(言えるわけ、ないじゃない……)


チャイムの音が恐ろしく感じられるようになったのは、あの事件のあとからだった。
奇異体験の始まりを告げるかのように、静かすぎる街に鳴り響いたメロディー。


……それが鮮烈に脳裏に焼き付いてしまっていた。


一種のトラウマのようなものだと、自分では思っている。

17時が近づくと音に備えて身構えるのがすでに習慣となっていた。
事前に認識していれば先ほどのような醜態を晒すことはない。

しかし、今日は作業に集中するあまりそれを怠ってしまった。

不意を、つかれた。

夕暮れの教室。
船見さんの視線が痛いほど私に突き刺さる。