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プライバシーを法的に保護するには,刑事法による保護と民事法による保護があるが,謙抑主義を掲げる刑事法が,
プライバシー侵害に対する救済手段として積極的な役割を果たすとは考えにくい52).
したがって,民事法,特に不法行為法に基づく救済が最も適切な救済手段となる.

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プライバシーを不法行為法で保護するための解釈論としては,710条の「他人ノ身体,自由又ハ名誉」を拡大解釈するという
弱い法的根拠に求めるのではなく,判例法により確定された不法行為類型として,もっと積極的に保護することが重要である

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不法行為法の効果として,損害賠償を負わせることによりプライバシー保護をはかることは,常に事後的な救済手段である.
侵害のおそれがある場合,または現に侵害が継続している場合には,侵害行為を事前に抑止,停止・排除する措置としての
差止請求を認めるべきか検討されなければならない.

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第二に,不法行為法が目指すものは損害賠償であり,差止請求を不法行為法の効果として認めるにはその根拠条文がないことも考慮すべきである.
不法行為法の効果として差止を認めることも解釈論として可能ではあるが根拠が薄い.

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プライバシー侵害に対してこれからの不法行為法に期待される唯一の救済方法は損害賠償額の高額化,高額の慰謝料を認容することである.
判例の分析でもわかるように極めて低額な賠償額しか認容しないのでは,プライバシーは保護できない.