秋の早朝。
 高速の長いトンネルを駆け抜ける。そこはワープ空間。
オレンジの光が流れ去る。超高速にも耐えうるフレームに身体を委ねる。
懐の広さを感じさせる。不安を微塵も感じさせない。

 トンネルを抜けると空は快晴だ。
 越後平野が見える。魚野川から立ち込める川霧があたかも雲海のように
眼下に見える。道はその雲海に突っ込むかのように続く。
まるで気分は航空機乗りのようだ。
 コイツのメーター回りも航空機のDNA。
着陸態勢に入ったかのように緊張感が走る。

 霧の中を走る。スクリーンに水蒸気がつく。
冷えたカウルにふれ、瞬時に水滴となり後方に流れ去る。
 空力デザインのミラー、そして
欧州で鍛えられたカウルが空気の壁を切り裂く。

 海辺に辿り着く頃には霧も晴れた。
 波の音、そして朝日に光輝くこの車体。
海辺にたたずむメタリックオーシャンブルーの車体は、
海洋船舶テクノロジーの面影すら漂う。
大容量燃料タンクは300km以上の航続距離を約束する。

 僧侶が尋ねた。
 これでここまで来たのか、と。

 笑って答える。
 カワサキだから来れたのさ。

 ZZR250