よーし、ちょっとした小咄だ。

あるところに気のいいおじさんがいました。
彼はたくさんの子供たちが楽しそうに笑いながら遊ぶ公園が大好きでした。
彼はきちんとした社会人でこの20年遅刻も欠勤もせず会社に勤めながら
毎朝出社三時間前に早起きして、公園のお掃除に出向いていました。
いつしか、彼はその公園の名物おじさんとなっていました。
子供たちもそのお母さんたちもおじさんのことが大好きでした。
いつもお掃除ありがとう。

時は流れ。
彼は毎日公園のお掃除をしていました。
いつしか、それは「当たり前」となり、だれも感謝しなくなりました。
公園おじさんが公園の掃除をするのは当然のことだと思うようになりました。
事情を知らない人は、彼が自治体からお給料をもらって仕事をしている清掃業者だと勘違いする人までいました。
変な人が増えました。
「おらーここ汚れてんぞ」「こっちゃ税金払っとんじゃ、しゃきしゃき働けや」
おじさんは公園に来なくなりました。

三ヶ月ほどして。
おじさんは久しぶりに公園に来ました。
ものすごく荒れていて汚い公園でした。
おじさん以外の人は、一人としてみずから公園を綺麗にしようなどとは考えていませんでした。
子供たちはいなくなり、そこらに青いテントがたてられ、学校をさぼっていると思しき中学生がタバコをふかしています。

おじさんはやれやれと思いながら、三ヶ月ぶりに公園を掃除しました。
久しぶりなのでうまく勘がつかめません。
そもそも汚れすぎです。
しかし、それでもおじさんは一生懸命にお掃除をしました。
見違えるように綺麗になりました。

しかし、住人たちは言うのです。
「お前が三ヶ月も来なかったせいで、公園はめちゃくちゃだ。どうしてくれる」