以下は、文化庁メディア芸術祭の、歴代の最終選考に残った短編アニメから、
個人的に気に入った作品八十数本をとりあげて、雑感を書き捨てたもの。


「Birthday boy」を観る。8分。2004年度の優秀賞。3DCG。
作り手Sejong Park。物事がよくわかっている作り手の作品という印象。
5歳や10歳の少年が兵器や軍隊に憧れるって側面は、
軍オタのくせして(軍オタだからこそ)平和主義者な日本のアニメ監督たちはろくに描いてない。
禿ガンダムは一応本物の戦争だから、空想上の憧れではないし。
山沿いの貧民窟って設定はやや珍しいかもな。路にゴミは落ちてないのをどう観るかだけど。
このストーリーなら本来は5分で充分だろうけど、あえて尺を伸ばして
子供の時間間隔を表現したらしい箇所も見受けられる。なかなかの出来だろう。


「My Grandpa」を観る。作り手Petr Marek。6分。2004年度。
じじいの妙な顔芸と珍奇なダンスが、最初から最後までかなり笑える。良作。


「Ryan」を観る。クリス・ランドレス。13分。2004年度。
奇抜な作品だ。メイドインアビスの成れ果てを連想させるミュータントぶり。
さっぱり内容はわからんけど、それにもかかわらず最後まで飛ばさずに観れたんだから相当だと思う。
ラストのほうに殺せんせーっぽいのがいたのは、制作日時を考えると偶然か。


「キャットウォーク」を観る。2分。2003年だか2004年度。北田伸。
3DCGで白組が協力。猫ととりわけ幼女が可愛い。最後のイメージもなかなか。
重力の捉え方が甘いのは、時代を考えると技術的に仕方ないのかも。まあ観てよかった。


「おはなしの花」を観る。久保亜美香・井上精太。2分。2006年度の優秀賞。
軽やかで、観ていて無難に楽しかった。これはこれでいいと思う。


「電信柱のお母さん」を観る。10分。2006年度。坂元友介。
最初は母の愛を前面に押し出した雰囲気アニメかと思ったが、それだけじゃなかった。
電飾アニメの部分とか、その他もかなりいい。ラストは無難にまとめてしまった感じだけどな。
挿入曲に「星めぐりの歌」を使っているが、宮沢賢治の名前にともあれ恥じない出来だ。


「ウシニチ」を観る。9分。2007年度の奨励賞。一瀬皓コ。スヌーピーみたいな絵柄。
のどかで安らぐ。短足のスキップが可愛い。


「Birthday」を観る。1分。2007年度。半崎信朗。ミスターチルドレンのPV作ってた人。
センスがあってなかなか悪くない。わりと好きだな。


「Burning Safari」を観る。1分。2007年度。Team Burning Safari, Gobelins。
なんとなく映画泥棒を思い出した。アクション要素がこの賞としてはきわめて強い。なかなか満足。


「蒲公英の姉」を観る。20分。2007年度。坂元友介。
トトロにおいてパヤオが身をかわさざるをえなかった部分に、テーマを設定している。
(昭和30年代、まして田舎で、核家族は成立しがたいしね。家族のひとりが病気ならなおのこと。たとえ父が学者ポジでも)
主人公を絵描きにした点も好きだ。アニメは絵が主役なんだから、そういうキャラ設定は
自然な発想だと思うけど、そこからとんずらする「プロの作り手」も多いから。
人形アニメでは少女主人公をブスに設定しても、ふつうの絵と違い、
人形の概念じたいに美への強い志向性が内包されているから、ブス設定が自然に映える点もグッド。
ストーリーも上々。


「KUDAN」を観る。9分。2008年度の優秀賞。木村卓。アニメでは貴重なホラー。
なかなかの出来。途中でエンディングの方向性がわかってしまうのが少し残念。


「オーケストラ」を観る。6分。2008年度。作り手は奥田昌輝、小川雄太郎、大川原亮。
「Symphony No. 2 in D Major, Op. 36: IV. Allegro molto」というクラシック曲に合わせ、
アニメーション(白黒中心の線画)が流れるさまは、すこしファンタジアを連想させる。
あれより技術などは拙いんだろうが、こっちもなかなか雰囲気があり、とても満足。


「パンク直し」を観る。3分。2008年度。岡本将徳。
おっさんがただ自転車のパンク修理をするだけだが、かなり見応えがある。
抜こうと思えばいくらでも手を抜けるのがアニメである以上、
丁寧さをきわめた描写は時に圧倒的な魅力を放つ、ということかもな。


「The Cable Car」を観る。Claudius Gentinetta。6分。2009年度の優秀賞。
じじいのくしゃみが最初はどうも不快だったが、だんだんひきこまれる。
オチはひどすぎて笑ったけど。


「アニマルダンス」を観る。5分。2009年度の奨励賞。大川原亮。
絵に力がある。鳥人間が分解したあとくっつくあたりの描写が特に好き。


「Deadline」を観る。2分。2009年度。Bang Yao Liu。
ポストイットを活用したコメディー。笑えたし好きだよ。


「Lizard Planet」を観る。上甲トモヨシ。5分。2009年度。
華やかかつ絵本っぽい絵柄。そこそこ緩いけど好き。


「Organic」を観る。4分。2009年度。こづつみPON。
シンプルで可愛らしい絵柄。なかなか悪くはない。


「The Fitting Dance」を観る。2分。2009年度。Javier Villegas。
アニメでしか描けない肖像画というべきか。奇妙といえば奇妙な作品だ。


「向ヶ丘千里はただ見つめていたのだった」を観る。5分。2009年度。植草航。
「フミコの告白」「ブーゲンビリアは咲かない」あたりをやや連想させる作風だ。
だが個人的にはそれらよりも好み。疾走する女子中学生のふとももっていいよね。
もちろんそれだけの内容じゃないけど。芸大出身ってなんだかんだで底力あるのかね。


「farm music」を観る。3分。2010年度。大桃洋祐。可愛らしくて無難。これはこれでいいと思う。


「強迫的な秩序についてのカエル」を観る。2010年度。4分。永迫志乃。
風刺が効いているというかなんというか。ともあれ一見の価値はある。


「くちゃお」を観る。3分。2010年度。奥田昌輝。
ドン・ハーツフェルトを絵柄だけ荒っぽくしたみたいな印象がちょっとする。
この醜悪さ・激しさ・速度が、若さ由来ではなく作り手固有の特質だったら相当だな。


「魚に似た唄」を観る。5分。2010年度。竹内泰人。ひきこもりの青年のお話。
正しく希望を感じさせる内容だ。相当の出来といえよう。


「Folksongs & Ballads」を観る。8分。2011年度の優秀賞。Mathieu Vernerie。
いい作品だとは思う。でもこういうふうに実写を模倣する必要ってあるの?
それにぬるぬる動くけど、重さは感じない3DCGだね。


「やさしいマーチ-The Tender March-」を観る。5分。2011年度の新人賞。植草航。
相対性理論とやらのMV。曲はナニだがJS・JCの太ももがまぶしくて可愛い。動きもいい。
問題は、たとえばこの作品をスタート地点として、作り手がどこへ旅立つかだろうな。
たいていの若手の自主制作アニメもそうだけど。


「rain town」を観る。2010年京都精華大学アニメーション科第二期生卒業制作作品でもある。
10分。2011年度の新人賞。石田祐康。べつだん、学生として充分に優れた作品ではあるけどね。
・子供が一人歩きで水路に水没するところなどのあざとさ。そのあたりのトトロとかとの違い
・6分10秒前後の、ロボットの壊れ方の不自然さ。
・カメラワークや過去回想などの鬱陶しい手練手管。
その他色々、気に障る点が多すぎる。衣の下の鎧が見えるんだよね。コロリドでの作品群もその傾向あるけど。
昔もいまも、悪い意味で商業主義との相性の良さが漂った作風だということなのかもな。一面的な見方だけど。
この人の一連の作品を観てると、俺は苦手だが新海作品のまあ分際をわきまえた作りにいまさらながら感心する。


「これくらいで歌う」を観る。自主制作PVらしい。楽曲ハンサムケンヤ・作り手椙本晃佑。
6分。2011年度。PVやMVのほとんどは、どれほど見応えある花を咲かしていても、
しょせん鉢植えの花だとしか思えず本質的な興味を抱けなかったが、これは例外かもしれない。
その未熟さも含めて、若々しく新鮮な印象だ。
若者向けの作品の大半に見られる、若さならざる稚なさ(ひどい時には幼稚さ)ではなく。


「約束」を観る。8分。2011年度。河野亜季。芸大がらみの作品。
かなり猟奇的な内容かもしれないが、技法と感受性によって毒を美しさに変えている。
ジブリライブラリーに似た技法のがあった気もするけど、これも好きだな。


「BONNIE」を観る。2分。2011年度。岡本将徳。実写とアニメを合成させた作品。
この手の技法は苦手なのが多いんだが、本作品は違った。
単にシンプルな絵柄の女の子が可愛いっていう、フックにひきつけられただけかもだが。
ともあれ奇妙に魅せてくれた内容。


「Das Haus」を観る。6分。2011年度。David Buob。妙なアニメだ。
こんなライティングはアニメでは見た覚えがないし、それ以外にも色々。
全然芸風は違うが、アートアニメの巨匠ヤン・シュヴァンクマイエル作品を連想した。
こんな連想は初めてだ。ひょっとしたら稀少な才能なのかもな。


「Garden」を観る。3分。2011年度。鈴木隼吾。
虫たちはカラフルでグロ可愛い。これはこれでなかなか。


「Omerta」を観る。6分。2011年度。作り手はNicolas Loudotほか。
蛙ギャングどものコメディー。スタイリッシュで堂に入っている。作り手はプロかもな。
ラストの二人きりで月夜にカヌーを漕ぐシーンは、ありがちかもしれないけどロマンチック。


「Scripta volant」を観る。13分。2011年度。折笠良。
アルファベットのダンスをアニメにしたもの。蟲師第1話「緑の座」だかの英語バージョン的。
悪くないアイデアだけど、表音文字ではやはり効果的じゃない。
蟲師は表意文字である漢字のダンスだし、碩学白川静あたりの研究を踏まえているんだろうが、
どうしたってそれと比べてしまう。


「櫻本箒製作所」を観る。9分。2012年度。告畑綾。
娯楽性を放棄するメリットの一つとして、テンポの良さという「商業主義の呪縛」から逃れられる点がある。
タルコフスキーとかもそうだ。いい画面を作れていることが前提だろうけど。
単行本三冊の漫画を2時間なり2時間半におさめるために、片隅でさえこの呪縛からは脱出できてなかったし。
(片渕監督はそういう解釈をしない人かもしれないけど)
本作もそれだ。老夫婦と陋屋のシーンばかりですんごく地味だし、実写でやれよって側面も出てくるけど。


「就活狂想曲」を観る。7分。2012年度。吉田まほ。
そこそこ美人の女子大生が、冒頭で就活ルックになったらちょいブスにジョブチェンジしちゃって笑った。
独創性ではなく創意工夫がある画面作りだ。これも芸大生の作品。この賞を一通り見ていくと、
連中って相当優秀なのかもなって思う。ノミネート作品の良作のかなりの割合を占めているから。
東京藝術大学大学院大学院映像研究科は、それらの作品をYoutubeに公式にうpしてるけど、
600万再生は相当に多いな。これ以上って映像研究科ではたぶん片手で足りる。


「ニュ〜東京音頭」を観る。5分。2012年度。上保美咲。
ブサ可愛いギャルの法被ふんどし姿の、汚いケツがいい。ヘンダーランドにやや近いノリ。


「まつすぐな道でさみしい」を観る。6分。2012年度。岡本将徳。
じじいの顔が結構いい。全編それだけだけど。


「夕化粧」を観る。10分。2012年度。胡??
ちょっと棟方志功っぽい美少女が主人公。絵柄もあまり見ない中華風で綺麗。異国情緒があって良い。


「crazy for it」を観る。3分。2012年度。久保雄太郎。鮮やかで勢いがある。若いっていいなあ。


「Nyosha」を観る。11分。2012年度。作り手はLiran Kapel及びYael Dekel。
舞台は1942年度のポーランド。主人公は少女。そういう無力さの重ね掛けは好かない。
それは退廃芸術かもしれないと、ヒトラーではなく俺が感じるから。
冒頭部のさまざまな賞の履歴も不必要なはずだ。ひょっとしたら凄い作品かもしれないにせよ。
ラストの雪は良かった。


「Airy Me」を観る。5分。2013年度の新人賞。久野遥子。どう判断すればいいのやら。
とりあえずよく動くし看護婦は可愛い。最後の淡いキスも好き。
凄い作品なのかもしれないが、同一作者なら「Cuushe - Magic」とかのほうが個人的好みだ。


「Cuushe - Magic [OFFICIAL VIDEO]」を観る。3分。2013年度。久野遥子。
実写背景(チベットらしい)とアニメ部分を融合させてる。
アニメに力がないと背景に見劣りしてしまうだろうが、そういう事態には陥ってない。
羽の生えた少女とか陳腐そうな題材だが、実際観てみると力が渾もっている。好きだな。


「みゃくみゃく ―Drops of Life―」を観る。今林由佳。6分。2013年度。
とてもほんわか可愛らしい。そして後半の描写を観れば、ただそれだけの作り手でもない。


「Bird Shit」を観る。40秒。2013年度。Caleb Wood。へーおもしろいなとは思った。一応微スカ注意。


「Mahjong」を観る。7分。2013年度。Chen Xi。
好みじゃないが、結構珍しい中華風絵柄だから、一応記しておく。


「Premier Automne」を観る。作り手はCarlos De Carvalho及びAude Danset。
10分。2013年度。森の中での少女と少年と骨犬の物語。雪も美しい。
作り手が切実な思いで作り上げたのかなという気が強くする。見事だ。


「想い雲」を観る。6分。2014年度。中舎康平。真性ロリコン御用達の、ジャガイモみたいな絵柄。
スイカを輝かせるところや窓枠にかじりつくところとか、それと表情群がじつに好み。
虹の描写とか、そもそも小学生とはいえ女がこういう爽やかなケンカをするかって話とかもあるけど。


「Canis」を観る。16分。2014年度。作り手はMarc Riba及びAnna Solanas。
白黒。絵柄に不気味さはある。好みじゃないからまともに見てないけど。


「Decorations」を観る。7分。2014年度。宮澤真理。ケーキの人形の物語。
少女趣味だが相応の創意工夫があると思う。好みだ。


「Zepo」を観る。3分。2014年度。作り手Cesar Diaz Melendez。
相当好みではあるけど、個人的には描写が惜しい。
「僕だけがいない街」の原作でも思ったけど、ああいう形で凍死するなら遺体を描いてほしい。
この発想が人間性の闇だというんなら、そもそもミステリーやサスペンスがジャンルとして成立しないし。
あと池の氷の割れ方が甘い。即座に人ひとり沈んだりしないよ。割れた氷じたいにそこそこ浮力があるから。


「Rhizome」を観る。12分。2015年度の大賞。Boris Labbe。
だいたいの年は長編が大賞を獲るんだが、本年はこの短編アニメが納得の受賞だ。
ちょっと今まで観たことがない壮麗さだ。Cyriak氏の作品を初めて観たときの衝撃に近い。
最後のほうの柱は、死後の世界における到達不能極あるいはポイント・ネモといった異形の趣がある。


「息ができない」を観る。6分。2015年度。木畠彩矢香。ショタ二匹がとっても可愛い。
水着や短パンの裾はゆるっゆるだし、溺れたあと剥き出しの胸に手を当てての心臓マッサージもスケベです。
まあでも、ストーリーも真面目で出来がいいよ。


「Chhaya」を観る。10分。2015年度。Debanjan Nandy。
無気味というかなんというか。部屋に○がついたあたりは好きだ。


「Sea Child」を観る。作り手Minha Kim、Jacob Thomas、Islay Bell-webb。7分。2015年度。
少女の絶望と、力はあるがまだそれに拮抗しえていない唄を描いた作品、なんだろうか。
絵描きなら事物をただ正確なデッサンで写し取るだけじゃなく、自らの表現として把握しなおしたうえで
作品に仕上げてゆくものだが(3DCGってこの過程をあまり踏んでない気がするから嫌い)、
そこに作り手のフィルターが強烈にかかると、こう成り果てるんだろう。問題作だな。
作り手(3人挙げられてるけどどういう分担だろう?)には、幸せになってもらいたいけど。


「A Love Story」を観る。7分。2017年度の優秀賞。Anushka Kishani Naanayakkara。
毛糸っぽいアニメ。好きじゃないけど素材の独創性はあるとは思うので、一応紹介。


「Among the black waves」を観る。11分。2017年度の優秀賞。Anna Budanova。ストーリーは羽衣伝説。
ロシア作品。陰鬱かつ力のある映像だ。観ていて胸を圧搾されるような地味なインパクトがある。
たいていの現代モノクロ映画は、ようするにただ衒っているだけだが、これはどうやら違う。
現代日本で等質の陰鬱さを描こうとすると、社会から切り離された個人の狂気みたいな方向に行きがちだし、
それは俺の望むものじゃないから、この作品は好きになれた。
また個人的に、俺は雪を堪能し観賞しているだけで、雪(自然)と暮らしてはいないなと痛切に思わされた。
「われわれはすべて自然を観賞することばかりが多く、自然とともに生きることがあまりに少ないように思われる」
という、オスカー・ワイルドの名言にからめて。それをつきつけられるのはつらいけど価値がある。
スタッフロール直前の遡上の絵は、だから俺にとっての救いかもしれない。


「I Have Dreamed Of You So Much」を観る。3分。2017年度の新人賞。Emma Vakarelova。
いいかげんなフォルムの小舟や海鳥が好きだ。主人公の表情も時折とてもいい。
天野喜孝のタロットカードの画集に、少し似た絵柄のがあった気がする。それも好感を抱ける。


「Ghost Cell」を観る。6分。2017年度。Antoine Delacharlery。
西洋文明に限りない嫌悪を抱きながら、その根っこに巣食う醜悪な嫉みの神ヤハウェを
問題視できない、一連の芸術家たちが描くあの手の作品のひとつ。出来はいいけどね。
出エジプト記の子供向け解説本でも作者は読み返せばいいと思う。


「L'OEil du Cyclone」を観る。5分。2017年度。平岡政展。
抽象画っぽいけど、その割に官能を帯びている気がする絵柄。結構好き。
この芸風で、一番最後に瞳を描くというのも意外だったし。


「oldman youngman」を観る。11分。2017年度。加賀遼也。妙に好感度が高い作品だ。
冒頭で爺さんが下手の横好きなギターを弾き、弦が切れてしょんぼりするあたりからして可愛い。
絵柄は藤原豪信の凄い国宝『花園天皇像』を思わせるヘタウマぶりだ。清楚っぽいショートヘアの美女もいい。
紅葉がすべて落ちたラストの初冬の森も好きだ。なかなか。


「Slowly Rising」を観る。3分。2017年度。稲葉秀樹。ルルイエの花園といった内容。
描かれている宇宙に咲くウミユリは、クトゥルー神話に出てきそうだ。結構好み。


「Ticking Away」を観る。9分。2017年度。Michael Sewnarain。時計の物語。
明らかに苦手な作品なのに最後まで見る気になったのはかなり珍しいなので、紹介だけしておく。


「ハルモニア feat. Makoto」を観る。4分。2018年度の優秀賞。大谷たらふ。
この手の映像としてはかなりテンポが速く、個人的好みだ。その割りに見やすいし。
音楽はうーん・・・だが。


「The First Thunder」を観る。5分。2018年度の新人賞。Anastasia Melikhova。
題材はちょっと「ソング・オブ・ザ・シー」に似ている。テンポの良さは片隅並かそれ以上。
音楽の使い方はシリー・シンフォニーとかの系統。
最後の絵にああいうテイストを持ってくるとは予想してなかった。子供向けだがとてもいい。


「Candy.zip」を観る。4分。2018年度。見里朝希。
冒頭部、キャンディーにされた少女主人公が蟻たちに舐められる絵はやばげ。
そして後半でお持ち帰りされる有様もな。さすがにのちに「マイリトルゴート」を描く作り手だけある。
今後10年なり20年なりかけて、作り手がその性癖をどこまで保ちつつ突き放せるかは興味深いな。
パヤオには高畑氏も鈴木Pも女スタッフたちも、アトリエ隣りの妙なベンチが置いてある阿呆宮もあったけどね。


「O Matko!」を観る。12分。2018年度。Paulina Ziolkowska。
優れたある種の芸術が到達できる無気味さに、手が届いている気がする。
まったく好みの芸風じゃないし、それゆえにいい加減な観賞しかしてないけど。
アイロンを顔面に当てながら、グロ表現に逃げずああいう描写にした点とかは、優れているかもとは思う。
それはつまり、なまじのグロ趣味よりやばいものを、作り手が視ているってことかもだが。


「Am I a Wolf?」を観る。8分。Amir Houshang Moein。2019年度の新人賞。
狼が山羊たちを襲う劇を、幼稚園児たちが演じる内容。
ほぼ白黒で筆っぽく描かれている。物がわかっている作り手だという印象。


「The Little Ship」を観る。5分。2019年度の新人賞。Anastasia Makhlina。
象と少女の物語。人形アニメーション。ラストの情景も美しい。


「ケアンの首達」を観る。副島しのぶ。7分。2019年度。
静かな、というより静謐な画面作りだ。あまり似たような作品を見た覚えがない。
ラストは小松左京の短編だったが。ともあれかなりいい。


「マイリトルゴート」を観る。見里朝希。狼と七匹の仔山羊の翻案。
児童虐待をテーマにした力作は「ぽこぽこぴこたん」「Amy」「ビリーの風船」など色々あるが、
本作もその系譜だろう。たいていの監督には踏み込みにくそうな部分まで遠慮会釈なく描写している。
商業アニメじゃ無理な題材を扱っている点で、存在する意味がある作品だと思った。


「Conception: Catie + Jen」を観る。作り手Moth Studio。協力(?)ニューヨーク・タイムズ紙。
4分。2019年度。シンプルなデザインだ。線を巧く使っている。なかなかの出来。


「Love Me, Fear Me」を観る。作り手Veronica Solomon。クレイアニメ。6分。2019年度。
動きじたいは面白いけど、それのみを楽しむなら2分でまとめたほうがいい(乱暴な感想だが)。
このテーマを納得いくまで消化するには6分が必要だったのは、そりゃわかるけどね。


「MIMI」を観る。4分。2019年度。深谷莉沙。野暮ったい絵柄の女子小学生の入浴シーンがいい。
テーマとかは、俺はアホだから最初から判る気がない。


「Somewhere Soft」を観る。5分。2019年度。吉成慧恵。淡い色気を感じて相当に好みだ。
作者は「失恋で痛むのは心臓か丹田か」という疑問を抱いたらしいが、興味深い発想だな。


「THE LOST GARDEN」を観る。2分。2019年度。Natalia Chernysheva。
植木が庭を探す物語。なかなか嫌いじゃない。納得いかない点もあるけど。


「WATER IN THE CUP」を観る。5分。2019年度。加藤郁夫。シンプルで色鉛筆っぽい絵柄。
主人公の中年の天使が頭毛に乏しいのがなんか笑える。上等なプレーンオムレツみたいな良質さ。


「LOCOMOTOR」を観る。3分。2020年度。金子勲矩。
墨絵っぽい荒々しい絵柄で描かれた機関車人間。単純な物語だけどなかなかいい。


「Orbit」を観る。たしか10分以内。2020年度。Tess Martin。モノクロの手描きアニメ。
シリー・シンフォニーみたいな大昔の技法を、現代に適応させて用いてるらしい。
テーマとも合致してなかなか良作。


「Silny niezalezny kosmos」を観る。Damian Krakowiak。2020年度。
たしか10分くらい。スペースシャトル乗組員の妻と、地上でそれを待つ夫の物語。
線画による無重力空間が、割合きちんと描けているっぽい。
また筆の力に頼りきった作品ではなく、相応のストーリー展開もある。観てよかった。


「Bラッパーズストリート」を観る。2分。2020年度。子ども向けアニメでヒップホップ。
珍妙だがなかなか楽しい。初見で新鮮だからかもしれないが。


「かたのあと」を観る。4分。ふるかわはらももか。2021年度の新人賞。
白黒線画で百合。淡く繊細にセンシュアル。小さめに愛らしくまとまっている。


「PIANOMAN」を観る。5分。2021年度。児玉徹郎。記憶喪失ものは元来好きじゃない。
作劇上の都合が限度を超えて大きかったり、その都合をテーマとすりかえがちだったりするから。
その中では結構いける作品だ。妖精たちや細かな色々な絵は好み。
音楽は最初は好きだったが、途中から流れ出すメイン曲は疑問だ。
筋肉ダルマの鬼が芸術に活路を求めるなら、この音よりももっと激しさか繊細かが必須だと思う。
全体的に、産みの苦しみをきちんと経過できてない作画でもある。地面に突っ伏して悶えるシーンとか。


「How I spent the summer…」を観る。6分。2021年度。作り手Natalia Fatikh。
犬たちと少年の交流の物語。少年はさっぱりした顔立ちの美少年。ほぼモノクロ。
鉛筆っぽい描線の手描きアニメの力を感じる。怒りを含んだ力かもな。
自転車が壊れるシーンなどが好み。明るいストーリーではない。




以上。相当に満足。
以下はおまけで、学生CGコンテスト(CGC)あたりの入賞作品からいくつか。


「ゆめみるシロ」を観る。6分。2015年度。
悪くはないけど、色彩についての絶望が足りない。だから大した希望を導き出せない。
かわいらしいキャラデザが、そのまま作品の限界に直結している。
ラウル・セルヴェはあまり好きじゃないが、テーマのかぶる彼の「Chromophobia」あたりを観ると、
さすがに芸術家の凄みといったものを感じる。


「くらげの街」を観る。3分。2017年度。浜野英次。
都会ないし都市の空を心地よく滑空できるのは何か。
パヤオが魔女宅で「ほうきに乗った小さな魔女」と選択した問いかけに、
この作者は「スーパーのビニール袋」と答えた。なかなか見事だ。


「その先の旅路」を観る。4分。2019年度。山口真衣。
この作品が真実なのかについては判断を保留するけど、いくつかの情景が相当美しかったのも確かだ。
通俗に寄りすぎているとは思わないでもないし、
今後作者がその疑問にどんな答えをたたき返してくるかは興味深い。


「The Balloon Catcher」を観る。6分。2020年度。金子勲矩。
都会、あるいは人間の営みの猥雑さと胡散臭さが表現できている絵柄だ。
ストーリーはラストを含めて好み。


「螢火の身ごもり」を観る。1分。2020年度。川上喜朗。
要するに少年を妊娠させたがった作品。別にそれはそれでいいと思うよ。


以上。
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