スマホの「9」が押せない

傍聴後、真琴氏は社会福祉士、担当弁護人、そして被告の両親と相次いで面会。
一審判決後に、院長の健氏が保釈された被告を熊本で受け入れることを申し出た。
裁判所の許可が下り、被告は2021年11月の2週間、同院に滞在した。

この社会福祉士こそ、裁判で被告の学習障害を指摘し、裁判長から却下された
大嶋美千代氏だ。大嶋氏は、勾留中の被告との面会に際し、一つのエピソードに注目した。
赤ちゃんが生まれた直後に救急車を呼ぼうとスマホを手にしたものの、「9」の数字が押せなかった点だ。

大嶋氏は留置場のアクリル板越しに2桁の計算式の書かれたプリントを示した。
ところが被告は計算以前に「8」「3」といった数字さえ読めなかった。
デジタル時計は読み取れず、針のついた時計なら針の角度を絵で覚えていた。
ただし針の周囲の数字は読めない。学校の勉強などもかなり無理をして絵として暗記していたのだろうと、
大嶋氏は推測した。学習障害で文字や数字は覚えられないが画像としてなら記憶できるという人は珍しくない。