【おはなしのくに】変わるボンバイエと必要のない私【小説】
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変わっていくボンバイエを邪魔したくない女子高生の話 ボンバイエくんは高校に入ってから少しずつ明るくなった
本人の意思で本人の方法で私のいない世界で変わっていった 私と埼玉ボンバイエは幼馴染だ
同い年家は隣同士誕生日も同じ月お母さんお父さん同士も仲が良く必然的に私たちも生まれた時から一緒にいる時間が多かった 小さい頃のボンバイエはそれはもう近所では有名な美少年だった
白い肌にサラサラの黒髪瞳はガラス玉のようにキラキラしていて光の元で輝くような男の子 その姿はまるで絵本や物語の中から出てきた王子様そのもの
ママさんや井戸端おばさんたちにとどまらず小学生中学生高校生と誰からもモテる地域のアイドル的存在だった しかしここで問題が一つ
ボンバイエは生まれながら『超』のつく人見知りだった 少なくとも私が覚えている記憶の中のぼんばいえくん(4さい)は既に人の目を過剰に気にする男の子
ボンバママ曰く自我が芽生えるのと同時に人見知りも形成されていたとか そのため私の記憶の中のボンバイエは常に白いフードのパーカーを羽織っていて前髪は目元を隠すように長い 最初のうちはボンバイエの両親もどうにかしようとあれこれ試していたらしいがパーカーを脱がそうとすれば号泣し前髪を切ろうとすればこれまた号泣されてしまい諦めたのだそう その病的な程の人見知りが転じてボンバイエは人と接することが苦手で目立つことはもっと苦手な内気な性格になってしまった しかしそれに反してボンバイエは目立たずにいるのは無理のあるハイスペックの持ち主
運動神経がべらぼうによく何をやらせてもその場の誰よりも上手くこなしてみせる
おまけに負けず嫌いなため手加減はできない 運動会の徒競走は常に一番だったしたまにやるサッカーではエースストライカー夏の水泳ではトップスイマーと並外れたスポーツの才をなんでもないような顔をして見せつけていた そうして『運動のできる美少年』というボンバイエにとっては大変不本意な位置付けは着々と確立されていった 運動神経は良く顔も恐ろしいほどに美しい性格こそ内気なもののそれを微塵にも気にさせないスペックの高さそんな少女漫画にでも出てきそうな男の子が女の子にモテないわけがない 少なくとも1日に一回は女の子に絡まれていたしバレンタインになるとすごい数のチョコをもらっていた そしてその万年モテ期は成長していくのと比例的にどんどん凄みを増していく
小学生高学年の頃からちらほらと目立ち始めた女の子からの告白は中学生になると1ヶ月あたりの回数を約倍に増やした 最たる原因は先輩という小学校の頃は確立されていなかった存在 引きこもりになったりいじめられるということはなかったもののその頃のボンバイエは常に疲れているようだった その憂いを帯びた顔がまた受けてさらに告白の回数が増えるという悪循環もうどうしようもない まあ当時の先輩たちの気持ちがわからないでもない
その頃のボンバイエは本当に本当に綺麗な男の子だった ちょうど青年へと大人びていく時期だった
少しずつ骨格がたくましくなる身体幼さゆえの無垢な感情と青年期特有の複雑な感情をたたえた美しさ
ボンバイエを見慣れている私でさえ時折ハッと息を飲むような美術品と例えられてもいいようなひとりの男の子 ある時には男子が「あいつ綺麗な顔してるよな…」としみじみ呟いていたいたのを聞いたことがある そんな不可抗力によって入学してから怒涛のように押し寄せた女の子からの告白は夏休みまで衰えることはなかった 私たちが中学一年生になった夏のある日
偶然お互いの部活が同じような時間に終わって一緒に帰ったその日 ボンバイエは珍しく自分から弱音を吐いた
贅沢な悩みなのはわかっているがなぜこんなに苦労しなければいけないのかと その顔がどこか悲しそうでどうにかしてあげたくて
そう思った私はきっと暑さにやられていたのだ 「じゃあ、私と付き合わない?」
気づいたらそんなことを言っていた当然隣のボンバイエは訝しげに顔をしかめた 「お前さん何言っちょるんだ」
「だって困ってるんでしょ?誰かと付き合ってるってなれば少しはましになるんじゃない」
「そういうものか」
「そういうものなの相変わらずそういうことにはからっきしだね」
「そうだとしてお前さんになにか利点はあるか?」 「利点?」
「だからボンバイエとお前さんが付き合ったとしてお前さんになにか利点はあるのか」
「あー漫画とかドラマとか見てて誰かと付き合うってことに純粋に興味があって私とボンバイエが付き合えばウィンウィンだと思うんだけど」
だからどう? そういつもの楽観的な私に見えるようにボンバイエの顔を覗き込んだ実はその内心物凄くドキドキしていた ボンバイエに伝えた理由本当は違う
というかそれが本心なら私はだいぶおかしい 私は困っていたボンバイエに漬け込んでボンバイエの彼女になるようこじつけたのだ
私もボンバイエのことが好きだから
小学生のとき恋に落ちてから今までずっとボンバイエのことを想っているから これまでのこともありボンバイエは恋愛ごとには抵抗を持っていた
だから今までの関係が崩れるのが怖くて自分の想いを伝える気にはならない
だけどこれからもボンバイエのそばに居られる確証が欲しかった ボンバイエは私の本心など知るはずもない
あの時もこれからも
そしてきっとボンバイエも暑さにやられていたのだ あまりにも無理があるこじつけのような動機に何の疑問を抱く様子もなく
そうかと納得してしまった
よろしくそうして交わした色気も何もない握手が私たちの彼氏彼女という関係の始まりだった 付き合い始めたといっても変わったのは二人の関係性に付く名前が幼馴染から彼氏彼女になっただけ
他は何も変わらない 当たり前だお互いの利益のためにと聞こえのいい建前で無理矢理付き合い始めたそんな関係なのだから だから私たちはデートに行ったこともはたまたキスをしたこともない
時折一緒に登下校したり休日の少しの時間に電話をしたりお互いの誕生日にお菓子を送りあったりその程度だ しかもそのどれもが付き合う以前からしていたこと
そう考えると私たちは随分仲のいい幼馴染だったのだと思う いずれにせよ特に恋愛的に発展することはなく私とボンバイエが付き合っているという事実だけがしっかりと広まった 結果的に完全にとはいえなくてもボンバイエの女除けになったから付き合うことに意味はあったのだろうが そうして名前だけの恋愛関係は続いていき付き合い始めて二年と半年後私たちは別々の高校へ進学した 私は自分の学力に見合ったというだけの公立高校へ
ボンバイエは私立高校へ
電車の方向も真逆
私はバイトを始めてボンバイエは部活に入部した 一緒に学校へ行くことも一緒家に帰ることもなくなった
ただでさえ多いとは言えなかった一緒にいる時間はますます少なくなった 高校に入って初めてボンバイエの部活を見にいった時仲間と笑い合うボンバイエを見て愕然とした
時折見せる笑顔は私だけの特権だとずっと思っていたから そしてその時ボンバイエが前髪を切ったことに気づいた 高校に入ってしばらく経った頃ボンバイエは変わりたいと言った
このままではいけないと決意を語る目はいつになく真剣で声もはっきりとしていた そのきっかけを何がボンバイエをそう思わせたのかを私は知らない ボンバイエのことはなんでもわかっているつもりだった好きなものも嫌いなものもどうやって笑うのかもどうやって泣くのかも いつのまにか代名詞みたいなものだったパーカーのフードを被らない日が増えるようになった
長かった前髪は短くなった
感情が豊かになって笑う回数も増えた きっとボンバイエはこれからも変わっていく
そして多分その世界に私は必要ない その事実がとても悲しくてでもボンバイエの進む道の邪魔にはなりたくなくて だから私の傷がこれ以上深くなる前にボンバイエを邪魔してしまう前に 「…と言うわけで別れませんか」
そうまるで出かけの誘いをするかのような私の言葉にボンバイエはきょとんとした顔をする
その顔を相変わらず綺麗な顔だなーと眺めながらこの状況をどこか他人事のように思った 駅前のファーストフード店
窓際は寒いからと座った暖房の温風が当たる席
向かい合ってポテトをつまみながら私はボンバイエに別れ話を提案していた 理由は私自身の心の擁護のため
ただその本心は決して口に出さなかっただってそれはつまり私の想いを伝えることになってさらにいうとただのわがままであって ここで私の独りよがりな事情を曝け出すのはきっと筋が違う
綺麗なままの関係は綺麗なまま終わらせたい そうして事実を隠してあくまでボンバイエのためだと伝えたのだがボンバイエはあまり納得していないらしい
腑に落ちないと言わんばかりの顔をして口を開く 「…お前さん本気でいっちょるのか?」
「それ今言ったでしょもう一回言えってか」
「いやお前さんの言いたいことはわかったただそのために別れる必要はあるのか?」
「あるよ存分にある…ボンバイエは変わりたいんでしょ変わるには何かに執着することは邪魔になる変わるっていうのはそれまでの自分の考えとか信念とか捨てる必要があるってことボンバイエの方がわかってるんじゃない?」
「おっといけねぇお前さんの気にさわっちょったか……」 語気を強めて何か続けようとしたらしいボンバイエはしかしうつむいて黙り込んでしまった
そしてやや間があった後「…仕方ないね」と小さい声で返ってきた いくら偽りの付き合いだったとしてもいきなり別れを告げられれば驚くし自分に対して自信を失うのかもしれないあくまで私の推測だけど 「まあ別れるっていってもただの幼馴染に戻るだけなんだからさあんま気にせずいこうよ!」 別れることが原因でボンバイエが前に進めなくならないように場を明るくするように笑い飛ばした私は残っていたポテトを全部口の中に放り込んだ
少し冷めたポテトはいつもより塩辛かった 師走の夜は早い
冬至を目の前にした街はすっかり暗く時折吹く風がひどく冷たく身に染みる 店から家までは徒歩10分
寒さに身を縮こませながら歩く静かな住宅街に響かないよう小声で話しながら
ただその間もボンバイエの返事は曖昧でその顔は久し振りにフードの中に隠れていた まさかそこまで落ち込んでしまうとは思っていなかった ごめんねと心の中で謝る
実際声に出していうのは憚れた言ってしまえば別れる口実が成り立たなくなるような気がして そうして会話とは言えない会話をしながら歩いていればあっという間に互いの家についていた じゃあねという私の声にかろうじて短く返事をしたボンバイエはさっさと家に入っていく
その背中を見送ってから私も自分の家へと入りそのまま二階の自室へと向かった 明かりをつけるのも早々にベットに飛び込む
締め切った部屋はひどく静かで目を瞑ると自分の心臓の音が響くように聞こえる沈んだ体はひどく重くてこのまま底まで落ちていきそうに感じる 流石に寝るのはいけないと上体を起こす
何気なしに視線を動かしていると不意に窓の外に見える光が気になった
ベットから立ち上がり窓際によっていく 憎いくらいに暖かい橙だったその光をどうするでもなくただ突っ立ってぼんやりと見つめた 小さい頃から内気なボンバイエが心配だった
友達と言える存在は私しかいない誰かに話しかけられるとおどおどしてうまく話すことができないそんなボンバイエを放って置けなくてずっと一緒にいていつの間にか好きになっていて いつからボンバイエは私に頼らなくなった?
いつから私はボンバイエのことがわからなくなった? ふと我に帰ると視界が滲んでいた
頬を濡らす涙に触れていつの間にか泣いていたのだと知る ああなんだ
何が綺麗なままだ自分のためだったはずじゃないか
なのになんだこの様は未練たらたらじゃないか そうだボンバイエと別れたところで特に何が起こるでもない世界は滞りなく流れていく
こうやって泣いていてももう過ぎたことなのだ
ただむなしいだけだ 聞こえていないと思ったらしい母親の二度目の呼びかけに返事をしてから目元をそっと拭う 部屋を出る前に鏡に向かい合い無理やり笑顔を作った
涙は誰にも気づかれないように心の中へしまいこんだ 快速電車が駅を突き抜けていく
周囲の空気を巻き上げるように吹く風はやはり寒くて思わず身震いをした 時刻は夜7時前
知り合いと極力合わないようにと選んだバイト先の最寄駅である大船は駅も小さく帰宅ラッシュ直撃の時間帯でも混雑はしていない
列の最後尾で電車を待ちながらここ一週間ですっかり見慣れてしまった単語帳をめくる ボンバイエと別れてから一週間になった
自分で作った傷はあまりにも大きくてまだ少し息が苦しい
傷から目をそらすようにいつもは頑張りもしない勉強とめんどくさいと感じるバイトに励む日々だ 何かに集中するというのはいい辛い気持ちもその時だけは軽くなるようで
そうして苦し紛れに日々を過ごしてようやく傷口が塞がってきた今日この頃 なのになぜこのタイミングで彼らにあってしまったのか 「おっボンバイエの彼女やん」
大して広くもないプラットホーム私に声をかけてきたのはボンバイエの友達二人だった
笑顔が素敵でスリムな彼がクソキモ君
一見暗そうに見える背の高い彼が陰湿実民君 クソキモ君は一見チャラそうだけど実は穴素や穴玄思いのとてもいい人
陰湿実民君はしょっちゅう素っ頓狂な発言をするけどたまに核心をついたことも言う人 文化祭に行った時ボンバイエが教えてくれた
ボンバイエが自分から友達だと紹介してくれるのは初めてで驚いたのを覚えている 思えばその頃からだったかもしれない
別れた方がいいんじゃないかと思い始めたのは 今彼らには会いたくなかった彼らはボンバイエの面影が強すぎる 私のことを「ボンバイエの彼女」といったあたりまだボンバイエは私と別れたことを言っていないらしい 確かにボンバイエが彼らに私との関係をどうやって説明していたかは知らないが彼女と別れたというそこそこ重い事実私の知る限りではボンバイエがあっさり伝えるはずない かくいう私も友人はおろか家族にさえ言えていない
泣きそうなほど痛む傷をえぐり返すほど私は強くない もちろんそんな事情など彼らが知るはずもない
クソキモは何の気なしに「最近豚元気ねーけどなんかあったんか?」と訪ねてくる
一瞬返しに迷ったが真実はボンバイエの口から伝えられた方がいいだろう 「あー今ちょっと喧嘩してて…多分それが原因じゃないかな」
嘘だとバレないようなありがちな理由を本当にあったかのようにいう
するとあっさり信じ込んでくれたらしく二人は驚いた様子で私を見る 「潮ほーんお前ら喧嘩するんか」
「そりゃまあお互いに考えてることが全く同じわけないし何考えてるのか全部わかるわけないからねそんなに意外?」
「まあそらなぁ?」
「せやろか?だって豚しょっちゅうお前のこと話しとるしお前の惚気すごいぜ?」
「…はい?」
なんだそれは 「例えばほら豚が前髪止めるのに使っとったヘアピンあるやろ?」
「ああ青いやつね」
「それや豚前髪切ってからつけてはいないがずっと胸ポケットにつけとったで彼女にもらったものやからってな」
「あのヘアピンお前があげたんやろ?」
いや本当になんだその話は! さも当然のように明かされた衝撃的な事実に叫びでそうな声を慌てて飲み込む ヘアピンをあげたのは事実である
といっても小学校低学年私がまだボンバイエを好きになる前の話だ 単に長い前髪が見てて鬱陶しいという理由でボンバイエが使いやすいように青色の10本セットをあげた価格は300円也
お得好きなボンバイエが食いつきそうだ 授業中だったり部活時間だったり人と目が会うことが少ない時はよく使っていたのを見たしかも中学卒業までずっと まあ半額惣菜が好きだし貯金の為の節約で使い続けてるのかな?
ただまさか本来の役目を果たさなくなった後でさえ常に持っているとは知らなかった
だってたった数回だけ見かけた制服姿のボンバイエはまだ前髪長かったし!文化祭に行った時は制服着てなかった! 衝動的な感情を二人にぶつけるわけにはいかずかといって無言でいるわけにもいかず「そそそうなんだ」と返すことしかできない いったいどういうことなのか気になって彼らに聞こうとした
がしかし私が口を開くより先に向かい側の線に電車が入ってくる
どうやら私とは行く方向が違うらしい到着した電車を見たクソキモ君が「あやべ」と声を漏らした 「ほなまたな!豚相当落ち込んどったから早く仲直りしたれよ!」
「今度は豚も一緒の時に話そうぜ!」
そう言って踵を返した彼らは反対方面の電車に飛び乗って行った 徐々に加速していく電車を見ながら私はただ呆然として衝撃の事実を理解できないままいたのである ちくしょうクソキモ君と陰湿実民君め
君らなんてタイミングでなんて事実を私に教えてくれちゃったんだよ既成事実 電車に揺られ人混みの中こっそりと心の中で悪態をつく
もちろん彼らになんら罪はないがそれでもやり場のない思いをぶつける場所が必要だった
これが怒りと驚愕に狂った私の本性だよ だって彼らの話が本当ならまるでボンバイエが私のことを好きみたいじゃないか 確かに事実そうだとすれば色々と納得がいく
ひどく落ち込んでいたのもそれを引きずってるというのも
でもだとしたら大した反論もなしにあっさり別れることを認めたのはなんでだろうか 私の言い方が反論できないほどきつかっただろうか
それとも惚気ていたというのも彼女がいるアピールで別に付き合わないならそれでもいいということなのだろうか
もう何が何だかわからない 結局混乱は解けぬまま気づかぬまにか最寄駅の東浦和に着いてしまい慌てて電車から降りる これはボンバイエ本人に問いただすべきなのだろうかしかし自分から言い出して別れた手前それはいったいいかがものなのか
そろそろ幼稚な言動から卒業するべきなのかもしれない そんなことを悶々と考えながら改札を出たその時
視線の先柱にもたれかかるフードを被った制服姿を見つけて思わず立ち止まる 周りが訝しげな目で見るのがわかったがそれでも驚かずにはいられなかった
見間違えるはずがないもう何年も見てきたのだから 「なんでこんなところにいるの?」
慌てて歩み寄っていってそう聞くと
「おっすクソキモ達からお前さんと会ったと聞いて待っちょった」
途中から近寄る私に気づいていたボンバイエはまるで聞かれることをわかってたかのようにすぐに答えた 「どうして」
「…少し話がしたい」
一つ息をついてからしっかりと目を合わせて言われるその目にその言葉に心臓がどきりとする はっきりと意志を持った言葉を私は拒むことはできなかった 人がいるところではあまり話したくないというボンバイエの意思で私たちは店には入らず住宅街の中を歩いていた 道中会話はなくただ沈黙が続く
夜の静けさも相まってその沈黙が酷く重い何か話題をと思ってもうまいように言葉が出てこない こんなことは初めてだ
いままでは私から何か話しかけてそのまま会話をすることが常だったから 不意に一週間前の自分の言葉を思い出して馬鹿らしくなって思わず笑いそうになる 何が元の関係に戻ろうだ
付き合う前よりずっと気まずくなってるじゃないか そうして会話もないまま私たちが立ち寄ったのは近所の公園
東浦和駅から家までの道の間にあるどこにでもあるような場所だ
昔はよく遊んだいつしか街の風景に溶け込んで足を運ぶことはなくなっていた こんなに小さい場所だったんだと思う
小さい頃はサッカーグラウンドのように広いところだと感じていたのに 入り口付近のベンチを素通りして毎日のように遊んでいたブランコに座る
懐かしさを感じる反面脚を伸ばさないと窮屈なほど自分の体には小さくなっているのが少し切ない 初めて眺める夜の公園は昼間にまとう賑やかさや温もりを一切感じさせないほどに静かで寒い
塗装がところどころはげた金属の遊具はひどく重そうに見える握ったブランコの鎖が恐ろしく冷たかった 「…お前さんに別れようと言われてからずっと考えちょった」
重い沈黙の中私と同じようにブランコに座ったボンバイエはついに口を開いた 「なんでお前さんが突然あんなことを言い出したのか理解に苦しんだ…理由はわかっちょる納得もしちょる
…お前さんがボンバイエのためを思ってくれちょるのはわかっちょるだけどボンバイエは…」 そうして口を噤んでしまったボンバイエを見てそういうことだったのかとさっきから引っかかっていたことに納得できた ボンバイエは伝えられた私の気持ちを尊重しすぎて自分の気持ちを挟む余裕がなかったのだ
ボンバイエは昔から優しいから 「…ごめん嘘ついた」
つぶやくような私の声にボンバイエが不思議そうに見つめ返してくる
きっと驚くんだろうなそう思いながら真実を語る 「あのね私ボンバイエのことが好きなの」
「!!…えっ!?」
「やっぱり気づいてなかった」
途端爆発したように真っ赤になるボンバイエが面白くて少し笑ってしまう ひとしきり笑って一つ息を吐くと私は話し始めた
「最初付き合おうって言い出したのだって全部私のエゴなの困ってたボンバイエに漬け込んで私の都合のいいように仕組むみたいなことして」 「じゃあなんで別れるだなんて言ったの」
「怖かったからボンバイエはどんどん変わっていった私の知らないうちに私の知らないボンバイエになってくみたいだった
あ誤解しないでね変わっていくボンバイエはかっこいいよ本当に
でももボンバイエが変わっていくその時に私はボンバイエに何もしてあげられない…ボンバイエはきっとこの先もずっと変わっていけるよでもその時きっと私はいらないそれが怖くて苦しくてきっと耐えきれないから」 今まで誰にも話したことのなかった私の本心そのままを聞くボンバイエは驚いたように目を見開く
そりゃあ楽観的に見える私がこんなことを考えていたなんて想像できるはずない
これが恋心に狂った私の本性だよ 「幻滅したよねこんな自分勝手な理由でボンバイエのこと振り回してごめん」
言ってしまったきっと失望されてしまった
けれど気持ちはどこか清々しかった誰にもうち明かすことのできないでいた本心を形はどうであれ昇華することができた気がした 隣に座るボンバイエは私から目を逸らして長く重い溜息をついた
やっぱり失望させてしまったのか ごめんね心の中でもう一度謝る
きっと私がしたことは何度謝っても簡単に許されることではないだろうけれど そうして再び沈黙が訪れる
これから私たちの関係はどうなってしまうのだろうそんなことをぼんやりと考えていたその時 「違う」
不意にボンバイエは言った
その意味がわからなくてボンバイエの様子を伺うように見つめるとうつむいていた顔を上げたボンバイエと目が合う 「お前さんは勘違いしちょる」
語気を強めたボンバイエはブランコから立ち上がり私の前に向かい立った
フードの中の顔は怒っているようにも悲しそうにも見える 「変わることがそんなに簡単なことなわけない」
「え?」
「お前さんだって言ってた変わるってことはそれまでずっと当然だと思っていたことを捨てることと同じだそれが簡単にできたならボンバイエとっくに変わっちょる」 どういうことかとボンバイエをじっと見上げていると私の視線にどこか気まずそうに口を開く 「怖いに決まっちょる変わった先がどうなるのかもわからないのに何も感じずに変われるわけがない」
「じゃあなんで変わりたいなんて」
「高校に入ってお前さんと離れてからそれまでの自分の世界がどれだけ狭かったか知ったボンバイエがどれだけお前さんを頼りきっていたのかも」 自分が情けなくなったそう言って悔しそうにボンバイエは手を握る
そこまで考えていたのかと初めて知ったボンバイエの思いに私は驚いていた 私が何も言えずにいる間にボンバイエは続ける
「だから変わろうと思ったお前さんの隣に堂々といることができるように
お前さんがいるから変わろうと思えたお前さんがいるから変われると思ったボンバイエはお前さんがいなきゃ変われない」 揺るがない声ではっきりと言い切ったボンバイエは一歩詰め寄って私の目の前にくるとフードを外して片膝をつく
昔と同じガラス玉のような目が真正面に私を見据える
その真剣な様子に思わず息をのんだ 「俺は交際したいと思ってるもう一度ボンバイエと付き合っちょくれ」
まるで物語か何かの王子様のような堂々とした告白に心臓が大きく跳ねる ボンバイエは変わった
私の知らないうちに
けれどやっぱりボンバイエはボンバイエだやると決めたら一本筋を通してやり通すかっこいい私の幼馴染だ 「そんなこと言われちゃったら断れないじゃんしょうがないな」
笑って言ったつもりだったけれどその声は震えていつの間にか涙が溢れていた 一週間前から堰き止めていたのだ
止めようと思っても溢れ出てきてなかなか止まらない 突然泣き出した私にボンバイエは何事だと慌てているどうしたらいいんだと少し考えた後閃いたような顔をしておずおずと添えられた手がそっと頭を撫でる 大きくて寒さで少し冷えた手が不器用に動かされる
そのぎこちない動きがいかにもボンバイエらしくて笑ってしまう心に温かいものが広がるようだった 「ありがとう」
涙交じりの笑顔でそう伝えるとボンバイエは安心したように笑った そうやって私を想って笑うボンバイエを愛おしく思うのだった 変わっていくボンバイエを邪魔したくない女子高生の話でした なんか豚が美化されとるが比嘉なのウケるな
定期的に本性表してんの潮 リアタイで読んだがここほんまキモくて好き
>
「…お前さん本気でいっちょるのか?」
「それ今言ったでしょもう一回言えってか」
「いやお前さんの言いたいことはわかったただそのために別れる必要はあるのか?」
「あるよ存分にある…ボンバイエは変わりたいんでしょ変わるには何かに執着することは邪魔になる変わるっていうのはそれまでの自分の考えとか信念とか捨てる必要があるってことボンバイエの方がわかってるんじゃない?」
「おっといけねぇお前さんの気にさわっちょったか……」 暇やからちゃんと読んだんやけど
普通にええ話やな
ボンバイエについては美化されすぎやがそれがまたええ 『RUST(ラスト)』
シーズン7/ファイナル(第6話)
『RUST#26(視聴者参加)決戦。vs.dcN』
(21:20〜放送開始)
hts://youtu.be/9FB_tadjEKs とぅりゃ!!!
キンキンキンキンキンキンシュッシュッキーン 【PR】なんでも実況G板を盛り上げよう!初期メンバー募集中
なんでも実況G
https://nova.5ch.net/livegalileo/
Q.なんでも実況Gとは?
A.なんJへの5ch人口一極集中状態を解消するために1ヶ月前に作られた新板です。
https://agree.5ch.ne...perate/1608930977/74
74 名前:第三の男の娘 ★ (★ 99a1-ZoJI) :2021/08/27(金) 23:51:54.80 ID:CAP_USER9 さ
>>55
なんでも実況(ガリレオ)
https://nova.5ch.net/livegalileo/
が新設されました
こちらも
なんでも実況(ジュピター)
と同じ設定とのことです
あわせて新型のサーバであり
耐久度も調査するとのことです
なんでもあり実況板(多目的実況板)ですので
いろいろな実況にお使いいただければと思います
前述の「なんでも実況M」と共にどうぞご利用くださいませ
※なんG公認キャラ案募集中(お絵描き使えます!)
tps://i.imgur.com/jlaM2as.png
tps://i.imgur.com/oShwDUO.jpg
tps://i.imgur.com/l6rqQhY.jpg 書き込み後一時間乳首たちっぱだったからオナニーして鎮めて辞めた🏵 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています