「被告が一つ一つの言葉の意味を理解できていない様子ははっきりとわかりました。
誤魔化すように笑い顔を浮かべ、気の毒なほどでした」 「自首」「殺(あや)める」といった
言葉の意味がわからず立ち往生し、適切に答えられない被告に裁判長が苛立つ場面があったという。

グレーゾーンの「境界知能」

被告のおぼつかない振る舞いには理由がある。被告は「境界知能」だったのだ。
鑑定医による精神鑑定の結果として公判で明らかになった。

知能指数の平均域を100前後とすると、50〜70が軽度知的障害とされるが、
「境界知能」はその境目となるおおむね71〜85未満を指す。グレーゾーンとも呼ばれる。
軽度知的障害では複雑な情報の処理や、先行きを見越した行動、問題の解決が苦手とされる。
そのため学習、仕事、お金の管理、子どもの養育など社会生活で苦労を抱えやすい。