「やる気のない主治医」の反応に大ショック

青木:前回は障害者手帳によって受けられるメリットの説明や、手帳取得をめぐる冠地さん個人の経験など、盛りだくさんな内容となりました。障害者手帳制度についてよくご存じない読者には、あらためて前回の記事〈「福祉サービス」「減免制度」が利用可能になる! 「障害者手帳」の種類、メリット、難点を専門家が徹底解説〉をご案内します。

ここで再び冠地さんの経験に立ち返って話を再開します。確認ですが、冠地さんが発達障害の診断を受け、精神障害者保健福祉手帳(以下、これのみを指して「手帳」と呼ぶ)を取得なさったのは……。

冠地:2007年、35歳のときです。2009年に「イイトコサガシ」の活動を始めました。手帳は更新を続けてずっと所持していまして、いまは精神障害者保健福祉手帳の2級を持っています。交通費や施設利用料などの減額・免除の制度については、知ってはいますがあまり利用していません。

青木:これも確認ですが、主治医に「手帳をもらえそうですか」と尋ねて、その反応にショックを受けたのでしたね。

冠地:そうです。誰でもそうだと思いますが、目の前の相手のリアクションによって、自分の置かれている状況を客観的に確かめようとするときって、あるじゃないですか。僕が主治医に手帳をとれるかどうか尋ねたのには、そんな意図がありました。つまり、主治医がどう返すかで、他人から自分がどう見えているか知りたいというのがあったんです。

悪口を言うつもりはありませんが、その当時の主治医は、ものすごく「やる気がない」ように見える先生だったんです。診察のときも、僕が自分から話をしないとすぐ打ち切るぐらいで。下手をすると15秒ぐらいで問診が終わっちゃうときもあったんですよ。

青木:いまでもそうかもしれませんが、昔「3分診療」が話題になりましたけど、「15秒診断」とは、また短いですね。

冠地:ですよね。「話があるなら君からしないと。僕はすぐ終わるよ」みたいな、そんな先生だったんです。でも僕は、逆にそこが自分に合っているように感じていたので、気に入ってその先生にかかってたんです。

でも、そのやる気のない無気力な先生が、僕が「障害者手帳どうですかね」って言った途端、もう〈待ってました!〉というくらいの勢いで、取得できると太鼓判を押してきたわけですよ。

それで僕は、──くり返しになりますが──まるで自分が「障害者」というカテゴリーのなかに追い込まれるような、二度とそれ以前の「元の世界」に戻れないような、そんな感じがしてショックを受けたんです。

青木:そうおっしゃってましたね。でも社会活動を始められて、現在は社会の見え方・風景の見え方が変化し、考え方・感じ方も変わってきているはずです。そこでひとつおうかがいしたいことがあります。