裁判長は社会福祉士の指摘を却下したが

ところが、裁判長は社会福祉士の指摘を却下したという。
裁判長が根拠としたのは、鑑定医による精神鑑定結果だった。
鑑定医は被告と12回の面談で、家族関係、学校や仕事の人間関係、
妊娠・出産の経緯を仔細に聞き取り、心理検査、知能検査、自閉スペクトラム症、
注意欠如多動症などの検査を実施。被告の知能指数が七四で境界知能としたうえで
「検査の結果、被告に精神障害を認めない」と結論づけた。

真琴氏はこう続けた。

「ゆりかごの経験からも、社会福祉士がおっしゃったことの方が、
被告の背景にある問題を正確に捉えているのではないかと思いました」

4年前、ある精神科医から「ゆりかごに預け入れる女性に境界知能や発達障害との関わりが考えられる」
と指摘を受けたことがあった。出産を誰にも知られたくないと慈恵病院に駆け込んできた女性の言動に
曖昧さと幼さがあったため診察を依頼したところ、境界知能が明らかになったケースもあった。
こうした経験から、調べると違う何かが明らかになるのではないかと真琴氏は考えた。