近い。
その音を認識しつつも、私は身体を動かすことが出来なかった。
191名無しの七森
2016/09/18(日) 08:25:50.53 慌ただしく翼をはためかせたそれは、私の足元まで来て止まったようだ。
続けてピヨィピヨィという鳴き声。
「と、鳥……!? どうしてこんなところに……」
私の声に反応したのか。
それは再び翼をはためかせ、私の周囲を飛び始める。
夜目が利く種類の鳥なのだろうか?
暗く狭い通路に身体をぶつけることもなく、器用に飛んでいるようだ。
少し上空からばさばさという羽音が聞こえる。
ほどなくして、ゆっくりと降下してくる気配。
それは私の肩へと止まった。
「な、なに!? なんなのもう!!!」
私は慌ててそれを振りほどく。
鳥はふわりと飛び上がり、少しの旋回のあと今度は私の足元へと降りてきた。
そこから飛び立つ気配はない。
ピヨィ
ひと鳴き。
その声は少しだけ寂しげに聞こえた。
続けてピヨィピヨィという鳴き声。
「と、鳥……!? どうしてこんなところに……」
私の声に反応したのか。
それは再び翼をはためかせ、私の周囲を飛び始める。
夜目が利く種類の鳥なのだろうか?
暗く狭い通路に身体をぶつけることもなく、器用に飛んでいるようだ。
少し上空からばさばさという羽音が聞こえる。
ほどなくして、ゆっくりと降下してくる気配。
それは私の肩へと止まった。
「な、なに!? なんなのもう!!!」
私は慌ててそれを振りほどく。
鳥はふわりと飛び上がり、少しの旋回のあと今度は私の足元へと降りてきた。
そこから飛び立つ気配はない。
ピヨィ
ひと鳴き。
その声は少しだけ寂しげに聞こえた。
192名無しの七森
2016/09/18(日) 08:32:25.31 「あ……その、ごめんなさい……」
その声を聞いて、つい謝ってしまった。
相手は、鳥なのに。
私のとっさの一言に、足元のそれは相槌を返すかようにまたピョイと鳴いた。
(私の言葉を理解しているの?)
にわかには信じがたい。
しかし、その鳴き声は先ほどの寂しげな声色とも違うものだった。
まるで、「いいよ」とでも返されたかのような……
小さな頃、私は文鳥を1羽飼っていた。
昔から私は友達を作ることが苦手で、いつも家の中で本ばかりを読んでいた。
それを見かねた両親がペットショップで買ってきてくれた、オスの文鳥。
私はそれにすら最初はひどく怯えていたっけ。
その声を聞いて、つい謝ってしまった。
相手は、鳥なのに。
私のとっさの一言に、足元のそれは相槌を返すかようにまたピョイと鳴いた。
(私の言葉を理解しているの?)
にわかには信じがたい。
しかし、その鳴き声は先ほどの寂しげな声色とも違うものだった。
まるで、「いいよ」とでも返されたかのような……
小さな頃、私は文鳥を1羽飼っていた。
昔から私は友達を作ることが苦手で、いつも家の中で本ばかりを読んでいた。
それを見かねた両親がペットショップで買ってきてくれた、オスの文鳥。
私はそれにすら最初はひどく怯えていたっけ。
193名無しの七森
2016/09/18(日) 08:36:53.77 その子に心を許すのに時間は掛からなかった。
切っ掛けは覚えていない。
気がつけば、寝ても覚めても一緒にいる。そんな存在になっていた。
そんな私の姿を見て両親も喜んでいたように思う。
別れは突然やって来た。
私が小学校に上がったばかりの頃だっただろうか。
学校から帰り、いつものように文鳥に餌をあげようと自室に入った。
そこに文鳥の姿はなかった。
そこにあったのは荒らされたゲージと、散乱した白い羽。
窓が、開いていた。
「野良猫の仕業だろう」
お父さんはそう言っていた。
私は自分を責めた。
窓を開けておいたのは私だったからだ。
近くで空を見れた方が、この子も喜ぶだろうと。
常識を知らぬ子供の、浅はかな考えだった。
それから…………。
切っ掛けは覚えていない。
気がつけば、寝ても覚めても一緒にいる。そんな存在になっていた。
そんな私の姿を見て両親も喜んでいたように思う。
別れは突然やって来た。
私が小学校に上がったばかりの頃だっただろうか。
学校から帰り、いつものように文鳥に餌をあげようと自室に入った。
そこに文鳥の姿はなかった。
そこにあったのは荒らされたゲージと、散乱した白い羽。
窓が、開いていた。
「野良猫の仕業だろう」
お父さんはそう言っていた。
私は自分を責めた。
窓を開けておいたのは私だったからだ。
近くで空を見れた方が、この子も喜ぶだろうと。
常識を知らぬ子供の、浅はかな考えだった。
それから…………。
194名無しの七森
2016/09/18(日) 08:42:28.54 ピョイ
その声で私はハッと顔を上げる。
少し、昔のことを思い出していたようだ。
その間、足元のそれはなにをするでもなく、ずっとそこにいたらしい。
敵では……ないのかもしれない。
というより、敵であれば今ごろ私はとっくに攻撃されていたはずだ。
(しっかりしなさいよ、綾乃……)
迂闊な自分を心の中で叱る。
私は未だに得体の知れぬ闇の中にいるのだ。
気を抜いていていいはずがない。
その声で私はハッと顔を上げる。
少し、昔のことを思い出していたようだ。
その間、足元のそれはなにをするでもなく、ずっとそこにいたらしい。
敵では……ないのかもしれない。
というより、敵であれば今ごろ私はとっくに攻撃されていたはずだ。
(しっかりしなさいよ、綾乃……)
迂闊な自分を心の中で叱る。
私は未だに得体の知れぬ闇の中にいるのだ。
気を抜いていていいはずがない。
195名無しの七森
2016/09/18(日) 08:47:36.64 足元のそれは再び翼をはためかせると、そのまま飛び上がる。
上空からばさばさという羽音。
先ほどと同じ状況だ。
ゆっくりと降下しながら私の肩へと止まったそれを、今度は振りほどかなかった。
ピョイ
小さく鳴いたそれは、そのまま私の頬へと身体を寄せてきた。
(あたたかい…………)
先ほどの決意はどこへやら。
この異様な状況の中ですら、私の心は暖かいもので満たされていた。
とても、落ち着く。
「………一緒に来てくれるの?」
独り言を呟くかのように、そう訪ねる。
くどいようだが、相手は鳥だ。
ピョイ
歯切れのよい鳴き声がひとつ、返ってきた。
上空からばさばさという羽音。
先ほどと同じ状況だ。
ゆっくりと降下しながら私の肩へと止まったそれを、今度は振りほどかなかった。
ピョイ
小さく鳴いたそれは、そのまま私の頬へと身体を寄せてきた。
(あたたかい…………)
先ほどの決意はどこへやら。
この異様な状況の中ですら、私の心は暖かいもので満たされていた。
とても、落ち着く。
「………一緒に来てくれるの?」
独り言を呟くかのように、そう訪ねる。
くどいようだが、相手は鳥だ。
ピョイ
歯切れのよい鳴き声がひとつ、返ってきた。
196名無しの七森
2016/09/18(日) 09:26:06.74 ピョイかわいいよピョイ
197名無しの七森
2016/09/18(日) 12:12:31.58 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり
198名無しの七森
2016/09/18(日) 15:00:00.93 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり
199名無しの七森
2016/09/18(日) 15:14:08.52 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり
200名無しの七森
2016/09/18(日) 15:27:43.64 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり
201名無しの七森
2016/09/18(日) 15:51:11.02 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり
202名無しの七森
2016/09/18(日) 16:14:17.46 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり
203名無しの七森
2016/09/18(日) 16:29:25.81 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり
204名無しの七森
2016/09/18(日) 16:42:39.55 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり
205名無しの七森
2016/09/18(日) 16:56:23.48 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり
206名無しの七森
2016/09/18(日) 16:57:38.60 いあいあゆるゆり
207名無しの七森
2016/09/18(日) 17:37:39.57 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり
208名無しの七森
2016/09/18(日) 19:18:16.75 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど なもり 同人
209名無しの七森
2016/09/18(日) 23:27:27.16 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど なもり 同人
210名無しの七森
2016/09/19(月) 02:14:38.45 闇の中を進む。
数えていた歩数は飛んでしまったので、また一から数え直すことにした。
それでも私がすることは変わらない。
一歩ずつゆっくりと進んでいく。
肩の上の鳥はおとなしくしている。
小さく軽い鳥のようで、乗せて歩く負担はない。
まるで羽でも乗せているかのようだった。
そのまましばらく進んだところで、鳥がピィとひと鳴きした。
それはなにかを警告しているようにも聞こえた。
私は足を止め、前方に向け注意を送る。
するとすぐ前の床が小さく段差になっていることに気がついた。
このまま進んでいたら足を取られ躓いていたかもしれない。
「ありがとう」
そう言って肩の上の鳥を撫でた。
ふわふわとやわらかな感触。
鳥は私の指に身体をすりよせ甘えているようだった。
数えていた歩数は飛んでしまったので、また一から数え直すことにした。
それでも私がすることは変わらない。
一歩ずつゆっくりと進んでいく。
肩の上の鳥はおとなしくしている。
小さく軽い鳥のようで、乗せて歩く負担はない。
まるで羽でも乗せているかのようだった。
そのまましばらく進んだところで、鳥がピィとひと鳴きした。
それはなにかを警告しているようにも聞こえた。
私は足を止め、前方に向け注意を送る。
するとすぐ前の床が小さく段差になっていることに気がついた。
このまま進んでいたら足を取られ躓いていたかもしれない。
「ありがとう」
そう言って肩の上の鳥を撫でた。
ふわふわとやわらかな感触。
鳥は私の指に身体をすりよせ甘えているようだった。
211名無しの七森
2016/09/19(月) 02:16:54.96 段差を越えてさらに進もうとした瞬間、再び鳥が鳴く。
「な、なに……!?」
驚いて前に出そうとしていた足を引っ込めてしまった。
鳥はピッ、ピッ、ピッと小さく続けて鳴いている。
(まだ何かあるの……?)
私はじりじりと摺り足で進むことにする。
新しい段差であればこれで見分けがつくはずだ。
コツン
爪先になにかが触れた。
「な、なに……!?」
驚いて前に出そうとしていた足を引っ込めてしまった。
鳥はピッ、ピッ、ピッと小さく続けて鳴いている。
(まだ何かあるの……?)
私はじりじりと摺り足で進むことにする。
新しい段差であればこれで見分けがつくはずだ。
コツン
爪先になにかが触れた。
212名無しの七森
2016/09/19(月) 02:20:25.47 伝わるのは固い感触。
爪先で突いてそれの正体を確かめようとする。
それは壁の端から端まで掛かっているようだった。
嫌な予感を感じながら、今度はそれの高さを確認する。
足首よりも、上。
膝丈よりも、上。
「そんな……まさか……」
私は腕を前につき出す。
ひやり。
冷たく固い感触。
腰よりも、上。
肩よりも、上。
「行き止まりなの……!?」
爪先で突いてそれの正体を確かめようとする。
それは壁の端から端まで掛かっているようだった。
嫌な予感を感じながら、今度はそれの高さを確認する。
足首よりも、上。
膝丈よりも、上。
「そんな……まさか……」
私は腕を前につき出す。
ひやり。
冷たく固い感触。
腰よりも、上。
肩よりも、上。
「行き止まりなの……!?」
213名無しの七森
2016/09/19(月) 02:26:38.68 反対側の道は行き止まりだった。
つまり。
ここが通れないとなると、この空間に出口はないということになる。
「嘘よ……! 嘘うそ!! いやぁああああああ!!!」
私は反乱狂になりながらも、腕を伸ばしてそれの高さを確認する。
驚いたかのように鳥が私の肩から飛び立つ。
それに構っていられる余裕はなかった。
つまり。
ここが通れないとなると、この空間に出口はないということになる。
「嘘よ……! 嘘うそ!! いやぁああああああ!!!」
私は反乱狂になりながらも、腕を伸ばしてそれの高さを確認する。
驚いたかのように鳥が私の肩から飛び立つ。
それに構っていられる余裕はなかった。
214名無しの七森
2016/09/19(月) 02:27:32.69 スカッ
目一杯腕を伸ばした先で、私の手が空を切った。
…………空洞が、ある!
私はそのままの姿勢で硬直した。
過呼吸気味になった呼吸を整えようとする。
(まだ、繋がってる……まだ、詰みじゃない……!)
それでも、カチカチと鳴る歯と溢れた涙は、しばらくおさまりそうになかった。
目一杯腕を伸ばした先で、私の手が空を切った。
…………空洞が、ある!
私はそのままの姿勢で硬直した。
過呼吸気味になった呼吸を整えようとする。
(まだ、繋がってる……まだ、詰みじゃない……!)
それでも、カチカチと鳴る歯と溢れた涙は、しばらくおさまりそうになかった。
215名無しの七森
2016/09/19(月) 02:29:10.62 なぜこんなことになったのだろう。
それが何度目の自問かは忘れた。
いつから? いつからおかしかったの?
ごく普通に買い物をして、それから……
そんな当たり前のことがひどく昔のことのように感じられた。
しばらくして肩にふわりとした感覚。
あの鳥が戻ってきたようだ。
気を利かせてくれているのだろうか?
それ以上はなにをするでもなく、おとなしくしている。
私は顔を上げた。
そのまま前方の壁をペタペタと触る。
壁や床とはまた違うような手触り。
突起のような物はない、ツルツルとした平坦な壁だ。
(登らなきゃ……いけないのかしら……)
私の運動神経は並以下だ。
私の背よりも高い壁、くわえてこの暗がり。
結果は火を見るより明らかだろう。
それが何度目の自問かは忘れた。
いつから? いつからおかしかったの?
ごく普通に買い物をして、それから……
そんな当たり前のことがひどく昔のことのように感じられた。
しばらくして肩にふわりとした感覚。
あの鳥が戻ってきたようだ。
気を利かせてくれているのだろうか?
それ以上はなにをするでもなく、おとなしくしている。
私は顔を上げた。
そのまま前方の壁をペタペタと触る。
壁や床とはまた違うような手触り。
突起のような物はない、ツルツルとした平坦な壁だ。
(登らなきゃ……いけないのかしら……)
私の運動神経は並以下だ。
私の背よりも高い壁、くわえてこの暗がり。
結果は火を見るより明らかだろう。
216名無しの七森
2016/09/19(月) 02:31:19.94 どうしたものかと更に壁をまさぐる。
目線の辺りの壁を調べることを辞め、上部の空洞へと繋がるとっかかりに手をやる。
それ自体はかなりしっかりしたような造りに思えたが、
生憎ここから腕の力だけで壁をよじ登れるほどの筋力はない。
諦めて壁から手を離そうとした瞬間、なにかに触れた。
「ヒッ!」
反射的に腕を引き、壁から一歩後ずさる。
あれは、なに?
手の甲で軽く触れただけだが、明らかに異質な感触だった。
傍らの鳥がキャルルルと低くうなるような声をあげている。
しかし、無視するわけには、いかない。
目線の辺りの壁を調べることを辞め、上部の空洞へと繋がるとっかかりに手をやる。
それ自体はかなりしっかりしたような造りに思えたが、
生憎ここから腕の力だけで壁をよじ登れるほどの筋力はない。
諦めて壁から手を離そうとした瞬間、なにかに触れた。
「ヒッ!」
反射的に腕を引き、壁から一歩後ずさる。
あれは、なに?
手の甲で軽く触れただけだが、明らかに異質な感触だった。
傍らの鳥がキャルルルと低くうなるような声をあげている。
しかし、無視するわけには、いかない。
217名無しの七森
2016/09/19(月) 02:36:42.45 再び壁の前まで近づき、恐る恐る腕を伸ばした。
手探りで先ほどの物体を探す。
あった。
それは手のひらに収まるほどの大きさだった。
四角い形をしている。
陶器のような感触。冷たい。
私はそれを両手で包み込む。
しばらくそれを触っていると、不思議な感覚に陥る。
暗闇の中で、なにかが、うっすらと見えてくるような。
なんだろう? あれは……
そのまま手の中のそれを持ち上げようとする。
手探りで先ほどの物体を探す。
あった。
それは手のひらに収まるほどの大きさだった。
四角い形をしている。
陶器のような感触。冷たい。
私はそれを両手で包み込む。
しばらくそれを触っていると、不思議な感覚に陥る。
暗闇の中で、なにかが、うっすらと見えてくるような。
なんだろう? あれは……
そのまま手の中のそれを持ち上げようとする。
218名無しの七森
2016/09/19(月) 06:16:24.18 ピィイイイイイイイイイイイイイ
耳をつんざくような、けたたましい鳴き声。
私はそれに身体を硬くする。
「え!? あ、ちょっと……!」
瞬間、ばさばさという羽音。
続いて私の手にのしかかるような羽毛の感触と、ずしりとした重み。
どうやら鳥はこの四角い物体の上に乗ってしまったようだ。
そのまま持ち上げようとしてみるが、手はピクリとも動かない。
『これを持つことは許さない』
まるでそんなことを言うように、鳥はそこから微動だにしない。
鳥本来のそれとは不釣り合いな手の重さに混乱する。
耳をつんざくような、けたたましい鳴き声。
私はそれに身体を硬くする。
「え!? あ、ちょっと……!」
瞬間、ばさばさという羽音。
続いて私の手にのしかかるような羽毛の感触と、ずしりとした重み。
どうやら鳥はこの四角い物体の上に乗ってしまったようだ。
そのまま持ち上げようとしてみるが、手はピクリとも動かない。
『これを持つことは許さない』
まるでそんなことを言うように、鳥はそこから微動だにしない。
鳥本来のそれとは不釣り合いな手の重さに混乱する。
219名無しの七森
2016/09/19(月) 06:18:50.00 「……これを、持っちゃいけないの?」
鳥からの反応はない。
ただ、その場から動く気配はないようだ。
「……わかったわよ」
根負けした私は四角い物体からそっと手を離した。
ほどなくしてばさばさという羽音。
どうやら鳥もそこからのいたようだ。
そのまま再び私の肩の上に止まった。
腕を組んで壁の前に立ち尽くす。
これからどうしようか。
(やっぱりここを登るしか……でも、もし失敗して足でもくじいたら……)
これは重要な決断になる。
簡単に答えは出そうにない。
鳥からの反応はない。
ただ、その場から動く気配はないようだ。
「……わかったわよ」
根負けした私は四角い物体からそっと手を離した。
ほどなくしてばさばさという羽音。
どうやら鳥もそこからのいたようだ。
そのまま再び私の肩の上に止まった。
腕を組んで壁の前に立ち尽くす。
これからどうしようか。
(やっぱりここを登るしか……でも、もし失敗して足でもくじいたら……)
これは重要な決断になる。
簡単に答えは出そうにない。
220名無しの七森
2016/09/19(月) 06:22:14.90 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど なもり 同人
221名無しの七森
2016/09/19(月) 06:23:03.60 チラリと後方を見やる。
果てしない暗闇。
最奥にはふわふわとした壁があった。
調べてはみたものの、そこから先に進めるような気はしなかった。
だからこちら側に出口があると信じ、ここまで歩いてきた。
(また戻るの? この道を…………?)
選択肢の一つに入れない訳にはいかないだろう。
……気乗りは、しないけど。
考えに詰まった私はなんとなく身体を反転させてみた。
まだ引き返すと決めた訳ではなかったが、立ち止まったまま考えているよりは幾分かマシと思ったのだ。
確かすぐ先には段差があったはず。
足を取られないよう気をつけなければ。
今まで支えに使ってきたものとは反対側の壁に触れる。
感触は同じものだった。冷たく、固い。
摺り足で一歩前に踏み出す。
果てしない暗闇。
最奥にはふわふわとした壁があった。
調べてはみたものの、そこから先に進めるような気はしなかった。
だからこちら側に出口があると信じ、ここまで歩いてきた。
(また戻るの? この道を…………?)
選択肢の一つに入れない訳にはいかないだろう。
……気乗りは、しないけど。
考えに詰まった私はなんとなく身体を反転させてみた。
まだ引き返すと決めた訳ではなかったが、立ち止まったまま考えているよりは幾分かマシと思ったのだ。
確かすぐ先には段差があったはず。
足を取られないよう気をつけなければ。
今まで支えに使ってきたものとは反対側の壁に触れる。
感触は同じものだった。冷たく、固い。
摺り足で一歩前に踏み出す。
222名無しの七森
2016/09/19(月) 06:27:27.39 ピィイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!
先ほどよりも、更にけたたましい鳴き声。
鳥は肩の上に乗ったままばさばさと翼をはためかせている。
それは悲痛なほどに何かを訴えかけているように聞こえた。
「ま、またなの!?」
私は慌てて身体を反転し直す。
元の位置へと戻ったところでようやく鳥はおとなしくなった。
行くもダメ、戻るもダメ。
ではどうしろと言うのか。
私は泣きたくなった。
しかし、先ほどの鳥の様子は少し尋常ではなかったように思える。
おそらく、私になにかを警告しようとしていたはずだ。
(ここから離れるな、というよりは……)
私に警告するのと同時に、鳥自身もひどく怯えているように思えた。
そうだ。もっと的確に言うのであれば……
(あちらへ…………行くな……?)
そう理解した瞬間。
ゾクリと背中に冷たいものが走った。
先ほどよりも、更にけたたましい鳴き声。
鳥は肩の上に乗ったままばさばさと翼をはためかせている。
それは悲痛なほどに何かを訴えかけているように聞こえた。
「ま、またなの!?」
私は慌てて身体を反転し直す。
元の位置へと戻ったところでようやく鳥はおとなしくなった。
行くもダメ、戻るもダメ。
ではどうしろと言うのか。
私は泣きたくなった。
しかし、先ほどの鳥の様子は少し尋常ではなかったように思える。
おそらく、私になにかを警告しようとしていたはずだ。
(ここから離れるな、というよりは……)
私に警告するのと同時に、鳥自身もひどく怯えているように思えた。
そうだ。もっと的確に言うのであれば……
(あちらへ…………行くな……?)
そう理解した瞬間。
ゾクリと背中に冷たいものが走った。
223名無しの七森
2016/09/19(月) 18:08:01.20 ほ
224名無しの七森
2016/09/19(月) 19:01:34.81 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど なもり 同人
225名無しの七森
2016/09/19(月) 19:12:18.13 SSスレだったのかここ
226名無しの七森
2016/09/19(月) 22:05:29.14 よっぽど面白い
227名無しの七森
2016/09/19(月) 23:14:00.57 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど なもり 同人
228名無しの七森
2016/09/20(火) 02:20:54.12 少し考える。
この状況で私が取れる行動は限られている。
道を引き返すのは、やめておこう。
となれば……。
目の前の、壁。
私はどうしても『あれ』が気になった。
調べずには、いられない。
私は腕を伸ばす。
そして再び壁の上の四角い物体に触れた。
相変わらずのひんやりとした感触。
間を置かず肩から飛び立った鳥が、それの上に乗る。
先ほどと同じ状況になった。
鳥はやはりそこからのく気はないようだ。
間。
しばらくにらみ合いを続けたあと、私はそっと手を離した。
それを確認した鳥もそこから飛び立つ。
(……ごめんね!)
私は再び四角い物体へ向け腕を伸ばす。
鳥はピッとひと言、面食らったような鳴き声を上げた。
私の方が、早い。
手に掴んだそれを、私はすばやく持ち上げた。
この状況で私が取れる行動は限られている。
道を引き返すのは、やめておこう。
となれば……。
目の前の、壁。
私はどうしても『あれ』が気になった。
調べずには、いられない。
私は腕を伸ばす。
そして再び壁の上の四角い物体に触れた。
相変わらずのひんやりとした感触。
間を置かず肩から飛び立った鳥が、それの上に乗る。
先ほどと同じ状況になった。
鳥はやはりそこからのく気はないようだ。
間。
しばらくにらみ合いを続けたあと、私はそっと手を離した。
それを確認した鳥もそこから飛び立つ。
(……ごめんね!)
私は再び四角い物体へ向け腕を伸ばす。
鳥はピッとひと言、面食らったような鳴き声を上げた。
私の方が、早い。
手に掴んだそれを、私はすばやく持ち上げた。
229名無しの七森
2016/09/20(火) 02:26:19.66 瞬間。
身体の自由が効かなくなる。
「……え?」
理解が、追いつかない。
次にやって来たもの。
ふわりとした、浮遊感。
私は、それに抗うことが出来なかった。
四角い物体を手にしたまま。
私は。
「ふぎっ!」
前方へ向け、思いきり倒れこんだ。
身体の自由が効かなくなる。
「……え?」
理解が、追いつかない。
次にやって来たもの。
ふわりとした、浮遊感。
私は、それに抗うことが出来なかった。
四角い物体を手にしたまま。
私は。
「ふぎっ!」
前方へ向け、思いきり倒れこんだ。
230名無しの七森
2016/09/20(火) 02:31:09.65 「つぅぅ……いったぁ……!」
受け身を取る暇もなかった。
勢いのまま、私は床に額をぶつけてしまった。
額をさすってみる。
幸い出血はしていないようだ。
「な、なにが起きたの……!?」
あの四角い物体を手に取った瞬間、身体の自由が効かなくなった。
あの瞬間、私は前方の壁に身体を預けるようにしていたはずだ。
倒れこむ道理などない。
(まさか……)
膝を突いた状態で周囲を探る。
そのまま少し下がったところで床に小さな段差を発見した。
おそらく先ほど見つけたものだろう。
つまり、今私がいる場所自体は先ほどと同じ、
変わってないということになる。
立ちあがり、腕を前に出す。
ない。
壁が、ない!
「どうして…………!?」
そこにあったはずのものが、突然消える。
不可思議な現象に恐怖を覚えた。
受け身を取る暇もなかった。
勢いのまま、私は床に額をぶつけてしまった。
額をさすってみる。
幸い出血はしていないようだ。
「な、なにが起きたの……!?」
あの四角い物体を手に取った瞬間、身体の自由が効かなくなった。
あの瞬間、私は前方の壁に身体を預けるようにしていたはずだ。
倒れこむ道理などない。
(まさか……)
膝を突いた状態で周囲を探る。
そのまま少し下がったところで床に小さな段差を発見した。
おそらく先ほど見つけたものだろう。
つまり、今私がいる場所自体は先ほどと同じ、
変わってないということになる。
立ちあがり、腕を前に出す。
ない。
壁が、ない!
「どうして…………!?」
そこにあったはずのものが、突然消える。
不可思議な現象に恐怖を覚えた。
231名無しの七森
2016/09/20(火) 02:36:43.26 少し上空から翼の音。
(あっ……)
ほどなくして、それは私の肩へと止まった。
すでにここが定位置になりつつある。
鳥からの反応はそれ以上ない。
少し気まずいような沈黙が流れる。
結果はどうあれ、警告を無視した形になってしまったのだから。
気を紛らすかのように、私は手に持ったままだった四角い物体を調べ始めた。
最初に手にした時のような不思議な感覚はしない。
まず疑問に感じたのがそれの重さ。
触った感じから陶器のようなものだと思っていたのだが、非常に軽い。
中が空洞になっていることが容易にわかった。
軽く叩いてみると同じく軽い音がした。
これを手に取った瞬間、目の前の壁が消えた。
間違いなく、なにか秘密があるはずなのだが。
(この暗さじゃ、それ以上のことはわからないわね……)
作業を中断し、それを肩掛けの鞄の中へとしまう。
道がひらけたのだ。先に進まなくては。
私は再び暗闇の中を歩き始めた。
(あっ……)
ほどなくして、それは私の肩へと止まった。
すでにここが定位置になりつつある。
鳥からの反応はそれ以上ない。
少し気まずいような沈黙が流れる。
結果はどうあれ、警告を無視した形になってしまったのだから。
気を紛らすかのように、私は手に持ったままだった四角い物体を調べ始めた。
最初に手にした時のような不思議な感覚はしない。
まず疑問に感じたのがそれの重さ。
触った感じから陶器のようなものだと思っていたのだが、非常に軽い。
中が空洞になっていることが容易にわかった。
軽く叩いてみると同じく軽い音がした。
これを手に取った瞬間、目の前の壁が消えた。
間違いなく、なにか秘密があるはずなのだが。
(この暗さじゃ、それ以上のことはわからないわね……)
作業を中断し、それを肩掛けの鞄の中へとしまう。
道がひらけたのだ。先に進まなくては。
私は再び暗闇の中を歩き始めた。
232名無しの七森
2016/09/20(火) 02:38:51.92 見てる
233名無しの七森
2016/09/20(火) 02:39:57.54 見てるで
234名無しの七森
2016/09/20(火) 04:03:33.20 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど なもり 同人
235名無しの七森
2016/09/20(火) 14:53:02.98 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど なもり 同人
236名無しの七森
2016/09/20(火) 15:23:35.39 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど なもり 同人
237名無しの七森
2016/09/20(火) 21:10:03.34 一定の速度で歩みを続ける。
片手を壁に添え、右足を先に出す。
続いて左足。
幾度となく繰り返した工程。
傍らの鳥は黙ったままだ。
単純な作業が沈黙をごまかすのに丁度よかった。
先ほど打ちつけた額が、まだヒリヒリした。
少し進んだところで、突如沈黙を破った鳥がピイと鳴いた。
「え?」
踏み出した右足は止まらない。
ぬるり。
今までとは違った床の感覚に足を取られる。
「えっ!? ちょっ……! わっ、わっ、わっ!!」
咄嗟に横の壁で身体を支える。
バランスを崩しながらもなんとかそこに踏み留まることが出来た。
片手を壁に添え、右足を先に出す。
続いて左足。
幾度となく繰り返した工程。
傍らの鳥は黙ったままだ。
単純な作業が沈黙をごまかすのに丁度よかった。
先ほど打ちつけた額が、まだヒリヒリした。
少し進んだところで、突如沈黙を破った鳥がピイと鳴いた。
「え?」
踏み出した右足は止まらない。
ぬるり。
今までとは違った床の感覚に足を取られる。
「えっ!? ちょっ……! わっ、わっ、わっ!!」
咄嗟に横の壁で身体を支える。
バランスを崩しながらもなんとかそこに踏み留まることが出来た。
238名無しの七森
2016/09/20(火) 21:14:16.21 呆然とする私の傍らで鳥がまたひとつ鳴く。
それは私を気遣うような声色だった。
頬に触れるやわらかな感触。
「だ、大丈夫……ごめんね、せっかく教えてくれたのに……」
知らないうちに歩き方が雑になっていたようだ。
心の中でそれを猛省する。
(私は一体何を踏んだの……?)
少し後ろの床を足で探る。
床に変わったところはなく、以前までの硬さを持っていた。
更にくまなく周囲を探ってみるものの、それらしい物は見つからなかった。
(消えた……!?)
だがあの時とはまた状況が違う。
あの壁は四角い物体を手にしたことを引き金に消えたように思えた。
しかし、床に対して私は特別なことはしていない。
にも関わらず、床には何の痕跡もない。
これが意味することはなんだろうか?
瞬間、脳裏にひとつの考えが浮かぶ。
それは私を気遣うような声色だった。
頬に触れるやわらかな感触。
「だ、大丈夫……ごめんね、せっかく教えてくれたのに……」
知らないうちに歩き方が雑になっていたようだ。
心の中でそれを猛省する。
(私は一体何を踏んだの……?)
少し後ろの床を足で探る。
床に変わったところはなく、以前までの硬さを持っていた。
更にくまなく周囲を探ってみるものの、それらしい物は見つからなかった。
(消えた……!?)
だがあの時とはまた状況が違う。
あの壁は四角い物体を手にしたことを引き金に消えたように思えた。
しかし、床に対して私は特別なことはしていない。
にも関わらず、床には何の痕跡もない。
これが意味することはなんだろうか?
瞬間、脳裏にひとつの考えが浮かぶ。
239名無しの七森
2016/09/20(火) 21:18:28.40 私は確かになにかを踏んだ。
しかし、床にその痕跡はない。
ーーーー突然壁が消える現象を目の当たりにしておいて、今さらなにを。
そう思うのは簡単だ。
この空間で常識が通用しないことなどとっくに分かっている。
深く考えずに先へと進むべきなのだろう。
しかし、思考は止まらない。
ーーーーでは、発想を逆転させてみてはどうだろうか?
消えたのではない。
それが、今もそこにあるのだとしたら。
私が今まで歩いてきた硬質な床。
それ自体が、
まるで水溶きの片栗粉のように、
柔らかくなれるものだとしたら。
そう仮定したところで、ひとつの疑問に突き当たる。
今までつたってきた硬質な壁。
ーーーーそれは本当に壁だったのか?
しかし、床にその痕跡はない。
ーーーー突然壁が消える現象を目の当たりにしておいて、今さらなにを。
そう思うのは簡単だ。
この空間で常識が通用しないことなどとっくに分かっている。
深く考えずに先へと進むべきなのだろう。
しかし、思考は止まらない。
ーーーーでは、発想を逆転させてみてはどうだろうか?
消えたのではない。
それが、今もそこにあるのだとしたら。
私が今まで歩いてきた硬質な床。
それ自体が、
まるで水溶きの片栗粉のように、
柔らかくなれるものだとしたら。
そう仮定したところで、ひとつの疑問に突き当たる。
今までつたってきた硬質な壁。
ーーーーそれは本当に壁だったのか?
240名無しの七森
2016/09/20(火) 21:36:11.52 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど なもり 同人
241名無しの七森
2016/09/20(火) 22:25:36.46 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど なもり 同人
242名無しの七森
2016/09/20(火) 23:14:43.95 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど なもり 同人
243名無しの七森
2016/09/20(火) 23:33:05.91 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど なもり 同人
244名無しの七森
2016/09/21(水) 00:24:45.65 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど なもり 同人
245名無しの七森
2016/09/21(水) 00:34:56.20 ピッ ピッ ピッ
その音で意識を引き上げられる。
傍らの鳥が短く続けて鳴いている。
聞き覚えのある、声色だった。
「この先に、なにかあるの……?」
ピヨィとひと鳴き。
肯定とみてよさそうだ。
そのままくりくりと身体を頬に押し付けられる。
黒いものに包まれそうだった心が、晴れていくのを感じた。
少し躊躇して、私は壁に触れる。
その感触は以前と変わらないものだった。
じりじりと先へ進むと、爪先になにかがぶつかる。
それはガンッと聞き覚えのない音を立てた。
その音で意識を引き上げられる。
傍らの鳥が短く続けて鳴いている。
聞き覚えのある、声色だった。
「この先に、なにかあるの……?」
ピヨィとひと鳴き。
肯定とみてよさそうだ。
そのままくりくりと身体を頬に押し付けられる。
黒いものに包まれそうだった心が、晴れていくのを感じた。
少し躊躇して、私は壁に触れる。
その感触は以前と変わらないものだった。
じりじりと先へ進むと、爪先になにかがぶつかる。
それはガンッと聞き覚えのない音を立てた。
246名無しの七森
2016/09/21(水) 00:37:52.96 「行き止まり……!?」
慌てて腕を前に伸ばし、すぐに前方のそれに触れる。
冷たく、ざらざらとした感触。
壁や床の感触とは全く違う。
しかし、異質な感触ではなかった。
私はこれに似た感触のものを、
この空間ではない場所で触ったことがある。
破裂しそうな心音。
伸ばした腕を引き、手の臭いを嗅いでみる。
錆びた金属のような、臭い。
(これって…………!)
再び前方の壁をまさぐる。
すると腰のあたりに突起をひとつ発見した。
突起は片手で握ることが出来るほどの大きさだった。
それを左右に軽く捻ってみる。
ガチャガチャという音がした。
(まわ………せる…………?)
ーーーーあぁ、そうだ…………これは…………!
私は突起をひねりながら、それを引いた。
慌てて腕を前に伸ばし、すぐに前方のそれに触れる。
冷たく、ざらざらとした感触。
壁や床の感触とは全く違う。
しかし、異質な感触ではなかった。
私はこれに似た感触のものを、
この空間ではない場所で触ったことがある。
破裂しそうな心音。
伸ばした腕を引き、手の臭いを嗅いでみる。
錆びた金属のような、臭い。
(これって…………!)
再び前方の壁をまさぐる。
すると腰のあたりに突起をひとつ発見した。
突起は片手で握ることが出来るほどの大きさだった。
それを左右に軽く捻ってみる。
ガチャガチャという音がした。
(まわ………せる…………?)
ーーーーあぁ、そうだ…………これは…………!
私は突起をひねりながら、それを引いた。
247名無しの七森
2016/09/21(水) 00:38:29.85 クッキーモンスターやらワルツ云々の嗅いてたろ
248名無しの七森
2016/09/21(水) 00:40:25.65 瞬間。
青い光が差し込み、音が流れ込む。
急な光に目を開けていられなくなる。
目を瞑ったまま、私は音の正体を認識した。
激しい、雨音。
ゆっくりと目を開ける。
私の目に映ったのは鬱蒼とした草木。
どうやら、ここは森の中のようだ。
空はオーロラめいた青白い光に照らされ、青い霧が濃く広がっている。
突如、肩の上の鳥が空へと飛び立つ。
「あっ……!」
そこで私は暗闇の中連れ添ったそれの姿を初めて目にする。
小さな身体。
白い羽。
首から後ろへかけての、青い模様。
「待って!!!」
私の呼び声むなしく、
鳥は白い翼をはためかせ、振り返ることもなく空へと消えていった。
青い光が差し込み、音が流れ込む。
急な光に目を開けていられなくなる。
目を瞑ったまま、私は音の正体を認識した。
激しい、雨音。
ゆっくりと目を開ける。
私の目に映ったのは鬱蒼とした草木。
どうやら、ここは森の中のようだ。
空はオーロラめいた青白い光に照らされ、青い霧が濃く広がっている。
突如、肩の上の鳥が空へと飛び立つ。
「あっ……!」
そこで私は暗闇の中連れ添ったそれの姿を初めて目にする。
小さな身体。
白い羽。
首から後ろへかけての、青い模様。
「待って!!!」
私の呼び声むなしく、
鳥は白い翼をはためかせ、振り返ることもなく空へと消えていった。
249名無しの七森
2016/09/21(水) 00:43:47.16 手に掴んだままだったそれ、ドアノブを離すと、一歩前に踏み出す。
むせかえるような草木の香り。
そのまま激しい雨に打たれる。
身を打つ水の感触は生々しいものだった。
突如、後方からバタンと大きな音がした。
「ヒッ!」
慌てて私は振り返る。
そこで見たもの。
ひとりでに閉じた扉が、少しずつこの場から消えていく姿だった。
私は、それを呆然と見ていることしか出来ない。
むせかえるような草木の香り。
そのまま激しい雨に打たれる。
身を打つ水の感触は生々しいものだった。
突如、後方からバタンと大きな音がした。
「ヒッ!」
慌てて私は振り返る。
そこで見たもの。
ひとりでに閉じた扉が、少しずつこの場から消えていく姿だった。
私は、それを呆然と見ていることしか出来ない。
250名無しの七森
2016/09/21(水) 00:45:42.76 やがて扉は完全に消失し、そこには一人雨に打たれる私だけが残った。
『もう暗闇の中へと戻ることはできない』
心の中で私はそれを認識した。
空の色が一層明るくなる。
オーロラのような波形がゆらゆらと、不思議な動きをする。
まるで海の揺らめきを見ているかのようだ。
そのうちあまりの明るさに目をあけていられなくなった。
『もう暗闇の中へと戻ることはできない』
心の中で私はそれを認識した。
空の色が一層明るくなる。
オーロラのような波形がゆらゆらと、不思議な動きをする。
まるで海の揺らめきを見ているかのようだ。
そのうちあまりの明るさに目をあけていられなくなった。
251名無しの七森
2016/09/21(水) 00:48:44.30 ーーー
ーー
ー
「……の………………やの………」
誰かの、声?
わたし、わたしは…………。
「綾乃!!」
「え!?」
ハッとして顔を上げる。
そこにあったのは……
「お母さん……?」
心配そうに私の顔を覗き込む、母の姿だった。
慌てて周囲を見渡す。
そこは見慣れた、自宅の玄関だった。
ーー
ー
「……の………………やの………」
誰かの、声?
わたし、わたしは…………。
「綾乃!!」
「え!?」
ハッとして顔を上げる。
そこにあったのは……
「お母さん……?」
心配そうに私の顔を覗き込む、母の姿だった。
慌てて周囲を見渡す。
そこは見慣れた、自宅の玄関だった。
252名無しの七森
2016/09/21(水) 00:51:56.74 「もう、やっと反応した! そんなにずぶ濡れになって……あなた、傘は持って行かなかったの?」
「え?」
母にそう言われ、自分の姿を確認する。
私の服はびっしょりと濡れていた。
まるで長時間雨に打たれたような、ひどい有様だった。
呆れたような口調で母が続ける。
「いいから、お風呂に入っちゃいなさい。着替えは用意しておいてあげるから」
「え、あ……うん……ごめんなさい……」
曖昧に返事をした私は、言われるがまま風呂場へと向かった。
風呂から上がった私は、
母に夕食はいらないと告げ、そのままベッドに潜り込んだ。
「え?」
母にそう言われ、自分の姿を確認する。
私の服はびっしょりと濡れていた。
まるで長時間雨に打たれたような、ひどい有様だった。
呆れたような口調で母が続ける。
「いいから、お風呂に入っちゃいなさい。着替えは用意しておいてあげるから」
「え、あ……うん……ごめんなさい……」
曖昧に返事をした私は、言われるがまま風呂場へと向かった。
風呂から上がった私は、
母に夕食はいらないと告げ、そのままベッドに潜り込んだ。
253名無しの七森
2016/09/21(水) 00:56:30.53 翌日、カーテンから差し込んだ光で私は目覚めた。
まだ、頭がボーッとする。
(夢、だったの……?)
昨日の出来事を思い出す。
気がついたら私は暗い空間にいて、
そこで鳥と会って、
最後にそこから抜け出して……
そこまで思い出して私は苦笑した。
あまりにも現実味がない。きっと夢だったのだろう。
ふらふらとした足取りでリビングへと向かう。
そこに家族の姿はなく、テーブルには1枚の書き置きがあった。
『用事があるので出掛けます。
キッチンのテーブルの上におにぎりがあるから食べること!
つらかったら今日は寝ていなさい。
母より』
それを読んでから今日が休日だったことを思い出した。
……確かに、体調はあまりよくないようだ。
おとなしく母に従うことにしよう。
まだ、頭がボーッとする。
(夢、だったの……?)
昨日の出来事を思い出す。
気がついたら私は暗い空間にいて、
そこで鳥と会って、
最後にそこから抜け出して……
そこまで思い出して私は苦笑した。
あまりにも現実味がない。きっと夢だったのだろう。
ふらふらとした足取りでリビングへと向かう。
そこに家族の姿はなく、テーブルには1枚の書き置きがあった。
『用事があるので出掛けます。
キッチンのテーブルの上におにぎりがあるから食べること!
つらかったら今日は寝ていなさい。
母より』
それを読んでから今日が休日だったことを思い出した。
……確かに、体調はあまりよくないようだ。
おとなしく母に従うことにしよう。
254名無しの七森
2016/09/21(水) 00:59:35.71 書き置きを読んだ私はキッチンへ向かった。
テーブルの上にはラップに包まれたおにぎり。
皿の上にちょこんと乗っていた。
ーーーーこれを食べたら寝てしまおう。
そう思いテーブルに近づいた。
瞬間。
それを目にした私は一瞬で意識が覚醒した。
「な、なんで…………!? 嘘でしょ!?」
昨夜、母に預けた鞄の中身だろうか。
テーブルのそこに置かれていたのは携帯電話と買ったばかりの参考書。
と。
見覚えのない、四角い物体。
テーブルの上にはラップに包まれたおにぎり。
皿の上にちょこんと乗っていた。
ーーーーこれを食べたら寝てしまおう。
そう思いテーブルに近づいた。
瞬間。
それを目にした私は一瞬で意識が覚醒した。
「な、なんで…………!? 嘘でしょ!?」
昨夜、母に預けた鞄の中身だろうか。
テーブルのそこに置かれていたのは携帯電話と買ったばかりの参考書。
と。
見覚えのない、四角い物体。
255名無しの七森
2016/09/21(水) 01:04:37.51 一気に呼吸が荒くなる。
目が、霞む。
震える手でそれに触れると、ひやりとした陶器のような感触。
見覚えのないそれを、私は確かに触った覚えがあった。
手に取ったそれをよく見ると、不自然に小さくへこんでいる部分を見つけた。
爪が、ひっかかりそうだ。
爪を立ててみると四角い物体……『箱』は容易に開いた。
中から出てきたのは、折り畳まれた1枚の紙片。
私はそれを広げる。
そこには緑のインクでびっしりと文字が書かれていた。
日本語だ。
読み、取れる。
読み取れて、しまう。
目が、霞む。
震える手でそれに触れると、ひやりとした陶器のような感触。
見覚えのないそれを、私は確かに触った覚えがあった。
手に取ったそれをよく見ると、不自然に小さくへこんでいる部分を見つけた。
爪が、ひっかかりそうだ。
爪を立ててみると四角い物体……『箱』は容易に開いた。
中から出てきたのは、折り畳まれた1枚の紙片。
私はそれを広げる。
そこには緑のインクでびっしりと文字が書かれていた。
日本語だ。
読み、取れる。
読み取れて、しまう。
256名無しの七森
2016/09/21(水) 01:06:44.14 『門の創造』
『空間と』
『空間を』
『繋げる』
『個と』
『個を』
『繋げる』
『門の創造』
私の異常体験は、まだ終わっていない。
『空間と』
『空間を』
『繋げる』
『個と』
『個を』
『繋げる』
『門の創造』
私の異常体験は、まだ終わっていない。
257名無しの七森
2016/09/21(水) 01:08:53.54 探索者名:杉浦綾乃
探索結果:生還
クリアボーナス:SAN値+6
クリアボーナス2:SAN値+4(条件:鳥の生存)
クリアボーナス3:SAN値+2(条件:箱を持ったまま生還)
クリアボーナス4:未達成(条件:暗闇に潜んだ神話生物2種の正体を見破る)
取得魔術:『門の創造』(取得中)
取得技能:クトゥルフ神話技能+2
原作
WaKaMuRa
若村(じゃくそん)様制作 『壁の中にいる』
終
探索結果:生還
クリアボーナス:SAN値+6
クリアボーナス2:SAN値+4(条件:鳥の生存)
クリアボーナス3:SAN値+2(条件:箱を持ったまま生還)
クリアボーナス4:未達成(条件:暗闇に潜んだ神話生物2種の正体を見破る)
取得魔術:『門の創造』(取得中)
取得技能:クトゥルフ神話技能+2
原作
WaKaMuRa
若村(じゃくそん)様制作 『壁の中にいる』
終
258名無しの七森
2016/09/21(水) 01:15:31.68 予定していたプロローグはこれで終わり
誤字脱字申し訳ない
ニコ動のとあるリプレイ動画に多大な影響を受けてます
誤字脱字申し訳ない
ニコ動のとあるリプレイ動画に多大な影響を受けてます
259名無しの七森
2016/09/21(水) 01:22:20.02 『壁の中にいる』はシナリオ改編がかなり著しいです
http://imgur.com/hdLpYJq.jpg
http://imgur.com/Ensn8pM.jpg
の画像を見てたら書きたくなったというか鳥関連はほぼ全て俺設定ですすみません
意識暗転系シナリオはこれで最後にしようかなと思ってます
思い出したころに続きを書くつもりなのでそのときはまたよろしくお願いします
http://imgur.com/hdLpYJq.jpg
http://imgur.com/Ensn8pM.jpg
の画像を見てたら書きたくなったというか鳥関連はほぼ全て俺設定ですすみません
意識暗転系シナリオはこれで最後にしようかなと思ってます
思い出したころに続きを書くつもりなのでそのときはまたよろしくお願いします
260名無しの七森
2016/09/21(水) 01:40:35.14 おもしろかった○
261名無しの七森
2016/09/21(水) 02:12:34.64 おつ!おもしろかったよ
262名無しの七森
2016/09/21(水) 02:17:46.02 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど なもり 同人
263名無しの七森
2016/09/21(水) 02:54:07.82 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど なもり 同人
264名無しの七森
2016/09/21(水) 06:31:53.47 いあ!いあ!ゆるゆり!
265名無しの七森
2016/09/21(水) 06:56:04.02 神話生物2種の正体は何だろ
266名無しの七森
2016/09/21(水) 07:11:13.18 トトロ
267名無しの七森
2016/09/21(水) 14:13:48.02 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど なもり 同人
268名無しの七森
2016/09/21(水) 17:31:53.13 なも!なも!なもりり!
269名無しの七森
2016/09/21(水) 17:54:13.95 モフ壁はツァトゥグア
周りの壁は無形の落とし子びっしり
周りの壁は無形の落とし子びっしり
270名無しの七森
2016/09/21(水) 17:58:07.11 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど なもり 同人
271名無しの七森
2016/09/21(水) 19:10:58.97 どうやったら神話生物2種を見破れたんだろ
272名無しの七森
2016/09/21(水) 19:55:59.41 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど なもり 同人
273名無しの七森
2016/09/21(水) 21:53:35.03 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど なもり 同人
274名無しの七森
2016/09/21(水) 22:12:40.64 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど なもり 同人
275名無しの七森
2016/09/21(水) 23:36:28.19 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど なもり 同人
276名無しの七森
2016/09/21(水) 23:58:32.28 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど なもり 同人
277名無しの七森
2016/09/22(木) 00:12:37.77 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど なもり 同人
278名無しの七森
2016/09/22(木) 01:00:34.96 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど なもり 同人
279名無しの七森
2016/09/22(木) 01:12:42.14 放置せずにやり切るのはえらい
面白かった
面白かった
280名無しの七森
2016/09/22(木) 07:28:01.28 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど なもり 同人
281名無しの七森
2016/09/22(木) 17:44:39.55 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど なもり 同人
282名無しの七森
2016/09/22(木) 17:44:56.34 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど なもり 同人
283名無しの七森
2016/09/22(木) 18:27:25.43 面白かったです!
読み応えのあるSS
読み応えのあるSS
284名無しの七森
2016/09/22(木) 19:54:20.85 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど なもり 同人
285名無しの七森
2016/09/22(木) 22:51:15.51 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど なもり 同人
286名無しの七森
2016/09/23(金) 01:55:56.27 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど なもり 同人
287名無しの七森
2016/09/23(金) 04:25:18.37 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど なもり 同人
288名無しの七森
2016/09/23(金) 05:44:30.45 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど なもり 同人
289名無しの七森
2016/09/23(金) 06:46:50.36 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど なもり 同人
290名無しの七森
2016/09/23(金) 07:34:45.49 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど なもり 同人
291名無しの七森
2016/09/23(金) 12:29:07.89 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど なもり 同人
292名無しの七森
2016/09/24(土) 00:33:42.96 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど なもり 同人
293名無しの七森
2016/09/24(土) 15:39:36.86 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど なもり 同人
294名無しの七森
2016/09/24(土) 20:43:27.94 歳納京子 あかり かわいい 学年1位 画像 トマト ラムレーズン
295名無しの七森
2016/09/25(日) 05:37:51.92 歳納京子 あかり かわいい 学年1位 画像 トマト ラムレーズン
296名無しの七森
2016/09/25(日) 12:21:31.67 歳納京子 あかり かわいい 学年1位 画像 トマト ラムレーズン
297名無しの七森
2016/09/25(日) 17:31:14.19 歳納京子 あかり かわいい 学年1位 画像 トマト ラムレーズン
298名無しの七森
2016/09/25(日) 18:13:42.12 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど なもり 同人
299名無しの七森
2016/09/25(日) 19:29:09.25 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど なもり 同人
300名無しの七森
2016/09/25(日) 23:40:15.39 歳納京子 あかり かわいい 学年1位 画像 トマト ラムレーズン
301名無しの七森
2016/09/25(日) 23:42:14.32 歳納京子 あかり かわいい 学年1位 画像 トマト ラムレーズン
302名無しの七森
2016/09/25(日) 23:50:03.87 歳納京子 あかり かわいい 学年1位 画像 トマト ラムレーズン
303名無しの七森
2016/09/26(月) 00:31:22.78 歳納京子 あかり かわいい 学年1位 画像 トマト ラムレーズン
304名無しの七森
2016/09/26(月) 00:59:22.62 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど なもり 同人
305名無しの七森
2016/09/26(月) 01:41:03.79 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど なもり 同人
306名無しの七森
2016/09/26(月) 02:05:11.03 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど なもり 同人
307名無しの七森
2016/09/26(月) 03:12:34.34 歳納京子 あかり かわいい 学年1位 画像 トマト ラムレーズン
308名無しの七森
2016/09/26(月) 05:32:16.89 歳納京子 あかり かわいい 学年1位 画像 トマト ラムレーズン
309名無しの七森
2016/09/26(月) 11:03:12.12 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど なもり 同人
310名無しの七森
2016/09/26(月) 12:58:34.18 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど なもり 同人
311名無しの七森
2016/09/26(月) 17:14:35.58 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど なもり 同人
312名無しの七森
2016/09/26(月) 18:18:03.52 歳納京子 あかり かわいい 学年1位 画像 トマト ラムレーズン
313名無しの七森
2016/09/26(月) 19:16:34.89 歳納京子 あかり かわいい 学年1位 画像 トマト ラムレーズン
314名無しの七森
2016/09/26(月) 19:44:56.70 歳納京子 あかり かわいい 学年1位 画像 トマト ラムレーズン
315名無しの七森
2016/09/26(月) 20:04:08.43 歳納京子 あかり かわいい 学年1位 画像 トマト ラムレーズン
316名無しの七森
2016/09/26(月) 20:09:24.29 歳納京子 あかり かわいい 学年1位 画像 トマト ラムレーズン
317名無しの七森
2016/09/26(月) 20:16:39.91 歳納京子 あかり かわいい 学年1位 画像 トマト ラムレーズン
318名無しの七森
2016/09/26(月) 20:32:08.83 歳納京子 あかり かわいい 学年1位 画像 トマト ラムレーズン
319名無しの七森
2016/09/27(火) 00:40:29.85 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど なもり 同人
320名無しの七森
2016/09/27(火) 00:49:31.85 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり
321名無しの七森
2016/09/27(火) 01:01:39.02 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり
322名無しの七森
2016/09/27(火) 15:15:28.78 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり
323名無しの七森
2016/09/27(火) 16:20:45.13 歳納京子 リア充 トマト かわいすぎ 声優 ss キャラソン 壁紙
324名無しの七森
2016/09/28(水) 00:25:50.11 歳納京子 リア充 トマト かわいすぎ 声優 ss キャラソン 壁紙
325名無しの七森
2016/09/28(水) 00:40:37.01 歳納京子 リア充 トマト かわいすぎ 声優 ss キャラソン 壁紙
326名無しの七森
2016/09/28(水) 10:42:47.38 歳納京子 あかり かわいい 学年1位 ラムレーズン キャラソン 画像
327名無しの七森
2016/09/28(水) 14:04:36.96 歳納京子 あかり かわいい 学年1位 ラムレーズン キャラソン 画像
328名無しの七森
2016/09/28(水) 17:13:34.93 歳納京子 あかり かわいい 学年1位 ラムレーズン キャラソン 画像
329名無しの七森
2016/09/28(水) 19:18:03.27 歳納京子 リア充 トマト かわいすぎ 声優 ss キャラソン 壁紙
330名無しの七森
2016/09/28(水) 20:45:27.55 廊下の窓から西日が差し込む。
こんなにも綺麗な夕日はいつぶりだろう。
私はガラにもなく足を止めそれに見入ってしまった。
視線を落とせば、校庭で運動部連中が元気に練習をしている。
このところ雨が続いて満足に練習出来なかった反動だろうか。
その鬱憤を晴らすかのように部員たちは声を張り上げていた。
(健全だなぁ……)
ーーー絶賛青春謳歌中。
帰宅部同然の私の目にはそれが少し眩しく見えた。
陸上部顧問の南野先生から直々に陸上部への勧誘を受けたとき、
なんだかんだ理由を付けて断ったものの、本心ではほんの少し揺れていた。
昔から身体を動かす事は得意だったし、実際入学したばかりの頃に一度、陸上部の見学にも行っている。
なにかが違えば、今ごろ私もあの輪の中に混ざっていたのかもしれない。
といっても、今の生活に不満を感じている訳ではないのだが。
幸い私は気のいい友人に恵まれている。
その友人達と共にモラトリアムを貪るのも、一つの青春だろう。
……物は言い様ではあるけど。
こんなにも綺麗な夕日はいつぶりだろう。
私はガラにもなく足を止めそれに見入ってしまった。
視線を落とせば、校庭で運動部連中が元気に練習をしている。
このところ雨が続いて満足に練習出来なかった反動だろうか。
その鬱憤を晴らすかのように部員たちは声を張り上げていた。
(健全だなぁ……)
ーーー絶賛青春謳歌中。
帰宅部同然の私の目にはそれが少し眩しく見えた。
陸上部顧問の南野先生から直々に陸上部への勧誘を受けたとき、
なんだかんだ理由を付けて断ったものの、本心ではほんの少し揺れていた。
昔から身体を動かす事は得意だったし、実際入学したばかりの頃に一度、陸上部の見学にも行っている。
なにかが違えば、今ごろ私もあの輪の中に混ざっていたのかもしれない。
といっても、今の生活に不満を感じている訳ではないのだが。
幸い私は気のいい友人に恵まれている。
その友人達と共にモラトリアムを貪るのも、一つの青春だろう。
……物は言い様ではあるけど。
331名無しの七森
2016/09/28(水) 20:52:04.23 新章きた!?
332名無しの七森
2016/09/28(水) 20:52:24.41 (っと、いかんいかん)
こんなところで油を売っている暇はない。
教室では彼女が待っているはずだ。
私は両手に抱えた大量のプリントを持ち直し、再び歩き始めた。
あの奇妙な夢を見てからすでに一ヶ月以上が経つ。
夢に出てきた怪物に突然襲われる!
……ということもなく、私はすっかり元の平凡な日常へと戻っていた。
このまま時間が経てば、あの夢はじきに記憶から失われていくのだろう。
………時間が経てば、の話だが。
雨が降ると、私は未だに思い出してしまう。
あの夜の事を。あの夢の事を。
(明日からはまた、雨だっけ……)
六月。
梅雨はまだ始まったばかりだ。
美しい夕日に照らされながら、私は足を進める。
こんなところで油を売っている暇はない。
教室では彼女が待っているはずだ。
私は両手に抱えた大量のプリントを持ち直し、再び歩き始めた。
あの奇妙な夢を見てからすでに一ヶ月以上が経つ。
夢に出てきた怪物に突然襲われる!
……ということもなく、私はすっかり元の平凡な日常へと戻っていた。
このまま時間が経てば、あの夢はじきに記憶から失われていくのだろう。
………時間が経てば、の話だが。
雨が降ると、私は未だに思い出してしまう。
あの夜の事を。あの夢の事を。
(明日からはまた、雨だっけ……)
六月。
梅雨はまだ始まったばかりだ。
美しい夕日に照らされながら、私は足を進める。
333名無しの七森
2016/09/28(水) 20:58:40.69 教室へ戻ると彼女は一人、席に座って作業に没頭していた。
茜色に染まった教室には私を除けば彼女一人しかいない。
彼女は作業に集中するあまり、私に気づいていないようだ。
少々声を掛けるのが憚られたが、そこまで気を使うほど知らぬ仲でもない。
「ただいま」
一言。
なるべく驚かせないようなトーンでそう言った。
そこで彼女はようやく私に気がついたようだ。
「おかえりなさい」
一言。
振り向いて彼女、杉浦綾乃はそう言った。
茜色に染まった教室には私を除けば彼女一人しかいない。
彼女は作業に集中するあまり、私に気づいていないようだ。
少々声を掛けるのが憚られたが、そこまで気を使うほど知らぬ仲でもない。
「ただいま」
一言。
なるべく驚かせないようなトーンでそう言った。
そこで彼女はようやく私に気がついたようだ。
「おかえりなさい」
一言。
振り向いて彼女、杉浦綾乃はそう言った。
334名無しの七森
2016/09/28(水) 21:01:20.55 「これ、ここに置いておくから」
私は手に抱えていたプリントを手近な机の上へと降ろした。
一枚一枚は軽いとは言え、量が量なのでそこそこ疲れた。
そのまま肩をほぐしていると、綾乃から「お疲れ様」と労いの言葉をかけられる。
「ごめんなさいね、手伝ってもらっちゃって」
「いや、これクラスの仕事だろ? 別に気にしなくていいよ」
私がそう言うと、綾乃は小さく笑って「ありがとう」と返した。
なんとなくむず痒くなった私は、綾乃の正面の席からイスを拝借してそこに腰掛けた。
「何か手伝えることがあれば、言ってもらえれば」
「ありがとう。でも大丈夫よ、もうすぐ終わるから」
そう言って再び作業に没頭し始める綾乃。
「そっか」とだけ返して、なんとなくその様子を眺める。
早い。
やはりこの手の作業は手慣れているのだろうなと感じた。
私なら倍の時間は掛かるかもしれない。
私は手に抱えていたプリントを手近な机の上へと降ろした。
一枚一枚は軽いとは言え、量が量なのでそこそこ疲れた。
そのまま肩をほぐしていると、綾乃から「お疲れ様」と労いの言葉をかけられる。
「ごめんなさいね、手伝ってもらっちゃって」
「いや、これクラスの仕事だろ? 別に気にしなくていいよ」
私がそう言うと、綾乃は小さく笑って「ありがとう」と返した。
なんとなくむず痒くなった私は、綾乃の正面の席からイスを拝借してそこに腰掛けた。
「何か手伝えることがあれば、言ってもらえれば」
「ありがとう。でも大丈夫よ、もうすぐ終わるから」
そう言って再び作業に没頭し始める綾乃。
「そっか」とだけ返して、なんとなくその様子を眺める。
早い。
やはりこの手の作業は手慣れているのだろうなと感じた。
私なら倍の時間は掛かるかもしれない。
335名無しの七森
2016/09/28(水) 21:07:52.38 放課後。
今日はごらく部の活動予定がなかったので早々に帰り支度をしていると、担任から呼び止められた。
正確には私や京子に向けてではなく、綾乃と千歳に向けてだろうが。
担任曰く
・クラス配布用の資料の作成と、倉庫整理の人員がそれぞれ一人ずつ欲しい
・資料作成は要点にマーカーを引いたり資料のホチキス止めをしたり、こまごまとした作業
・倉庫整理はそれぞれのクラスから人を集めて一気に行う、それが終わったら別の配布資料をそれぞれの教室まで持ち帰って欲しい
・おそらく二人それぞれ同じくらいの時間に終わるはず
とのこと。
チラリと担任の机に積まれた資料の山を見た。
とてもじゃないが、私や京子では時間内に終えられる気がしない。
綾乃か千歳が作業をすれば時間内にギリギリ、といったところだろうか。
半ば担任の思惑通りに資料作成は綾乃が受け持つことになった。
続いて「じゃあうちが………」とまで言いかけた千歳を私が制止。
力仕事を千歳にやらせるのはどうにも忍びなかった。
しばしの問答のあと、結局倉庫整理は私が引き受けることとなった。
……京子がいると余計に時間を喰う気がしたので、先に千歳と帰らせた。これはいい判断だったと思う。
今日はごらく部の活動予定がなかったので早々に帰り支度をしていると、担任から呼び止められた。
正確には私や京子に向けてではなく、綾乃と千歳に向けてだろうが。
担任曰く
・クラス配布用の資料の作成と、倉庫整理の人員がそれぞれ一人ずつ欲しい
・資料作成は要点にマーカーを引いたり資料のホチキス止めをしたり、こまごまとした作業
・倉庫整理はそれぞれのクラスから人を集めて一気に行う、それが終わったら別の配布資料をそれぞれの教室まで持ち帰って欲しい
・おそらく二人それぞれ同じくらいの時間に終わるはず
とのこと。
チラリと担任の机に積まれた資料の山を見た。
とてもじゃないが、私や京子では時間内に終えられる気がしない。
綾乃か千歳が作業をすれば時間内にギリギリ、といったところだろうか。
半ば担任の思惑通りに資料作成は綾乃が受け持つことになった。
続いて「じゃあうちが………」とまで言いかけた千歳を私が制止。
力仕事を千歳にやらせるのはどうにも忍びなかった。
しばしの問答のあと、結局倉庫整理は私が引き受けることとなった。
……京子がいると余計に時間を喰う気がしたので、先に千歳と帰らせた。これはいい判断だったと思う。
336名無しの七森
2016/09/28(水) 21:15:45.69 「最近綾乃ちゃん、元気ないんよ……」
ふと、別れ際に千歳が言った言葉を思い出す。
さっそく作業を開始した綾乃を教室に残し、うだうだ文句を言う京子をあやしながら3人で昇降口まで向かっているとき。
千歳が神妙な面持ちでそう呟いた。
「え、綾乃が? う〜ん……いつも通りに見えたけどなぁ」
腕を組んで首を傾げる京子。
いつも通りの杉浦綾乃、特に気になるようなところはない。
私も京子と同意見だった。
しかし、変わらぬ面持ちで千歳は続ける。
「うん、うちの思い過ごしならええんやけどな。でも、たまにどこか遠くを見て考え事しとるみたいで……」
「それはいつから?」
私がそう促すと千歳は少し考え込む素振りを見せる。
そして、しばしの沈黙の後こう答えた。
「えっと、一ヶ月くらい前かなぁ。ほら、船見さん、前に風邪引いて学校休んだやろ? あの時くらいからやったと思う」
ふと、別れ際に千歳が言った言葉を思い出す。
さっそく作業を開始した綾乃を教室に残し、うだうだ文句を言う京子をあやしながら3人で昇降口まで向かっているとき。
千歳が神妙な面持ちでそう呟いた。
「え、綾乃が? う〜ん……いつも通りに見えたけどなぁ」
腕を組んで首を傾げる京子。
いつも通りの杉浦綾乃、特に気になるようなところはない。
私も京子と同意見だった。
しかし、変わらぬ面持ちで千歳は続ける。
「うん、うちの思い過ごしならええんやけどな。でも、たまにどこか遠くを見て考え事しとるみたいで……」
「それはいつから?」
私がそう促すと千歳は少し考え込む素振りを見せる。
そして、しばしの沈黙の後こう答えた。
「えっと、一ヶ月くらい前かなぁ。ほら、船見さん、前に風邪引いて学校休んだやろ? あの時くらいからやったと思う」
337名無しの七森
2016/09/28(水) 21:22:24.55 「あー! あったあった! みんなで風邪っ引き結衣のお見舞いに行ったときっしょ?」
はしゃぐ京子とは対照的に、私は固まった。
一ヶ月、前?
背中にひやりと冷たいものが走る。
一ヶ月前、私があの夢を見た夜。
それと同じ時期から綾乃の様子がおかしい。千歳はそう言う。
これは偶然なのか、それとも。
「うん。せやから、船見さん……」
「……わかった。それとなく綾乃に聞いてみるよ」
私で力になれるかどうかは分からないけど、小さくそう付け加えて言った。
それを聞いた千歳はいくらか安心した様な表情になる。
……千歳も随分悩んでいたのだと、この時ようやく気がついた。
友人二人の変化を悟れなかった自分が情けない。
京子に耳打ちして、千歳のフォローは京子に任せることにした。
この時ばかりは無駄に自信に満ちたサムズアップが頼もしく見えた。
二人を見送り、
私は重い足取りで指定された倉庫へと向かった。
はしゃぐ京子とは対照的に、私は固まった。
一ヶ月、前?
背中にひやりと冷たいものが走る。
一ヶ月前、私があの夢を見た夜。
それと同じ時期から綾乃の様子がおかしい。千歳はそう言う。
これは偶然なのか、それとも。
「うん。せやから、船見さん……」
「……わかった。それとなく綾乃に聞いてみるよ」
私で力になれるかどうかは分からないけど、小さくそう付け加えて言った。
それを聞いた千歳はいくらか安心した様な表情になる。
……千歳も随分悩んでいたのだと、この時ようやく気がついた。
友人二人の変化を悟れなかった自分が情けない。
京子に耳打ちして、千歳のフォローは京子に任せることにした。
この時ばかりは無駄に自信に満ちたサムズアップが頼もしく見えた。
二人を見送り、
私は重い足取りで指定された倉庫へと向かった。
338名無しの七森
2016/09/28(水) 21:23:36.46 おっ続きが来てる
339名無しの七森
2016/09/28(水) 21:26:56.27 夕暮れに染まった教室。
私は黙々と作業を続ける綾乃を見ていた。
「それとなく聞いてみる」とは言ってみたものの、どう切り出せばいいものか。
目の前の彼女はやはり普段と変わらぬ様子に見えた。
校庭で運動部が練習する声。
チラリと窓の外を見る。
カチカチと教室内の時計の針が進む音。
チラリと時計を見る。
なにをやっているんだ、私は。
しばし無為な葛藤を続けていると、
やがて綾乃はペンを置き、そのまま小さく伸びをした。
「ふぅ、お待たせ船見さん。これで全部終わったわ」
「あ、ああ。うん、お疲れ様」
少し上擦ったような間抜けな声を出してしまった。
きょとんとした顔で「大丈夫?」と綾乃。
ーーー逆に心配させてどうする!
私はそれに曖昧に返事をした。
恥じらいから赤くなった頬が熱い。
私は黙々と作業を続ける綾乃を見ていた。
「それとなく聞いてみる」とは言ってみたものの、どう切り出せばいいものか。
目の前の彼女はやはり普段と変わらぬ様子に見えた。
校庭で運動部が練習する声。
チラリと窓の外を見る。
カチカチと教室内の時計の針が進む音。
チラリと時計を見る。
なにをやっているんだ、私は。
しばし無為な葛藤を続けていると、
やがて綾乃はペンを置き、そのまま小さく伸びをした。
「ふぅ、お待たせ船見さん。これで全部終わったわ」
「あ、ああ。うん、お疲れ様」
少し上擦ったような間抜けな声を出してしまった。
きょとんとした顔で「大丈夫?」と綾乃。
ーーー逆に心配させてどうする!
私はそれに曖昧に返事をした。
恥じらいから赤くなった頬が熱い。
340名無しの七森
2016/09/28(水) 21:31:56.60 「最後に二つの資料を先生の机に置いておけばいいんですって」
綾乃が言うにはこのあと職員会議があるらしく、担任には報告せずそのまま帰ってもいいらしい。
そんないい加減でいいのか?と聞いてみると、どうやら以前にもこういう事があったのだという。
そういえば去年綾乃のクラスを担当していたのもあの先生だという事を思い出した。
……なんだかなぁ。
苦笑する綾乃に向かって言う。
「ああ、じゃあ私が運ぶよ」
「ううん、半分持つわ」
そう言って綾乃は先程まで作成していた資料をテキパキとまとめだした。
……結局、綾乃ばかりが働いていたような気がする。
なら、せめて重い方は私が持とう。
そう思って席を立ったのと同時に、音が鳴り響いた。
綾乃が言うにはこのあと職員会議があるらしく、担任には報告せずそのまま帰ってもいいらしい。
そんないい加減でいいのか?と聞いてみると、どうやら以前にもこういう事があったのだという。
そういえば去年綾乃のクラスを担当していたのもあの先生だという事を思い出した。
……なんだかなぁ。
苦笑する綾乃に向かって言う。
「ああ、じゃあ私が運ぶよ」
「ううん、半分持つわ」
そう言って綾乃は先程まで作成していた資料をテキパキとまとめだした。
……結局、綾乃ばかりが働いていたような気がする。
なら、せめて重い方は私が持とう。
そう思って席を立ったのと同時に、音が鳴り響いた。
341名無しの七森
2016/09/28(水) 21:34:40.64 窓の外を見やる。
それは17時の訪れを知らせる街のチャイムだった。
やけにタイミング良く鳴ったそれに、気持ちが悪いような、妙な感覚を覚える。
つい聴き入ってしまっていると、ふいに前方からバサバサバサと、紙が擦れる音。
それにつられて私も前を向く。
「綾乃……?」
床と机の上には先程まで綾乃がまとめていた資料が散らばっていた。
そして。
なにかを手に抱えたような体勢のまま、硬直する綾乃。
「ッ!? 綾乃!」
慌てて側まで駆け寄る。
綾乃は顔を伏せ、身体を小さく震わせていた。
それは17時の訪れを知らせる街のチャイムだった。
やけにタイミング良く鳴ったそれに、気持ちが悪いような、妙な感覚を覚える。
つい聴き入ってしまっていると、ふいに前方からバサバサバサと、紙が擦れる音。
それにつられて私も前を向く。
「綾乃……?」
床と机の上には先程まで綾乃がまとめていた資料が散らばっていた。
そして。
なにかを手に抱えたような体勢のまま、硬直する綾乃。
「ッ!? 綾乃!」
慌てて側まで駆け寄る。
綾乃は顔を伏せ、身体を小さく震わせていた。
342名無しの七森
2016/09/28(水) 21:38:41.10 「おい! どうした綾乃! 綾乃!!」
必死に声を掛け、肩を揺する。
ーーー何があった!? 原因は!?
しばらく私の呼び掛けに反応を示さなかった綾乃だったが、
突然ハッとしたような表情を浮かべたあと、ゆっくりと私の方を向いた。
「あ…………船見、さん……?」
その顔は真っ青で、額には汗が滲んでいた。
綾乃が意識を取り戻した事に、私はひとまず安堵した。
……やはり千歳は凄い。
綾乃のことを、よく分かっている。
私は綾乃の肩に手を置いたまま、目を真っ直ぐに見て言った。
「単刀直入に言うよ。綾乃……『なにがあった』の?」
部活の音も。時計の音も。
その時の私には聞こえていなかった。
必死に声を掛け、肩を揺する。
ーーー何があった!? 原因は!?
しばらく私の呼び掛けに反応を示さなかった綾乃だったが、
突然ハッとしたような表情を浮かべたあと、ゆっくりと私の方を向いた。
「あ…………船見、さん……?」
その顔は真っ青で、額には汗が滲んでいた。
綾乃が意識を取り戻した事に、私はひとまず安堵した。
……やはり千歳は凄い。
綾乃のことを、よく分かっている。
私は綾乃の肩に手を置いたまま、目を真っ直ぐに見て言った。
「単刀直入に言うよ。綾乃……『なにがあった』の?」
部活の音も。時計の音も。
その時の私には聞こえていなかった。
343名無しの七森
2016/09/28(水) 21:43:51.24 また間が開きます
ごめんなさい
ごめんなさい
344名無しの七森
2016/09/28(水) 22:06:41.40 おつつ
345名無しの七森
2016/09/28(水) 22:22:13.01 この展開はまさかの結綾…
346名無しの七森
2016/09/28(水) 22:44:25.96 これは期待
347名無しの七森
2016/09/28(水) 23:00:12.84 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり
348名無しの七森
2016/09/29(木) 04:32:22.86 更新きとるやんけよっしゃ
349名無しの七森
2016/09/29(木) 06:40:50.72 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど なもり 同人
350名無しの七森
2016/09/29(木) 14:23:21.01 まさかの更新
ありがとうございます
ありがとうございます
351名無しの七森
2016/09/29(木) 18:58:35.13 歳納京子 あかり かわいい 学年1位 ラムレーズン トメイトゥ 画像
352名無しの七森
2016/09/30(金) 11:43:28.92 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど なもり イケメン
353名無しの七森
2016/10/01(土) 11:53:03.33 歳納京子 リア充 トマト かわいすぎ 声優 ss 壁紙 キャラソン
354名無しの七森
2016/10/01(土) 12:46:05.60 歳納京子 あかり かわいい 学年1位 ラムレーズン トメイトゥ 画像
355名無しの七森
2016/10/01(土) 14:17:14.41 歳納京子 あかり かわいい 学年1位 ラムレーズン トメイトゥ 画像
356名無しの七森
2016/10/01(土) 15:59:01.67 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど なもり イケメン
357名無しの七森
2016/10/01(土) 17:07:27.46 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど なもり イケメン
358名無しの七森
2016/10/01(土) 17:39:08.26 「綾乃……なにがあったの?」
ーーー悟られてしまった。
私の内に芽生えた狂気。
それを誰にも悟られぬよう生活していたのに。
我ながら上手くカモフラージュ出来ていたと思う。
両親や一番の友人、千歳ですら気づけぬよう、細心の注意を払っていたつもりだった。
船見さんは私の目を真っ直ぐ見つめている。
その目からは本気で私を心配してくれているかのような、強い意思を感じた。
ただ、今の私はそれを見ているのが辛くて。
そっと目を反らす。
ーーー悟られてしまった。
私の内に芽生えた狂気。
それを誰にも悟られぬよう生活していたのに。
我ながら上手くカモフラージュ出来ていたと思う。
両親や一番の友人、千歳ですら気づけぬよう、細心の注意を払っていたつもりだった。
船見さんは私の目を真っ直ぐ見つめている。
その目からは本気で私を心配してくれているかのような、強い意思を感じた。
ただ、今の私はそれを見ているのが辛くて。
そっと目を反らす。
359名無しの七森
2016/10/01(土) 17:41:47.07 (言えるわけ、ないじゃない……)
チャイムの音が恐ろしく感じられるようになったのは、あの事件のあとからだった。
奇異体験の始まりを告げるかのように、静かすぎる街に鳴り響いたメロディー。
……それが鮮烈に脳裏に焼き付いてしまっていた。
一種のトラウマのようなものだと、自分では思っている。
17時が近づくと音に備えて身構えるのがすでに習慣となっていた。
事前に認識していれば先ほどのような醜態を晒すことはない。
しかし、今日は作業に集中するあまりそれを怠ってしまった。
不意を、つかれた。
夕暮れの教室。
船見さんの視線が痛いほど私に突き刺さる。
チャイムの音が恐ろしく感じられるようになったのは、あの事件のあとからだった。
奇異体験の始まりを告げるかのように、静かすぎる街に鳴り響いたメロディー。
……それが鮮烈に脳裏に焼き付いてしまっていた。
一種のトラウマのようなものだと、自分では思っている。
17時が近づくと音に備えて身構えるのがすでに習慣となっていた。
事前に認識していれば先ほどのような醜態を晒すことはない。
しかし、今日は作業に集中するあまりそれを怠ってしまった。
不意を、つかれた。
夕暮れの教室。
船見さんの視線が痛いほど私に突き刺さる。
360名無しの七森
2016/10/01(土) 17:48:21.68 沈黙が苦しい。
船見さんからそれ以上の言葉はなかった。
ただ静かに私の返答を待っている。
間髪入れずに「なんでもないわ、大丈夫よ」とでも言っておけばよかった。
ーーーちょっと驚いただけ。さぁ帰りましょう。
これでだけで済んだかもしれないのに。
どうして私は肝心なところで機転が利かないのだろう。
別に船見さんが嫌いだとか、信用できないだとか、そんなことはない。
むしろ、その逆。
船見さんは思いやりのあるいい人だ。
さっきだって、千歳を気遣って自ら率先して仕事を引き受けてくれていた。
一見クールなように見えて常に周りに気を配っている。
そういうところが素敵だと思うし、私もそうであれたらと羨ましく思う。
友人……だと思っている。私だけかもしれないけれど。
ただ、それとこれとは話が別だ。
例え相手が誰であっても話すことはできない。
むしろ親しい人であればあるほど、話すわけにはいかない。
特に、あの魔術については。
誰にも話さず、譲渡せずに、私一人で抱え込まなければならない。
好奇心を抑え切れずに、危険と分かっていたにも関わらず。
しばらく眠ることも忘れて、記述を読みふけってしまった、私の責任なのだから。
船見さんからそれ以上の言葉はなかった。
ただ静かに私の返答を待っている。
間髪入れずに「なんでもないわ、大丈夫よ」とでも言っておけばよかった。
ーーーちょっと驚いただけ。さぁ帰りましょう。
これでだけで済んだかもしれないのに。
どうして私は肝心なところで機転が利かないのだろう。
別に船見さんが嫌いだとか、信用できないだとか、そんなことはない。
むしろ、その逆。
船見さんは思いやりのあるいい人だ。
さっきだって、千歳を気遣って自ら率先して仕事を引き受けてくれていた。
一見クールなように見えて常に周りに気を配っている。
そういうところが素敵だと思うし、私もそうであれたらと羨ましく思う。
友人……だと思っている。私だけかもしれないけれど。
ただ、それとこれとは話が別だ。
例え相手が誰であっても話すことはできない。
むしろ親しい人であればあるほど、話すわけにはいかない。
特に、あの魔術については。
誰にも話さず、譲渡せずに、私一人で抱え込まなければならない。
好奇心を抑え切れずに、危険と分かっていたにも関わらず。
しばらく眠ることも忘れて、記述を読みふけってしまった、私の責任なのだから。
361名無しの七森
2016/10/01(土) 17:55:03.68 沈黙は続く。
私は何と答えればいいのだろう。
私がこのままはぐらかせば、船見さんは無理に追求しては来ない気がする。
彼女は優しい人だから。
でも、秘密を抱えたまま彼女とこのまま友人でいられるだろうか。
いくら頭の中で考えてみても肝心の言葉が出てこない。
……この期に及んで、私は自分の事しか考えていない。
この沈黙は永遠に続くのではないか。
そう思ったとき、ピーとよく通るホイッスルの音が鳴った。
続いて何人かの笑い声が聞こえてくる。
陸上部かテニス部の休憩時間、だと思う。
私への視線を外し、代わりに窓の外を見る船見さんの気配。
それに少しホッとしてしまった自分が、嫌だった。
ふと私の肩から重みがなくなる。
顔を上げると、私が床に散らした資料。
船見さんがしゃがんで、それを拾い始めていた。
「あ……」
「いいよ、座ってて」
ーーその声色は優しくて。
ーーその優しさすら無下にしている自分がひどく醜く思えて。
私はまた、顔を伏せた。
私は何と答えればいいのだろう。
私がこのままはぐらかせば、船見さんは無理に追求しては来ない気がする。
彼女は優しい人だから。
でも、秘密を抱えたまま彼女とこのまま友人でいられるだろうか。
いくら頭の中で考えてみても肝心の言葉が出てこない。
……この期に及んで、私は自分の事しか考えていない。
この沈黙は永遠に続くのではないか。
そう思ったとき、ピーとよく通るホイッスルの音が鳴った。
続いて何人かの笑い声が聞こえてくる。
陸上部かテニス部の休憩時間、だと思う。
私への視線を外し、代わりに窓の外を見る船見さんの気配。
それに少しホッとしてしまった自分が、嫌だった。
ふと私の肩から重みがなくなる。
顔を上げると、私が床に散らした資料。
船見さんがしゃがんで、それを拾い始めていた。
「あ……」
「いいよ、座ってて」
ーーその声色は優しくて。
ーーその優しさすら無下にしている自分がひどく醜く思えて。
私はまた、顔を伏せた。
362名無しの七森
2016/10/01(土) 18:02:07.81 「夢」
「え……」
資料を拾いながら、船見さんが小さく呟いた。
こちらに背を向けているせいで、その表情は伺えない。
「独り言だと思って」と一言置いて、彼女は続ける。
「一ヶ月くらい前、夢を見たんだ」
なんの話だろう。
立ち上がった船見さんは手に持った紙の束を机の上で整え始める。
相変わらず背は向けたままだ。
「その日は雨が降ってた」
淡々とした口調。
私が作ったものと、船見さんが持ってきてくれたもの。
二つの資料を重ねて腕に抱えると、そのまま歩き出す。
「夢の中では私は……よっと」
抱えていたそれを先生の机へと置いた。
「ふぅ」と一息ついて肩をほぐす船見さん。
その姿から、目が離せない。
反転してこちらへ戻ってきた彼女は元の席へと座った。
二人、向き合う形となる。
「見たこともない部屋の中にいた」
船見さんは静かに語り始めた。
夕日に照らされた船見さんの表情は柔らかかったものの、その目は笑っていなかった。
「え……」
資料を拾いながら、船見さんが小さく呟いた。
こちらに背を向けているせいで、その表情は伺えない。
「独り言だと思って」と一言置いて、彼女は続ける。
「一ヶ月くらい前、夢を見たんだ」
なんの話だろう。
立ち上がった船見さんは手に持った紙の束を机の上で整え始める。
相変わらず背は向けたままだ。
「その日は雨が降ってた」
淡々とした口調。
私が作ったものと、船見さんが持ってきてくれたもの。
二つの資料を重ねて腕に抱えると、そのまま歩き出す。
「夢の中では私は……よっと」
抱えていたそれを先生の机へと置いた。
「ふぅ」と一息ついて肩をほぐす船見さん。
その姿から、目が離せない。
反転してこちらへ戻ってきた彼女は元の席へと座った。
二人、向き合う形となる。
「見たこともない部屋の中にいた」
船見さんは静かに語り始めた。
夕日に照らされた船見さんの表情は柔らかかったものの、その目は笑っていなかった。
363名無しの七森
2016/10/01(土) 18:09:17.76 ーーー
ーー
ー
「……で、目が覚めた。確認したら、足はなんともなかったんだけどね。おしまい」
船見さんは左ももを軽くさすりながら、自嘲するかのように小さく笑った。
そして「退屈だった?」と私に問いかける。
言葉に、ならない。
六月も中旬に差し掛かろうというのに、肌寒さすら感じる。
船見さんは最初に夢の話だと言っていた。
血のスープの話。
死体を触った話。
自らの足にナイフを突き立てた話。
毒を飲み、もがき苦しんだ話。
ーーーどれも描写が鮮明すぎる!
まるで本当に経験したかのようなリアリティがあった。
渇いた喉から、なんとか声をしぼり出す。
「…………この話は、私以外の誰かに……」
「綾乃にしか話してないよ」
「どうして!?」
反射的にイスから立ちあがり声を荒げる。
なぜ私にだけ? なぜこのタイミングで?
理解が、追いつかない。
船見さんはスッと顔を上げ、私と目線を合わせる。
彼女の顔からは笑みが消えていた。
「話さなきゃ、いけない気がしたから」
窓の外からは先ほど聞いたホイッスルの音と、何人かが不満を漏らすような声が聞こえた。
ーー
ー
「……で、目が覚めた。確認したら、足はなんともなかったんだけどね。おしまい」
船見さんは左ももを軽くさすりながら、自嘲するかのように小さく笑った。
そして「退屈だった?」と私に問いかける。
言葉に、ならない。
六月も中旬に差し掛かろうというのに、肌寒さすら感じる。
船見さんは最初に夢の話だと言っていた。
血のスープの話。
死体を触った話。
自らの足にナイフを突き立てた話。
毒を飲み、もがき苦しんだ話。
ーーーどれも描写が鮮明すぎる!
まるで本当に経験したかのようなリアリティがあった。
渇いた喉から、なんとか声をしぼり出す。
「…………この話は、私以外の誰かに……」
「綾乃にしか話してないよ」
「どうして!?」
反射的にイスから立ちあがり声を荒げる。
なぜ私にだけ? なぜこのタイミングで?
理解が、追いつかない。
船見さんはスッと顔を上げ、私と目線を合わせる。
彼女の顔からは笑みが消えていた。
「話さなきゃ、いけない気がしたから」
窓の外からは先ほど聞いたホイッスルの音と、何人かが不満を漏らすような声が聞こえた。
364名無しの七森
2016/10/01(土) 18:17:04.10 私はそのままの姿勢で立ち尽くす。
船見さんはじっと私の目を見つめている。
今、私はどんな顔をしているのだろう。
彼女の目的が、見えない。
彼女はゆっくりと口を開く。
「とりあえず、座りなよ」
「あ………ご、ごめんなさい……」
私は言われるがままにイスに座った。
先ほどの自分の行動を思い出す。
……取り乱しすぎだ。
ほとんど「後ろめたいことがあります」と言っているようなものじゃない。
これではもう、なんでもないは通りそうにない。
そんな私を見てか。
表情をいくらかやわらげて、船見さんは言う。
「いや、脅かすつもりはなかったんだ……こっちこそ、ごめん」
あんな話をしておいてなんだけど、そう付け加えて言う。
私はうなだれるしかなかった。
膝の上で丸めた拳をじっと見る。
少し間をおいて、船見さんは続ける。
船見さんはじっと私の目を見つめている。
今、私はどんな顔をしているのだろう。
彼女の目的が、見えない。
彼女はゆっくりと口を開く。
「とりあえず、座りなよ」
「あ………ご、ごめんなさい……」
私は言われるがままにイスに座った。
先ほどの自分の行動を思い出す。
……取り乱しすぎだ。
ほとんど「後ろめたいことがあります」と言っているようなものじゃない。
これではもう、なんでもないは通りそうにない。
そんな私を見てか。
表情をいくらかやわらげて、船見さんは言う。
「いや、脅かすつもりはなかったんだ……こっちこそ、ごめん」
あんな話をしておいてなんだけど、そう付け加えて言う。
私はうなだれるしかなかった。
膝の上で丸めた拳をじっと見る。
少し間をおいて、船見さんは続ける。
365名無しの七森
2016/10/01(土) 18:21:13.83 「もし、もしね。さっき私が話した嘘みたいな話。それと同じような話を綾乃が知っていたらさ。聞かせて欲しいんだ」
その口調は、普段の彼女と変わらない、優しいものだった。
船見さんはなにかに気づいている。
そして先ほどの『スープの夢』の話。
私にはそれが作り話だとは到底思えなかった。
ーーー彼女も、私と、同じなのか。
彼女も、名状しがたい狂気に追われていたというのだろうか。
「私は……」
………どうすればいいの?
言葉は最後まで出てこなかった。
拳をさらに強く握る。
私は揺れていた。
誰も信じてくれないような与太話。
鼻で笑われるか、いたずらに怖がらせるだけか。
私一人で抱えるしかないと思っていた、あの日の出来事。
ーーーそれを、話してもいいの?
その口調は、普段の彼女と変わらない、優しいものだった。
船見さんはなにかに気づいている。
そして先ほどの『スープの夢』の話。
私にはそれが作り話だとは到底思えなかった。
ーーー彼女も、私と、同じなのか。
彼女も、名状しがたい狂気に追われていたというのだろうか。
「私は……」
………どうすればいいの?
言葉は最後まで出てこなかった。
拳をさらに強く握る。
私は揺れていた。
誰も信じてくれないような与太話。
鼻で笑われるか、いたずらに怖がらせるだけか。
私一人で抱えるしかないと思っていた、あの日の出来事。
ーーーそれを、話してもいいの?
366名無しの七森
2016/10/01(土) 18:28:17.11 夕暮れの教室に再び沈黙が訪れた。
ただし、その沈黙は先ほどのものとはまた意味合いが違うもので。
やがて静かに彼女が切り出す。
「知らなかったら、それでいいよ。私からは、もうなにも言わないから」
ハッと顔を上げ、彼女の顔を見る。
やはりそこには普段と変わらぬ彼女の顔があった。
話すも自由。黙るも自由。
船見さんは、発言のすべてを私にゆだねてくれている。
「わ、私は……!」
『これを逃せばもう機会はない』
彼女の言葉をそう捉えてしまった。
そして今、私はそれをひどく恐れている。
ーーー私は、この話を誰かに聞いて欲しいのだと。
……そう気づいてしまった。
「…………知って、いるわ。ひとつだけ」
限界だった。
思い出すのは一ヶ月前の、あの日のこと。
ただし、その沈黙は先ほどのものとはまた意味合いが違うもので。
やがて静かに彼女が切り出す。
「知らなかったら、それでいいよ。私からは、もうなにも言わないから」
ハッと顔を上げ、彼女の顔を見る。
やはりそこには普段と変わらぬ彼女の顔があった。
話すも自由。黙るも自由。
船見さんは、発言のすべてを私にゆだねてくれている。
「わ、私は……!」
『これを逃せばもう機会はない』
彼女の言葉をそう捉えてしまった。
そして今、私はそれをひどく恐れている。
ーーー私は、この話を誰かに聞いて欲しいのだと。
……そう気づいてしまった。
「…………知って、いるわ。ひとつだけ」
限界だった。
思い出すのは一ヶ月前の、あの日のこと。
367名無しの七森
2016/10/01(土) 18:31:29.16 見てる
368名無しの七森
2016/10/01(土) 18:36:18.16 「私が見た夢の話なんだけどね」
「私と一緒だね」
「私は夢は夕方だったわ。駅前の本屋で参考書を買ったの」
「紀〇国屋?」
「うん、そこよ。それでね、雨が降りそうだったから急いで家に帰ろうとして、途中で信号に捕まったの」
「あのなかなか変わらない信号だな」
「やになっちゃうわよね。そこでずーっと待ってたんだけど」
「うん」
「車がね、一台も通らなかったの。夕方なのに」
「……うん」
「でもその時は別になんとも思わなかったのよね。おかしいな、と思ったのは大通りに出たとき」
「うん」
「ひ、人の姿がね……どこにも見当たらなくて……車の音すら聞こえなくて……」
「……うん」
「私怖くなっちゃって……そしたら、ちょうど17時のチャ、チャイムが……」
「………それで?」
「家まで走って……ヒッ……ドアを開けたら……突然、意識が…………」
「うん……」
「……ック…………おきたら………おきたらね……真っ暗で……な、なにも……みえなくて……」
「私と一緒だね」
「私は夢は夕方だったわ。駅前の本屋で参考書を買ったの」
「紀〇国屋?」
「うん、そこよ。それでね、雨が降りそうだったから急いで家に帰ろうとして、途中で信号に捕まったの」
「あのなかなか変わらない信号だな」
「やになっちゃうわよね。そこでずーっと待ってたんだけど」
「うん」
「車がね、一台も通らなかったの。夕方なのに」
「……うん」
「でもその時は別になんとも思わなかったのよね。おかしいな、と思ったのは大通りに出たとき」
「うん」
「ひ、人の姿がね……どこにも見当たらなくて……車の音すら聞こえなくて……」
「……うん」
「私怖くなっちゃって……そしたら、ちょうど17時のチャ、チャイムが……」
「………それで?」
「家まで走って……ヒッ……ドアを開けたら……突然、意識が…………」
「うん……」
「……ック…………おきたら………おきたらね……真っ暗で……な、なにも……みえなくて……」
369名無しの七森
2016/10/01(土) 18:38:19.77 ポツリ ポツリと。
私の口から言葉が紡がれる。
嗚咽と共に出た言葉はひどく断片的で、要領を得なかったかもしれない。
船見さんはその言葉ひとつひとつに相槌を打ちながら、最後まで聞いてくれた。
途中堪えきれなくなり、私は机に突っ伏して泣いてしまった。
今まで必死に塞き止めていたものがどんどん流れ出ていく。
それをどうにかする手段はなくて。
子供のように、声に出して泣いた。
先を急かすでもなく、ただ待つのでもなく。
船見さんが選んだのは正面からの包容だった。
ーーーそれは暖かくて、いいにおいがして。
暗闇の中でのこと。
壁の中でなにかがうごめいていたこと。
鳥のこと。
壁が消えてしまったこと。
気がついたら家にいたこと。
箱を……持ってきてしまったこと。
私は彼女の腕の中ですべてを話した。
私の口から言葉が紡がれる。
嗚咽と共に出た言葉はひどく断片的で、要領を得なかったかもしれない。
船見さんはその言葉ひとつひとつに相槌を打ちながら、最後まで聞いてくれた。
途中堪えきれなくなり、私は机に突っ伏して泣いてしまった。
今まで必死に塞き止めていたものがどんどん流れ出ていく。
それをどうにかする手段はなくて。
子供のように、声に出して泣いた。
先を急かすでもなく、ただ待つのでもなく。
船見さんが選んだのは正面からの包容だった。
ーーーそれは暖かくて、いいにおいがして。
暗闇の中でのこと。
壁の中でなにかがうごめいていたこと。
鳥のこと。
壁が消えてしまったこと。
気がついたら家にいたこと。
箱を……持ってきてしまったこと。
私は彼女の腕の中ですべてを話した。
370名無しの七森
2016/10/01(土) 18:47:10.96 ーーー
ーー
ー
「……船見さん」
腕の中の彼女から呼び掛けられる。
彼女の話が終わったあとも、二人はしばらくこの体勢でいた。
私はそっと彼女へ寄せていた身体を引く。
「もういいの?」
「うん。ありがとう」
そう言って彼女、杉浦綾乃は小さく笑う。
その笑顔は教室で最初に見たものより、ずっと素敵に見えた。
『壁の中』にいた話。
大方の予想通り、綾乃の心を覆っていた黒い影の正体は人知を越えた類いのものだった。
綾乃がチャイムの音に激しく怯えていたことにも合点がいった。
この話を笑い飛ばすことは、私には出来ない。
私にとって決して聞き逃せない情報もあった。
綾乃はその空間にあった『箱』を持ってきたという。
それは『夢』と『現実』の狭間をごちゃごちゃにするには十分すぎるものだった。
ーーーおそらく、私の見た『夢』も。
二人が同時期に見た奇怪な夢。
偶然で片付けられるはずがない。
ーー
ー
「……船見さん」
腕の中の彼女から呼び掛けられる。
彼女の話が終わったあとも、二人はしばらくこの体勢でいた。
私はそっと彼女へ寄せていた身体を引く。
「もういいの?」
「うん。ありがとう」
そう言って彼女、杉浦綾乃は小さく笑う。
その笑顔は教室で最初に見たものより、ずっと素敵に見えた。
『壁の中』にいた話。
大方の予想通り、綾乃の心を覆っていた黒い影の正体は人知を越えた類いのものだった。
綾乃がチャイムの音に激しく怯えていたことにも合点がいった。
この話を笑い飛ばすことは、私には出来ない。
私にとって決して聞き逃せない情報もあった。
綾乃はその空間にあった『箱』を持ってきたという。
それは『夢』と『現実』の狭間をごちゃごちゃにするには十分すぎるものだった。
ーーーおそらく、私の見た『夢』も。
二人が同時期に見た奇怪な夢。
偶然で片付けられるはずがない。
371名無しの七森
2016/10/01(土) 18:59:01.30 「船見さんって、男の子だったらよかったのにって言われない? もちろん女の子から」
考えにふけっていると綾乃からそんなことを言われた。
少々いたずらっぽい口調だった。
さっきまでの自分の行動を振り返る。
「…………ノーコメントで」
楽しそうに笑う綾乃。
弱々しい茜色で染まった教室。
夕日はもう沈み掛けている。
赤くなった頬を隠すには、少々もの足りなかった。
それを誤魔化そうと視線を泳がす。
時計を見ると18時を過ぎていた。
そろそろ帰らなくてはいけないだろう。
運動部もすでに練習を終えているようだ。
そのままぐるりと目で教室を一周。
窓。
ロッカー。
扉。
そこで私は硬直した。
考えにふけっていると綾乃からそんなことを言われた。
少々いたずらっぽい口調だった。
さっきまでの自分の行動を振り返る。
「…………ノーコメントで」
楽しそうに笑う綾乃。
弱々しい茜色で染まった教室。
夕日はもう沈み掛けている。
赤くなった頬を隠すには、少々もの足りなかった。
それを誤魔化そうと視線を泳がす。
時計を見ると18時を過ぎていた。
そろそろ帰らなくてはいけないだろう。
運動部もすでに練習を終えているようだ。
そのままぐるりと目で教室を一周。
窓。
ロッカー。
扉。
そこで私は硬直した。
372名無しの七森
2016/10/01(土) 19:05:25.75 扉の前にあったのは、一つの人影。
今日この場を作る、原因となった人物。
私と目線が合ったそいつはしまった!と言わんばかりに弁解を始める。
「い、いや! 違うんだ! 出るに出れなかったというか……」
「え……せ、先生!?」
向かいに座った綾乃も振り向き、すっとんきょうな声を上げる。
しかし、そんなことは今はどうでもいい。
肝心なことは一つだけだ。
「いつから、見てましたか……?」
「え? 船見が杉浦を抱き締めてて……杉浦が船見にむかって、男なら良かったのにって……あ」
綾乃の顔がみるみる内に赤くなる。
担任はスタスタと教室内に入り、自分の机に置かれた二つの資料。
ーーー確認してるんだか、していないんだか。
それをポンポンと叩き、何度か頷く。
そして私たちの方を見ると、
「ご、ごゆっくり! でも早く帰れよ! 居残りありがとなー!」
そう言って。
そのまま走って消えていった。
私と綾乃。
二人の声が校舎に響く。
今日この場を作る、原因となった人物。
私と目線が合ったそいつはしまった!と言わんばかりに弁解を始める。
「い、いや! 違うんだ! 出るに出れなかったというか……」
「え……せ、先生!?」
向かいに座った綾乃も振り向き、すっとんきょうな声を上げる。
しかし、そんなことは今はどうでもいい。
肝心なことは一つだけだ。
「いつから、見てましたか……?」
「え? 船見が杉浦を抱き締めてて……杉浦が船見にむかって、男なら良かったのにって……あ」
綾乃の顔がみるみる内に赤くなる。
担任はスタスタと教室内に入り、自分の机に置かれた二つの資料。
ーーー確認してるんだか、していないんだか。
それをポンポンと叩き、何度か頷く。
そして私たちの方を見ると、
「ご、ごゆっくり! でも早く帰れよ! 居残りありがとなー!」
そう言って。
そのまま走って消えていった。
私と綾乃。
二人の声が校舎に響く。
373名無しの七森
2016/10/01(土) 19:07:25.11 ーーー
「「誤解だぁああああああ!!!!」」
ーーー
「「誤解だぁああああああ!!!!」」
ーーー
374名無しの七森
2016/10/01(土) 19:09:19.33 ーー舞台は現代日本のとある県、とある街。
季節は六月。
梅雨、真っ盛り。
じとじとと連日降り続く雨。
雨は人知を越えたなにかを隠す。
雨に濡れた地面は、なにを写すのか。
ーーー2人の少女は、そこでなにを見るのか。
季節は六月。
梅雨、真っ盛り。
じとじとと連日降り続く雨。
雨は人知を越えたなにかを隠す。
雨に濡れた地面は、なにを写すのか。
ーーー2人の少女は、そこでなにを見るのか。
375名無しの七森
2016/10/01(土) 19:10:29.52 探索者名:船見結衣・杉浦綾乃
探索結果:ーーー
クリアボーナス:なし
・不定の狂気の回復(対象:杉浦綾乃)
(狂気内容:制御不能のチック、震え、失語)
原作
クトゥルフTRPGやろうずコミュ
????様制作 『???』前日譚
続
探索結果:ーーー
クリアボーナス:なし
・不定の狂気の回復(対象:杉浦綾乃)
(狂気内容:制御不能のチック、震え、失語)
原作
クトゥルフTRPGやろうずコミュ
????様制作 『???』前日譚
続
376名無しの七森
2016/10/01(土) 19:11:46.93 また間が開きます
377名無しの七森
2016/10/01(土) 19:40:11.76 いあ!いあ!ゆるゆり!
378名無しの七森
2016/10/01(土) 19:44:48.71 結綾推しなのはわかってた
379名無しの七森
2016/10/01(土) 19:59:33.94 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど なもり イケメン
380名無しの七森
2016/10/01(土) 20:27:48.80 よきかな
ゆっくり待ってる
ゆっくり待ってる
381名無しの七森
2016/10/01(土) 22:19:26.54 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど イケメン なもり
382名無しの七森
2016/10/02(日) 00:12:08.09 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど イケメン なもり
383名無しの七森
2016/10/02(日) 00:38:17.08 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど イケメン なもり
384名無しの七森
2016/10/02(日) 02:56:43.94 歳納京子 リア充 トマト かわいすぎ 声優 ss 壁紙 キャラソン
385名無しの七森
2016/10/02(日) 04:31:19.07 歳納京子 リア充 トマト かわいすぎ 声優 ss 壁紙 キャラソン
386名無しの七森
2016/10/02(日) 05:52:24.83 歳納京子 リア充 トマト かわいすぎ 声優 ss 壁紙 キャラソン
387名無しの七森
2016/10/02(日) 06:32:37.74 未読大量だったからまたスクリプトが暴れてんのかと思ったら更新されてた
388名無しの七森
2016/10/02(日) 11:49:56.77 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど イケメン なもり
389名無しの七森
2016/10/02(日) 12:13:09.21 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど イケメン なもり
390名無しの七森
2016/10/02(日) 14:10:17.94 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど イケメン なもり
391名無しの七森
2016/10/02(日) 18:29:25.57 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど イケメン なもり
392名無しの七森
2016/10/02(日) 21:50:43.89 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど イケメン なもり
393名無しの七森
2016/10/04(火) 21:36:24.43 ほ
394名無しの七森
2016/10/12(水) 19:24:39.14 つづきまだ?
395名無しの七森
2016/10/12(水) 22:28:24.04 期待
396名無しの七森
2016/10/21(金) 12:09:00.60 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど イケメン なもり http://i.imgur.com/vfVRhTw.jpg
397名無しの七森
2016/10/21(金) 21:34:47.46 歳納京子 あかり トマト 学年1位 かわいい 美少女 画像 http://i.imgur.com/ReyrAUB.jpg
398名無しの七森
2016/11/10(木) 04:28:36.82 \アッカリ〜ン/
399名無しの七森
2017/02/27(月) 15:18:51.74 \アッカリ〜ン/
400名無しの七森
2017/03/15(水) 12:15:02.80 \アッカリ〜ン/
401名無しの七森
2017/03/15(水) 17:05:37.31 今更ながら続きが気になるなぁ
402名無しの七森
2017/03/19(日) 20:57:37.34 間が空くってことは続きがあるんだよな?
403名無しの七森
2017/03/28(火) 18:37:19.26 \アッカリ〜ン/
404名無しの七森
2017/03/31(金) 12:56:31.35 \アッカリ〜ン/
405名無しの七森
2017/04/01(土) 12:00:19.60 まだですかね?
406名無しの七森
2017/04/03(月) 17:05:12.09 \アッカリ〜ン/
407名無しの七森
2017/04/08(土) 03:18:23.83 \アッカリ〜ン/
408名無しの七森
2017/04/08(土) 10:58:43.33 待ってる
409名無しの七森
2017/04/08(土) 13:10:37.85 お前が書くんだよぉ
410名無しの七森
2017/04/10(月) 20:11:21.08 \アッカリ〜ン/
411名無しの七森
2017/04/13(木) 17:37:28.50 \アッカリ〜ン/
412名無しの七森(吉川)
2017/04/18(火) 15:25:18.53 お前も書くんだよぉ
413名無しの七森(出崎)
2017/06/09(金) 14:51:32.25 書き込むよぉ
414名無しの七森(南野)
2017/08/11(金) 19:25:00.66 書き込んだよぉ!
415名無しの七森(松本)
2017/11/03(金) 01:45:05.97 \アッカリ〜ン/
416名無しの七森(吉川)
2017/11/03(金) 01:54:32.08 良スレだったけどなぁ…さすがに続きはないか
417名無しの七森(出崎)
2017/11/05(日) 18:49:52.92 \アッカリ〜ン/
418名無しの七森(杉浦)
2017/11/10(金) 03:37:59.36 \アッカリ〜ン/
419名無しの七森(北宮)
2017/11/13(月) 06:45:25.54 \アッカリ〜ン/
420名無しの七森(東)
2017/11/15(水) 18:28:32.53 \アッカリ〜ン/
421名無しの七森(小山)
2017/11/18(土) 03:10:46.65 \アッカリ〜ン/
422名無しの七森(西垣)
2017/11/20(月) 07:50:36.39 \アッカリ〜ン/
423名無しの七森(東)
2017/11/22(水) 13:05:41.41 \アッカリ〜ン/ M7Uydw3o
424名無しの七森(南野)
2017/11/22(水) 13:34:27.60 書きたいけどクトゥルフ詳しくないなー
425名無しの七森(小山)
2018/03/19(月) 17:52:32.17 ☆ 日本の核武装は早急に必須です。総務省の、『憲法改正国民投票法』、
でググッてみてください。現在、国会の改憲の発議はすでに可能です。
平和は勝ち取るものです。お願い致します。☆☆♪♪♪♪♪♪♪♪♪
でググッてみてください。現在、国会の改憲の発議はすでに可能です。
平和は勝ち取るものです。お願い致します。☆☆♪♪♪♪♪♪♪♪♪
426名無しの七森(南野)
2018/03/19(月) 20:49:57.92 ク
427名無しの七森(池田)
2018/03/19(月) 20:50:32.35 ソ
428名無しの七森(南野)
2018/03/19(月) 20:50:53.60 レ
429名無しの七森(池田)
2018/03/19(月) 20:51:15.18 ス
430名無しの七森(古谷)
2022/01/01(土) 21:15:55.59 9fed7e2721c338282a958d17861601f5413b7c8fe67efa7d8b330dea72e0bccd
431名無しの七森(西垣)
2023/05/11(木) 23:18:14.85 @geとく
432名無しの七森(出崎)
2024/07/09(火) 21:10:06.85 当時は貧しかったんだけど
433名無しの七森(北宮)
2024/07/09(火) 22:21:30.74 ミニマル的な燃焼になる
レスを投稿する