海外アニメの「ルーニー・チューンズ コレクション」を観る。
三倍速で観れば爽やかでかなり楽しい作品。内容のなさが軽やかさにきちんと繋がっている。



海外アニメの「ザ・プラネット」を、最初の三分の一まで観る。
駄作。モノトーンの色彩に逃げていて、作り手の才気や覚悟が見えない。
その後の三分の二も所々見たけど、ひきつけられるものがない。



海外アニメの「時の支配者」を、最初の三分の一まで観る。たしかルネ・ラルー監督。
駄作だと思う。キャラデザ・作画・ストーリー・細部などに俺をひきつけるものが何もない。
脳味噌を半熟卵みたいに吸う怪物という、その表現だけはよかった。



「ダム・キーパー」を観る。海外作品。18分。監督は堤大介、ロバート・コンドウの両氏。
ふたりは「トイ・ストーリー3」「モンスターズ・ユニバーシティ」のアートディレクターだったとのこと。
パッケージの絵柄は苦手だったが、惹句が
「2014年ベルリン国際映画祭で公式上映され、世界中の国際映画祭で20以上もの賞を受賞!!」
とのことなんで観てみたが、なんのことはない、審査員全員が感性の蓄膿症だったってだけの話だ。
大気汚染を防ぐとか、いじめられるかわいそーな子供とか、反駁を許さない鬱陶しいテーマを持ってきて、
そこに叙情的な穏やかなメロディーをのせて、味付けをマイルドにする。志が低いというより無い。
作り手たちは、舞台のこの街に住むということがどういうことなのか、いっぺんでも想像したことがあるのかね。
なお予告編だかによれば、札幌国際映画祭受賞作(札幌市平和賞受賞・最優秀子供短編映画)と
京都国際子ども映画祭グランプリとのことだが、それも晒しておく。バカのドミノ倒しだな。



「くまのアーネストおじさんとセレスティーヌ セレスティーヌの誕生日」を観る。海外アニメ。
短編5本で合計61分。3年ほど前に観た同一キャラの劇場版が、
かなりいい出来だったんで、こっちにも食指を伸ばしてみた。
だが悪くない出来だけど、期待ほどじゃなかったな。
水彩調の絵は相変わらず見ごたえあるが、キャラクターのしぐさやカメラワークが、
洋画実写っぽさに寄りすぎている。アニメーションならではの良さとは遠いし、
かといって実写的な魅力も出せていない。あと隣人キャラが無駄にうっとうしい。
そのわりにストーリーは子供向けすぎる。劇場版は充分に観る価値があったんだけどな。



「ファンタスティックMr.FOX」を観る。86分。原作その他は未読。海外作品。
なるほどこんなもんか、程度の感想。あまりストップモーションアニメの強みを生かせた作品でもなかった。
中味は思ってたよりも娯楽色が強くて楽しめた。一回か二回通読すれば充分だけど。
Not so badは結構な褒め言葉だけど、そこを越えられるか・越えようとしているかは別問題だよね。



「ティム・バートンのコープスブライド」を観る。77分。この監督の作品は初見。
才能ある作り手なのはわかるけど、なんぼなんでもこじらせすぎだと思うよ。
新郎新婦の両親・神父・ゲス貴族など現世の俗人たちが、フォローしようもない不徳義漢だって部分が。
まあラストをああいうイメージ群とかで締めた以上、俺と違った感受性の客なら
かなり絶賛していてもおかしくないとも感じたけど、それは俺には関係ないし。



「カールじいさんの空飛ぶ家」を観る。96分。ピクサー。
充分に出来がいいってのは理解できる。才能ある作り手たちが全力を尽くしたのだろう。
でも根本的に、内容に興味が持てない。広い意味での予定調和の中におさまっているから。
レンタルDVD映像特典の、未公開シーンうんぬんのインタビューを聞けばよくわかる。
題材がやや似ているラピュタと比べると、パヤオは(現実の彼は知らないが)作品世界の中で
発狂できる資質を持っているし、それゆえに物語を恣意的にねじまげることが出来て、しかもその購いも支払える。
「飛行石が敵の手中にある」という状況と「見張り台が凧になる」というアイデアの絡ませ方で、そこもうかがえる。
俗衆が聖者の心のかけらを宿すことで、どこまで狂人に近づけるか。そして彼をどんな凶賊がサポートするか。
ユイスマンスのそんな解釈がなんとなく脳裏に浮かぶ。
なお同梱の短編「晴れときどきくもり」「ダグの特別な一日」も観たが、どうでもいい作品。



「モアナと伝説の海」を観る。本編83分。ディズニー御製。
題材に対する謙虚さが乏しいよね。それは異文化への根源的な無理解とパラレルだけど。
前近代の知性が魔物ってものをどう捉えてるかとか、考えたことがないのかな。
子供の動きにも稚気がない。日本が誇るいくつものペドアニメでも見て参考にすればいいのに。
アクションシーンは迫力がある。劇場の大画面でなら充分子供たちを騙せるだろう。
でもそれだけ。



「南部の唄」を観る。たしか1940年代。ディズニー作品。
シリー・シンフォニーほどじゃないけど、相変わらず絵はよく動いている。
でも実写の混ぜ込み方が、大部分でなんか違和感強いね。
インディアンの聖地の崖に米国大統領の顔を彫り込みやがったセンスに近い。
ラスト部分、実写の犬とアニメキャラのじゃれつき方は良かったと思う。



「子ぐま物語」を観る。ディズニー作品。中篇「ボンゴ」「ミッキーと豆の木」の二本が所収。
良くも悪くも初期ディズニーらしくて、特筆すべき点がない。絵は良く動く。シナリオは横を向きたくなる。
そのためなのかどうか、絵も少し惰性が仄見える。新鮮な物語が絵描きに刺激を与えるって機会が乏しかったのかもな。
熊カップルに雪が降りかかって白熊になるとか、感心したのはあのあたりくらいかもな。



「メイク・マイン・ミュージック」を観る。ディズニー作品。短編集。70分ほど。
これの感想も上の子ぐま物語と一緒だ。絵もシナリオも。
才能は枯れ果てて終わるだけじゃなく、暴走した挙句に衰弱するってケースもあるんだろうな、きっと。



「父を探して」を観る。80分。2013年のブラジルの作品。アカデミー賞ノミネート・アヌシー最高賞ほか。
アレ・アブレウ監督。本当にアヌシー最高賞は、俺とそりが合わない作品ばかりだな。
ある種の芸術家は自分の才能の中に逃げ込む悪癖に捕らわれすぎる。
本作の色彩やアイデアの華麗さは、俺にはそういう質のものとしか思えないよ。
これって作品世界に主人公がまったく関われていないじゃん。
たとえば12分49秒前後、扉が開けられる期待についての子供の感受性の描写は見事で、
向こうのスレの>173で触れた千尋ととてもよく似ているけど、でも千尋はたいがい自分から出入り口をくぐったからな。
まあ穏やかなシーンの映像はかなりたいしたものだ。



「ファンタスティック・プラネット」を観る。ルネ・ラルー監督。たしか60分以上90分未満。
1970年代のサイコホラーの傑作というふれこみだったが、どうってことない。
才気煥発な芸術家が陥る罠にはまってしまっている典型例だ。技術はそりゃ相当なものだけどね。
自分の感受性が観客に届かなかった時に、作り手が経なければならない煩悶を、充分に自覚してるとは思えない。
一言でいえばひとりよがり。絵柄と芸風が似ていなくもない諸星大二郎の爪の垢でも煎じて飲めば。
それに主題と技法などが分裂しすぎてない? ラストのオチをあくまで重んじるなら、だけど。
仮に客ではなく評論家的に鑑賞するとしても、そこからしてネックになる。
上の「父を探して」と同じく、長編映像ジャンルにおける芸術家一般を俺が疎んじている側面もあるんだろうが。



「ねこぢる草」を観る。32分。原作ねこぢる、監督佐藤竜雄、脚本及び演出は佐藤竜雄と湯浅政明、
絵コンテ湯浅政明、原画に田辺修だの吉成曜だのも混じってる。原作などは未読。
作り手たちに才能はあるんだろうけど、それが俺に響かない形で発揮されている作品。
人体切断やら洪水やら歯車やらのイメージが、平凡だなとただ思う。
この内容なら、天地創造のイメージは日本神話から持ってくるべきでは、とかも。
狂気がもたらす醜さと等量等質の美しさを感じられるかが、この手の作品への個人的な物差しとなるが、
どうやらそれに失敗している。かといってファンタスティック・プラネットみたいなおぞましさにも遠い。
狂気がファッションで、その限りにおいては見所がある、と言ったらきつすぎるか。
とんかつには食欲をそそられるが、豚の死体にはなにも惹かれない。俺としてはそれだけ。



「魔法少女リリカルなのは Reflection」を観る。監督浜名孝行。本編の内容には触れない。
レンタル特典ごときにキャラクターコメンタリーつけてくれる、その太っ腹ぶりは好感持てるよ。



「OVAの中に1人、妹がいる!」を観る。23分。監督名和宗則。原作その他は未読。内容はエンプティー。
でもフライ返しでおっぱいをたゆんたゆんさせるのと、ラストの全員花嫁姿は良かったから構わない。



「星の王子さま」を観る。30分。……これ、アニメじゃないよね。
脚本・監督の小山哲哉というひとは、原作ファンたちにむごたらしい死を望まれても仕方ないと思うよ。



「青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない」を観る。89分。原作鴨志田一、
脚本横谷昌弘、監督増井壮一。原作その他は未読。まあ、悪い作品ではない。
画面やストーリーがそれなりに練りこまれているし、仕掛けも施されている。
ファンなら充分楽しめるかもな。素晴らしい作品がひたすら観たいだけの俺には向いてなかったけど。



「世界名作劇場完結版 あらいぐまラスカル」を観る。87分。監督遠藤政治・腰繁男。
美術監督の井岡雅弘氏たちの仕事は突出している
(氏の画集にパヤオが寄稿した一文にも、納得してしまうところはあるが)。
それ以外はどうもね・・・高畑氏って、華やかさの持つ意味もきちんと見極めてたんだなっていまさら思う。
パヤオや禿みたいな派手好きな資質を心服させてたんだから、当然だけど。



「マップス」を観る。脚本辻真先、絵コンテ・監督西澤晋。SF漫画の金字塔である原作は既読。
作画陣は頑張っているとは思うんだけどね。食事シーンやジャルナ王女とか。
でも脚本や絵コンテが、脂のいちばん乗っていた時期の長谷川裕一の魅力を、再現も乗り越えられもしてない。
仏作って魂入れず、か。ひどくむなしい読後感だ。



「PEACE MAKER鐡 想道」を観る。58分。原作は池田屋事件くらいまで見たが、アニメなどは未見。
監督きみやしげる(絵コンテや演出にも連名で参加)、総作画監督小磯沙矢香。
原作漫画は俺が見た部分はかなりおもしろかった記憶があるけど、アニメには力がこもってないね。
新撰組なんていう、見どころも知名度も抜群なネタをさばいて、これか。絵も含めてマジで劇場版なの?
ヒロインの沙夜の作画だけはまあハードルは越えている。



「劇場版キン肉マンⅡ世 マッスル人参争奪!超人大戦争」を観る。
40分。脚本大和屋暁、作画監督大塚健、監督小村敏明。
駄作。映画館でワクワクしたいなぁという子供たちをないがしろにしている。
劇場版の子供向けシリーズアニメの大半は、成否はあれどおおむねどれも、
ジャリどもに何かを伝えようと・贈りたいと奮闘している。
でも本作の脚本も作画陣も、統括する監督も、それを目指してないよね。誰だってそんなの感づくよ。
お子さまランチこそ、この世でもっとも作り甲斐あるメニューかもしれないんだけどね。



「巨人の星劇場版」を観る。88分。原作などは未読。監督長浜忠夫。歌舞伎メロドラマ、か。
現代の一観客からすると、冒頭の星一徹の設定からして絵空事だなと強く感じる。
彼は昭和十七年に巨人に入団するが徴兵され、二十年に帰国したときは肩を壊していたが
それを「よくよく(運勢が)ついていない男である」と、ナレーションで、表現するところとか。
水木しげる・阪田三吉・沢村栄治・スタルヒンなどの、現実での言動や生涯を、それ以降も見てる最中に思い出す。
この程度の「往年の話題作」は、歴史の流れに淘汰されても正直まったく惜しくない。
背景スタッフのただの一員に小林七郎の名前が見つかったのは、驚きとともにちょっと嬉しかったな。



「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」を観る。90分。
原作岩井俊二、脚本大根仁、総監督新房昭之、監督・絵コンテ武内宣之。原作などは未読。
なんか劣情を煽る描写が多いのが気に食わないな。
べつに清教徒じゃないけど、劇場版かテレビアニメかを問わず、
MMD以外のアニメ視聴中にオナニーしたことって一度もないかもと気づいた。
いろいろと興味深い演出も多いんだけどね。
でもカレーの部分とかは苦手・・・冒頭でそう思わせること自体が作り手の手妻かもしれんが。
比べてみると、ビューティフル・ドリーマーって、以前感じたよりもさらにずっとストイックだったのかもな。



「名探偵コナン 時計じかけの摩天楼」を観る。94分。原作はごくたまに立ち読みしてたが、
このアニメシリーズは完全初見。絵コンテこだま兼嗣・佐藤真人、演出佐藤真人、監督こだま兼嗣。
別に悪い作品じゃない。形はそれなりに整っているし、楽しさもほどほどに味わえる。
でも子供だましだ。作り手の腕前以前に、おそらくホワイ(フー)ダニットの
一般向け娯楽推理映画はそうならざるをえない構造を抱えている。
原作は週刊少年サンデー掲載で、とりあえず小中学生の客層がターゲットだろう。
巻き戻しも一時停止もきかない映画館で、幼い彼らが映画を見ながら楽しく動機探し・犯人探しに
興じる必要があるんだから、トリックなどをそう複雑に出来ない事情があるのはわかるが。
舞台が日本なのもマイナスだ。ルパンみたいに海外中心ならごまかしやはったりも効くが。
シリーズ中一番評判高い監督の最初の作品でも、この程度か。やや失望。



「クレオパトラD.C. コンプリートDVD」を観る。監督吉永尚之。
「資料を参考にして創作すること」の落とし穴について、色々と考える。
当たり前だけど、未来に作られるはずの資料、なんてものは存在しないし参考にも出来ない。
だから時が経つにつれてほころびが出来やすく・見えやすくなる。
(でも想像力を前面に打ち出した創作物は、古びにくい。パヤオや湯浅氏とか)
また資料上で存在できるような情報にもたれかかりやすくもなり、しかもその自覚が持ちにくい。
豊かな想像力を裏打ちするための資料、というのなら問題は少ないんだろうけどね。
実力あるスタッフなのに今回の作品はいまいち、という場合、そういう見えにくい落とし穴の問題はある。
街並みはそうそう建て替えるわけには行かないから古びにくいが、最新の機器とかは創作物の中でも古びやすいとか。
その他にもいろいろ。



「ノーゲームノーライフ ゼロ」を観る。原作榎宮祐、監督いしづかあつこ、脚本花田十輝、
絵コンテいしづかあつこ・渡邊こと乃・浅香守生・松村政輝、演出いしづかあつこ・松村政輝。
撮影監督川下裕樹・伏原あかね。制作マッドハウス。106分。原作やテレビ版は未読。
描写の甘いシーンが多すぎる。たとえば冒頭部、絶え間なく灰が降る中で大爆発が起きているが、
灰ってのはひとつひとつはとても軽いから、爆風なり炎の生んだ上昇気流なりで、
降灰の軌道は思いっきりかき乱されるはずだ。比重の極端に重い金属粉でも含んでいるんかね。
また序盤15分ごろのシーン、主人公がぶら下がった木の根を頼りに断崖を登ろうとするが、
この根の細さではまずもって成人男子の体重を支えきれない。
また、それでも這い上がろうとするならば、根に体重を預けきる前に
二、三度強く引っ張ってみて、根が途中ですっぽ抜けないか確かめるのは、
冒険なりアウトドアなりの常識だと思うが、そんな様子はない
(根をつかんで登り始めようとするシーンが、わざわざアップで存在するのに、だ)
こういう、小学生でも疑問に思いそうなミスがちりばめられている。神が細部に宿ってない。
シナリオやキャラもアレだ。
ラピュタとは言わないから、せめてテレビ版のメイドインアビスくらいの絵は見せて欲しい。
一応劇場版なんだから。あとどうでもいいけど、チェス監修があの悪名高い日本チェス協会かよ。



「ブレッドウィナー」を観る。監督ノラ・トゥーミー。92分。駄作だな。
「ブレンダンとケルズの秘密」「ソング・オブ・ザ・シー」と同じ制作スタジオというので見てみたけど。
予告編でいきなり批評家どもから下賜された賞の一覧が並べられたり、
「アカデミー賞女優アンジェリーナ・ジョリープロデュース」とか麗々しく告知された時点で、
権威主義と大衆迎合が同時に感じられて、相当危うく感じてたけどな。
アニメに限らず、文芸ものには観客層の「読解力の高さ」や映像経験の豊富さに
もたれかかっている作り手が珍しくない。傑作駄作問わず、子供向け娯楽アニメ映画ではまず見られない傾向だ。
こういう後進国(とあえていうけど)特有のテーマを、先進国のアニメスタジオが作り、
先進国の高等遊民たる俺らに見せるって、かなり色々と舐めてない?
この長編の制作費の数十万ドルだかを、相手の国に上手に寄付したほうがよっぽどマシだと思う。
あと宣伝担当者は「火垂るの墓」と一緒にしてんなよ。野坂と高畑に失礼だ。



「ドリーム・ビルダーズ」を観る。80分。海外作品。
・子供がベッドで一人で眠っている映像を見ると、孤独だなといつも思う。
 俺自身が消防のころ、隙があるとすぐに父親の布団にもぐりこんで幸福感を味わっていたから。
 そして俺が見た海外アニメの多くでは、その孤独に作り手が自覚的ではないようだ。
 この作品にもまた、その気配を感じる。冒頭部で十分それに勘付ける。
 その後の大半のカメラワークも、子供の孤独に寄り添ったものとは思えない。
・子供部屋やダイニングの窓がかなり小さいのに、ああも朝の光が差し込むはずないんじゃない?
 光について嘘をつきすぎている。絵として光を把握するのと、3DCGとして光を把握する違い、か。
・主人公の動機が「同居することになった姉妹と、まだウマが合わない」ってことだけど
 そんなの時間と単純な努力が解決してくれるでしょ。この動機では長編作品一本を支えられないよ。
・それ以降もいろいろ
・べつだん、いいところもたくさんあるけどね。夢のシーンのあれこれとか。
 でも物語の根幹がぐだぐだなら、底の抜けた玉杯と同じだ。
・親が離婚した子供たちの、心の傷をきちんと描こうとした点は評価に値する。
 日本の子供アニメだとたいがいそこからは逃げるしな。立ち向かったのもちゃんとあるけど。
・通俗だとは思うけど、幸せな終わり方でよかったよ。
 なんだかんだでそう思わせるだけの懐の深さは、作品に備わっていなくもない。



「神々の山巓」を観る。原作は未読。
海外監督がメガホンとったみたいだけど、夢枕獏ともあろう者がこの程度で満足したのかね。
6分37秒時点、朝焼けの描き方が甘いなどというレベルではない。この題材を扱ってこの描き方は犯罪的でさえある。
太陽と雲の位置関係からすると、照り返しを浴びた雲の美しさは息を飲むレベルになるはずで、
そこを描こうとしない美術監督なんて本当に筆を折ってもらいたいくらいだ。雲があそこに残る意義を知らないんだろうな。
クラックへ指を突っ込む描写とかも、いったいなに考えてんの? クライマーものでこれかよ。
あとグランドジョラス北壁の冬季登攀の話題持ち出すんなら、山野井妙子さん以上のキャラを創造してね。



「山古志村のマリと三匹の子犬」を観る。監督・脚本・構成・動画大野一興。原作桑原眞二・大野一興。
「あなた方は薔薇を見れば美しいと仰言り、蛇を見れば気味がわるいと仰言る」たぐいの、卑しい凡俗の感受性。
べつだん客がそうであっても悪いことはないけど、作り手にこの種の腐臭を撒き散らされてはかなわない。



「東のエデン 劇場版1」を観る。原作・脚本・監督神山健治。81分。初見。原作などは未読。
ずいぶん大風呂敷を広げているみたいだけど、なんか胡散臭いなと勝手に感じた。
人間同士が出会い、新たな関わりによって両者に変化が生まれることが、現実でも創作物でも物事の根幹なんだけど、
本作ではミサイルやスーパー携帯電話があれこれ飛び交っているだけだと思うから。
王様を成り立たせるには王族や貴族たちや臣民が要る。いくらかの見どころは感じないではなかったけど。



「劇場版生徒会役員共」を観る。監督金澤洪充。61分。原作その他は未読。
内容はなにもない。ただそこそこ笑えたからべつに文句もない。
妖怪リア充殺しや角オナとかな。パンスト並にもっと下品だったら好みだったけど。
今石洋之はかなり苦手な演出家だけど、そのあたりは上手くやってたんだな。



「のんのんびより劇場版」を観る。監督川面真也、脚本吉田玲子。71分。2018年。
原作その他は未読。劇場版として最低限のラインはクリアしている。
夜の砂浜とか綺麗だったよ。あと一番最後の演出も好き。でも沖縄観光の映画なのに、
沖縄行きチケットを得るのが開始10分も経ってからなんて、凄い尺の使い方だね。



「ゴブリンスレイヤー劇場版」を観る。60分。監督尾崎隆晴。
べつだん女の子が可愛く描けているから、それはそれでいいと思うよ。
死のリスクを承知で行動している小集団において、リーダーが死を招く単純な判断ミスをするなんて
ありえないんだけどね。彼は安全な予備プランをいつだって臆病なくらいに練っているし、
それをしないリーダーがいたとしても、メンバーは最終的に酷烈な言動で報いるから。
あとレンタル版にさえオーディオコメンタリーの特典があったことは書き添えておく。



「映画大好きポンポさん」を観る。94分。監督・脚本・絵コンテ平尾隆之。原作は未読。
可愛いヒロインに萌える目的なら充分だ。表情やポーズもわりと百面相だし。
作品としては好みじゃない。映像表現において、技巧を用いすぎている。
題材が「アニメによって、実写映画の制作現場を表現する」で、
しかもハリウッドもどきという華麗な舞台なんだから、ある程度はそこを許容できるにしても。
あと脚本弱いと思うよ。せめてネタがかぶってるAVキングくらいには到達してほしい。
らくえんレベルの楽しさは望まないから。



「劇場版からかい上手の高木さん」を観る。72分。監督赤城博昭。原作山本崇一朗。
悪くはない。女の子たちがかなり可愛いからべつだんいいんじゃね。
教室や学内プールのシーン、たぶん資料見て描いてないかもなーとかって思うし、
あちこちでその手の甘さは見受けられるけど。
劇場版萌えアニメというデコレーションケーキにおいて、ヒロインたちのキュートさは苺であり
甘く蕩けるクリームだけど、地味なシーンの堅実な作りはスポンジケーキにあたるんだよね。
苺やクリームだけじゃ最高のケーキなんて出来ない。
まあ、しょうもない品評会ではなく出てきた茶菓子を楽しむことが、ケーキ屋で客がすることではある。



「マロナの幻想的な物語り」を観る。アンカ・ダミアン監督。TAAF2020のグランドプライズとやらの受賞。
91分。要するに、国内外にいくらでも亜種が転がっている、画技だけが突出した睡眠誘導映画。
こういう宗匠俳句がアートだってほざくんなら、俺は一生鈍感な愚民大衆の一員でいいよ。



「ドラゴンクエスト ユア・ストーリー」を観る。原作は大昔にちょい好きだった。
総監督山崎貴、監督八木竜一・花房真。・・・オチどうこう以前に、画面作りがなってない。
冒頭の豪雪の寒村の山小屋は、あれ雪崩で三日保たないよね。
崖沿いの急峻な絶景を描きたいなら妙義山系とかを参考にすればいいのに。
おまけに小屋のそばでチャンバラやってるしさ。剣戟の響きで雪崩が起きて全滅だな。
そこから始まって、本当に映像作家の作品なのかと疑わせるシーンがえんえんと続く。
たとえば創作物で雪原を走り回るシーンを描くなら、それがもたらす喜びや厳しさや美しさを
表現したいわけなんでしょ? そこがまったく感じられない。
この総監督の作品は初視聴だけど、これじゃどうしようもないでしょ。





「ジョゼと虎と魚たち」を観る。98分。タムラコータロー監督。原作その他は未読。
作品が真実に到達している確証がうかがえない。ヒロインのジョゼだけは別かもしれないが。
全般的に、背景から人物が浮かび上がってこないキャラデザだ。

・ダイビングシーンが、現実なり最上級のテレビアニメ群の水中描写なりに、まったく及んでない。
四大のなかでも水は最も簡単に人を殺すし、水の美しさはいつだってそれを背景にして成立している。

・14分09秒時点の、しゃがみこんでた主人公が教授の前で立ち上がるシーンなどは、
ダイビングやってる若者とも思えない年寄りくさい動作だ。多少は消耗する日々なんだろうけど。
しかも無意識的な緊張感で俊敏に動いてしかるべき、目上の大人の前でのふるまいなのに。

・23分の夕暮れの海みたいな、きわめて重要なシーンの美術が甘い。この色合いはねーよ。
全般的に夕焼けがアレだ。雪のシーンはそう悪くはないけど。

・81分前後の大勢の拍手シーン。舞台なり映画館なりで傑作に出会えた経験でわかるが、
掌だけじゃなく肩や上体を動かし、自然と前のめりになるのが全力の拍手だ。まして幼児たちなら。

それ以外にも色々。結局のところ、神は細部に宿るんだよね。良いシーンも少なくないのはわかるけど。
あと個人的に山野井泰史・妙子夫妻に大きな敬意を払っているから、作中の重大な二箇所(三箇所?)に
致命的な違和感を覚えるけど、ネタバレすぎて話しようがない。
あとなんで、目隠しネタとか世紀の3大がっかりおっぱいネタとか極上素材を活用しなかった? 鶏肋だな。
純情な作風を保ったままでそういう美味しいお遊びを入れるやり方って、いくらでもあるのに。
とはいえヒロインの挙措動作は魅力あるから、たいていの客は満足するだろう。





「羅小黒戦記 ぼくが選ぶ未来」を観る。106分。監督MTJJ。
べつだん悪い作品じゃない。これ以下は日本の劇場版アニメにいくらでも転がってる。
でも一言でいえば、肚が薄いよね。ジャンプ漫画系のバトルアニメだから仕方ないし、
崩壊3rdだの魔道祖師だのの予告編にも共通した印象だから、それが現時点での中国アニメの限界なのかもだけど。

・前半の主な背景である森の描写が甘い。美術監督はなにやってるの?
 45分20秒、山風でキャラの衣服ははためていているのに、背後の梢はまったくそよいでないとかもひどい。
 もし作画カロリーが底をついていたんなら、梢とかを描かなければいいのに。
・移動物の上(電車の屋根)でのアクションが、まったくツボを押さえていない。
 風圧・カーブでのG・急加速や急減速・車内から屋根上への干渉・トンネルなどの地形の活用・
 連結器やすれ違い電車などのギミックの活用・足場の悪さの活用。そういうお約束がなにもない。
 そもそもこの手のアクションって「落ちたら死んじゃうな」っていう、人間主人公でこそ映えるシチュでしょ。
 さらに4分59秒や44分08秒で、田舎の畦道を走る軽トラの荷台の振動がほぼまったく描かれてないけど、
 車両への感受性がこれほど乏しい作画班が、電車アクションなんて取り組んでいいわけ?
・アクション描写が軽すぎるし、大半の箇所で軽さを生かせてない。
 たとえば20分06秒の、両手を軽く後ろに組んだままの大跳躍ならわかる。
 あんな姿勢での跳躍は人体の力学を無視しているから、神仙じみた超越的な体術なんだろうな、と。
 でも他のたいていの箇所は、なまじ実在の武道をなぞってもいるから、
 こいつら雑魚も含めて全員重力制御でもしてるのかって違和感になる。
 それに破壊された氷塊やらコンクリ破片やらの無機物さえ、落下描写とかが軽い。
・ショタ主人公の猫形態時のキャラデザが浮きすぎている。前半出ずっぱりだから悪目立ちしてる。
・シナリオもあちこちがアレ(検閲がありうる国なのは承知してるが)。もともと現実世界の都市などで、
 メルヘン世界の妖怪たちが活躍する世界観って成立させるのが難しいけど、そこを雑に処理している、とか。
 駄作含めたプリキュア劇場版程度でさえ、そこは結構丁寧に押さえているんだけどな。
 舞台を異世界・橋が落ちた人工島・おまわりさんが眠っている(と子供が考える)夜間・
 ど田舎のスキー場などに設定し、主人公たちの戦いへの警察や軍隊の介入を防ぐっぽく見せるとか。
 そういう大枠の設定だけじゃなく、細部もだ。たとえば劇場版スマイルプリキュアの14分19秒。
 偽サーカスのテントの幻が消え失せるとき、それをスマホで撮影しかけていた一般人が驚く描写がある。
 それで「一連のプリキュアたちの戦いは、人目には触れてませんよ」って客たちに提示している。
 撮影対象がプリキュアじゃなくテントだった点も、作り手が物語の勘所を押さえているのがわかる。
・その他たくさん
・タイトル画面の工夫やら、96分15秒あたりの雲の描写やら、細かい長所も色々ある。
 だから才能あるメインスタッフたちが、手を抜かずに作っているってのは理解した。

別にキャラ萌えはできるから、それはそれでいいんだけど。
美童のナタ主役で巴拉拉小魔仙かサーモン尾鮭あさみのスピンオフでも作ればいい。
ジャンプ系アニメより東映系アニメのほうが、いろいろと有意義な内容になりやすいし。



以上。
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