>>88
> 執濃い

「執濃い」という当て字は、夏目漱石が常用したもの
これは有名な当て字なので、ネットでググればすぐに様々な記事で確認できる

青空文庫で検索すると、漱石の「彼岸過迄」、「明暗」ほか、宮本百合子や岡本かの子も
「執こい」を使っている

  後暗い関係でもあるように邪推して、いくら知らないと云っても執濃く疑っているのは
  怪しからんじゃないか。                                「彼岸過迄」

  叔父はなぜ三好に対する自分の評を、こんなに執濃く聴こうとするのだろう  「明暗」

ことばというのは、辞書に掲載されたものだけがすべてではなく、私たちは好きな作家から
学んだことばも、自由に使うことができるし、そしてそれが日本語の文化というものでもある

また、広辞苑や大辞林といった中型の辞書では、本のページ数の都合で収録できず、切り
捨てられている言葉もたくさんある
日本語についてキチンと知りたいなら、小学館『日本国語大辞典』(13巻)を引く必要がある
(実際、自分が青空文庫で作業していたときは、屡々図書館へ件の辞書を調べに行った)

執濃いという当て字は、確執、執念、我執、固執、偏執、妄執の「執」を使うことで、何かに
囚われた精神状態、かつ、当人に周囲が見えなくなっている状況もうまく表していると思う

最初は、>>86の冒頭で「ねちっこい」を使おうと思ったものの、「執濃い」の方が品が良いし
上のようなニュアンスも考えたため、漱石が使っていた当て字に変更した次第

ちなみに、開高健の場合は、雲古(うんこ)という当て字をよく使っていた
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