トゥルルル……トゥルルル……
寂しげな部屋の中にこだまする電話のベル
それは削代にとって月に一度の憂鬱だった。
「ちゃんとご飯食べてるのかい?
会社ではみんなとうまくやれてるかい?
はやく結婚してうちに帰ってきておくれよ」
何も知らない、いつも通りの母の声。
「うん、うん、」
上京してもうすぐ2年、
削代には、ただうなずくだけが精一杯だった。