>>333
フランスは、聯盟の無力とナチスの脅威をみるや、東奔西走してソ仏の提携を實現せしめ、
東欧ロカルノ案を提唱し、犬猿の仏伊を握手せしめたのみか、更に進んで、
これまで對獨保障要求に對して常に態度を曖昧にしてきたイギリスまでも拉し來り、
フランス提案の東欧ロカルノ案にも、ローマ仏伊協定にも賛意を表せしめた。
又空軍協定案にも同意せしめ、かくしてフランス側の包圍戰線中にドイツを孤立せしむることに成功した。
換言すれば、国際聯盟は既に平和維持の機關たる性質を失ひ、
ヨーロッパは、フランスを中心とする勢力均衡主義に逆戻りしたのだ。

そこに起ったのが伊エ紛爭である。
灰色を以て有名なるイギリスが、聯盟の先頭に立って音頭をとったので、對伊制裁にまでこぎつけたが、
イタリーと不卽不離の關係にあるフランスが煮えきらぬ態度をとるので、イギリスも如何ともすることは出來ない
その結果は、ここにも亦聯盟の聲威の失墜となって現はれ、泣面に蜂といふ有様である。