>>330
滿洲事變の發生以來、我國では聯盟の認識不足といふのが通り言葉となった。
聯盟が日本に對して或種の決議や勸告をなす度毎に、この『認識不足』といふ言葉は幾度となく繰返され、
聯盟は遂には認識不足の總本山でもあるかのやうに卑下されてしまった。

・・・聯盟をしてさういふ過誤を敢てせしめた根本的欠陥は何かといへば、
さきの大戰の跡始末をする任務を帶びて生れて來た聯盟そのものが、
ヴェルサイユ條約による歪められた平和が、不合理なものであるにも拘らず、徒に現狀維持に執着したことだ。

抑も1919年の條約卽ちさきの世界大戰直後に結ばれた諸條約によって保たるる平和なるものは、
協定された平和ではなくて、強制した平和であったのだ。