約2年前、ゲイであることを告白した與真司郎。その時の心情も含め、自らの歩みを振り返るエッセイを発表する。そんな與が、カミングアウト前後の心境を振り返る。AERA 2025年4月21日号より。

3年ぶりのフォトエッセイ『人生そんなもん』が4月16日に発売される。カミングアウトにいたるまでの心の機微、恋人のこと、思い描く未来……。自らを解き放ち、心が自由になった與真司郎の素顔が見えてくる一冊だ。

 自分でも「包み隠さず、語ったな」というのが率直なところです。ありがたいことに、いまもファンでいてくれる方の多くは僕のことを応援してくれていて、「早く彼氏の写真を見せて!」なんて、気軽に言ってくれるような方ばかりなんです。ただ、ゲイであることをカミングアウトしたからといって、なんでも語っていい、とは思っていなくて。本当の自分を知ってもらい、「こういう人生もあるんだ」ということをまずは知ってほしい。ファンの方はもちろん、ファンでない方にも「こんな生き方もアリなんだ」と思ってもらえたら、ありがたいな、という思いがあります。

 これまでゲイであることを隠して生きてきましたが、本当の僕は隠しごとが苦手で。できればもっとオープンに生きていきたい、と思っていたし、日本にももっといろいろなことをオープンに話せる環境が整えばいいな、という気持ちもあります。

■人間らしくなった

──2016年にロサンゼルスに拠点を移し、日本とアメリカを行き来しながら約9年間を過ごした。昨年はイギリス、スペイン、ドイツなどヨーロッパを中心に2カ月に及ぶ一人旅に出た。世界に出て、多様な価値観に触れたことで意識が大きく変わったという。

 たとえばアメリカでは俳優やアーティストが公の場でメンタルヘルスの話を当たり前のようにしていますし、そうした話を聞き観客が拒否反応を示すようなこともないですね。オープンマインドでいることって、じつはすごく大事。心を開いていくって、「楽になる」ということにも繋がると思うんです。

 かつての僕は、なぜ女性を恋愛対象として見ることができないのだろうといった悩みが多く、一人で抱え込んでいました。でも、長くアメリカで暮らしたことでさまざまな考えを知り、「自分が悪いわけではない」「ストレートとゲイが一緒にいるって普通なんだ」と思えるように。10代半ばから仕事をしてきて、どこか“芸能界しか知らない子ども”だった部分もあるのかもしれません。“普通”とはどういうことか、ということを僕はアメリカに渡った27歳から学んだような気がします。