稼ぎが少なくても、心安らかでいられるなら務めなさい。
稼ぎが多くても、疚しいところがあるならやめなさい。
良くない仕事をして自分の心を失うくらいなら
仕事や家を失っても、自分の良心を守りなさい。

洪水や旱魃を怖れて、農夫は耕作をやめないし
強盗や暴落を怖れて、商人は商いをやめない。
それと同じように、私たちは苦難を怖れて
自分を投げ出してはいけない。

近場と言っても、行かなければ辿りつかず
些事と言っても、始めなければ片付かない。
このように怠惰な人は大体にして、浪費癖で苦労するだろう。

立派な人というのは、利益などに興味を持たず
自分の良くないところを探して、改めるのに忙しい。
正しくないことをするのを極度に怖れるが
筋道の通ったことをするのには躊躇しない。

貧窮に陥っても、心は広々としていて
富と名声を得ても、礼儀正しく恭しい。

休んでも気持ちを緩めることはなく
疲れてもいい加減なことはしない。

怒る時も、決して貶さず
褒める時も、煽てることはない。

このようになれれば、立派な人と言えるだろう。

荀子 第二巻・修身編