化けの皮が剥がれた。僕はかれこれ高校時代から読書を始めていた。最初は対人恐怖症をごまかすための娯楽。野球選手とか好きそうな作家を選択していた。
純粋に今、その場にいる僕自身を、まったくもって異なる世界へと連れて行ってくれる体験。それは現実逃避とも言えるが、これまでとは異なる心豊かになる感情にどんどん魅了されていた。
 それがいつしか変わった。大学生からだろうか。自己嫌悪に毎日苛まれる日常。しかしそんな自分を容易に高みに置ける手段は“特異な趣味”だった。
理解できようもない文学や哲学書に手を出しはじめた。退屈で何度も眠ったり、活字を傍観したりするだけになった。
 もう面倒だからこれ以上書かないが、そうすることで偉大な読書家である感覚に陥っていた。だが先日本格的に文学を学ぶ人間を見て、この脆い個人的地位はあっさり崩壊した。
元々客観的にそう思われていたわけじゃないのだけど。すると読書にもまるで関心が持てなくなっていきつつある自分に気付いた。
 また賞に落ちた。就職先が決まってない上に、現状に追い込まれていたら、こんなうそ臭い憂鬱ではなくて、いよいよ身動き一つ取れない空っぽの人間となっていただろう。
 最近色んな人に気を使ってもらっている。申し訳ない。自分から何もできなくて。