最初の被害は中学2年の時。送迎時に指導者が運転する車の助手席に座っていると、服の上から陰部を触られた。行為はエスカレートし、集合住宅の一室に連れて行かれ、衣服を脱がされ性的な行為をされるなど、中学卒業まで続いたという。

 息子は記者の取材に「テニスができなくなってしまうと思い、誰にも言えなかった。行為の間は感情をなくして『何かされているのは自分の抜け殻だ』と思うようにしていた」と話した。指導者と背格好が似た人を見ると身を隠すようになり、今もフラッシュバックに苦しんでいるという。

 女性と息子は弁護士に相談したが、指導者の行為は強制わいせつ罪の適用が考えられるものの、7年の公訴時効(昨年の法改正で12年に延長)が成立していること、証拠が残っていないことなどから「刑事、民事ともに責任を問うのは難しい」と言われた。加害者は今もクラブで指導を続けている。女性は本紙「あなたの特命取材班」宛てに「許せない」と思いを寄せた。

 今年2月、記者は県内の指導者宅に向かう女性に同行し、取材した。

 「なぜそんなことをしたのか」。詰め寄る女性に、初老の指導者は「謝るしかない」と行為を認めたものの「かわいかったけん」と言い訳するばかり。記者が「力関係があると分かっていて行為に及んだのではないか」と問うと、「力関係は考えたことがない。かわいかったちゅうのが先に走ってしまった」と答えた。


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