written by  PAUL GOOMER 
 「エポックメイキング」という言葉があるが、今シーズンのメジャーリーグはまさにこの言葉を現実のものにする一年だった。
 300日以上たってお忘れの方もおいでかもしれないが、“新世紀の幕開け”に相応しい年であったと言っても過言ではなかろう。
 四半世紀ぶり、半世紀ぶりという記録がいくつも生まれ、中にはほぼ1世紀ぶりの記録までもが誕生し、その度に幾多の過去の名選手たちの名前が紙上を賑わした。
 その中でも、最も多くの先人たちを蘇らせたのはシアトル・マリナーズの外野手、イチロー・スズキであろう。
 彼との記録の対比やプレースタイルの形容のために呼び戻された名選手たちを列挙すると恐るべきリストが完成する。
 タイ・カッブ、ジャッキー・ロビンソン、“シューレス”ジョー・ジャクソン、トニー・オリバ、ジョージ・シスラー、ピート・ローズ、フレッド・リン等々。
 2001年シーズン開幕当初にこのようなことを想像した人がいったい幾人いただろうか。
 アメリカンリーグの某投手は語る。
 「実際に対戦するまでは少なくとも“怖い”とは感じていなかった。
 いや、実際に対戦しても、しばらくの間は彼の本当の怖さがわからないでいたと言った方が良いかもしれない。
 決して舐めていたわけじゃないんだ。
 バットに当てるのが上手い巧打者だという情報は入っていたからね。
 それでもホームランを打たれる心配があまり無いということで安心していたんだ。」