ゆるゆりクトゥルフ [無断転載禁止]©2ch.net
「……ここ、どこだ?」
気が付いたら見知らぬ場所にいた。
いつも通りの日常。
いつも通りの時間に目覚め、いつも通りに授業を受け、放課後はいつも通りに部室で京子たちと過ごした。
雨が降っていたので早めに解散し、帰宅後すぐにシャワーを浴びた。
買い物はしていなかったので夕食は買い置きのパスタを茹でて食べた。
ベッドの上でスマホをいじりながらだらだらしていたら眠くなって、それから……。
「ダメだ……思い出せない」
覚醒し切らない頭がもどかしい。
大きく息を吸い、吐き出す。
しっかりしろ、これは異常事態だ。 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり 恐怖のあまり歯の根が合わない。
誰かに心臓を鷲掴みにされているような、そんな感覚に陥る。
おとなしく助けを待つ?
冗談じゃない。そんなことを言ってる場合じゃない!
ーーーーなにかが、壁の中にいる。
うじうじと考えて込んでいる暇など最初からなかったのだ。
おそらく私は『何者か』の手によりこの空間へと連れて来られた。
どうやってだとか、その目的だとか、そんなことは今はどうでもいい。
私の身に危機が迫っている。
それも、すぐ目前まで。
揺るぎないのはその事実。
一刻も早くこの空間から出なければならない。
……出口など、あるのかわからないが。
壁を支えになんとか立ち上がると、私は壁をつたって歩き始めた。
闇の中へと一歩、また一歩。
少しずつ進んで行く。 闇の中を進む。
どれほど歩いただろうか。
代わり映えのない景色は私の距離感を狂わせる。
……歩数を数えておけばよかった。
そう思ったところでもう遅い。
歩みのペースは一定だ。
もし、一歩先が深い穴だったら。
もし、得体の知れない存在と鉢合わせてしまったら。
そんな事ばかりを考えてしまう。
相変わらず両端は狭く、息苦しい。
この闇はどこまで続いているのだろう?
私は足を進め続ける。
しばらく進んだところで、前方から少し不穏な空気を感じ取った。
躊躇しながらも歩みを止めるわけにはいかない。
さらに進んでいくとその正体が明らかになる。
「そんな……行き止まり……!?」
前方には巨大な壁のようなものが行く手を阻んでいた。 私は目の前が真っ暗になったような感覚に陥った。
実際、周囲は真っ暗だったのだけれども。
(こんなのって、あんまりじゃない……!)
自分が歩いて来たばかりの道を振り返る。
暗闇。
またあの道を戻らなくてはいけないのか。
頭が痛くなる。
自らを鼓舞してなんとかここまでやって来たものの、私の心は確実にすり減っていた。
行き場をなくした私は目の前の壁にそっと触れてみる。
(なに、これ……?)
横の壁や床とは全く違う感触。
壁はとても柔らかく、あたたかい。
まるでふわふわとした毛皮か、
上質の毛布を撫でているかのような感触。
その感触にどこか懐かしいような、安心感を覚えた。 しばらく無心で壁を触っていた私だったがふと我に返った。
(なにをやっているのよ、私は!)
あらためて壁の様子を確認する。
この壁は明らかに異質だ。
しかし、不思議と恐怖は感じない。
やはりどこか懐かしいような、そんな感じがする。
今度は壁を軽く押してみる事にする。
私の手はまるでトランポリンの上で跳ねたかのようにふわりとやさしく押し返された。
いずれにせよ、やはりこの先に進む事は出来ないようだ。
少し考えて、私は来た道を引き返すことに決めた。
少しだけ心が落ち着いたようだ。
今度は歩数を数えて行くとしよう。
踵を返し、私は再び闇の中へと進み始めた。 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり そのまま前方に400歩ほど歩いた。
歩数を数えているだけで幾分か心持ちが楽だった。
私が最初にいた場所はとうにすぎたはずなのだが、視界はまだ開けない。
ずっと同じ場所をぐるぐると回っているような気さえする。
ふと壁に当てた自分の手の方を見やる。
伝わるのは冷たく、固い壁の感触。
(……もう一度、音を聞いてみようかしら)
一瞬そう思うも、慌てて頭を振る。
……やめておこう。
そんなことをしても、何の意味もない。
聞いているだけで精神を刻まれるような、あの不気味な音を思い出してしまった。
身震いがした。
その時。
ばさばさという羽音のような音。
近い。
その音を認識しつつも、私は身体を動かすことが出来なかった。 慌ただしく翼をはためかせたそれは、私の足元まで来て止まったようだ。
続けてピヨィピヨィという鳴き声。
「と、鳥……!? どうしてこんなところに……」
私の声に反応したのか。
それは再び翼をはためかせ、私の周囲を飛び始める。
夜目が利く種類の鳥なのだろうか?
暗く狭い通路に身体をぶつけることもなく、器用に飛んでいるようだ。
少し上空からばさばさという羽音が聞こえる。
ほどなくして、ゆっくりと降下してくる気配。
それは私の肩へと止まった。
「な、なに!? なんなのもう!!!」
私は慌ててそれを振りほどく。
鳥はふわりと飛び上がり、少しの旋回のあと今度は私の足元へと降りてきた。
そこから飛び立つ気配はない。
ピヨィ
ひと鳴き。
その声は少しだけ寂しげに聞こえた。 「あ……その、ごめんなさい……」
その声を聞いて、つい謝ってしまった。
相手は、鳥なのに。
私のとっさの一言に、足元のそれは相槌を返すかようにまたピョイと鳴いた。
(私の言葉を理解しているの?)
にわかには信じがたい。
しかし、その鳴き声は先ほどの寂しげな声色とも違うものだった。
まるで、「いいよ」とでも返されたかのような……
小さな頃、私は文鳥を1羽飼っていた。
昔から私は友達を作ることが苦手で、いつも家の中で本ばかりを読んでいた。
それを見かねた両親がペットショップで買ってきてくれた、オスの文鳥。
私はそれにすら最初はひどく怯えていたっけ。 その子に心を許すのに時間は掛からなかった。
切っ掛けは覚えていない。
気がつけば、寝ても覚めても一緒にいる。そんな存在になっていた。
そんな私の姿を見て両親も喜んでいたように思う。
別れは突然やって来た。
私が小学校に上がったばかりの頃だっただろうか。
学校から帰り、いつものように文鳥に餌をあげようと自室に入った。
そこに文鳥の姿はなかった。
そこにあったのは荒らされたゲージと、散乱した白い羽。
窓が、開いていた。
「野良猫の仕業だろう」
お父さんはそう言っていた。
私は自分を責めた。
窓を開けておいたのは私だったからだ。
近くで空を見れた方が、この子も喜ぶだろうと。
常識を知らぬ子供の、浅はかな考えだった。
それから…………。 ピョイ
その声で私はハッと顔を上げる。
少し、昔のことを思い出していたようだ。
その間、足元のそれはなにをするでもなく、ずっとそこにいたらしい。
敵では……ないのかもしれない。
というより、敵であれば今ごろ私はとっくに攻撃されていたはずだ。
(しっかりしなさいよ、綾乃……)
迂闊な自分を心の中で叱る。
私は未だに得体の知れぬ闇の中にいるのだ。
気を抜いていていいはずがない。 足元のそれは再び翼をはためかせると、そのまま飛び上がる。
上空からばさばさという羽音。
先ほどと同じ状況だ。
ゆっくりと降下しながら私の肩へと止まったそれを、今度は振りほどかなかった。
ピョイ
小さく鳴いたそれは、そのまま私の頬へと身体を寄せてきた。
(あたたかい…………)
先ほどの決意はどこへやら。
この異様な状況の中ですら、私の心は暖かいもので満たされていた。
とても、落ち着く。
「………一緒に来てくれるの?」
独り言を呟くかのように、そう訪ねる。
くどいようだが、相手は鳥だ。
ピョイ
歯切れのよい鳴き声がひとつ、返ってきた。 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど 同人 なもり 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど なもり 同人 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど なもり 同人 闇の中を進む。
数えていた歩数は飛んでしまったので、また一から数え直すことにした。
それでも私がすることは変わらない。
一歩ずつゆっくりと進んでいく。
肩の上の鳥はおとなしくしている。
小さく軽い鳥のようで、乗せて歩く負担はない。
まるで羽でも乗せているかのようだった。
そのまましばらく進んだところで、鳥がピィとひと鳴きした。
それはなにかを警告しているようにも聞こえた。
私は足を止め、前方に向け注意を送る。
するとすぐ前の床が小さく段差になっていることに気がついた。
このまま進んでいたら足を取られ躓いていたかもしれない。
「ありがとう」
そう言って肩の上の鳥を撫でた。
ふわふわとやわらかな感触。
鳥は私の指に身体をすりよせ甘えているようだった。 段差を越えてさらに進もうとした瞬間、再び鳥が鳴く。
「な、なに……!?」
驚いて前に出そうとしていた足を引っ込めてしまった。
鳥はピッ、ピッ、ピッと小さく続けて鳴いている。
(まだ何かあるの……?)
私はじりじりと摺り足で進むことにする。
新しい段差であればこれで見分けがつくはずだ。
コツン
爪先になにかが触れた。 伝わるのは固い感触。
爪先で突いてそれの正体を確かめようとする。
それは壁の端から端まで掛かっているようだった。
嫌な予感を感じながら、今度はそれの高さを確認する。
足首よりも、上。
膝丈よりも、上。
「そんな……まさか……」
私は腕を前につき出す。
ひやり。
冷たく固い感触。
腰よりも、上。
肩よりも、上。
「行き止まりなの……!?」 反対側の道は行き止まりだった。
つまり。
ここが通れないとなると、この空間に出口はないということになる。
「嘘よ……! 嘘うそ!! いやぁああああああ!!!」
私は反乱狂になりながらも、腕を伸ばしてそれの高さを確認する。
驚いたかのように鳥が私の肩から飛び立つ。
それに構っていられる余裕はなかった。 スカッ
目一杯腕を伸ばした先で、私の手が空を切った。
…………空洞が、ある!
私はそのままの姿勢で硬直した。
過呼吸気味になった呼吸を整えようとする。
(まだ、繋がってる……まだ、詰みじゃない……!)
それでも、カチカチと鳴る歯と溢れた涙は、しばらくおさまりそうになかった。 なぜこんなことになったのだろう。
それが何度目の自問かは忘れた。
いつから? いつからおかしかったの?
ごく普通に買い物をして、それから……
そんな当たり前のことがひどく昔のことのように感じられた。
しばらくして肩にふわりとした感覚。
あの鳥が戻ってきたようだ。
気を利かせてくれているのだろうか?
それ以上はなにをするでもなく、おとなしくしている。
私は顔を上げた。
そのまま前方の壁をペタペタと触る。
壁や床とはまた違うような手触り。
突起のような物はない、ツルツルとした平坦な壁だ。
(登らなきゃ……いけないのかしら……)
私の運動神経は並以下だ。
私の背よりも高い壁、くわえてこの暗がり。
結果は火を見るより明らかだろう。 どうしたものかと更に壁をまさぐる。
目線の辺りの壁を調べることを辞め、上部の空洞へと繋がるとっかかりに手をやる。
それ自体はかなりしっかりしたような造りに思えたが、
生憎ここから腕の力だけで壁をよじ登れるほどの筋力はない。
諦めて壁から手を離そうとした瞬間、なにかに触れた。
「ヒッ!」
反射的に腕を引き、壁から一歩後ずさる。
あれは、なに?
手の甲で軽く触れただけだが、明らかに異質な感触だった。
傍らの鳥がキャルルルと低くうなるような声をあげている。
しかし、無視するわけには、いかない。 再び壁の前まで近づき、恐る恐る腕を伸ばした。
手探りで先ほどの物体を探す。
あった。
それは手のひらに収まるほどの大きさだった。
四角い形をしている。
陶器のような感触。冷たい。
私はそれを両手で包み込む。
しばらくそれを触っていると、不思議な感覚に陥る。
暗闇の中で、なにかが、うっすらと見えてくるような。
なんだろう? あれは……
そのまま手の中のそれを持ち上げようとする。 ピィイイイイイイイイイイイイイ
耳をつんざくような、けたたましい鳴き声。
私はそれに身体を硬くする。
「え!? あ、ちょっと……!」
瞬間、ばさばさという羽音。
続いて私の手にのしかかるような羽毛の感触と、ずしりとした重み。
どうやら鳥はこの四角い物体の上に乗ってしまったようだ。
そのまま持ち上げようとしてみるが、手はピクリとも動かない。
『これを持つことは許さない』
まるでそんなことを言うように、鳥はそこから微動だにしない。
鳥本来のそれとは不釣り合いな手の重さに混乱する。 「……これを、持っちゃいけないの?」
鳥からの反応はない。
ただ、その場から動く気配はないようだ。
「……わかったわよ」
根負けした私は四角い物体からそっと手を離した。
ほどなくしてばさばさという羽音。
どうやら鳥もそこからのいたようだ。
そのまま再び私の肩の上に止まった。
腕を組んで壁の前に立ち尽くす。
これからどうしようか。
(やっぱりここを登るしか……でも、もし失敗して足でもくじいたら……)
これは重要な決断になる。
簡単に答えは出そうにない。 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど なもり 同人 チラリと後方を見やる。
果てしない暗闇。
最奥にはふわふわとした壁があった。
調べてはみたものの、そこから先に進めるような気はしなかった。
だからこちら側に出口があると信じ、ここまで歩いてきた。
(また戻るの? この道を…………?)
選択肢の一つに入れない訳にはいかないだろう。
……気乗りは、しないけど。
考えに詰まった私はなんとなく身体を反転させてみた。
まだ引き返すと決めた訳ではなかったが、立ち止まったまま考えているよりは幾分かマシと思ったのだ。
確かすぐ先には段差があったはず。
足を取られないよう気をつけなければ。
今まで支えに使ってきたものとは反対側の壁に触れる。
感触は同じものだった。冷たく、固い。
摺り足で一歩前に踏み出す。 ピィイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!
先ほどよりも、更にけたたましい鳴き声。
鳥は肩の上に乗ったままばさばさと翼をはためかせている。
それは悲痛なほどに何かを訴えかけているように聞こえた。
「ま、またなの!?」
私は慌てて身体を反転し直す。
元の位置へと戻ったところでようやく鳥はおとなしくなった。
行くもダメ、戻るもダメ。
ではどうしろと言うのか。
私は泣きたくなった。
しかし、先ほどの鳥の様子は少し尋常ではなかったように思える。
おそらく、私になにかを警告しようとしていたはずだ。
(ここから離れるな、というよりは……)
私に警告するのと同時に、鳥自身もひどく怯えているように思えた。
そうだ。もっと的確に言うのであれば……
(あちらへ…………行くな……?)
そう理解した瞬間。
ゾクリと背中に冷たいものが走った。 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど なもり 同人 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど なもり 同人 少し考える。
この状況で私が取れる行動は限られている。
道を引き返すのは、やめておこう。
となれば……。
目の前の、壁。
私はどうしても『あれ』が気になった。
調べずには、いられない。
私は腕を伸ばす。
そして再び壁の上の四角い物体に触れた。
相変わらずのひんやりとした感触。
間を置かず肩から飛び立った鳥が、それの上に乗る。
先ほどと同じ状況になった。
鳥はやはりそこからのく気はないようだ。
間。
しばらくにらみ合いを続けたあと、私はそっと手を離した。
それを確認した鳥もそこから飛び立つ。
(……ごめんね!)
私は再び四角い物体へ向け腕を伸ばす。
鳥はピッとひと言、面食らったような鳴き声を上げた。
私の方が、早い。
手に掴んだそれを、私はすばやく持ち上げた。 瞬間。
身体の自由が効かなくなる。
「……え?」
理解が、追いつかない。
次にやって来たもの。
ふわりとした、浮遊感。
私は、それに抗うことが出来なかった。
四角い物体を手にしたまま。
私は。
「ふぎっ!」
前方へ向け、思いきり倒れこんだ。 「つぅぅ……いったぁ……!」
受け身を取る暇もなかった。
勢いのまま、私は床に額をぶつけてしまった。
額をさすってみる。
幸い出血はしていないようだ。
「な、なにが起きたの……!?」
あの四角い物体を手に取った瞬間、身体の自由が効かなくなった。
あの瞬間、私は前方の壁に身体を預けるようにしていたはずだ。
倒れこむ道理などない。
(まさか……)
膝を突いた状態で周囲を探る。
そのまま少し下がったところで床に小さな段差を発見した。
おそらく先ほど見つけたものだろう。
つまり、今私がいる場所自体は先ほどと同じ、
変わってないということになる。
立ちあがり、腕を前に出す。
ない。
壁が、ない!
「どうして…………!?」
そこにあったはずのものが、突然消える。
不可思議な現象に恐怖を覚えた。 少し上空から翼の音。
(あっ……)
ほどなくして、それは私の肩へと止まった。
すでにここが定位置になりつつある。
鳥からの反応はそれ以上ない。
少し気まずいような沈黙が流れる。
結果はどうあれ、警告を無視した形になってしまったのだから。
気を紛らすかのように、私は手に持ったままだった四角い物体を調べ始めた。
最初に手にした時のような不思議な感覚はしない。
まず疑問に感じたのがそれの重さ。
触った感じから陶器のようなものだと思っていたのだが、非常に軽い。
中が空洞になっていることが容易にわかった。
軽く叩いてみると同じく軽い音がした。
これを手に取った瞬間、目の前の壁が消えた。
間違いなく、なにか秘密があるはずなのだが。
(この暗さじゃ、それ以上のことはわからないわね……)
作業を中断し、それを肩掛けの鞄の中へとしまう。
道がひらけたのだ。先に進まなくては。
私は再び暗闇の中を歩き始めた。 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど なもり 同人 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど なもり 同人 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど なもり 同人 一定の速度で歩みを続ける。
片手を壁に添え、右足を先に出す。
続いて左足。
幾度となく繰り返した工程。
傍らの鳥は黙ったままだ。
単純な作業が沈黙をごまかすのに丁度よかった。
先ほど打ちつけた額が、まだヒリヒリした。
少し進んだところで、突如沈黙を破った鳥がピイと鳴いた。
「え?」
踏み出した右足は止まらない。
ぬるり。
今までとは違った床の感覚に足を取られる。
「えっ!? ちょっ……! わっ、わっ、わっ!!」
咄嗟に横の壁で身体を支える。
バランスを崩しながらもなんとかそこに踏み留まることが出来た。 呆然とする私の傍らで鳥がまたひとつ鳴く。
それは私を気遣うような声色だった。
頬に触れるやわらかな感触。
「だ、大丈夫……ごめんね、せっかく教えてくれたのに……」
知らないうちに歩き方が雑になっていたようだ。
心の中でそれを猛省する。
(私は一体何を踏んだの……?)
少し後ろの床を足で探る。
床に変わったところはなく、以前までの硬さを持っていた。
更にくまなく周囲を探ってみるものの、それらしい物は見つからなかった。
(消えた……!?)
だがあの時とはまた状況が違う。
あの壁は四角い物体を手にしたことを引き金に消えたように思えた。
しかし、床に対して私は特別なことはしていない。
にも関わらず、床には何の痕跡もない。
これが意味することはなんだろうか?
瞬間、脳裏にひとつの考えが浮かぶ。 私は確かになにかを踏んだ。
しかし、床にその痕跡はない。
ーーーー突然壁が消える現象を目の当たりにしておいて、今さらなにを。
そう思うのは簡単だ。
この空間で常識が通用しないことなどとっくに分かっている。
深く考えずに先へと進むべきなのだろう。
しかし、思考は止まらない。
ーーーーでは、発想を逆転させてみてはどうだろうか?
消えたのではない。
それが、今もそこにあるのだとしたら。
私が今まで歩いてきた硬質な床。
それ自体が、
まるで水溶きの片栗粉のように、
柔らかくなれるものだとしたら。
そう仮定したところで、ひとつの疑問に突き当たる。
今までつたってきた硬質な壁。
ーーーーそれは本当に壁だったのか? 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど なもり 同人 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど なもり 同人 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど なもり 同人 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど なもり 同人 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど なもり 同人 ピッ ピッ ピッ
その音で意識を引き上げられる。
傍らの鳥が短く続けて鳴いている。
聞き覚えのある、声色だった。
「この先に、なにかあるの……?」
ピヨィとひと鳴き。
肯定とみてよさそうだ。
そのままくりくりと身体を頬に押し付けられる。
黒いものに包まれそうだった心が、晴れていくのを感じた。
少し躊躇して、私は壁に触れる。
その感触は以前と変わらないものだった。
じりじりと先へ進むと、爪先になにかがぶつかる。
それはガンッと聞き覚えのない音を立てた。 「行き止まり……!?」
慌てて腕を前に伸ばし、すぐに前方のそれに触れる。
冷たく、ざらざらとした感触。
壁や床の感触とは全く違う。
しかし、異質な感触ではなかった。
私はこれに似た感触のものを、
この空間ではない場所で触ったことがある。
破裂しそうな心音。
伸ばした腕を引き、手の臭いを嗅いでみる。
錆びた金属のような、臭い。
(これって…………!)
再び前方の壁をまさぐる。
すると腰のあたりに突起をひとつ発見した。
突起は片手で握ることが出来るほどの大きさだった。
それを左右に軽く捻ってみる。
ガチャガチャという音がした。
(まわ………せる…………?)
ーーーーあぁ、そうだ…………これは…………!
私は突起をひねりながら、それを引いた。 瞬間。
青い光が差し込み、音が流れ込む。
急な光に目を開けていられなくなる。
目を瞑ったまま、私は音の正体を認識した。
激しい、雨音。
ゆっくりと目を開ける。
私の目に映ったのは鬱蒼とした草木。
どうやら、ここは森の中のようだ。
空はオーロラめいた青白い光に照らされ、青い霧が濃く広がっている。
突如、肩の上の鳥が空へと飛び立つ。
「あっ……!」
そこで私は暗闇の中連れ添ったそれの姿を初めて目にする。
小さな身体。
白い羽。
首から後ろへかけての、青い模様。
「待って!!!」
私の呼び声むなしく、
鳥は白い翼をはためかせ、振り返ることもなく空へと消えていった。 手に掴んだままだったそれ、ドアノブを離すと、一歩前に踏み出す。
むせかえるような草木の香り。
そのまま激しい雨に打たれる。
身を打つ水の感触は生々しいものだった。
突如、後方からバタンと大きな音がした。
「ヒッ!」
慌てて私は振り返る。
そこで見たもの。
ひとりでに閉じた扉が、少しずつこの場から消えていく姿だった。
私は、それを呆然と見ていることしか出来ない。 やがて扉は完全に消失し、そこには一人雨に打たれる私だけが残った。
『もう暗闇の中へと戻ることはできない』
心の中で私はそれを認識した。
空の色が一層明るくなる。
オーロラのような波形がゆらゆらと、不思議な動きをする。
まるで海の揺らめきを見ているかのようだ。
そのうちあまりの明るさに目をあけていられなくなった。 ーーー
ーー
ー
「……の………………やの………」
誰かの、声?
わたし、わたしは…………。
「綾乃!!」
「え!?」
ハッとして顔を上げる。
そこにあったのは……
「お母さん……?」
心配そうに私の顔を覗き込む、母の姿だった。
慌てて周囲を見渡す。
そこは見慣れた、自宅の玄関だった。 「もう、やっと反応した! そんなにずぶ濡れになって……あなた、傘は持って行かなかったの?」
「え?」
母にそう言われ、自分の姿を確認する。
私の服はびっしょりと濡れていた。
まるで長時間雨に打たれたような、ひどい有様だった。
呆れたような口調で母が続ける。
「いいから、お風呂に入っちゃいなさい。着替えは用意しておいてあげるから」
「え、あ……うん……ごめんなさい……」
曖昧に返事をした私は、言われるがまま風呂場へと向かった。
風呂から上がった私は、
母に夕食はいらないと告げ、そのままベッドに潜り込んだ。 翌日、カーテンから差し込んだ光で私は目覚めた。
まだ、頭がボーッとする。
(夢、だったの……?)
昨日の出来事を思い出す。
気がついたら私は暗い空間にいて、
そこで鳥と会って、
最後にそこから抜け出して……
そこまで思い出して私は苦笑した。
あまりにも現実味がない。きっと夢だったのだろう。
ふらふらとした足取りでリビングへと向かう。
そこに家族の姿はなく、テーブルには1枚の書き置きがあった。
『用事があるので出掛けます。
キッチンのテーブルの上におにぎりがあるから食べること!
つらかったら今日は寝ていなさい。
母より』
それを読んでから今日が休日だったことを思い出した。
……確かに、体調はあまりよくないようだ。
おとなしく母に従うことにしよう。 書き置きを読んだ私はキッチンへ向かった。
テーブルの上にはラップに包まれたおにぎり。
皿の上にちょこんと乗っていた。
ーーーーこれを食べたら寝てしまおう。
そう思いテーブルに近づいた。
瞬間。
それを目にした私は一瞬で意識が覚醒した。
「な、なんで…………!? 嘘でしょ!?」
昨夜、母に預けた鞄の中身だろうか。
テーブルのそこに置かれていたのは携帯電話と買ったばかりの参考書。
と。
見覚えのない、四角い物体。 一気に呼吸が荒くなる。
目が、霞む。
震える手でそれに触れると、ひやりとした陶器のような感触。
見覚えのないそれを、私は確かに触った覚えがあった。
手に取ったそれをよく見ると、不自然に小さくへこんでいる部分を見つけた。
爪が、ひっかかりそうだ。
爪を立ててみると四角い物体……『箱』は容易に開いた。
中から出てきたのは、折り畳まれた1枚の紙片。
私はそれを広げる。
そこには緑のインクでびっしりと文字が書かれていた。
日本語だ。
読み、取れる。
読み取れて、しまう。 『門の創造』
『空間と』
『空間を』
『繋げる』
『個と』
『個を』
『繋げる』
『門の創造』
私の異常体験は、まだ終わっていない。 探索者名:杉浦綾乃
探索結果:生還
クリアボーナス:SAN値+6
クリアボーナス2:SAN値+4(条件:鳥の生存)
クリアボーナス3:SAN値+2(条件:箱を持ったまま生還)
クリアボーナス4:未達成(条件:暗闇に潜んだ神話生物2種の正体を見破る)
取得魔術:『門の創造』(取得中)
取得技能:クトゥルフ神話技能+2
原作
WaKaMuRa
若村(じゃくそん)様制作 『壁の中にいる』
終 予定していたプロローグはこれで終わり
誤字脱字申し訳ない
ニコ動のとあるリプレイ動画に多大な影響を受けてます 『壁の中にいる』はシナリオ改編がかなり著しいです
http://imgur.com/hdLpYJq.jpg
http://imgur.com/Ensn8pM.jpg
の画像を見てたら書きたくなったというか鳥関連はほぼ全て俺設定ですすみません
意識暗転系シナリオはこれで最後にしようかなと思ってます
思い出したころに続きを書くつもりなのでそのときはまたよろしくお願いします 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど なもり 同人 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど なもり 同人 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど なもり 同人 モフ壁はツァトゥグア
周りの壁は無形の落とし子びっしり 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど なもり 同人 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど なもり 同人 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど なもり 同人 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど なもり 同人 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど なもり 同人 歳納京子 ゆるゆり 京綾 結京 ねんどろいど なもり 同人