中学の卒業の日に俺は買ってもらったばかりの傷一つないピカピカな携帯をポケットに忍ばせて式に臨んだ
本当なら俺の通ってた中学校は携帯持って来ちゃダメなんだけど卒業式の日だけは連絡先を交換したり写真を撮り合ったりするのが黙認されていた
式が終わって一年間過ごしたクラスに戻ると級友たちは別れを惜しんで涙を流して泣いている中、俺の周りは閑古鳥が鳴いていた
当時の俺もクラスに友達がいないことは百も承知していたが
卒業のときくらいは雰囲気にあてられ、お互いに携帯を向け合って赤外線で連絡先を交換したりするものだと思っていた、というかそれに憧れていた
居たたまれない気持ちになり早々にクラスから切り上げて、三年間過ごした部室へ出向いたが、ここでもやっぱり俺に構ってくれる人は居なかった
結局、俺の携帯が日の目を見ることはなく、高校でもその本分を果たさずに2ちゃんが出来る便利な目覚まし時計以上のものにはならなかった