https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/f638010e78c9dd184d9fa12910788f9e44740730

インターネット上の誹謗中傷等、主に権利侵害情報への対応を強化するため、「情報流通プラットフォーム対処法」(情プラ法)を4月1日に施行することが、決まった。施行は5月とみられていたが、前倒しとなった。石破茂内閣が3月11日、施行日を定める政令を閣議決定した。
 長年、ネット上の権利侵害情報に対しては被害者の申出を受けて事業者が対処することを義務づけた「プロバイダ責任制限法」(注1)が運用されてきたが、SNSの普及に伴い、昨年5月に法律名も変えて大幅に改正された(注2)。
 権利侵害情報の削除の枠組みは基本的に同じだが、削除の迅速化や、削除運用の透明化を図る規定が盛り込まれている。事業者は削除申出窓口の公表、削除運用状況の年1回の公表などが義務づけられ、総務大臣の是正命令に従わなかった場合、最大1億円の罰金が科せられるようになる。
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 省令では、事業者が法律専門家などの「侵害情報調査専門員」をSNS等の大規模サービスごとに1人ずつ置くことなどを定めた。削除に対応する日本語スタッフの人数など人的体制も公表が義務づけられる。
 権利侵害情報には当たらないが削除すべき「違法情報」の種類を例示したガイドラインも公表。いわゆる「闇バイト」募集情報などが明記された(ただ、情プラ法上、違法情報の削除義務があるわけではなく、放置していれば刑事責任を負う場合があるとして削除を事実上促す形をとっている)。
 この法律では、いわゆる偽・誤情報は削除の対象とならない。一部に不正確な報道がみられるが、ガイドラインでは医薬品の虚偽広告など現行法上規制されているものが挙げられている。情報が誤りというだけでは違法情報とならないため、言及されていない。

 昨年暮れから実施されたパブリックコメント(意見募集)の結果も公表され、団体・個人から400件余りが寄せられた。被害者以外の第三者からの申出について濫用のリスクを指摘するものもあり、ガイドラインでは第三者の申出にも削除対応を行うことが望ましいとしつつ、「権利侵害情報による被害者の救済」のためと追記された。
 ただ、従来から、権利侵害情報に限らず、違法情報、犯罪に関連した情報などについても、警察などによる削除要請が事実上行われてきた(警察庁サイト)。
 情プラ法の省令には、事業者が毎年公表すべき事項として「公的機関からの削除要請件数」も盛り込まれており(施行規則18条5項4号)、公的機関が削除要請を行ってきた現状を追認したものといえる。
 だが、情プラ法はあくまで事業者を規制するもので、公的機関による削除要請について統制するルールは入っていない。公的機関による恣意的な削除要請を防止するための方策は、総務省の有識者会議で提言されたこともあるが(2024年9月とりまとめ)、課題は先送りされている。