将校が、私に命令を下した。
「朕等を侮辱した罪、その玉によって償わせよ」
・・・銃殺刑。
私の中に緊張が芽生える。
善悪の区別がついていないというのもある。
だがむしろ、人を、しかも無抵抗の市民を殺すということそのものを、体が拒んでいるのだ(と思う)。
その一方、例の「考えたくない」思考も、まだ残っていた。
2つが鬩ぎあい、絡まりあう。
―無理やりにでも善悪をつけろ。そして引き金を引け。
―区別などつけられない。引き金をひいてはならない。
悦境の淵でしばし悩み―それほど時間はかからなかったと思う―そして、私は決心した(のか?)。
そう、きっと、結局、単純なことなのだ―。
―善悪で考えるのではない。もっと別の―で―
銃床をもう一度引き締め直し、「憎むべき敵」に向けて、私は引き金を引いた。