X



トップページMANGO
146コメント720KB
自衛隊がファンタジー世界に召喚されました【避難板】
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています
0002†Mango Mangüé(ガラプー KK15-CKty)
垢版 |
2018/06/12(火) 23:06:47.977565ID:OEAbHEGKK
大陸の沿岸部

洞窟をを利用した粗末に設置された天然のドックに1隻の潜水艦が停泊していた。
天然のドックといっても粗末な木製の桟橋が掛かっているだけだ。
094型原子力潜水艦『長征7号』は、中華人民共和国海軍が運用する弾道ミサイル原子力潜水艦である。
NATOコードは晋級。
海南島の亜竜湾海軍基地を出港して約半年。
当初は、日本国が実行支配する魚釣島近海まで航行して、日米の反応をみて帰還する簡単な任務のはずだった。
しかし、帰還中に何らかの異変が生じたのか本国への連絡はおろか、大陸の存在すら無くなっており、ひたすら大陸を探して航海を続けた。
そして、ようやく見つけた陸地は地球上のものとは明らかに違っていた。

呉定発中尉は最後の仲間だった乗員の墓穴を砂浜で掘り、埋葬を終えたところだった。

「副長達は・・・うまく行ったかな。」

すでに備蓄の食料は底を尽きた。
艦長を初めとする127名の乗員は、食料調達や周辺の偵察の際に化け物のような生物の襲撃や流行り病で次々と命を落としていった。
『長征7号』に立て籠り抵抗を続けたが、艦に装備されていた小銃や拳銃を持って、副長達12名が森に消えたのが3ヶ月前。
遂に呉中尉は最後の一人となってしまった。
残された武器は拳銃一挺。
弾丸は三発。
『長征7号』の魚雷やSLBMなどは使い途がない。
艦に戻って手製の釣竿で魚でも釣ろうか考えていると、銛や三ツ又の矛を持った人型の生物が海から上がって、呉中尉を取り囲もうとする。
人型の生物と言ったが、人は手足にヒレや水かきは無く、全身がうろこで覆われたりしていない。
何より頭部が魚のものだ。
拳銃を彼等に向けながら少しずつ後退する。

「魚野郎め、食われてたまるか!!」

呉中尉は食われていった仲間達の顔を思い浮かべながら最後の抵抗を試みることにした。

大陸西部
新香港

釣り針のように突き出た半島に守られた新香港は天然の良港である。
もとは大陸で覇を唱えていた帝国を、異世界に転移した日本が降伏させ、帝国海軍最大の根拠地であるノディオンの街をを割譲させたのが始まりである。
爆買い等の観光で来ていた約十万人。
転移の影響で失業した中国人労働者約30万人や一万人の留学生、日本人配偶者などを加えて約45万人が住民を完全に追放したこの地に住み着いた。
異世界チャイナタウンと日本では呼ばれている。
日本大使館が設置され、日本本土から大陸への玄関口となっている。
その日本大使館から一台の車が大使相合元徳と駐在武官である渡辺始一等海佐が、新香港主席官邸であるノディオン城に緊急に呼び出されたのだ。

「最近、呼び出される懸案事項があったかね?」
「新香港の武装警察と駐屯している16普連の演習は終わりましたし、海警も特に問題はないですし・・・」

渡辺一佐にも思い当たることはない。
車が場内に入るとすぐに応接室に通される。
すでに林主席と数名の武官が待っていた。
林主席は立ち上がり握手を求めてきて、相合も応じる。

「相合大使、急な呼び出しに応じて頂きありがとうございます。」
「火急な呼び出し緊急な事態とお見受けしますが?」

「新香港設立から五年、我が市でも異世界人と中華人民を見分ける為に戸籍の登録を行っていましたが、最近無登録の人民が城壁外で発見されてましてな。
本人は中華人民共和国海軍南海艦隊所属の呉定発中尉と名乗っています。
どうやら日本の異世界転移時に巻き込まれて6年も放置されてたようですな。」
「なるほど、海警か軍艦の生き残りですか。」
BBR-MD5:CoPiPe-e2bd7a9e1aeacd71c837c0857f88cce7(NEW)
BBS_COPIPE=Lv:0
PID: 75478
[0.238075 sec.]
This is Original

0003†Mango Mangüé(ガラプー KK15-CKty)
垢版 |
2018/06/12(火) 23:09:08.308074ID:0GsPn8NwK
転移直前に尖閣諸島に領海侵犯を繰り返していた中国側は海警船3隻と江凱II型(054A型)フリゲート常州。
中華民国の巡防船1隻が転移に巻き込まれて、日本の保護下に入っている。
そのまま新香港海警局の所属となったが、まだ取り零しがあったのかと渡辺一佐は考えていた。
だが林主席は首を横にふった。

「彼が乗艦していたのは『長征7号。』弾道ミサイル搭載原子力潜水艦で、どうやら核ミサイルが1基搭載されていたようです。」

相合も渡辺も絶句したが辛うじて言葉を捻り出した。

「これは本国通達事案ですな・・・」

冒険者のパーティーが地上に上陸して、近隣を略奪していたマーマンの群れを討伐していた。
シーフのマシューを先頭にマーマンがねぐらにしていた洞窟を安全を確かめながら入っていく。
洞窟の中は海に繋がっているが、巨大な黒い船が浮かんでいて放置されている。
リーダーのハリソンが船を見上げて呟く。

「たいへんだ、御領主様に知らせないと!!」

冒険者のパーティーは慌てて洞窟を飛び出していった。

新香港
主席官邸『ノディオン城』

日本大使相合元徳と駐在武官である渡辺始一等海佐が本国に問い合わせる為に急ぎ大使館に戻る為に退室した後、林主席は背後に控えていた武官に声をかける。

「常少将、現在遠隔地まで派遣できる部隊はいるかね?」

常峰輝武警少将は、林主席と転移前の在日中国大使、陸軍駐在武官だった頃からの付き合いである。
さらに今の日本側との会話の内容から目的地までの距離も勘案して返答する。

「陸自16普連との演習を終えた武警第6大隊から50名ほどなら、弾薬や車両の燃料の残りを集めさせて捜索に当たれます。」
「よし、疲れているかもしれないが出動させて『長征七号』を抑えろ。
自衛隊や米軍が出てきたら、『長征七号』は中国籍なのは確実だから新香港が接収すると主張しろ。
但し、武力による交戦は避けろ。
こちらには呉定発中尉という案内役もいるから先手は取れるだろう。」
「現地組織が介入してきた場合は如何致しますか?」
「反乱を名目に武力によって鎮圧だ。」
「畏まりました。
燃料、食料、弾薬の手配ができしだい出発させます。
現地までは2日ほどで到着すると思います。
しかし、何故日本側にも教えたのですか?
我々が密かに確保してからでもよいと思いましたが・・・」

林主席は武官全員に伝わるようにソファーから立ち上がって見渡す。

「我が新香港は、日本に軍事的、経済的に依存しているのが実態だ。
核兵器一発手に入れた程度で日本に対抗すれば、北朝鮮の二の舞になるだけだ。
だが高く売り付けることは出来るだろ?
先に教えるのは、我々は日本と敵対していないという意思表明だよ。
ただ、先に核兵器を抑えないとは一言も言ってないがな。」

日本大使館
大使館に帰還した相合大使は、本国に事態の説明と対応の指示を求めて執務室に籠っていたが、直ぐに自衛隊や文官の責任者を召集した会議室にやってきた。
事態の説明はすでに渡辺一等海佐が行っていたが、大使の顔色から本国から色好い返事が貰えなかったことを皆が察していた。
BBR-MD5:CoPiPe-6ececd44693d3bde0ba2ef345073c035(NEW)
BBS_COPIPE=Lv:0
PID: 75878
[0.216559 sec.]
This is Original

0004†Mango Mangüé(ガラプー KK15-CKty)
垢版 |
2018/06/12(火) 23:10:31.172501ID:7mpBlSJMK
「本国は現地駐屯部隊で対処しろと通達してきた。
『長征7号』の確保、或いは無力化だ。
目標が原子力潜水艦である以上、無制限の破壊は禁じるとのことだ。
本国からの増援はすぐにはでない。
青木陸将、部隊の派遣を命じたい。」

第16師団師団長青木一也陸将は立ち上がって説明を始める。

「今回は即応を優先しますので、第16偵察中隊から先遣を出させます。
現在、出動待機しており命令次第出動出来ます。」

陸上自衛隊第16師団は、大陸駐屯の為に新設された部隊である。
本国の部隊は転移直後に大量に発生した失業者を背景に自衛隊経験者を大量に再雇用した。
失業者対策である。
偵察隊が中隊規模になるくらいの増員だ。
転移直後に起きた『隅田川水竜襲撃事件』や開戦の発端となった『横浜広域魔法爆撃』が、自衛隊の大幅増強を世間が後押しする結果となった。
海上からのモンスターの襲撃がある以上、終戦後各部隊は本国に張り付けになってしまったのだ。
第16師団は大陸の日本の権益を防衛するのが存在意義となった。
「まあ、宜しく頼むよ。
どれくらい掛かる?」
「現地までは6日といったところでしょうか。」

ハイライン侯爵領
海岸部
冒険者の一団から通報を受けたハイライン侯爵ボルドーは、馬に引かれた『ISUZU:エルフ』と書かれた車両の横扉を開いて、その地に降り立った。
日本との戦争の責任を取って隠居させられた父の後を継いだばかりの若者だ。
次の馬車からも数人の男達が降りてくる。
そして、馬に乗った武装した銃士達がまわりを固める。
先込め式の滑腔式歩兵銃を持てるのは、以前は騎士と呼ばれてた階級の人間だけで足る?
馬車から降りた人間だけで達には船大工や錬金術師と言った人間達だがドワーフといった妖精族が混じっている。
ボルドーは一団を率いて、洞窟に入っていく。

「これが・・・、異界の国の船か?
まさか上部まで鉄張りとは・・・だがこの船を手に入れれば奴らに対抗出来るかもしれない。」

軍事的にはたかが1隻程度では話にならないだろう。
だが船ならば生活の為の道具や武器が積まれていたはず。
圧倒的な技術格差が少しは埋まるかもしれない。
そうすればこの新興開拓地の民達を救える方法が見つかるかもしれない。
希望を見いだす。

「上部に手回し式の入り口があるそうです。
開けっ放しになっていたらしく、内部にはマーマンの死体が何体か。
乗員は停泊中に襲撃を受けたものと思われます。
洞窟の外に百個以上の簡素に造られた墓地も発見されています。」

銃士長が現時点でわかったことを報告してくる。

「うむ、職人達をかき集めてきた。
徹底的に調査を進めよ。」

客船『中華泰山号(チャイニーズタイシャン)』
下関寄港時に異世界転移に巻き込まれた同船は、新香港の公営企業の所属となっている。
かつては900人もの中国人客を乗せて、日本爆買ツアーを行っていたが現在乗せている乗客は新香港武装警察官50名と案内役の中国海軍中尉呉定発が乗り合わせている。
すでに出港から2日と半日。

「船長?
すでに到着予定時刻を2時間も過ぎてると思うのだが・・・」
BBR-MD5:CoPiPe-59567b84d7c3d6c76942eb3d67f2d297(-18)
BBS_COPIPE=Lv:0
PID: 76031
[0.213364 sec.]
CoPiPe:Original http://agree.5ch.net/test/read.cgi/mango/1528812106/

0005†Mango Mangüé(ガラプー KK15-CKty)
垢版 |
2018/06/12(火) 23:12:15.172854ID:beHDXhyRK
隊長の湯正宇大尉が心配そうな顔で船長に尋ねる。

「はっはは、もうすぐですよ、あわてない、あわてない。
もともと航路も無いとこ進んでるんだから時間が無茶なのね。
まあ、近くまでは前にも行ったことがあるから水深はわかってるけど、慎重に進んでるだけだから安心するよろし。」

実質、軍事組織に所属する湯大尉は時間に正確になっているが、船長は未だに中国人的大陸時間の感覚でいるらしい。
異世界に来てむしろ悪化しているようだ。
だか船長にも思うところはあるのだ。
普段は新京から日本への食糧を運ぶのんびりした航海ばかりなのだ。
突然に新香港政府から武警を運ぶよう命令されて、これはヤバイ仕事だと感じてはいた。
厳重な機密扱いが適用された。
新香港政府が隠し事をする相手など、日本政府や自衛隊以外に無いだろう。
慎重に航海を進めるしかない。

「いや、どうせ目標は逃げやしないだろうけどさ。
報告が遅れるから急いでくれよ?」

湯大尉からの苦情も大変疎ましく感じていた。

陸上自衛隊
中国人達が海上からハイライン侯爵領に向かっている頃、日本人共は陸路を輸送蒸気機関車で現地に向かっていた。
赤井照長一等陸尉率いる偵察小隊は30名。
車両は在日米軍から購入したM1126ストライカーが2両。
偵察用バイクが4両、軽装甲機動車1両の30名の部隊を貨物として列車に積載している。
隊員の小銃はM16。
大半の装備は在日米軍に在庫を掃き出させて調達した代物である。
これは、第16師団全般に行き渡っている。
自衛隊用の列車なので、ブリーフィング用の車両も備え付けられており、副隊長の酒井二尉と路線図や街道が書かれた地図を壁に貼って眺めていた。

「新香港から王都、日本の直轄領新京を結ぶ大陸横断列車を施設部隊や土建屋が総力を挙げて3年掛かりで完成させたばかりだが、道路の方もなんとかして欲しいな。」
「年貢の迅速な輸送の為の効率重視。
まあ、当時の我が国の食糧事情は切実でしたからね。
この大陸でもすでに炭鉱は小規模ながら存在したから蒸気機関車なんて使うことが出来たわけですが。」

改めて地図を見渡す。
すでに新香港を出発して三日目。
王都を経由し、現在も敷設中の南部線でいけるのが1日分の距離。
残りの2日は街道沿いに車両で移動となる。

「ヘリを使えればすぐだったんですがね。」
「北部方面の年貢輸送に重点を置かれて、こちらの燃料の割り当ても少ないから仕方がない。
化学防護隊も出発したらしいから安全だけは確保しとかないとな。」

ハイライン侯爵領
ハイライン家館
ハイライン侯爵領は、新興の開拓領である。
かつては百万を越える民を抱え、帝国でも屈指の領土を保有していた。
しかし、戦争に負けると責任をとって公爵から侯爵に降格。
当主フィリップは、隠居を申し渡され家督相続を強制された。
ここまではいい。
皇族、貴族全てが一律に処されたからだ。
だがハイライン家は領土を転封されて今の家名に変えられてしまった。
その上こんな未開拓地に一族や朗党、公都を追放された領民の運命を託さぜるを得なくなっている。
元ノディオン公爵フィリップはこの様な状況が憤死しかねないほど不満だった。

「ボルドーは何をしている!!
もう四日も帰っておらんぞあの馬鹿息子は!!」
BBR-MD5:CoPiPe-8f5a367370a78bd53c1012a818be1947(NEW)
BBS_COPIPE=Lv:0
PID: 76301
[0.221390 sec.]
This is Original

0006†Mango Mangüé(ガラプー KK15-CKty)
垢版 |
2018/06/12(火) 23:13:24.305274ID:mME15YEVK
傍らに控えていた家宰のリヒターが恭しく答える。

「お館様は海岸で怪しげな船が発見されたと兵を率いて巡回に出ております。」
「そんなことをしている場合か!!
この大事な時に・・・」
「何かありましたか?」

長年仕える家宰のリヒターに手紙をみせる。
現在、新京に造られた中学校なるものに留学中のハイライン家の長女からのものだった。
貴族らしい装飾後たっぷりの手紙だが、要約するとこうだ。

「最近、サークルなる集まりに入って宴席に招かれては姫様扱いをされて嬉しい。」
「将来卒業したら領内に学校や病院を造りたいな。」
「あ、お兄様元気?」

楽しそうで何よりだとリヒターは思ったが、前当主様は苦悩して手紙を握りしめている姿に困惑する。

「あやつめ、貴族の誇りと優位性を放棄するようなことを・・・、日本被れめ!!」

貴族の優位性とは青い血に由縁する統治機構の保障と財産に裏打ちされた教育や医療だろう。
それが平民に安売りされては貴族の存在意義が無くなるのだ。
先勝国が敗戦国の体制の存続を許したのは異例のことであった。
日本からすると統治するのが面倒だったからだ。
代わりに貴族や王族にも賠償の責を化し、年貢として徴収した作物から半分を日本に納めている。
貴族の財力は大幅に目減りし、かつてのような贅沢は出来なくなった。
民に重税を課そうとしても四公六民法で、税収が固定化されて、各領地の軍事力強化も抑えられている。

「姫様は日本の社交界に出入りし、将来の領内の夢を語っているだけではありませんか?」

リヒターの言葉はフィリップの耳に入ってこない。
「仕方がない。
ワシがヒルデガルドの教育について、ボルドーに一言言ってやる。海岸だったな。」
「こんな夜半にですか?」
「帰るのは昼になるかもしれん。朝食の用意は忘れるな!!」

颯爽と庭に出たフィリップは、お付の者の用意させた馬と腰に差して、護衛の騎士や兵士を連れて海岸に向かっていった。

ハイライン侯爵領
海岸地帯
黒い船の調査を続けていたボルドー達は、幾つかの頑丈な扉を苦労して開けながら残された品々を回収してその陣幕に持ち込んでいた。

「日本が使ってのとは些か型が違うが、短銃とライフル、弾は撃ち尽くした後か。・・・ふむ、よくできたナイフだな。」

ボルドーの興味は武器にあったが、こんなものは領地の発展に寄与しないだろう。
「食器に・・・電話か?
鉄のスコップは役に立ちそうだな、馬車に詰めろ。」

あまり良い収穫はない。
貴重そうな物は幾つかのあったが、領地で代用可能な物やどう動かしてもまったく作動しない機械の類いばかりだ。

「船の装甲はどうだ?」
「それが表面部はともかく、肝心な装甲自体は斧や剣で斬り付けてもまるで歯がたちません。」

銃士長のイーヴの報告にボルドーは眉を潜める。

「船は動かせそうか?」
「まったく、動かし方が判らないとのことです。
まだ幾つか開かない扉がありますが、中央部に特に厳重な部屋があって、斧で入り口を抉じ開けようとしましたが、斧の歯が欠けたそうです。
よほど貴重な物が隠されているのでしょう。」
BBR-MD5:CoPiPe-f8986e571396f0ab91cbc2428e5c790c(-12)
BBS_COPIPE=Lv:0
PID: 76444
[0.215633 sec.]
CoPiPe:Original http://agree.5ch.net/test/read.cgi/mango/1528812106/

0007†Mango Mangüé(ガラプー KK15-CKty)
垢版 |
2018/06/12(火) 23:16:10.345391ID:lXzXqnYXK
「或いは危険な物か。
再現も無理だな。
後は・・・なんだと思うこれは?」

何本も並べられた棒状のものは533ミリ魚雷六本である。

「さあ、日本が使っていたミサイルではないかと思われますが・・・」
「あの空を飛ぶ矢か、実物は始めてみるな。
どうやって飛ぶんだろうなこれは?」
「皆目検討も付きません。
尻から火を吹きながら飛んで来るという話でしたが?」
「風車が付いているようだが、これで飛ぶんじゃないか?」

主従が検証を続けていると、馬を駆る音とボルドーを呼ぶ声が聞こえる。

「父上か、また厄介な・・・」

陣幕に入ってきたフィリップはボルドーを怒鳴り付けようとしたが、並べられた銃器や魚雷を見て冷静になる。

「おい、こいつはさっさと埋めるか、日本に引き渡せ。
きっと災いを呼ぶ。」
「来て早々なんですか?
父上ならこれを利用しろと言うかと・・・この日本の船を研究すれば・・・」
「日本じゃない。
その棒に書かれた紋章をみろ。
今は使われてないが、新香港の一部の奴等が使っていた旗印だ。」

五星紅旗、自衛隊に陣借りしていた中国人という部族が使っていた旗だ。
ノディオンを引き渡す調印式の時にいた忌々しい連中だ。
すると、陣幕の外で叫び声や味方のものと思われる銃声が聞こえる。

「ほれ、災いが向こうからやってきたぞ。
ものども出合え、出合え、狼藉者を斬って捨てい!!」

フィリップは剣を鞘から抜き、陣幕から出ていった。
ボルドーとイーヴも慌ててその跡を追って陣幕を出ていった。

新香港武装警察部隊
目標からややズレた海岸に上陸した武警部隊は予想以上の悪路に悩まされていた。
先頭に三菱パジェロ2両。
何れもサンルーフと屋根に銃架が備え付けられている。
窓にはアーマーシールドを張りつけ打撃武器からの防御を考慮されている。
各車両には五名の隊員が乗車しており、即応性と機動力に申し分はない。
問題は同行するヒュンダイトラック、トラゴ2両各7名乗り。
トヨタ・コースターGX26名乗りの三両だった。
上陸して侯爵領内の各村まではある程度の道が出来ていたのだが、それはとても狭い道であった。
せいぜい中型の馬車が通れることを考慮したものだろう。
燃料や弾薬、食糧を積んだトラックを置いていくわけにもいかない。
トラックの屋根には機関銃を装備した銃座がそれぞれ2基もあり、火力支援の為にも必要なのだ。 慎重にゆっくりと。
時には岩を木を人力や車両からワイヤーで牽引して、排除しながら進むだけで新香港を出発して五日目となってしまった。
途中、幾つかの村があったが全て無視した。
各村から伝令が出るより武警側の方が早いからだ。
マイクロバスに乗った湯大尉は、隣に座らせた案内役の呉中尉に地図を見せて話し掛ける。

「中尉、そろそろ1キロ圏内だ。周辺に見覚えはあるか?」

こんな深夜も近い時間に自分でも無理を言ってると自覚はあるが、さっきから中尉がブツブツ言い出して不気味なので話を振ってみたのだ。
まだまだ森林地帯だが地図では、海岸の側のはずだった。
BBR-MD5:CoPiPe-b7a8b6ae0603c754511965d0a805a56f(NEW)
BBS_COPIPE=Lv:0
PID: 76846
[0.216805 sec.]
This is Original

0008†Mango Mangüé(ガラプー KK15-CKty)
垢版 |
2018/06/12(火) 23:18:54.431935ID:bP13BlofK
「はい、間違いないです。
この臭い、間違いなくここです。」
「臭い?」

もう一度問おうとすると前方から無数の矢が飛んでくる。
車両の装甲は射抜けるものではないが、窓に関してはちょっと心配だ。

「大尉、前方警戒の成龍2が、設置中なのか移動するバリケードと武装した一団を確認。
攻撃を受けたので後退中。」

最後尾座席にいる通信兵が伝えてくる。
成龍はパジェロに着けたユニット名だ。
トラゴの方には長城だ。

「成龍1は、成龍2の後退を援護。小隊は降車!!
連中を殲滅してやれ。
長城2は待機。
長城1は、腹を奴等に向けて制圧射撃開始!!」

新香港武装警察の装備は、基本的に長年日本警察が押収した銃火器を供与されたものである。
一応はちゃんと使えるように整備や修理を行ってはいるが、些か不揃いなのと夜間用の装備がない点が弱点とはいえる。
銃座からの制圧射撃が行われる中、自らもバスを降りた湯大尉は背中にRPG−26携帯式ロケットランチャーを背負った隊員に命令する。

「長引かせる訳にはいかない。
RPGでバリケードを粉砕して、成龍1、成龍2を突っ込ませる。
合図と共に撃てよ・・・」

湯大尉はもともとは軍人でも人民武装警察官でもない。
学生の頃に学生の義務である軍事教練を受けて、兵役の経験があっただけだ。
叔母か日本に爆買いに出掛けるから荷物持ちとして動員されたら転移に巻き込まれてしまった口だ。
その後は、帝国との戦争が始まり日本政府が募集した第一外国人師団に志願して今に至る。
転移に巻き込まれて路頭に迷った親戚一同で一番の出世頭であり、今でも彼等の生活を支える大黒柱なのだ。
こんなところで死ぬわけには行かない。
だから弾薬の損耗を気にする上官達の顔を立てて出し惜しみするつもりもまったく無い。
各車両や隊員の配置を確認すると声を張り上げる。

「今だ、撃て!!」

その弾頭はバリケードに吸い込まれるように飛んでいき大爆発を巻き起こす。
爆風で目の前に福岡県警のシールが、飛んできたのを目にして苦笑してしまう。
当然の事だが、このRPG−26も日本警察の押収品である。

陸上自衛隊
偵察小隊
陸路を行く自衛隊偵察部隊の車両は予想以上に走りやすい道を進んでいた。

「急拵えの用だが、道が整備されてて助かったな。」

赤井一尉の言葉に酒井二尉も感心したように頷く。

「侯爵領に入って途中から急にですね。岩とか倒木が道の外に片付けられています。」

まるで我々のような車両が通ったことがあるみたいだった。
赤井一尉は各車両への無線マイクを手に取る。

「各車、良く聞け。
この調子なら夜明けには着けそうだ。
最低限の人員を残し、睡眠を取って鋭気を養え。
朝から忙しくなるぞ。」
BBR-MD5:CoPiPe-b03ab437a79b67bb5d7ca4610ef8176a(-84)
BBS_COPIPE=Lv:0
PID: 77117
[0.203442 sec.]
CoPiPe:Original http://agree.5ch.net/test/read.cgi/mango/1528812106/

0009†Mango Mangüé(ガラプー KK15-CKty)
垢版 |
2018/06/12(火) 23:21:26.923680ID:Cl54X7CQK
もちろんこの時点では、原子力潜水艦捜索するという意味以上のものはなかった。
なにしろ相手は原潜だ。
ガイガーカウンターが強く反応するところに行けば直ぐに発見できる筈である。

「あとは遠巻きに化学防護小隊に任せればいいさ。」
「ですよね〜」

酒井二尉もまったく同感と楽観視していた。

たが先頭の偵察用バイクで先行していた隊員から通信が入ると、雰囲気が変わる。

『爆発音並びに銃声が聞こえます。
現地は戦闘中、戦闘中です。』

赤井一尉は受信機のマイクを持ったまま各車両に通信を繋ぐ。
たが先頭の偵察用バイクで先行していた隊員から通信が入ると、雰囲気が変わる。

『爆発音並びに銃声が聞こえます。
現地は戦闘中、戦闘中です。』

赤井一尉は受信機のマイクを持ったまま各車両に通信を繋ぐ。

「各員、よく聞け。
どうやら我々の上前を跳ねようとしている輩が現地にいるらしい。
総員、戦闘準備!!
目標を奴等に渡すな!!
原潜は日本が確保する。」

一旦、通信を切ると酒井二尉が進言してくる。

「敵は明らかに重火器を使用しています。
友軍なのか確認する必要があるのでは?」
「どのみち四時間はわからん。
それまでに確かめさせろ。」

移動速度を早めて三時間で戦闘があった地点に到着した赤井一尉一行は、困惑する物体を発見する。
それは爆発のような現象に引きちぎられた何らかの生物の尻尾であった。
暗視装置で周辺を確認していたら見つけたのだ。

「直径がメートル単位、長さが15メートルか?
くそ、何がいたんだここに?」
「爬虫類系ですね。
鱗とかあるし・・・ドラゴンでしょうか?」

隊員達の脳裏に転移直後に起きた事件が脳裏によぎる。

『隅田川水竜襲撃事件』
転移直後の混乱に陥っていた日本は、食料や燃料を統制的に管理することに連日のようにデモが巻き起こっていた。
そんな時に東京湾に水竜の群れが十二頭侵入。
隅田川を遡上し、各橋につがいと思われる2頭ずつが縄張りとし、近隣住民を餌にせんと上陸をしてきたのだ。
深夜から明け方の間の移動であり、日中は水底で眠ってたので対処に遅れたのだ。
勝鬨橋、佃大橋、中央大橋、永代橋、隅田川大橋、清洲橋の6つの橋で、駆けつけた各警察署や第9機動隊の警官が有らん限りの銃弾を叩きつけて、8匹を仕留めるが残りの4匹が北上しながら集結。
新大橋で第二機動隊が迎え撃ち、2匹を始末するが、2匹には防衛線を突破された。
両国大橋でさらに一匹を本所警察署が仕留めるが、総武線隅田川橋梁を破壊。
総武線車両が三両も川底に落ちる被害をだし、乗客・乗員300名もの死者をだした。
最後の一匹も総武線車両に押し潰されて死んだ。
最終的な死者は450名に及び、日本が異世界に放り込まれたと誰にも自覚させた事件。
この事件のあと、デモなどは潮が引くようにいなくなり、日本は異世界へのサバイバルに邁進できるようになった。
青ざめる隊員達を尻目に赤井一大尉は、銃声が聞こえる地点に目を向ける。
BBR-MD5:CoPiPe-779ef789d8f782874fae05d6a893ba5a(NEW)
BBS_COPIPE=Lv:0
PID: 77495
[0.226238 sec.]
This is Original

0010†Mango Mangüé(ガラプー KK15-CKty)
垢版 |
2018/06/13(水) 00:04:47.181065ID:jhTqX4ETK
「まだ、戦闘は続いてるな。
十分に注意して進むぞ、だが素早くだ。」

進行方向に手を振ると、レンジャ―の資格をもつ隊員三名を戦闘に隊員達が横に広がりつつ木々の間を縫うように前進を開始する。

「105mmを持ってくるんだったな。」

赤井一尉は隊員達を支援する為の105mm砲M68A1E4、「105mm低姿勢砲塔」を搭載しているストライカー装甲車MGSを持ってこなかったことを詫びているのだ。

「40mmでもいけますよ。」

ストライカーICV(兵員輸送車)の車長の牧田二尉がら通信が入る。
ストライカーICV(兵員輸送車)は、取り付けられたカメラの映像を車内のモニターで見ながら操作可能であり、射手が体を曝す事無く目標を攻撃できる。
また、熱線映像装置が組み込まれており夜間の戦闘も可能となっている。
今回は40mm擲弾発射器Mk 19が装備されている。
「よし、火力で圧倒してやれ。」

新香港武装警察
湯大尉は困惑していた。
最初にバリケードを破壊して、車両を先頭に掃射しながら前進した。
何十メートルもあった筈のバリケードが一部を除いてきれいさっぱり無くなっているのだ。
さらにあれだけ銃撃をかましたのに死体がきれいさっぱり存在しない。

「血とかはあるんだが、誰も死なないとかありえないだろう。」

困惑して地面を探っている湯大尉を呼びつける悲鳴が聞こえる。

「大尉!?
蛇がでっかい蛇が!!」

眉を潜める湯大尉が顔を上げる。
「なんだ蛇くらいで情けない声をだすな・・・」

さすがに歴戦の湯大尉は悲鳴はあげなかったが絶句して棒立ちになっていた。
長城1が巨大な蛇にとぐろを巻かれているのだ。
運転席がメキメキと音を立てて潰れていく。
三人は乗っていたはずだが、三人とも飛び出して逃げ出している。
銃座にいた二人もだ。

「グレネード!!」

思わず叫ぶと隊員が放った一発が燃料や弾薬を積んだトレーラー部に直撃して爆発して、海蛇も炎に巻かれて炎上して息絶える。

「ふん、しょせんはでかいだけの蛇じゃないか。」

燃料と弾薬を半分も失ったのは後で責任を追及されるかもと内心の震えを隠すように強気に言う。

「大尉・・・あっちにもっとでかいのが・・・」

成竜1と成竜2が銃架から銃撃しながら小まめに動いては、巨大な蛇の噛みつきをかわしている。
先程の蛇の数倍の長さだが、尾の部分が焼け焦げてなくなっている。

「奴等だ・・・みんな奴等に殺された・・・」
BBR-MD5:CoPiPe-4fb3ba463e442acb5a85365a53bed708(-2509)
BBS_COPIPE=Lv:0
PID: 83675
[0.192785 sec.]
CoPiPe:Original http://agree.5ch.net/test/read.cgi/mango/1528812106/

0011†Mango Mangüé(ガラプー KK15-CKty)
垢版 |
2018/06/13(水) 00:07:43.873376ID:ejcz+XQLK
案内役の呉定発海軍中尉が皆の恐怖を煽り立てるようなことを言ってくれる。
さらにその周辺に無数の半魚人達が笛の音色とともに、巨大な貝殻で作った鎧や兜を装備して現れる。
数は数百単位だろうか?
AK-74の弾丸を各隊員が横に薙ぐように撃ちまくるが、半魚人達も魚の骨や貝殻を削って造った投げ槍や弓矢で応戦しながら前進してくる。
弾丸の効果が無いわけではなく、数十体の半魚人が倒れ伏すが死んでいるのは少ないようだ。
後退する武装警察達はそれでも目標の洞窟を見つけると、長城2とマイクロバスを洞窟の入り口の前に停車させて、壁がわりにして抵抗する。
成竜1と成竜2はこちらには合流させずに来た道を戻らせた。
いざという時には任務失敗の報告をしてもらわないといけない。

「これで暫くはもつだろう。」

隊員達の中には矢や投げ槍が手足に刺さったり、切りつけられたりと負傷した隊員が出ている。
不思議と死者は出ていない。
半魚人達が地上では動きが鈍いのが理由だろう。
応急措置が必要だったが、半魚人の攻撃は終わっていない。
車両の隙間から銃撃して、交戦している隊員もいるのだ。
だがなんとか、一息付けると思った湯大尉だが、海蛇が長城2に体当たりをすると、長城2が一メートルも真横に移動させられた。
海蛇は長城2の銃座からの攻撃で後方に這いながら退くが、ここが突破されるのは時間の問題だ。
銃撃もあの分厚そうな皮を傷つけるが致命傷は与えられていない。

「燃料は仕方がない、弾薬と食料を洞窟に運びこめ。」

隊員達が長城2の三番扉を開けて中の物資を洞窟に運び出していく。
だが洞窟の中には先客がいたようだ。

「なんだ新香港の連中も存外にだらしないな。
マーマンども片付けてくれると期待してたのじゃがな。」

洞窟の中で銃士隊を3隊に分けて、立ち撃ち、膝撃ち、伏せ撃ちの構えを取らせている。
この地形では効果的な陣形だ。
しかも、武警側は大半が両手に荷物を抱えたままだ。

「我々も少しは学ぶのだよ、理解したかな?」

苦汁を飲ませ続けられた新香港の武警に圧倒的に有利な立ち位置にたったので得意気な顔をしている。
ドヤ顔の元ノディオン公フィリップの後ろで困り顔をハイライン侯ボルドーが宥める。

「我々もここに逃げ込んできただけなのにこれ以上敵を増やすのやめて下さい父上・・・」

話は少し遡る。
フィリップが陣幕を出ると剣兵、槍兵達が異形の者達と、そこかしかで斬り結んでいた。
数が違いすぎるので、劣勢に立たせられている。

「ボルドー、銃士隊を洞窟に集結させて、皆が逃げ込むのを助成せよ。」
「父上は?」

言うが早いがフィリップは剣を抜き去り、マーマンを二体切り捨てている。

「殿軍は老人の花舞台よ。」

年寄りの冷や水かと思いきや3匹のマーマンを相手に一歩も引いていない。
マーマンの繰り出してくる銛を避けて、右手で柄を掴んで引き寄せて、剣で首を刎ねる。

「急げ!!
あんまり長くは保たんぞ。」

フィリップの意外な活躍に惚けている銃士隊長イーヴは、先込め式銃で、フィリップに群がっていたマーマンの額を撃ち抜く。
BBR-MD5:CoPiPe-fb282ee8343e6105b03f8d0b00edde69(NEW)
BBS_COPIPE=Lv:0
PID: 84050
[0.210063 sec.]
This is Original

0012†Mango Mangüé(ガラプー KK15-CKty)
垢版 |
2018/06/13(水) 00:12:33.675431ID:QZ/wP4/YK
「イーヴ、父上を守れ。
銃士隊は、洞窟前の敵を掃射。
その後は剣兵、槍隊は洞窟を制圧せよ。」

自らも剣を抜いて、血路を切り開く。
洞窟の中には黒い船を調査する為の魔術師や職人、人夫達が奥に残っている。
一番近い村は馬で数時間の内陸にあるからまだ無事の筈だ。
ならばマーマン達はここで撃退する必要がある。
だが気がついたら横でフィリップがマーマン達と斬り結んでいた。

「父上?
なぜ、こちらで戦ってるのですか?」
「ふん、さすがに儂も剣一本であれと戦うのは辛いは・・・」

フィリップの剣が指し示す方向に巨大な手足の無い爬虫類がこちらを睨んでいる。

「シーサペント・・・」
「まさか陸地までひっぱりだしてくるとわな・・・海岸は確かにすぐそこだが・・・」

あっというまにフィリップが先頭に立って洞窟前を制圧に走っている。
銃士隊はシーサペントを牽制するので手一杯で、どうにか生き残りが洞窟に逃げ込んだ時には約一名を除いて、息も絶え絶えだった。

「なんじゃ若いモンが情けない。ほれ、陣形を整えろ。
すぐに奴等がくるぞ。」

だが予想に反して外から奇怪な音や連続して発砲される銃声が聞こえてくる。
さらに侯爵軍でも領民でも無い格好の連中が乗り込んでくる。

「なんだ新香港の連中も存外にだらしないな。
マーマンどもを片付けてくれると期待してたのじゃがな。」

フィリップだけが事情を察し、憎まれ口を叩いている。

「我々もここに逃げ込んできただけなのにこれ以上敵を増やすのやめて下さい父上・・・」

ボルドーの苦悩は頭痛にまで昇華しようとしていた。

「まあ、聞け。
新香港の連中が来たこと戦力は激増した。
ここは争ってる場合じゃ無いから否応あるまい。なあにまかせておけ、儂に良い考えがある。」

銃士隊や武警隊員達が洞窟内に侵入しようとするマーマン達を狙い撃ちしている中、少し奥でフィリップがボルドーや湯大尉に作戦を説明する。

「まずシーサペントだが、あやつはマーマンの蛇使いに笛の音で操られている。
蛇使いさえ葬れば暴れだしてマーマン共にも襲い掛かるだろう。」

笛で操られていると聞いて、湯大尉は思わず呟く。

「インド人もびっくりだぜ・・・それから?」
「儂らは黒い船からミサイルといったかな?
アレを6本抜き取った。」

湯大尉はSLBMが抜かれたのかと最初は戸惑ったが、話を聞いてるうちに魚雷のことだと気がついた。
その違いを指摘し、疑問をぶつけてみる。

「魚雷には固定の鍵が掛かってたと思うのだがどうやって解除したんだ?」
「え?
解除の魔法で一発だったぞ。まあ、厳重な鍵だったらしく、連れて来た魔術師が一人魔力切れを起こしていたがな。」
BBR-MD5:CoPiPe-b20514be9fe313c69f5911ac1961e43d(NEW)
BBS_COPIPE=Lv:0
PID: 84672
[0.204140 sec.]
This is Original

0013†Mango Mangüé(ガラプー KK15-CKty)
垢版 |
2018/06/13(水) 00:29:05.284096ID:UN1uiv+RK
その後は別の魔術師が軽量化の魔法を掛けて、力自慢六人掛かりで外に持ち出したらしい。
この魔術師二人含む八名は疲労困憊で戦力にならないらしい。

「ミサイルだか魚雷だか知らんが、要するに火薬の詰まった筒だろ?
銃で狙い撃ちして爆発させれば、外の連中を一掃出来るんじゃないか?」

湯大尉はその光景をイメージしてみるが、否定的に首をふる。

「狙い撃つ為には洞窟入り口の半魚人共を掃討してからになる。それに陣幕の中の魚雷をどう撃ち抜けばいいんだ?
小銃で魚雷を撃ち抜いて爆発させられるのか?
博打的要素が強すぎて賛成できん。」
「御主等の肩掛け式大砲ならなんとかなるんじゃないか?」

フィリップに言われて武警隊員達の背中に目をやる。

「RPG−7が三本、RPG−22が一本・・・いけるか?」

他にアテもないので、その作戦を採用することにした。
洞窟がシーサペントの体当たりでも崩れない強固なことを確認して、後方に注意しながら洞窟内でRPG−7を発射する。
洞窟入口で爆発が起こり、ハイラインの兵士達と武警隊員達は、洞窟内部で倒れ付しているマーマン達に銃剣や槍でトドメを刺しながら前進する。
シーサペントが顔を洞窟に向けて、こちらを凝視している姿が目に入る。

「もう一発喰らわせてやるか」

RPG−7を背負った武警隊員の背中を叩くと隊員は発射の構えをとる。
だがシーサペントが少し顔を上げると、その口には魚雷が咥えられていた。
魚雷が一本洞窟に投げ込まれるが、狭い洞窟内では確実に衝突必至となってしまう。
RPG−7の発射された弾頭は止まらない。

「逃げろ!!」

弾頭が魚雷を直撃すると、一目散で逃げ出していた湯大尉、イーヴ達を爆風が吹き飛ばし岩肌に叩き付ける。
フィリップやボルドーが武警隊員や兵士達を助け出しながら爆発で一部が崩落を始めた洞窟のさらに奥に退く。
数名の武警隊員や兵士達が崩れて来る土砂に飲み込まれていく。

「まさか敵に先にやられるとはな。
わかっててやったのかな?」

湯大尉を肩に担ぎ上げているフィリップも困った顔で呟く。
イーヴを背負っているボルドーが応じる。

「放り込むのに手頃な鉄の棒としか思ってなかったのでしょう。
蛇使いも驚愕してると思いますよ?」

意識の戻った湯大尉は、武警隊員の無事を確認するが、四人が崩落に巻き込まれて戦死していた。
ハイラインの兵士達も7名が還らぬ人となっていた。
また、負傷して戦えない武警隊員14名。
負傷者を含む17名が小銃を失っていた。
搬送するさいに邪魔だと放棄させられたらしい。
フィリップの判断だ。

「RPGも全滅か。」

洞窟に入った武警隊員は40名が、負傷者14、戦死4。
小銃を保持している者は13名だけで洞窟内に敷いた防衛線で抵抗を続けている。
崩落が止まり更に狭くなった洞窟内だから少人数でも持ちこたえれるのだろう。
長城1、2の運転手や銃座にいた隊員は、車両から逃げ出すさいに拳銃以外持ち出せていない。
予備の弾薬が入った箱も崩落の時にそのほとんどを失っていた。
BBR-MD5:CoPiPe-49b7d9993c8bee7bc646256c2a2ed799(NEW)
BBS_COPIPE=Lv:0
PID: 86871
[0.212442 sec.]
This is Original

0014†Mango Mangüé(ガラプー KK15-CKty)
垢版 |
2018/06/13(水) 00:40:53.095708ID:caQ17AfnK
「こちらも似たようなものじゃ。
銃士17、兵士31、人夫や職人にも武器を持たせて40・・・、かつては二万の軍勢を指揮していた儂が今ではたった百名あまりか・・・落ちたものだ。」

その指揮下の兵士に自分達も加えられてることに気がつき湯大尉は愕然としていたが、負傷者を救護していた葉曹長が小声で呟いてくる。

「・・・大尉、これを・・・」

手渡されの放射能の上昇を示すガイガーカウンターだった。
今までほとんど反応がなかったので忘れていたが、ここに来て微量だか放射能濃度が上がっているようだ。

「そういえばこの奥にあるんだったな。許容被爆線量ってどれくらいだっけ?」
「今までは洞窟が天然の防護壁になって、放射能被害を抑えていたのかもしれません。」
「或いは九年のノーメンテで遂にガタが来たのかだな。」

湯大尉は、ふとこんな都市伝説を思い出していた。
日本と一緒に転移してきた千島列島と樺太のロシア人達は、日本からの援助と引き換えに千島列島と南樺太を返還し、北サハリンに引き上げていった。
陸自第5旅団は大幅な増強を受け第5師団に再建され、管轄を千島列島に移して各島の調査に乗り出した。
中千島の新知島に駐屯の調査に来た第5施設大隊は、同島で旧ソ連時代に建設された潜水艦隊基地を発見したという。
同大隊がその後、何を発見したのかは知らないが基地周辺は民間人等の立ち入り禁止区域に指定された。
一説によると、放棄されていた旧ソ連の潜水艦を日本が手に入れたのではないかと言われている。
だが1994年以来放棄されていたその原子力潜水艦は小規模だが放射能漏れをおこしていたという。
洞窟をさらに奥に進み、洞窟内の海面に浮かぶ『長征7号』の姿を確認した湯大尉はこの艦を持ち帰っていいのか疑問を覚えてきた。
銃声が段々大きく聞こえてきた。
だいぶ押し込まれているのだろう。
マーマン達の鎧や盾は確かに頑丈だが、仕留めることは難しくない。
だが狭い洞窟内、積み重なった死体自体が魚肉の壁となって銃弾を防ぎ、その屍を乗り越えながらマーマン達が前進してくるのだ。
もはや全滅は時間の問題と覚悟せざるをえない。
そこに指揮官として、胸に装着していた秋葉原で購入したトランシーバーが通信を受信する。

「こちら成竜1の王少尉、聞こえるかどうぞ?」

「湯大尉だ。成竜1、作戦は失敗だ。
退却して新香港の指示を仰げ、どうぞ。」
「成竜1、その命令に対し、意見具申。
我々は自衛隊と合流した、どうぞ。」

その言葉に湯大尉は希望を取り戻す。

「成竜1、現在位置で指示を待て。」

締めの言葉を言わずに湯大尉は、フィリップやボルドーを呼び出した。

陸上自衛隊
偵察小隊
赤井一尉率いる陸自偵察小隊は行軍中に、銃架や窓から射撃しながら山道の坂道をバックしてくる三菱パジェロ2台を発見する。
所属は車体に書かれた『新香港武装警察』の漢字で確認。
追跡しているのが数百体のマーマンだと理解すると、戦闘開始の号令を掛ける。
ストライカーICV(兵員輸送車)2両の40mm擲弾発射器Mk 19が火を吹き、武警車両に迫っていたマーマンの一群を粉砕する。
こちらに気がついた別の一群が、陸自側に進軍してくるがマーマンは山登りが余り得意で無いらしく歩みは遅い。
既に森の中に布陣していた偵察隊隊員達は、山道に密集しているマーマン達にM16の弾丸を集中させる。
山道をバックし続けてきた武警隊員達も車から降りて、40mm擲弾発射器Mk 19で散り散りになったマーマンを狩っていく。
マーマン達は銃弾の攻撃に訳もわからずに右往左往し、身を伏せる術も知らない。
巨大な貝殻で造った鎧や盾も最初の銃弾は受け止めるが、2発目、3発目と削られていき粉砕され、屍となっていく。
そこかしこで、手榴弾が爆発する音が響き渡る。
あまりの派手な浪費ぶりに、赤井一尉は弾薬の残量が心配になってきた。
ちょうど、木陰で射撃をしていた酒井二尉に話し掛ける。

「ちょっと数が多いな。
なんだってこんなに海の種族が陸地に集まってるんだ?」
BBR-MD5:CoPiPe-ee3b14db8e24ade0a70bf54d7ec99f79(NEW)
BBS_COPIPE=Lv:0
PID: 88346
[0.258838 sec.]
This is Original

0015†Mango Mangüé(ガラプー KK15-CKty)
垢版 |
2018/06/13(水) 00:47:16.855072ID:aQo9GKQGK
「異常ですね。
何か連中にも譲れないものがあるんじゃないですか?」

ようやく逃走をはかるマーマンは無視して、前進してくるマーマンを掃討していった。
掃討後に合流した王少尉から事情を聞き出すことになる。

「洞窟と無線は繋がるのか?
その魚雷を爆破する作戦はこちらが引き継ぐ。
洞窟内の人間は原潜に乗り込み、立て籠って崩落に備えろ。」

準備の間にフィリップから得た情報もトランシーバーで伝えられ、作戦に組み込まれていく。
赤井一尉と酒井二尉は状況の確認を行う為に山裾まで徒歩で降りていく。
双眼鏡から確認すると、シーサーペントは陣幕から魚雷を一本くわえるところだった。

「40mmは陣幕を狙え。
AT4 (携行対戦車弾)は直接、シーサーペントの魚雷を狙え。
酒井、蛇使いとやらは確認出来たか?」
「ターバンを頭に巻いて、法螺貝吹いてる奴がいます。
たぶんあれでしょう。」

3名の隊員が、在日米軍から購入したAT4 (携行対戦車弾)を準備する。

「貝殻で造った王冠みたいのを被った奴もいるな。
あいつが指揮官か。
まとめて吹き飛ばしてやる。」

マーマン達もまだ洞窟入り口付近を中心に500は陣取っている。
山道から40mm擲弾が連続で発射される。
山裾からはAT4 (携行対戦車弾)が3発。
陣幕の中に吸い込まれる40mm擲弾が着弾すると土煙が巻き上がり、直後に魚雷四発を誘爆させる。
大爆発の炎が周囲のマーマンの大軍を飲み込み、生き残った者達も衝撃波で立っていられるものはいない。
照準器で狙いを定められたシーサーペントがくわえる魚雷は最初の一発目のAT4 (携行対戦車弾)が直撃して爆発し、頭を完全に吹っ飛ばす。
続いて2発目、3発目が着弾して、シーサーペントの巨体を爆発で切り裂いていく。
炎上したシーサーペントの無数の肉片がマーマン達に降り注ぐ。
近くにいた蛇使いも巻き込まれて潰されている。

「掃討戦に移行する。
弾薬が無くなるまで殺れ。
海に逃げる奴は無理にやらなくていい。」

森林を利用して隠れ潜んでいた偵察隊員達は、逃げ惑うマーマン達に向けて引き金を引き続ける。


『長征7号』艦内
戦略原子力潜水艦内部に逃げこんだ湯大尉、フィリップ、ボルドー一行は、巨大な爆音の後に岩や土砂が『長征7号』に降り注ぐ音を不安げに聞きながら座り込んでいる。

「天井崩れたりせんじゃろうな?」

フィリップの言葉はこの場の全員の気持ちを代弁している。
だが湯大尉はそれを認めるわけにはいかない。
誰かがパニックを起こして馬鹿をやらかさないように士気を鼓舞する必要は感じていた。
今は呉中尉が艦内を点検しているので、湯大尉が説明の為に立ち上がる。

「この艦は海中を何百メートル沈んでも大丈夫に出来ている。
安心してくれ。」

あまり海軍艦艇の知識に付いては自信がない。
拙い説明で伝わったか不安は残る。
BBR-MD5:CoPiPe-b6c36e1dde36c2be2d2e90a5a9336612(NEW)
BBS_COPIPE=Lv:0
PID: 89200
[0.202370 sec.]
This is Original

0016†Mango Mangüé(ガラプー KK15-CKty)
垢版 |
2018/06/13(水) 00:55:19.115515ID:2ojKdjs1K
「なんと最初から沈むことを前提に造られた船なのか?
頼りないのう・・・」

フィリップの指摘にボルドーは神に祈り始め、イーヴは自決を試みみようとして、周囲に抑え付けられている。
その光景に湯大尉も天を仰ぎ見ていた。
武骨な天井とパイプしか見えなかったが・・・
呉中尉が艦内にあった防護服を着て現れると、全員が艦の角に身を寄せて固まる。
防護マスクを脱いだ呉中尉は、呆れた顔で聞いてくる。

「大陸の人間は潜水艦について知らないんですか?」
「大陸の海軍は潜水艦を探知することも出来ずに殲滅されたからな。情報としては知ってても、実物を見たことがあるのはここの連中が最初じゃないかな?
新香港海警局も保有してないからな。
今までは・・・ところで放射能漏れはどうなった?」

「原子炉に通じるパイプが軽く傷ついて小さな穴が開いてました。今は塞いでるから大丈夫ですよ。まあ、応急処置ですが。」

そう言って右手に持ったガムテープを見せてくる。
それを見た瞬間、湯大尉は呉中尉に向けて拳銃の銃口を向けた。

「いや、詰め物を固定するのに使っただけですよ?
隔壁もちゃんと閉めましたから・・・」

陸上自衛隊
偵察小隊
赤井一大尉は偵察隊員と武警隊員10名が洞窟の入り口に到達した。
マーマン達の掃討はほとんどは死亡している。
だか王冠を頂く大柄のマーマンが巨大な三ツ又の矛をこちらに向けている。

マーマン達の王であろう。
すでに傷だらけて体の至るところが流血している。

「オマエ達モアノ船ヲ求メテキタノカ・・・」
「人の言葉がわかるか・・・その通りだ。
お前達にはあの艦は何の価値もあるまい。
なぜ、こんな戦いになった?」
「アノ船ハ我ラノ王国ノ入リ口ニ鎮座シ塞イダ。
我ラハタダ王国ニ帰リタカッタダケダ。」

なんという無駄な戦いだったのかと赤井は愕然とする。

「我々はあの艦をどかして持って帰ろうとしただけだ。
無駄な戦いだったな。」

「ソウカ、多クノ同族ニ助ケヲ求メ、命ヲ失ワセテシマッタナ。
ケジメヲ・・・」

トライデントを構えて、王は自衛隊員達の前に突き進んでくる。

自衛隊隊員達は誰も撃てなかった。
たが王は一太刀の前に斬り伏せられた。

「遠からんもの音に聞け!!
我こそは、ノディオン前公爵フィリップ!!
先帝陛下より賜りし宝剣にて、敵王撃ち取ったり!!」

『長征7号』から出てきたフィリップ、ボルドー、湯大尉達だ。
BBR-MD5:CoPiPe-bdf4dd2f98c061dad25f7d24bccc438a(NEW)
BBS_COPIPE=Lv:0
PID: 90307
[0.194016 sec.]
This is Original

0017†Mango Mangüé(ガラプー KK15-CKty)
垢版 |
2018/06/13(水) 01:00:10.982772ID:hoGxG4EYK
「日本軍諸君。
援軍大儀であった!!」
「父上、もう少し空気をお読みください。」


日本国直轄領
新京特別区
大陸を統括する総督府のある新京は完全に人口的に造り出した町だ。
現在では皇都が灰塵と化したことにより王都に次ぐ規模を誇る都市となっている。
南区には自衛隊の第16師団の司令部が置かれ、第32普通科連隊、第16特科連隊が駐屯して防衛を担当している。
そして貴族達に賦役を命じて建設した巨大な外壁が新京を守っている。
港湾部には日本本国に食料や鉱物資源を送り込むための大規模な港が建設された。
また、備蓄倉庫、工場、労働者の為の住宅地を形成するコンビナートとなっている。
空港までここに作られているので、自治体の名称は港区になっている。
文字通りの意味で日本の生命線である。


新京国際空港にチャーター機で訪れて新香港からやってきた林主席は、新香港武装警察長官常峰輝武警少将を随員に駐新京新香港領事館職員に用意された馬に牽引されるキャンピングトレーラに乗り込む。
通称、キャンピングキャレッジ、もしくは家馬車と呼ばれる最近イチオシの馬車兼住居の車両だ。
内部は応接仕様になっており、林主席と常少将はソファーに座りながら領事館職員から渡された新聞をテーブルに広げて目を通していく。

『日本人大陸移民210万人突破!!本国人口1億千九百万人時代の到来!!』

これは論評する気は無いので、次の記事に目を通す。

『百済市の市長選出。課題は45万人高麗国の大陸への窓口になれるか?』

高麗国は日本と一緒に転移してきた旧大韓民国の巨済島、南海島、珍島の3島が日本に観光や仕事でに来ていた南北朝鮮人15万人を取り込んで建国した国だ。
その高麗国も大陸に進出してきた記事だ。
百済市も南部貴族の港町を接収して出来た町だが、現在の住民は近代的な生活をおくれないと批判が政権に殺到しているらしい。

『北サハリン、日本企業との提携で豊原市から稚内までのパイプライン開通。
近日中にサハリン3の開発に着手。』

北サハリンの基幹事業の油田開発は、日本に輸入が増加することになる。
日本本国は既に一般乗用車はほとんど走っていない。
だがようやく人口九百万の北海道だけは、転移直後レベルまで回復する見通しとなった。
高い食料生産が日本で最も裕福な地としてな地位に押し上げたのだ。

「次は我々の東シナ海油田だな。
沖縄経済と結び付き、日本から見放されないようにしないといけない。」


『新香港政府、ハイライン侯爵領への貿易港建設の契約』

最後のは『長征07号』を崩落した洞窟から運び出す為に結ばされた契約だ。
港の建設には侯爵領の住民が雇われる。
ノディオンを追放された住民への謝罪と公共事業の意味も込められている。

「なかなか痛い契約だったが、将来に期待させてもらおう。
地球的な港では無く、この大陸のレベルに合わせたものとは日本からも言われてるからな。」
「しかし、『長征07号』は惜しかったですな。
損傷が酷くて、潜水が不可能とは、皮肉が聞いています。」

まったく、常峰輝武警少将の言う通りで、修理の目処さえ立たない有り様だ。
核兵器は日本に引き渡すのは取り決め通りだったが、『長征07号』を新香港の戦力として期待していたのだ。

「まあ、他にも使い道は色々あるだろう。
電力事情の多少の足しにするとか、ミサイルのプラットホームとかな。」
BBR-MD5:CoPiPe-2c7496870ec37a507ff9ef53fb7c29a1(NEW)
BBS_COPIPE=Lv:0
PID: 91042
[0.227822 sec.]
This is Original

0018†Mango Mangüé(ガラプー KK15-CKty)
垢版 |
2018/06/13(水) 01:08:17.877027ID:3fNGgiLVK
そこはこれから官公庁が集中する中央区にある大陸総督府の城での会議で決められることになる。
大陸総督府の城には連日のように大陸各所から貴族や街の代表者が陳情に訪れている。
開発の誘致や日本人とのトラブルの裁定、本領安堵の免許更新、再発行、モンスター退治の自衛隊の出動の要請など多岐に渡る。
総督府の執務室には多数のファンタジー小説やオカルト雑誌が本棚を埋め尽くす。
少しでも現状を理解してもらう為と頭を柔らかくしてもらう為だ。
他には江戸幕府に関する資料が本棚の一角を占めている。

「まさか、首獲りの恩賞を求められるとは思ってなかったな・・・」

大陸に存在する統一国家である王国を傀儡にする男、秋月春種総督府は机の上で頭を抱えている。
新香港の主席との会談などより気が重くなる。
何しろハイラインの代表がこの部屋にこれから生首を持って来るというのだ。
日本の古い文献を漁り、このような文化があったことを知られてしまったのだ。

「今後もこのような事態が続いたらどうしましょうか・・・部屋が生首で溢れるような事態は、ちょっと避けたいのですが・・・ああ、ここがよろしいかと。」

秘書官秋山も困り顔で書類を渡してくる。

「元帝国皇族天領アンフォニーか。
男爵領になるのかな?
ハイライン侯爵領からも比較的近くて、将来的な南北線の駅建設の候補地の一つか。
まあ、申し分ないんじゃないかな?
地下資源に関してはどうだ?」
「亜鉛、石炭、鉛の二号鉱山。銅に関しては三号鉱山の採掘が開始されています。現在は第6鉱山開発地域に指定されてました。
これは総督府直轄ですが、鉱山町に関する利権はアンフォニー領統治機関に委ねられるでしょう。」

数字の割り振りはこの九年で見つり、日本の管理下になった鉱山の順番である。
ちなみにアンフォニーが現在の調査対象としては最新のものだ。
南北線は南部地域に植民都市百済との間に引く列車の一つだ。
首一つの恩賞として、ノディオン元公爵に与える隠居地としては惜しくも無い。
ハイライン侯爵の申請によれは、将来的にこの新京に留学中の妹に分家として相続させる予定となっている。
公安からの報告では、その妹君は親日で進歩的らしい。

「進歩的という言葉に多少違和感を覚えるが承認しよう。
安堵状の手配は?」
「完成しております。」
「よろしい。
現地の総督府支所と駐屯の第六分遣隊への連絡はよろしくな。
しかし、・・・やっぱり生首は勘弁してくれないかな・・・」


大陸総督府の城門に到着した林主席と常武警少将は家馬車から降りたところで度肝を抜かれる。

「新香港主席林修光閣下とお見受けいたします。
私はハイライン侯爵家の長女ヒルデガルドと申します。
この度は、父が新香港武装警察への援軍並びにマーマン王を討ち取った功績を認められてハイラインの代表として、大陸開発院に参上仕りました。
主席閣下とも御同席して頂ければ幸いなのですが、如何でしょうか?」

林主席としても金髪の美少女と同行することに依存はない。
ハイライン侯爵家と新香港の親密ぶりを日本側にアピールする良い機会でもある。
問題は人力車から車夫に手を引かれて降りてくる美少女ヒルデガルドの従者が、銀の皿に乗せられたマーマン王の生首を持っていることだろう。
ある程度の経緯を聞いているが、実際に見せられるとドン引きしてしまう。

「ご挨拶痛み入ります。
麗しき御令嬢と同行出来ることに依存はありません・・・ところで、その首は例の?」
「はい、マーマン王の御首に御座います。
ハイラインより、塩漬けにされて日本の宅急便で送られてきました。
総督閣下に献上する為に持参した次第であります。」
「そうでしたか・・・残念ですが我々は手続きに少々時間が掛かりますので・・・腐ってもいけませんから早めに総督閣下に献上することをお薦めします。」
BBR-MD5:CoPiPe-30be099051b6912bec628fa1639a52b9(NEW)
BBS_COPIPE=Lv:0
PID: 92113
[0.238218 sec.]
This is Original

0019†Mango Mangüé(ガラプー KK15-CKty)
垢版 |
2018/06/13(水) 01:16:37.523065ID:Mv+pzLzQK
「そうなのですか?
では、失礼して先に謁見させて頂きますわ。
主席閣下もまたのちほど・・・」

ヒルデガルドが職員や警備員を騒然とさせながら城門に入っていくのを見送り林主席は決断する。

「総督との会見は明日にしてもらおう。」
「閣下、お気付きでしたか?
あの従者と車夫、日本人でしたぞ。」

気力の抜けて脱力していた林主席に常少将が注意を促す。

「ふむ、何者か調べておけ。」

ハイライン侯爵領
海上自衛隊
多目的支援艦『ひうち』
「牽引ワイヤーロープ固定!!」「曳航装置、正常作動。」
「『長征07号』、岸から離れました。」

曳航装置は、航行不能となった船舶をワイヤーロープで接続し港や修理地などへ牽引し航行するための装置である。
多用途支援艦『ひうち』の曳航装置は、補給艦『ましゅう』や護衛艦『みねゆき』などの大型艦を曳航した実績を持っている。
乗員からの報告に艦長の明智三佐は満足そうに頷く。
海上にはこの作業の為に第16施設大隊を運んできた輸送艦『おおすみ』と、近海を警戒している護衛艦『しらね』が姿を見せている。
護衛艦『しらね』は転移前に除籍後舞鶴東港に係留保管され、標的艦となる予定であったが、転移後の戦力不足から現役に復帰。
再び偽装を施されて、新京地方隊の一翼を担っている。
『長征07号』、新香港海警局に入局して昇進した呉定発大尉が臨時の艦長代理として乗り込んでいる。
なにしろ新香港で潜水艦乗務経験者を集ってみたが二人しかいなかった。
彼等を加え、呉大尉は貴重な新香港サブマリナーとして、後進の教育にあたることになっている。

「もっとも本物の潜水艦なんて、手に入るのかね?」

呉大尉自体はあまり期待していない。
だが再就職出来たことには素直に喜んでいる。
『長征07号』は沖合いに停泊するフリゲート『常州』と合流して新香港に向かうことなる。


『長征07号』が着底していた場所をどけると全長100メートルを越える岩穴が海底に存在した。
『長征07号』はちょうどこの海底の岩穴にすっぽり嵌まっていたらしい。
海上自衛隊新京地方隊からかき集めた潜水士達が王国の入り口に侵入する。
途中で海底洞窟の方向が代わり、水の無い地底洞窟に到達する。
そこで彼等が目にしたものは、三千人規模が住んでいたと思われる岩を削って造られたと思われる海底都市と白骨化したマーマンの遺体だけだった。


「共食いの形跡が見られたそうです。
他にも座礁船から運びこまれたと思われる生活物資、財宝が確認されました。
何年も閉じ込められ、食料が尽き、死の王国と化したようです。」

撮影された映像をみせながら、ハイライン家の屋敷で赤井一尉が鎮痛な面持ちで探索の結果をボルドーとフィリップに報告する。

「いずれは縦穴を掘って、兵や冒険者を送って探索しよう。
財宝の権利はこちらで良いのかな?」

だが即物的なボルドーの言葉に赤井は頷く。

「財宝に関してはこちらは権利を放棄します。
あと、縦穴を掘るのは慰霊碑の建設の資材調達のついでまでですよ。」
「どうせなら祠や神社とやらも造っていかんか?」

フィリップの提案に赤井は考えてみる。
BBR-MD5:CoPiPe-4d0c6d1ba591471dc8db5a0540cb5a6d(NEW)
BBS_COPIPE=Lv:0
PID: 93201
[0.222999 sec.]
This is Original

0020†Mango Mangüé(ガラプー KK15-CKty)
垢版 |
2018/06/13(水) 01:19:27.382068ID:byT1TBlUK
「総督府に可能かどうか提案を問い合わせてみますよ。」

赤井達が侯爵家での晩餐を終えて用意された宿舎に帰っていく。
その様子を窓から眺めボルドーはフィリップのグラスにワインを注ぐ。

「洞窟や船の乗員の墓から、異世界の銃や肩掛け式大砲は回収しました。
倉庫に隠しています。
研究するにせよ、使用するにしろ、ほとぼりが冷めるまでは封印ですな。」
「財宝も将来的な投資に使えるから回収は必須だ。
未開拓地はマーマンの王国のそばとは予想外だったが上手く始末して、港の建設費用も新香港に出させた。
今回一番利益を受けたのは我々だな。
アンフォニーには代官を派遣する必要があるな。
人選は近日中に決めよう。」

二人はグラスを傾けて乾杯する。

「今回のマーマンやシーサペントの討伐は父上が家を飛び出して、冒険者をしていた経験が生きましたな。
そういえば父上、総督府の総督閣下に手柄首を送りましたが日本ではああいった風習はとうに廃れてると聞きましたが?」
「こちらを古臭い懐古趣味な田舎者と侮ってくれれば今後もやりやすかろう。
あとはそうだな・・・単なる嫌がらせよ。
ところで、儂もお前に言いたいことがある。
ヒルデガルドの教育についてじゃが・・・」
BBR-MD5:CoPiPe-d5037b0976a5dfe93b43f95d384159d3(NEW)
BBS_COPIPE=Lv:0
PID: 93585
[0.149858 sec.]
This is Original

0022†Mango Mangüé(ガラプー KK8d-CKty)
垢版 |
2018/06/13(水) 13:36:39.533394ID:X9ZJRBbKK
大陸南部
ハイライン侯爵家が南部に港町を建設する計画は周辺地域に降って湧いた好景気をもたらしていた。
旧ノディオンの商人リュードは侯爵家の要請もあり、王都で開いていた店を畳んでハイライン侯爵領に向かっていた。
資産と家族の人数はそれなりにあるので馬車を七台仕立ててることとなった。
同様にハイライン侯爵領に向かう旧ノディオン住民達と合流し、馬車15台の大規模なキャラバンのようだ。
いずれも商人ばかりだから間違いでもない。
安全の為に傭兵も20人ばかりを雇っている。
いずれも十代から二十代の傭兵達なので、3人いる娘や妻や3人の妾に手を出さないか心配である。
だが三十代、四十代の傭兵など信用ならないから仕方がない。
この年代の傭兵は腕も悪いし、度胸も無い連中ばかりなのだ。
最近は街道もだいぶ整備された。
日本の連中が年貢や鉱物資源を輸送する為に整備したのだ。
街道の横には煙を立てて動く列車の線路が敷かれている。
この線路に沿えば日本の軍隊のいる治安のよい町や村に通じているわけだ。
だからといって完全に安全というわけではない。
南部地域は元々亜人の諸部族が多く住んでおり、帝国は彼等の族長に辺境貴族の称号を与えて支配領域の保障を与えていたのだが帝国は滅び王国にその力はない。
亜人達は各部族内部でも分裂や権力闘争が起こっているらしい。
王国の後ろ楯である日本も介入する様子は全くみせずに放置している。
そんなことを考えていると、リュードの近くで後方を警戒していた傭兵が胸を矢で貫かれて馬車から転がり落ちていく。
リュードは指揮を執る傭兵隊長にかわり大声を張り上げる。

「敵襲!!」

馬車のスピードを上げ、傭兵達は各々持ち場で警戒をして武器を抜き放つ。
だが森の中から放たれた数本の野矢が傭兵二人の命を奪う。

「山賊か?」

森の木々の間から馬車に並走して矢を射ってくるのは・・・

「ケンタウルスか!!」

森から街道に30騎ばかりが唸り声を上げながら躍り出てくる。

「まずい、女達を守れ!!」

傭兵隊長が叫んだ瞬間に体に矢を数本生やして馬車から転がり落ちる。
ケンタウルスの目的は女と酒だ。
なぜか人間の若い娘に目が無い彼等は、発情した顔を剥き出しにして襲い掛かってくる。
傭兵達も弓矢で応戦するが、その数をまた一人一人と減らしていく。

「冗談じゃ無い。
後払いの料金は少なく済むが、全滅されちゃ意味はない。
急げ、馬車のスピードを上げろ!!」

馬車の壁に貼られた『時刻表』によればそろそろ遭遇するはずだ。
馬車が1台横転し、亭主が刺され女房がケンタウルスに抱えられている。
助ける余裕はない。

「もうすぐ・・・もうすぐだ!!」

また、1台の馬車が車輪に槍を差し込まれて横転する。
あの馬車には年頃の姉妹を乗せていたはずだ。
後ろで怯える娘達を同じ目に合わすわけにはいかない。
その時、リュードが求めていた汽笛の音が聞こえてくる。

「来たぞ、日本の装甲列車だ!!
おいお前!!
馬で先導して救援を求めろ。」
BBR-MD5:CoPiPe-413bcf7b25022f48ca6d5ad0238d9872(NEW)
BBS_COPIPE=Lv:0
PID: 85774
[0.206201 sec.]
This is Original

0023†Mango Mangüé(ガラプー KK8d-CKty)
垢版 |
2018/06/13(水) 13:38:55.752905ID:ta3i0G5sK
予めこちらの状況を知らせる為に馬に乗っていた傭兵の一人に命じる。
馬に鞭を入れて煙を上げる汽車に向かって走らせる。
ただ汽車は線路の上以外は動くことが出来ない。
だが装甲列車の機関車から、筒状の何かを口に着けた車掌がこのまま街道を走り抜けろという声が伝わってきた。
なんと大きな声だと驚くが、馬を操る手を止めるわけにはいかない。
キャラバンと機関車が対抗車線側にすれ違い、ケンタウルスの群れがそれに続く。

大陸東部
新京特別区
西区
許忠信は転移前は中華人民共和国国家安全部第十局(対外保防偵察局)に所属し、日本国内で外国駐在組織人員及び留学生監視・告発、域外反動組織活動の偵察などの任務に携わっていた。
転移後、新香港に移住したが日本後に堪能なことと、転移前の経歴を買われて新香港武装警察公安部の一員として、新京で中華料理店の皿洗いとして情報収集の活動を行っている。
先日、新京で林修光主席が遭遇した日本人の尾行を7人の同僚と行っていた。

「主任、李と田のチームが撒かれました。」
「くそ、またか・・・」

尾行対象は明らかに尾行を意識した行動を取っている。
唐突に建物の中に入り別の入り口から出ていったり、階段を登ったかと思えばそのまま降りてきたりを繰り返したりしてこちらの尾行チームが二組も撒かれたのだ。
尾行対象はハイライン侯爵家令嬢ヒルデガルドの従者斉藤光夫。
まだ、新京大学の四年生である。
今も学生街の一角の複雑な路地を歩いて、許と新人の王成明の尾行を受けている。

「他の連中との合流は無理だな。
まったく、どこまで行く気だ。」

ぼやいていると斉藤はビルの地下に入っていく。
何やら地下街になっているようだが、この時間はほとんどの店が閉まっているのは看板から伺える。

「一人ずつ入るぞ、先に行け。」
情報機関の人間として、些か不安を感じさせる王成明は転移前は日本に留学していた学生だった。
相当な日本被れだったが日本通だったこともあり、公安部にスカウトされたが情報部員としては三流もいいところだった。
王がビルの入って数分後、許も地下街に入る階段を降りていく。
たがその行く手を塞ぐ男がいる。
左目に眼帯、十字架を首から掛け、黒いパーカーにはドクロと羽がプリントしてあり、指には一つずつ指輪が嵌めている。
ズボンも黒いジーンズで靴は黒い安全靴だ。

「待ちな・・・あんたは同胞じゃない・・・ここから先を行く招待状は持ってないだろう?」

許は警戒して、背中のホルダーに隠した拳銃を使うか迷う。
しかし、黒い男は左腕を前へ伸ばし、鼻筋へ左手人差し指を合わせる、右肩をあげ右手をピーンと伸ばすという奇妙なポーズを取っている。
あまりに奇妙な動きに対応を躊躇してしまう。
許は中国人だ。
黒目黒髪で基本的に日本人とは見分けはつきにくい。

『だが一瞬で同胞では無いと見破られた。
こいつはただ者ではない。
王は通れたのか?
あいつどうしたんだろう・・・』

「我が左手に刻印されし、暗黒の炎に抱かれて灰となるか。
封印されし、左目に封印されし魔眼の魔力に魅入られるか・・・選ぶがいい・・・」

許は一目散に階段を掛け上がって逃げ出していった。

『奴は何を言った?
魔力だと、そんな馬鹿な・・・ついに日本人も魔力を手にいれたというのか?』

現在までに転移してきた人間で、魔法が使えるようになった事例は1例しか確認できていない。
BBR-MD5:CoPiPe-35fec711911520bf0dda63409aa67c39(NEW)
BBS_COPIPE=Lv:0
PID: 86011
[0.228140 sec.]
This is Original

0024†Mango Mangüé(ガラプー KK8d-CKty)
垢版 |
2018/06/13(水) 13:49:44.308290ID:a7MhstvzK
在日米軍のパイロットで、皇都空爆を行ったB−52の編隊長だった男だ。
現在は行方不明で暗黒神の大神官となっているらしい。
まずはこの場を退き、本部に連絡してこの男を観測する準備を整えねばならない。

「行ったか・・・何者だ?」

黒い服の男の後ろから二人の男が現れる。
斉藤とこの場の取り仕切っている後藤だ。

「いや、それより黒川さん何してるんですか?」

後藤が床に目をやると、黒ずくめの男が苦悶の表情で転がりまわっている。

「中学時代の多感な自分を再現して身悶えして転がってるだけだ。
ほっといてやれ。」

「・・・まあ、それはいいとして・・・斉藤さんつけられましたね?
当局の奴等でしょうか・・・」
「それはそこの彼に聞けばいいさ。」

二人が振り返ると数人の男達に拘束された王成明がパイプ椅子に座らされている。

「き、貴様らはいったい何者だ!!」

斉藤が苦笑いしながら答える。

「何者?
おかしなことを聞くね。我々は君の同胞だよ。」

怯える王に後藤が扉を開けて部屋の中に招待する。

「ようこそ、我々の世界へ・・・」

数日後、行方不明だった王成明から郵送辞表が届けられた。
『僕は自分が行くべき世界を見つけました。』
と、書かれていたので新たな異世界転移かと物議を醸しだした。

大陸南部
ケンタウルス自治伯領
ケイトレン氏族トルイの町
ケンタウルス族は大陸において、大族長が自治伯爵として帝国に任命され、その武力を背景にそれぞれの氏族の縄張りを統合して自治伯領として存在していた。
大族長は世襲ではなく族長選挙によって選ばれる。
帝国が滅び王国にその統治機構が変わってもその盟約は存在したが、問題は王国がケンタウルス族を武力を背景に抑えることが出来なくなりつつあることになった。
このトルイの町のケンタウルス人口は五千人、人間は主に奴隷が千人ほど。
町は当然ケンタウルスに優しいバリアフリー完備だ。
族長の名前は町の名前そのままのトルイ。
後継者が跡を継げば町の名前は代わる。
その族長トルイは怒り心頭で客人を待っていた。

「遅い、エリクソンはまだか!?」

召し使いの人間の女達は投げ飛ばされる杯に怯えきっている。
トルイはケンタウルス族の中ではこれでも理知的な方だ。
人間の商人と組み獣の革や工作物に使える骨。
この地域の特産物である病気によくキノコやニンジンを各氏族から集め、商人に高値で売り付けて利益を得る。
周辺の鉱山で奴隷に採掘させている鉱物資源。
狩猟部族であるケンタウルスが町を築いていることからもその辣腕ぶりが伺えるだろう。
そして各氏族の族長には安値で卸した酒や奴隷女をあてがい機嫌を取ることにも長けている。
BBR-MD5:CoPiPe-7101962c5e122a539fca0fd179e960b7(NEW)
BBS_COPIPE=Lv:0
PID: 87308
[0.216515 sec.]
This is Original

0025†Mango Mangüé(ガラプー KK8d-CKty)
垢版 |
2018/06/13(水) 19:06:47.374016ID:ETfSB184K
そんなトルイが怒っているのは館の庭に並べられていた町の若衆の遺体30体ばかりが原因である。
遺体のほとんどは体に穴を開けられ、原形を留めていない者も多い。
若衆の遺族代表は館の中に。
他の遺族も館を取り囲んで騒ぎ立てていた。
そこに商人エリクソンがやってくる。
場所が場所だけに馬車が使えない。
うっかり使ったらケンタウルス族の中には襲ってきたり、嫁に欲しいとか言い出すものがいる。
少し高価だが地龍に車を曳かせた龍車で館の門を潜り、トルイのもとに参上する。
ケンタウルス自治伯領との折衝や交易の独占権を持つ帝国貴族シルベール伯爵は商場(あきないば)を割り当てて、そこで交易を行う権利を商人に与えて運上金を得ていた。
エリクソンはその一人でこのトルイの町の交易の独占権を持つ商人だった。

「これはまた・・・派手にやられましたなあ・・・」

事前に聞いてはいたが、勇猛なケンタウルス族がここまで一方的にやられるとは思ってもいなかった。

「貴様のいう通りにキャラバンを襲ったらこの様だ。
まさか貴様、我々を嵌めたのではないか?」

エリクソンは首を振って否定する。
確かに長年の商売敵のリュードに対する恨みからケンタウルス族を煽ったの間違いないが、失敗は望んでいない。

「冗談じゃない。
あのへんはあんたらが詳しいというから、襲撃を一任したんじゃないか。
日本の装甲列車が通る時に襲うとは思ってなかったしな。」

確かに若衆達が襲撃したのは予定より早い時間だった。
襲撃は夕暮れの予定だったが、昼日中に襲っている。
若い女の姿に興奮して暴走する若衆の姿がトルイにも目が浮かぶようだった。

「判った信じよう。」

トルイか手を挙げると、遺族達が退室していく。
エリクソンは安心してない。
トルイがこの程度でことを納める筈が無いからだ。

「貴様のことは信じるが、今回の件で族長会議での面目は丸潰れだ。
次の大族長を選ぶ会議での不利になる。
失った倍の日本人の首か、女を手に入れねばこの町での立場まで弱くなる。
貴様もそれでは不味かろう。」
「何をお考えで?」
「また列車を襲う。
ただし今回は装甲列車じゃなくて襲いやすいのだ。
一週間やるから考えろ。」

さても厄介なことになったとエリクソンは苦虫を潰していた。

大陸東部
新京特別区から海岸に沿って南に50キロ。
車両が通れるように舗装された道路の終点に大陸総督秋月春種が、秘書官の秋山や護衛のSPを引き連れて視察に訪れていた。
一行は先に完成していた市役所庁舎ビルの会議室に入る。
窓から見える光景はほとんど原野の土地でブルドーザやショベルカーが、整地作業を行っている。
会議室ではレーザーポインターでプロジェクターに映し出された画像や動画を解説する責任者の朝比奈順一部長の話を聞いている。

「市役所や駐屯地、港湾、電気、ガス、水道、通信、病院のインフラ設備も完成しております。
第一期の団地も現在は内装工事中。
病院、駅、学校に関しては、来年着工になります。」
BBR-MD5:CoPiPe-d3be25cccd9b393cfe11fa4e288a2502(NEW)
BBS_COPIPE=Lv:0
PID: 28605
[0.208393 sec.]
This is Original

0026†Mango Mangüé(ガラプー KK8d-CKty)
垢版 |
2018/06/13(水) 19:09:08.365609ID:tYLm/t5kK
「まあ、上出来だろう。
最初の住民は新京からの異動組に単身赴任で来てもらうから家族はいない。
インフラ設備の職員や自衛官、警察官、役所の職員。
2月いっぱいはそれで済むはずだ。」

秋月の言葉に全員が頷く。
新京特別区の住民は来年の1月をもって、人口が二百万人を越える。
大半が団地や寮住まいだが、こちらの大陸で財を成した者が一軒家を建築する光景も珍しくもなくなった。
中には新京を飛び出して大陸の他の町に住民に混じって生活の居を移した者もいる。
だが日本本土からの移民希望者は新京の住民の20倍はいる。
そこで新京の開発も一段落した頃から新都市開発を進めていたのだ。
官民合わせて異動組が2月から3月に生活を始める。
その後は家族を呼び寄せて、彼等の穴を新着の移民で埋めていく。

「民間からの工場やスーパーの建築、一軒家の購入の要望も殺到しています。
新京からの引越し組も考慮して、移民組第一期の居住は6月あたりになります。」

秋山は新京からの要望も合わせた話を語る。
移民の問題は現時点で問題はない。
秋月は次の問題を提起する。

「次の案件は・・・これは大事だな。
この市の名前は何にするか一般公募か・・・」
「名称、由来、構想・・・まあ、新市民に夢と希望を抱かせる誤魔化しですな。」

秋山は容赦がない。
秋月はスルーして話を進める。

「大々的に募集してくれ。
締め切りは今月中だ。」
「手配致します。
ところでこの新都市開発計画とは関係無いのですがもう一件よろしいでしょうか?
例のアンフォニーの代官が決まりました。」

秋月は総督府執務室に飾られたマーマン王のホルマリン漬けを思いだしてうんざりした声で話を続けるよう促す。
わざわざ代官の任命に総督府が関与することは少ない。
わざわざこの場で議題にあげるのは、代官当人に大きな問題を抱えているからだ。

「どうも日本人のようなんです。」

秋月秘書官も困惑したように説明をはじめた。

大陸中央部
旧皇室領現子爵領
マッキリー
第四分遣隊分屯地
マッキリー子爵は帝国解体時は、男爵に過ぎなかったが日本との和平に尽力して昇爵と加増を勝ち得た人物である。
その子爵領では金、銀、銅、石炭、ニッケル、ボーキサイトが採掘されて大陸総督府が管理している。
ニッケル、ボーキサイトについては現在は唯一の鉱脈であり、重要視されている。
その為に混成部隊である第四分遣隊は300名と各分遣隊の中でも最大規模であり、1機ではあるが唯一汎用ヘリコプターMi−8、ヒップが配備されている。
石炭が採掘出来ることから、新京と王都を繋ぐ東西線東部方面の中間地点としての賑わいも見せている。

「浅井治久二尉、入ります。」

入室して敬礼すると、分屯地司令の朝倉三等陸佐の答礼を受ける。
BBR-MD5:CoPiPe-4496f44b77c013d964faead6dbec7866(NEW)
BBS_COPIPE=Lv:0
PID: 28972
[0.197714 sec.]
This is Original

0027†Mango Mangüé(ガラプー KK8d-CKty)
垢版 |
2018/06/13(水) 19:10:36.669275ID:wWXf/Bj/K
「浅井二尉、二年間のお勤めご苦労だった。
君が補佐官だったおかげで任務は楽をさせてもらえた。
昇進は来年になるが先に一つ派遣任務を司令部から命令された。」

浅井二尉は一等陸尉に昇進後、来年創設される第七分遣隊90名の指揮官となる。
この分屯地には研修の一環として赴任していた。

「現在、建設中の第六分屯地のアンフォニーに新たな代官が任命され赴任する。
新領地ということもあり、現在新京で留学中のハイライン侯爵令嬢も視察として同行することになり、このマッキリーを列車で通過する。
貴官もこれに同行し一連の行動を視察せよ。
また、これは第六分遣隊の進捗状況を貴官の参考にする為でもある。」
「はっ、浅井二尉命令謹んで拝命致します。
また、この度のご配慮感謝致します。
第四分屯地での毎日は大変勉強になりました。
マディノの地でも精励していきたいと思います。」

二人は握手をかわし、朝倉は浅井に椅子に座るよう促す。

「しかし、代官の視察ですか。
たぶん監視せよと総督府あたりからの指示なのは判りますが、問題のある人物なのですか?」
「詳細はこちらにも伝えられていない。
総督府はよほど知られたくないらしいが、機密にも指定されていない。
民間絡みじゃないのかな?
とにかく明後日の1000時にマッキリー駅、王都行き『よさこい3号』で、令嬢を伴って乗車している。
これに同行せよ。」

明後日
昨晩の送別会で散々に酒を飲まされた浅井二尉であったが、習慣から朝6時に起床して身なりを整え分屯地を後にすることにした。
分屯地の受付では、カラシニコフ小銃を持った歩哨や警衛、受付の隊員達から

「浅井二等陸対し・・・捧げ銃!!」

の敬礼を受けて、少し涙目になってしまった。
駅には一時間早く到着して汽車を待っていた。
汽車は定刻通りに停車する。
鉄道公安官にAK−74を初めとする護身用の武器をほとんど預け、自身はマカロフ PM拳銃と予備の弾装1個を携帯して列車に乗り込む。
座席は指定席だ。
令嬢と新任代官は同じ車両に乗るよう手配されているのだ。
青と黒を基調とした騎乗服に身を包み、ポニーに結んだブロンドドの髪を靡かせている美少女だった。
歳は十代半ば。
透けるような白い肌を持ち、ぴっちりとした軍服が彼女の均整の取れたスタイルを強調している。

「レディ・ヒルデガルドさんですね。
お初に御目にかかります。
自分は陸上自衛隊二等陸尉、浅井治久と申します。アンフォニーまで同行を命じられました。
よろしくお願いします。」

貴族令嬢への敬称『レディ』と日本人風に『さん』付けしている完全に失敗な挨拶だが、浅井は気が付かずに握手を求める。
だがその手は若いリクルートスーツを着た男に握られる。

「お初に御目にかかります。
この度、アンフォニー領の代官として着任することとなった斉藤光夫と申します。
道中、短い間ですが宜しくお願いします。」

丁寧な挨拶だが目が笑ってない。
同時に周囲から敵意が一斉に向けられるのを感じた。
周辺の座席の若い男達が一斉にこちらを見てるのだ。
BBR-MD5:CoPiPe-5540d156784e19aec7527e30e0ccbdbd(NEW)
BBS_COPIPE=Lv:0
PID: 29130
[0.209169 sec.]
This is Original

0028†Mango Mangüé(ガラプー KK8d-CKty)
垢版 |
2018/06/13(水) 19:15:36.700780ID:dy5jfPyiK
「ああ、お気になさらずに。
彼等は代官所のスタッフと研修生です。」
「研修生?」
「お気になさらずに。」

強調されて困惑する浅井にヒルデガルドは、クスクスと笑っている。

「ヒルダでいいですわ。
楽になさって下さい。」
「・・・、お言葉に甘えて・・・」

ようやく座席に座ることが出来た。
ギスギスした車両はたいへん居心地が悪かった。
ヒルダとの会話には支障はなかった。
大貴族ほど日本語を学んでいるし、ヒルダは新京に留学出来るくらい優秀なようだ。
日本人の方が大陸での言語を学ぶのに苦労している。
大陸の統治に旧帝国の貴族や役人を排除出来なかった一因でもある。
会話は進み、旅程について話が進むとヒルダが浅井の赴任地について訪ねてくる。

「浅井様が赴任するマディノというと、旧マディノ子爵領の?」
「はい、『横浜広域魔法爆撃』で改易となったマディノ子爵の領地だった場所です。」
「確か金、銀、銅の鉱山があったかしら?
日本の鉱物資源の欠乏は切実のようね。」
「まあ、そんなところです。」

今度は浅井が斉藤達を睨み付けるが、斉藤は意にも介さない。

「姫様は新京の留学生ですからその辺りは授業で習いますよ。
我々が教えるまでなくね。
二尉殿は我々が大陸技術流出法に違反してないか心配のようですが、あの法律は木材を使った技術は規制してないし、農業に関しては奨励しているくらいですからご心配なく。」

確かに木材技術は日本としては眼中に無いし、食料生産の向上は望むところなのだ。

「単刀直入に言おう。
大陸総督府は今回の代官就任に注目している。
君たちが危険かそうじゃないかだ。
だいたい君らは一体何者なのだ?」

斉藤は自信満々に答える。
たぶん、用意してあったような発言だった。

「ただの就活中の大学生ですよ。」

そのどや顔をおもいっきり殴りたかった。
睨み付ける浅井をヒルダが話掛けてきて会話が変えさせられる。

「浅井様、前々から疑問だったのだけど、日本は、鉱山を発見したり開発するの早すぎないかしら?
どうやって見つけてるの?
あと、やたらと金、銀、銅に片寄ってるのは何故なのかしら?」

答えていいものなのか浅井は迷ってしまっていた。
金、銀、銅、それに加えて鉄が多いのは最初から帝国や貴族たちが発掘したのを接収したからだ。
それ以外、石炭、亜鉛、鉛、ボーキサイト、ダイヤモンド、ニッケル、カリウム、リチウムに関しては、帝国が設立した学術都市での調査記録に基づいている。
他にも色々発見はしているのだが転移当時の鉱山労働者の数が少なかった日本には手がつけられなかったのだ。
現在は鉱山労働者を教育、経験を積ませて順次鉱山に割り振っているのが現状だ。
同時に冒険者を雇って、未開発鉱山からサンプルを持ち帰らせたりしている。

「私は自衛官なので専門外のことはわかりませんな。」

お茶を濁すことにした。
BBR-MD5:CoPiPe-2282a8c3dc08a3377f178887854d38e6(NEW)
BBS_COPIPE=Lv:0
PID: 29795
[0.211790 sec.]
This is Original

0029†Mango Mangüé(ガラプー KK8d-CKty)
垢版 |
2018/06/13(水) 19:24:33.204506ID:RUj9G9VMK
「自分も聞いていいですか?」

斉藤からの質問である。
身構えるが内容はたいした質問でじゃなかった。

「なんで分遣隊の隊員さん達は東側の装備なんですか?」


転移6年目
南樺太道
大泊郡深海村(旧サハリン州ダーチェ)

日本に返還された南樺太は食料増産を目論む日本政府によって、幾つもの開拓団が組織された。
中心となるのは転移前に廃業した農家や漁師達で、第三次産業に従事していた者達である。
もちろん一朝一夕に畑は出来ないし、漁船だって足りてるわけじゃない。
それでも南樺太に駐屯する陸上自衛隊第2師団の隊員達が手伝いに来ることもあって、ようやく東京への出荷が出来る規模の生産が可能となっていた。
そんなある日、人口四千人ほどの豊原市に隣接する深海村に三千人ほどの第二師団の隊員が展開していた。
動員されているのは豊原の第2普通科連隊、第2後方支援連隊。
住民達は普段は地引き網や開墾を手伝ってくれる隊員達が怖い顔をしてある倉庫のような建物を包囲しているのに驚愕していた。
隊員の中には村の娘と恋人関係或いは結婚した者も多いが誰もが家族にも理由を明かさない。
不安がる住民を代表して、村長と駐在が村の代表数人を引き連れ自衛隊の仮設司令部を訪れていた。
「お騒がせして申し訳ない。」

開口一番、第二師団団長穴山友信三等陸将が頭を下げてくる。
三等陸将は自衛隊の大幅な増員を受けて、予てより計画されていた将・将補の2階級制度を4階級制度にした為に出来た階級だ。
だが呼びにくいので部下達すらいまだに陸将としか呼称してくれない。

「穴山団長、我々としても朝っぱら自衛隊さんが大挙して押し掛けてきた困惑している。
村の中じゃ、ここにもモンスターが出たのかと怖がっている者も多い。
機密とかに縛られてるあんたらの事情も理解は出来るが、村の者を安心させる発表を欲している。
そこらを説明してくれないだろうか?」

村長は元は大阪の住民だ。
樺太開拓は様々な地方から集まった住民がいるため、極力標準語で喋っている。
北海道ではいまだに存在する『隣の町の人間が何を喋ってるか判らない』問題を南樺太にまで持ち込まない為だ。
故郷への郷愁を断ち切る為でもある。

「そうですな・・・、皆さんはニコラス・ケイジが昔主演した武器商人の映画を観たことがありますか?」

唐突に始まる映画鑑賞会。
ソ連崩壊によりウクライナで将軍の叔父を訪れた主人公は、叔父が管理する基地で膨大に保管されている兵器を売却して富を築いていく。

「この保管基地がですね。
実はこの村にもあったんです。」

名称は第230保管基地。
2008年、ドミートリー・メドヴェージェフ大統領が承認した「ロシア連邦軍の将来の姿」に従い、ロシアの各師団は一度全て旅団に改編された。
さらにもう一歩進めて、第230保管基地は平時には基幹部隊と装備のみ維持し、戦時に完全編成の第88独立自動車化狙撃旅団として展開する予備旅団の基地となった。
そして日本転移に巻き込まれ、日本政府の支援の代償に千島列島と南樺太を返還すると、各地に点在していたロシア軍北サハリンに集まり統合された。

「ところがですな問題はもう1つありまして、樺太にも千島にもロシア製、いや東側の武器弾薬を造る工場なんてこの世界にはどこにも無いわけです。
さらに新設の部隊を創設出来るほど、ロシア人人口に余裕があるわけでもない。
ならばいっそ我々に造らせてしまえと。
この保管基地はそのサンプルとして譲渡されたわけです。
これには同系統の装備をしている新香港の意向でもあるわけですな。
まあ、我々も武器弾薬の消耗は悩みの種でしたからな。」

安全が確認され、保管基地の地下倉庫の扉が開けられる。
そこには無数のロシア製兵器がところ狭しと鎮座している。
その規模には同行した村長や駐在はともかく穴山団長や隊員達も驚いている。
BBR-MD5:CoPiPe-5bf9e1bebc3cdbdb24ee387e180bc756(NEW)
BBS_COPIPE=Lv:0
PID: 31066
[0.249927 sec.]
This is Original

0030†Mango Mangüé(ガラプー KK8d-CKty)
垢版 |
2018/06/13(水) 19:31:18.349766ID:Nw0tsJQ+K
「とても旅団用の数じゃないな。」

自分達第二師団はずっとこんな連中と対時していたのだと冷や汗が流れた。

転移から九年目
大陸中央部
東西線『よさこい3号』

「その後、山口の第17普通科連隊にロシア製兵器の転換訓練が行われた。
大陸派遣を命令させて6っの分遣隊が同連隊から組織されて今に至るわけだ。」

あれだけ敵意を向けていた斉藤やスタッフ達が、浅井の話を聞き入っていた。
久し振りの本国の話も聞けたからというのもあるだろう。
次はこちらが彼等に聞く番と考えていると、全員の携帯から一斉に着信音が鳴り響く。
浅井や斉藤達だけでなく、車両に乗り合わせた日本人乗客からもだ。

「安否メールか。」

浅井が携帯から確認したのは、新京から出た日本人に配布された総督府からの安否確認を行うサイトに繋がるメールだ。
災害やテロが発生した時に一斉に送信される。
もとは警備会社が顧客サービスに使用していたシステムだ。
そして、内容も書き込まれている。

「テロ警戒か・・・君らは護身用の武器を持ってきたか?」

大陸中央部
旧皇室領現子爵領マッキリー

町の片隅で一頭のケンタウルスが弓を構えていた。
傍らには商人エリクソンから派遣された男が目標を指差して頷いている。

「あいつを殺ったら俺は一族に復帰できるとトルイの叔父貴は行ってたんだな?」

ケンタウルスはトルイの甥でセルロイ。
素行の悪さから一族を追放され、マッキリーの鉱山で荷車を運ぶ日雇い人夫をして過ごしていたが、ようやくチャンスが巡ってきた。
セルロイは一撃離脱の騎射の名手である。
ビルの路地から飛び出し、一騎駆けで目標の陸上自衛隊第四分遣隊隊長朝倉三等陸佐が軽機動車の後部座席に乗り込もうとするところを騎射する。

「往生せいや!!」

肩を射抜かれた朝倉三佐の部下達が離脱しようとするセルロイを銃撃で蜂の巣に変える。

「隊長!?」
「大丈夫だ。
肩に刺さったがこれくらいなら・・・」

だが朝倉三佐は青い顔をして口から泡を吹いて倒れる。

「これは・・・毒か!?
救急車だ、救急車を呼べ!!」

慌てる隊員達を尻目に見届け役の男は人ゴミの雑踏に紛れ込んで消えた。

大陸中央部
旧天領トーヴェ第5分遣隊分屯地
第5分遣隊は各分屯地の中でも最小で僅かに50名しかいない。
分屯地も小規模であるがT−72戦車、2К22ツングースカ自走式対空砲、2S19ムスタ-S 152mm自走榴弾砲などが1つずつ格納庫に鎮座している。
BBR-MD5:CoPiPe-f0476a15e3f054868053f564b0941520(NEW)
BBS_COPIPE=Lv:0
PID: 32106
[0.196124 sec.]
This is Original

0031†Mango Mangüé(ガラプー KK15-CKty)
垢版 |
2018/06/13(水) 22:45:37.269377ID:nVu8DtK0K
専門の隊員も足りないので普通科から人数を借りて教育して運用したりしている。
現在、この分屯地には10名の隊員しかいない。
鉱山、居住区の警備、市街地の巡回、訓練中などで4個分隊が留守にしているのだ。

「先生、よろしくお願いします。」
「オウ、マカセロ」

分屯地の営門で警衛任務にあたっていた加藤二等陸士は信じられない者が街中からこちらに歩いてくるのを目撃する。
身長210センチほど、角の生えた兜からはタテガミを靡かせている。
肩鎧には一角馬の頭部を模した金属で造形されている。
鎧は蹄を模したデザインで全身鎧だ。
ベルトも蹄の形の紋章のバックルとなっている。
腰鎧も装着して、分厚い金属の盾と巨大なバスターソード。
それなりに強そうな騎士に見える。
問題は顔が馬だったことだ。

「獣人?」

疑問を口にしたところで、巨大な剣で脇から凪ぎ払われた。
馬の騎士は剣を見て不思議そうな顔をしている。
剣で斬り裂くつもりがケプラー繊維の防弾・防刃ベストがそれを防いだのだ。
馬の騎士は大して力は込めていなかったのだが、衝撃で五メートルは飛ばされた加藤はあばら骨が折れて気を失っている。
防刃ベストも穴だらけでもはや使い物にならない。
飛ばされていく加藤を警衛所から目撃した宮崎陸士長は即座に分屯地に鳴り響く警報のボタンを押す。
これで現在分屯地にいない部隊にも連絡がいく。
同時に受付業務にあたっていた前川一等陸曹が机の引き出しから、拳銃を取り出して受付ブースから発砲する。
馬の騎士よろめきこそしたが、盾や鎧に拳銃弾の穴を開けただけだ。
宮崎陸士長も壁に立て掛けているAK−74を窓口から発砲する。

「馬鹿な効いてない?」

今は亡き帝国の重装甲騎士団のプレートメイルすら穴だらけに出来る拳銃で相手にダメージを与えられていない。
だが警報を聞いて隊舎から出てきた隊員が撃ったAK−74も加わると、衝撃で仰け反っていたが盾を構えられると途端に防がれてしまう。
そして、その太い足からの瞬発力で銃口を定めさせない。
さらに三人の隊員が建物から出て来る。
一人が銃撃しながら牽制し、二人が加藤を担架に積んで建物に引き返しながら後退する。
警衛所から出てきた前川一等陸曹は今更ながら相手を誰何する。

「貴様、何者だ!!
何が目的だ!!」
「ダダノルロウノダバデアル。
ベツニオヌシラニウラミハナイガ、イッショクヒトバンノオンギ二アズカリオヌシラノクビヲショモウスル。」

人間の言葉に慣れて無いのだろう。
聞き取りずらいがなんとなく意味は理解できた。
問題は相手の目的だ。
現在、戦えるのは残っているのは普通科の5名。
残りは通信科1名、医官2名、飛行科1名、負傷者1名。
重火器のほとんどが持ち出されて分屯地には残っていない。
だが簡単に首を獲らせるわけにはいかない。
新たに駆けつけた二人も警衛所の反対側から銃撃を浴びせる。
隊舎の1人も玄関から発砲して、3方向から防御を崩そうと攻め立てる。
だが自衛隊側の誤算は彼らの考える鎧甲冑はあくまで人間の騎士のものを想定していたことだ。
馬の騎士の鎧兜盾一式の重量は、人間の騎士の物の四倍の重量があり、その分装甲も分厚くなっている。
それらを着こなしてなお軽いフットワークでこちらに接近してくる。
遮蔽物も利用してきてこちらとの戦い方も理解している。
そして獣人特有の痛覚の鈍さが多少のダメージを無視した戦いを繰り広げてくる。
銃撃を避けながら、隊舎の普通科隊員が壁に追い詰められていく。
隊員の持っていたAK−74が剣で破壊される。
BBR-MD5:CoPiPe-f728207b1bc3b598cd58a87bde8e42a5(NEW)
BBS_COPIPE=Lv:0
PID: 60680
[0.230485 sec.]
This is Original

0032†Mango Mangüé(ガラプー KK15-CKty)
垢版 |
2018/06/13(水) 22:50:54.753933ID:/vEeX7wAK
「マズヒトリメ。」
「舐めるな。」

普通科隊員の首が斬り落とされる。
だが斬り落とされる寸前、防弾・防刃ベストのアタッチメントに装着していた手榴弾のピンを引き抜いていた。

「サテツギハ・・・グホッ!?」

手榴弾の爆発に巻き込まれて、馬の騎士は爆風で転がってくる。
前川も宮崎もマカロフ PMの銃弾を浴びせまくる。
だが数発命中しただけで飛び退かれて

「ハッハハサスガニイマノハシヌカトオモッタゾ。
ケッコウイタカッタナ。」

血塗れの馬の騎士が起き上がってくる。
鎧がかなり破壊されたのを見て剣を鞘に納める。

「マアヒトリハヤッタシギリハハタシタ。」

天に向かって嘶くと、営門のゲートを潜って巨大な白馬が現れる。
この白馬も馬用の鎧が着せられている。
その白馬に颯爽と馬の騎士が乗り込む。
宮崎は後ろから銃弾を撃ち込もうとしたが、前川に止められる。
このまま戦えば死人が増えるだけである。

「アアマダナノッテナカッタナ。ワガナハアウグストス。
ソシテワガアイサイセレーヌデアル。
ソレデハサラバダイカイノヘイシタチ。!!」

去っていく白馬の馬の騎士に隊員達は戦う気力も無くして立ち尽くして見送るしかなかった。

「な、なんだっだんだアイツは・・・」

大陸中央部
東西線沿線

70騎のケンタウルスが線路に石や斬り倒した木を積んでバリケードを築いている。
エリクソンの金の力と日本への反発を利用して、各領地の貴族達にケンタウルスの通過を黙認させた。
そして、『よさこい3号』は間もなくここを通過して停車を余儀無くされる。
トルイはここに一族の戦士全てをここに集めた。

「男は首を斬れ、女は全部連れ帰る。
マッキリーとトーヴェの日本軍は動けん。この機を逃すな!!」
『『『おおぉぉ!!!』』』

機関車の汽笛の音が聞こえる。
バリケードに気がついてブレーキを架けている。

「車両の両側から矢を射る。
連中はまだ何が起きてるか知らないはずだ。
女は殺すなよ、突撃!!」

半数に別れたケンタウルスは弓に矢をつがえながら駆け出した。
BBR-MD5:CoPiPe-ed5147f5741503887fcbef7103798fb6(NEW)
BBS_COPIPE=Lv:0
PID: 61351
[0.183214 sec.]
This is Original

0033†Mango Mangüé(ガラプー KK15-CKty)
垢版 |
2018/06/13(水) 22:58:59.161729ID:ZRTJCKkNK
『よさこい3号』車内
浅井は斉藤達が持ち込んだ物を並べて呆れ返っていた。
鉄道公安官の二人もこれが何のか理解できなかったらしい。

「てっきりおもちゃかと・・・」

女性公安官の建川は困惑している。
実際の物を見て浅井が思ったのは模型か夏休みの自由研究である。
「間違いなく使えるんだな?」
「使い捨てだがね。
まあ、4発が限界だが。」

斉藤は自信満々だ。
サークルのメンバーが組み立ている。
手順の確認を取っていると、前方車両から公安主任の久田がやってくる。

「来ましたよ、ケンタウルスがいっぱい。

マッキリーとトーヴェのテロと同様です。」
「安否メール通りだな。」

列車の乗員、乗客達はすでにテロの情報は伝わっていた。
各々が身を守る準備を始めている。
ヒルダが護身用のレイピアを抜いて宣言する。

「こちらも歓迎の準備は整いましてよ。」
「よし、戦える奴等を配置に付けろ。」

王都ソフィア
第17普通科連隊戦闘団司令部
王都にて各分遣隊を派遣する基幹部隊である。
すでに半数もの隊員を分遣隊に派遣したが、戦力の半分は集中してこのソフィアに駐屯して、近隣の盗賊や帝国残党、モンスター退治を一手に引き受けている部隊でもある。
その司令部に次々と訃報が届けられる。
所用で留守にしていた連隊長碓井一等陸佐は幕僚達からの報告の数々にこめかみに青筋を立てている。

「マッキリーで朝倉三佐が殉職されたとの報告がありました。」
「トーヴェで大林陸曹長の戦死に続き、加藤二等陸士が内臓破裂で死亡したとの報告がありました。」

机の上に被害などの報告書が山と積まれている。

「どこもかしこも馬、馬か・・・鉄砲玉に出入り、列車強盗とは恐れ入る。
最近、馬にケンカ売られるような事態はあったか?」
「南部で装甲列車がケンタウルスの略奪集団を攻撃した事例が二週間ほど前にありました。
その報復ではないかと思います。」
「その件は総督府が役人送って、シルベール伯爵と交渉中だろ?
交渉中に手を出して来やがったのか?
あと鉄道公安本部から要請の件はどうなった。」
「マッキリーの連中が朝倉三佐の敵討ちだと、Mi−8に普通科1個小隊が乗り込み現地に向かっています。」

自分の留守中でも対応していた幕僚達に満足する。

「だかこの出入りの馬頭はなんだ?
こんなのが今までノーマークだったのか?」
「その件に付きましては、王国外務省が総督府に取り次いで欲しいとの連絡がありました。
あちらが何やら情報を持っているようです。」
BBR-MD5:CoPiPe-a5be04835f04b7b74ebf9bbfd1205963(NEW)
BBS_COPIPE=Lv:0
PID: 62365
[0.200698 sec.]
This is Original

0034†Mango Mangüé(ガラプー KK15-CKty)
垢版 |
2018/06/13(水) 23:08:20.032544ID:SKsVleICK
大陸東部
東西線沿線

東西線、『よさこい3号』先頭車両は当然機関車である。
運転台には機関士と助手が交代要員も含めて四名が乗り込んでいた。
昔は三名で運用していたが失業者対策と労災の問題がそれを許さなかった。
機関士大沢は最初にバリケードを発見すると列車にブレーキを掛けて停車し、助手を車掌に知らせに行かせた。

「まずいな司令車から銃を持って来い。」

二両目の炭水車の梯子を登って、三両目の司令車に向かう。
司令車には列車乗務員の待機室や通信室、食料や水の保管庫、武器庫、発電機が置かれている。
話を聞いた車掌の岡島は

「鉄道公安本部に電話だ。」

もう1人の車掌平田が受話器を手に取る。

「こちら『よさこい3号』、大規模な襲撃を受ける可能性有り、線路上に石を積まれ進路を防がれた、救援を求む。
襲撃者はケンタウルスが数十頭・・・頭だよな?
数十人か・・・数十匹かな?」
「どっちだっていいさ。」

平田は武器庫から猟銃を取り出している。
何れも散弾銃でシトリ525だ。

「四丁を機関車に2丁は我々が使う。
森山くん達の2丁と後尾車両の建川さん、久田さんの分。」

銃を渡された車内販売員の女性、森山と川田にも銃が渡される。

「あの・・・やはり私達も?」
「訓練は受けてるだろ?
お客様と自分の身の安全は守るんだ。」

国鉄職員としての公務員の義務でもある。
機関車の運転台では機関助手達が炭水車の中や運転台の壁に身を潜めて手渡された銃に弾込めをしている。

「おやっさん・・・」
「情けない声を出すな。
一時間もしないうちに鉄道公安本部や自衛隊から援軍が来る。
それまで持ちこたえればいいだけだ。
開通当初は山賊だの帝国残党だのゴブリンだのが襲ってきて蹴散らしてやったもんだ。」

大沢の言葉に機関助手達が勇気付けられる。

「おやっさん来ました!!
左右に別れて、弓をこちらに向けてる!!」
「奴等は密集している。
狙いなんぞいらんから、通過する音が聞こえたら銃口だけ隙間から出して、とにかく外にぶっぱなせ!!
体を壁から出すなよ?」

大量の蹄の音が接近を告げている。
左右に2丁ずつ散弾銃。
ケンタウルスの集団が最初の一頭が炭水車に到達すると一斉に発砲された。
至近距離から互いに効果範囲がカバーしあうように放たれたため、ケンタウルス四頭が転倒、3頭が死亡し、1頭が後続のケンタウルス達に踏まれ死亡した。
攻撃されたことを悟ったケンタウルス達は一斉に上半身を後ろに捻り、前進しながら騎射を敢行してくる。

「おやっさあ〜ん!?」
「馬鹿、頭あげんじゃねえ。」
BBR-MD5:CoPiPe-af8cc7410a5de47da183c6c425c617dd(NEW)
BBS_COPIPE=Lv:0
PID: 63768
[0.207285 sec.]
This is Original

0035†Mango Mangüé(ガラプー KK15-CKty)
垢版 |
2018/06/13(水) 23:26:47.102350ID:X6MitRCKK
立ち上がろうとした助手の服をつかみ引きずり倒す。
トルイは倒された戦士達が起き上がらないことを憂慮を覚える。
だがまずは前進を優先させた。

「四騎ずつ残して前進だ!!」


司令車両では平田と岡島が銃眼から銃を射っていた。
司令車両はモンスターや武装勢力の襲撃に備えて窓はなく、壁は鉄板を貼り付けてある。
外の状況は外部カメラで確認できる。
狙いは外部カメラから確かめたので、機関車で不意打ちを受けたトルイ達は少し距離を取っていたが、右側で3頭、左側で2頭が撃ち殺される。

「あの穴に向けて一斉射!!」

ケンタウルスは何れも弓の名人である。
鉄張りしてある司令車両とはいえ、一ヶ所に20本もの矢がほぼ同時にに命中すれば、2、3本は壁に刺さって車掌達を驚かす。
平田は驚いて銃から手を離して後ろに転がっている。

「だ、大丈夫か。」
「ああ、当たってはいない・・・すまない。」

だがケンタウルス達の武器は弓矢だけではない。

「やれ。」

左右から3頭ずつが紐に球形の物体をくくりつけて投擲してくる。
車両に当たると同時に爆発する。
「爆弾!?」
「馬鹿な、そんな物が使えるのか?」

たが司令車両には穴は空いてない。
外側に幾つか燃えてる部分はあるが極僅かな損害だ。
だが銃眼や矢で開けられた穴から幾つかの物体が侵入し、壁や床を破壊した。
迂闊に壁際に近付けなくなった。

「外部カメラも破壊されたか・・・」

傷ついた穴にはケンタウルス達の馬力とスピードで威力を増した破城槌が両側から叩きつけら穴が拡大されていく。


最後尾車両
望遠鏡で前方車両の戦闘を覗き見てた斉藤は眉を潜める。

「まずいですな。」
「そうですの?」

望遠鏡をヒルダに渡すとサークルのメンバーを集める。

「諸君、あれはてつはうだ。」
「てつはう?」

ヒルダも混じって聞いてくる。

「「てつはう」は鉄や陶器の容器に火薬を詰め込み、導火線で火をつけて相手に投げつける擲弾です。
巨大な爆裂音をたてて爆発するので、人馬がその音に驚いたと記録されていますがそれほどの破壊力はありません。」
「何が不味いの?」
「ネタが被りました。」

斉藤とヒルダのまわりでもサークルのメンバーが座席を車両から取り外して即席の砲座を作っていた。
座席を2つ重ね合わせて紐で縛る。
問題は砲身だ。
だがそこに和紙を塗り作り上げた紙の筒を重ねた座席の真ん中にセットする。
すでに内部に火薬と導火線は仕込んでいる。

「ネタは被ってるからもう一工夫。やれ!!」
「座席、後で弁償が必要かしら?」

左右に2門ずつ。
座席の砲台は、紙砲の発射の衝撃を可能な限り固定して狙いをぶれさせないためだ。
紙砲の中に装填された日本版てつはうが四発発射される。
てつはうはこちらに向かってくるケンタウルスの集団内部の足元にそれぞれ着弾する。

「鎌倉武士なら馬がケガした程度かも知れないが、連中は人馬一体。
さて、どれほど効果があるか・・・」

斉藤が望遠鏡で確認すると、負傷して倒れたケンタウルスが八頭。
反対側も六頭が負傷して倒れている。

「死んでないみたいね。」
「動けなくなれば上等です。」

だが爆煙の中から10頭ずつのケンタウルスがそれぞれから飛び出してくる。
機関車や司令室への攻撃していたケンタウルスは留まっている。

「怒らせたみたいですから客車に立て籠りますよ。」
「紙砲はいいの?」
「どうせ試作品で一発しか撃てません。さっさと逃げますよ!!」

紙砲を補強していた座席はボロボロになっている。
紙砲がどうなったかは見るまでも無いだろう。
大急ぎで斉藤やヒルダ、サークルのメンバーは客車に乗り込んでくる。

「予定通りこっちに引き付けたから、浅井様は辿り着けたかしら?」
BBR-MD5:CoPiPe-018532a715afb1dd6a6677ed6386a8a6(NEW)
BBS_COPIPE=Lv:0
PID: 66740
[0.328149 sec.]
This is Original

0036†Mango Mangüé(ガラプー KK15-CKty)
垢版 |
2018/06/13(水) 23:32:36.865863ID:lrB+F5smK
四号車
浅井二尉は車両内部を姿勢を低くして移動し、司令車まで後一両のところまで来ていた。
持っている武器はマカロフ拳銃一丁と途中で取り外した座席。
四号車の屋根に連結部からよじ登る。
司令車は先程から爆発にさらされていたが意外に破損は少ない。
だが破城槌やてつはうが交互に叩きつけられて、穴が空くのは時間の問題だろう。
屋根の上から先ず右側のケンタウルスを始末することに決めた。
ケンタウルスの腰に紐で括りつけられたてつはうに、9mmマカロフ弾を三発命中させてあたり爆発させる。
そのまま破城槌を持っていた四頭に銃口を向けて発砲する。
重量物を持っていたケンタウルス達は回避行動も取れずに3頭を射殺、1頭が地面に倒れ伏す。
予備のマガジンに交換して、てつはうを持っていた2頭も始末した。

「残り6発・・・」

浅井の存在に気がついた左側のケンタウルス達が矢やてつはうを放ってくるが、屋根まで持ち込んだ座席を盾に移動し、司令車両の屋根に飛び付く。
だが幾つかのてつはうに仕込まれていた土器の破片が、座席の隙間から背中や足に当たる。

「痛・・・」

幸い刺さりはしなかったようだ。
叫びたいのを我慢して、手近にいた破城槌を持ったケンタウルス2頭に残りの弾丸を全部叩き込んで射殺する。
半分は八つ当たりだ。
槍に持ち変えたケンタウルスが屋根の上で転がる浅井を狙うが、屋根の扉を開いた平田が散弾銃で槍持ちを射殺し、岡島が浅井を車内に引き摺って中に入れる。

「状況は?」

ようやく一息付けるが休む暇はない。

「機関車両に8頭にこちらは四頭、最後尾車両に25頭までは確認できてます。」

司令車両には各車両からの内線から報告が来ている。

「こちらは悪い知らせだ。拳銃の弾がもう無い。」

岡島と平田は顔を見合せて苦笑する。

「ご安心をこちらも弾切れです。
でも預かってたものがありましたよね?」
「ああ、そいつを取り来た。」


機関車両
「おやっさん弾切れです。」
「俺も・・・」
「自分もです・・・」

機関助手達は猟銃を置いて、スコップを持つ。

「馬鹿野郎、撃ちすぎだ。」

だが大沢ももう二発しか持ち合わせていない。
まだ、この機関車両を攻撃してくるケンタウルスは7頭もいる。
だが司令車両の屋根から再び飛び出した浅井の手には、出発前に鉄道公安官に渡して預けていたAK−74が握られていた。
司令車から炭水車に移り、一頭ずつ撃ち殺していく。

「大丈夫ですか?」
「若ぇのを一人、死なせちまったよ・・・」

大沢が矢が数本刺さった機関助手の一人を床に寝かせて、他の二人は泣きはらした目をしている。
BBR-MD5:CoPiPe-59015062e072503ac13221836bc461c7(NEW)
BBS_COPIPE=Lv:0
PID: 67663
[0.197997 sec.]
This is Original

0037†Mango Mangüé(ガラプー KK15-CKty)
垢版 |
2018/06/13(水) 23:43:46.930921ID:urQ5qPLsK
「おまえさん自衛隊だな、援軍かい?」
「自衛隊だが乗客です。」
「そうか、まだ続くんだな。」

車掌の二人もこちらに合流してくる。

「お前ら全員、シャベルとツルハシを持て!!」
「おやっさん、さすがにそれは無茶だ!!」

平田が大沢を止めにはいる。
銃弾が残っているのは浅井だけだ。
ケンタウルスにシャベルやツルハシで勝てるとは思えなかった。

「勘違いするな、俺達の相手はあれだ!!」

大沢が指を指した方向は線路の先、石や木が積まれたバリケードがそこにあった。

「機関車さえ動けば馬なんざ引き離せる。
援軍の到着なんか待ってられねぇ!!」

途端にシャベルを持って駆け出し、助手達もそれに続く。

「浅井さん、我々も行きます。
乗客を前の車両に誘導して下さい。」
「わかりました。
なるべく連中から見えないバリケードの向こう側から崩してください。
ああ、そうだ。
救援の連絡から何分たちました?」
「25分。」

車掌達と浅井も反対方向に走り出す。

ケンタウルス達は途中の車両のドアや窓を一つ一つ破壊していたが中には侵入出来ないでいた。

「狭ぇ・・・」

外部の扉を破壊して内部に入ろうとしたが、下半身の馬の巨体では壁に体を擦りながら進むことになる。
天井も低く、弓を縦にも横にも構えられない。
客室に通じる内部扉はさらに小さく、大柄なケンタウルスでは嵌まって動けなくなる者が続出した。
窓ガラスも強化ガラスで、頑丈でどうにか割っても破片で手を切る者がやはり続出した。
全ての車両がブラインドを締めていた為にどの車両に乗客がいるのかを確かめる必要があったのだ。
最後尾車両に一度は到達したが、もう一度分散して探索に当たっている。

「くそ、ラチが明かないな。」

族長トルイは予想以上の被害と時間のかかりように苛立ちを見せていた。

「族長!!
一番後ろの扉からなら直接中に入れるし、破城槌が使えるぞ。」
「でかした!!
さっさと破壊して、矢を叩き込め!!」

乗客達は最後尾にある10号車両を放棄して、九号車両に移動していた。
ケンタウルス達に見付からないように身を屈めてである。
10号車両の後尾連結部入り口は外部に剥き出しになっていたので破城槌で破壊された。
ケンタウルス達は麻痺毒を塗った矢を入り口から放つ。
応戦が無いのを確認すると、客室に侵入に成功する。
だがボックスシート、4人掛けの向かい合わせ式の座席の通路はやはりケンタウルス達には狭かった。
それでも一頭ずつ中に入り、通路を進むが、反対側のドアが開いた瞬間、鉄道公安官の建川と久田が猟銃で撃ってきた。逃げ場の無い先頭のケンタウルスは体に穴を開けて絶命し、後続のケンタウルスの進路を塞ぐ。
BBR-MD5:CoPiPe-4c000db00f4e43141cdc39d66bdf92f7(NEW)
BBS_COPIPE=Lv:0
PID: 69400
[0.213345 sec.]
This is Original

0038†Mango Mangüé(ガラプー KKf9-/v34)
垢版 |
2018/06/14(木) 21:56:46.313623ID:JhOxsp1VK
逃げようとしたケンタウルスは座席に阻まれて方向転換が出来ない。

「だめだ族長、狭すぎて狙い撃ちされてる。
こっちは不利だ。」
「ふん、ならばこの車両には乗客はいないのだな。
応戦してる連中を引き付けておけ。」
「如何なさるので?」
「まどろっこしいことは止めだ。壁を直接ぶっ壊す。
まずはてつはうを1個ずつ車両に放り込んで連中の位置を確認しろ。
その車両にロープを窓枠にくくりつけて引っ張る。
端を破城槌をぶつけて剥がしやすくしろ。」


大陸南部
シルベール伯爵領迎賓館

シルベール伯爵家は長年の間、ケンタウルス自治伯領と帝国の仲介役としての役割を担ってきた。
帝国が滅びた後も、王国と日本国大陸総督府の代理人として彼等との仲介を任せられている。
その為に領内に迎賓館を設け、日本の大陸総督府の外務局長杉村をはじめとする代表団とケンタウルスの長老会議代表団との会談の場を設けていた。

「日本国が我が種族の若衆30名を一方的に虐殺したのは甚だ遺憾です。
謝罪と賠償を要求したい。」
「ケンタウルス若衆は日本国管理地域である鉄道線路沿線で略奪行為を働いていた。
これは明らかに犯罪である。
当方は犯罪行為に対し、実力を行使したに過ぎない。
要求を拒否する!!」
「帝国並びにそれを継承した王国では、ケンタウルス自治伯領内での人族に対する治外法権が認められている。
線路はともかく事件の起きた地域の沿線の街道は自治伯領の境界線に接している。
そして、確実に十数頭は自治伯領内で殺害されている。
これは法に反する行為ではないかね?」

南北線沿線の『ケンタウルス若衆によるキャラバン襲撃並びに装甲列車による撃滅』事件は、地域の名前を取って、ジェノア事件と呼称されることとなった。
当初は脳筋のケンタウルスなど力を背景にすれば容易く主導権を握れると思っていた。
総督府外務局は法を背景に弁護士の如く抵抗してくるケンタウルス長老会議代表団に意外な苦戦を味わうことになる。
なぜこんな会談が行われているのか?
傭兵やケンタウルスに多数の死者が出ていることからうやむやにするのは良くないと王国側から責任の所在を求める要請があったからだ。
総督府側は拒否もできたのたが、会談を受けたのはケンタウルス族に対する自治に対する介入が出来る機会と侮っていたことが大きい。
休憩を挟むこととなり、外務局員達は用意された迎賓館の部屋で予想外の苦戦に憤る。

「なんなんだあいつらは?
我々が想定していたイメージとはだいぶ違うぞ。」
「ケンタウルス族は粗野で野蛮、そう考えてましたな?
だが考えてもみて下さい。
彼等は帝国から自治権を勝ち取った種族ですぞ。
武力だけなら帝国は彼等の自治権など認めなかったでしょう。」

シルベール伯爵は仲介を担うが別に中立というわけではない。
伯爵の領地は年貢の他にケンタウルスと商人による交易に対する権利を認める運上金によって莫大な利益を上げて成り立っている。

「主な商品は傭兵、狩猟により得られる肉や毛皮、自治領特有の果実といった物です。
他にも医薬品や音楽を初めとする美術品、工芸品。
つまり野蛮な風俗とは別の文化的な側面があります。」

官僚達はシルベール伯爵の話に聞き入っている。

「ケンタウルスは性欲の強い種族ですが、腹上死は彼等の死因の上位にあたります。」

全員複雑な顔となった。
女性の官僚もこの場にいるのだから勘弁して欲しい話題である。
BBR-MD5:CoPiPe-ff0242f8d21bb0e8db77d0f72cdf08e8(NEW)
BBS_COPIPE=Lv:0
PID: 71377
[0.225612 sec.]
This is Original

0039†Mango Mangüé(ガラプー KKf9-/v34)
垢版 |
2018/06/14(木) 22:00:58.921852ID:G5/m14EYK
逃げようとしたケンタウルスは座席に阻まれて方向転換が出来ない。

「だめだ族長、狭すぎて狙い撃ちされてる。
こっちは不利だ。」
「ふん、ならばこの車両には乗客はいないのだな。
応戦してる連中を引き付けておけ。」
「如何なさるので?」
「まどろっこしいことは止めだ。壁を直接ぶっ壊す。
まずはてつはうを1個ずつ車両に放り込んで連中の位置を確認しろ。
その車両にロープを窓枠にくくりつけて引っ張る。
端を破城槌をぶつけて剥がしやすくしろ。」

大陸南部
シルベール伯爵領迎賓館
シルベール伯爵家は長年の間、ケンタウルス自治伯領と帝国の仲介役としての役割を担ってきた。
帝国が滅びた後も、王国と日本国大陸総督府の代理人として彼等との仲介を任せられている。
その為に領内に迎賓館を設け、日本の大陸総督府の外務局長杉村をはじめとする代表団とケンタウルスの長老会議代表団との会談の場を設けていた。

「日本国が我が種族の若衆30名を一方的に虐殺したのは甚だ遺憾です。
謝罪と賠償を要求したい。」
「ケンタウルス若衆は日本国管理地域である鉄道線路沿線で略奪行為を働いていた。
これは明らかに犯罪である。
当方は犯罪行為に対し、実力を行使したに過ぎない。
要求を拒否する!!」
「帝国並びにそれを継承した王国では、ケンタウルス自治伯領内での人族に対する治外法権が認められている。
線路はともかく事件の起きた地域の沿線の街道は自治伯領の境界線に接している。
そして、確実に十数頭は自治伯領内で殺害されている。
これは法に反する行為ではないかね?」

南北線沿線の『ケンタウルス若衆によるキャラバン襲撃並びに装甲列車による撃滅』事件は、地域の名前を取って、ジェノア事件と呼称されることとなった。
当初は脳筋のケンタウルスなど力を背景にすれば容易く主導権を握れると思っていた。
総督府外務局は法を背景に弁護士の如く抵抗してくるケンタウルス長老会議代表団に意外な苦戦を味わうことになる。
なぜこんな会談が行われているのか?
傭兵やケンタウルスに多数の死者が出ていることからうやむやにするのは良くないと王国側から責任の所在を求める要請があったからだ。
総督府側は拒否もできたのたが、会談を受けたのはケンタウルス族に対する自治に対する介入が出来る機会と侮っていたことが大きい。
休憩を挟むこととなり、外務局員達は用意された迎賓館の部屋で予想外の苦戦に憤る。

「なんなんだあいつらは?
我々が想定していたイメージとはだいぶ違うぞ。」
「ケンタウルス族は粗野で野蛮、そう考えてましたな?
だが考えてもみて下さい。
彼等は帝国から自治権を勝ち取った種族ですぞ。
武力だけなら帝国は彼等の自治権など認めなかったでしょう。」

シルベール伯爵は仲介を担うが別に中立というわけではない。
伯爵の領地は年貢の他にケンタウルスと商人による交易に対する権利を認める運上金によって莫大な利益を上げて成り立っている。

「主な商品は傭兵、狩猟により得られる肉や毛皮、自治領特有の果実といった物です。
他にも医薬品や音楽を初めとする美術品、工芸品。
つまり野蛮な風俗とは別の文化的な側面があります。」

官僚達はシルベール伯爵の話に聞き入っている。

「ケンタウルスは性欲の強い種族ですが、腹上死は彼等の死因の上位にあたります。」

全員複雑な顔となった。
女性の官僚もこの場にいるのだから勘弁して欲しい話題である。
BBR-MD5:CoPiPe-db3346933d685022d204af10bf45053b(NEW)
BBS_COPIPE=Lv:0
PID: 71930
[0.219892 sec.]
This is Original

0040†Mango Mangüé(ガラプー KKf9-/v34)
垢版 |
2018/06/14(木) 22:16:50.281699ID:FAGZL4WMK
「なんでそんな物が列車にあるんだ?
ナイフと交換してくれ。」
「倒木が線路にあった時の為です。
後は・・・刺又が二本有ります。」

そこにヒルダと斉藤達もやってくる。

「連中の弓矢を三セットばかり奪いました。
扱ったことのあるのが姫様だけなので・・・」
「あら、私も使えるわよ。」

乗客の中から恰幅のよい主婦が名乗りを上げる。

「多少、ブランクがあるけどJK時代は弓道部だったから。
和弓だから勝手が違うかもだけど、心得がない人よりはマシでしょ?」

JKと言われて浅井、斉藤、久田が顔を見合わせるがヒルダが弓を主婦の市原に渡す。
狭い通路で使うのだから期待は出来る。

「てつはうもまだ2個あります。
直接、投擲する必要がありますが。」

色々とツッコミたいところがあったが、てつはうは土器で出来ているし火薬自体はすでに大陸でも流通しているので大陸技術流出法には違反していない。

「乗客の中に七人ばかり冒険者をしている日本人もいます。
今は貨物車から彼等の武器を持ち出させています。
日本刀や薙刀とか持ってきてましたね。」

転移から九年、大陸進出してくると六年も経過すると色んな日本人が出てくる。

「前方車両のドアを守らせてくれ。
乗客の移動は勘づかれないように頼む。」
「浅井さん壁が破られた!!
連中が入ってくる。」
「八号車両客室を放棄!!
鍵を掛けて、七号車両で抵抗線を作るぞ。」

通路ならケンタウルスも自由に動けずこちらが有利だ。
腕時計で時間を確認する。

「通報から45分・・・」

族長トルイは些か焦っていた。
連れてきた兵は自分も含めて70騎ばかり、既に戦死が18騎、負傷して戦えないのが16騎。
戦でもないのに半数がやられたことになる。

「大損害だ。
割には合わん・・・」
「族長、もう退くべきではないか?
今なら近くの村でも襲って首をとって日本人ということにしておけば面目は立つ。」

顔は焼いとけば問題はない。
女はその場限りになるが、事が済めば口を封じればいい。
日本人どもにも一矢を報いた。

「よし退くか、角笛を」
言い掛けたところで先頭の機関車が煙突から煙を吹き出し、下方からは水蒸気を噴出させ始めた。
バリケードからは数人の人間が機関車に駆け出している。
BBR-MD5:CoPiPe-f06a92aa6b6952478b9415bfe3b439fe(NEW)
BBS_COPIPE=Lv:0
PID: 74350
[0.192498 sec.]
This is Original

0041†Mango Mangüé(ガラプー KKf9-/v34)
垢版 |
2018/06/14(木) 22:24:36.093944ID:wsxy+hnBK
列車の内部には5頭のケンタウルスが乗り込んだままだ。

「つ、連れ戻せ!!」

7号車両では突撃してくるケンタウルスを、久田と斉藤が刺又二本で押し止める。
狭い通路で走れないケンタウルスなら何とか押さえ込める。
座席の陰から浅井が鉈を振り回してるので勢いを殺したのも大きい。
市原とヒルダが弓でケンタウルスを射ると、後続のケンタウルスが前進できなくなる。
たがそこからケンタウルス達が矢を放ち久田に二本が刺さる。

「久田さん!!」

建川が久田を引きずりながら七号車両に移動しようとする。
だが久田が口から血と泡を吹き出している。
痺れる体で手だけ動かして、全員に六号車両に移動するよう指差す。
次にてつはうを指差した。
浅井達が六号車両に移動すると、サークルのメンバーがてつはうの導火線に火を着けて、七号車両に放り込んで七号車両のドアと六号車両のドアを閉める。
爆発音とともにドアが揺れる。
だがすぐにケンタウルスの姿がドアの窓から見える。
顔は血まみれだ。

「久田さんが・・・」

泣き顔の建川が敬礼しているので、浅井もそれに倣う。

「五号車両からは乗客が避難しているのでここらで食い止めたい。」

車掌の平田がシャベルを持ってやってくる。

「車両を切り離しましょう。」
「走行中に出来るんですか?」
「本来は配線やブレーキ管を外さないといけないのですが時間が無いから強引に切り離します。まずは連結機を切り離してから一つ一つ鉈で斬ります。」

平田が作業に入るが、岡島の声が車内放送で鳴り響く。

「バリケードに突っ込みます。何かに掴まりながら頭を守ってください!!」

全員が座席に捕まると何かに衝突したような衝撃が車内を揺るがしといく。

機関車
大沢達を乗せた機関車はゆっくりと加速を続け走り始める。
可能な限りに勢いを付けて、バリケードを吹っ飛ばして突破しないといけない。
機関助手達は必死に石炭を竈にくべている。

「いけ、いけ、いけぇ〜い!!」
手を振り回しながら声援する大沢の声に応えるように機関車の先頭部分がバリケードにぶつかり、粉砕しながら土砂を撒き散らす。
機関車周辺を駆けていたケンタウルス達が土砂を浴びて転倒していく。
機関車は震動しながらバリケードを突破してさらに加速を続ける。
「やったあ!!」

大沢は歓声を挙げるが肩に矢を受けていた。
そのまま崩れ落ちる。

「おやっさん!!」

「退け、退くんだ!!」

トルイは追い付いた兵達を一人一人に声を掛けて列車の追撃を止めさせる。
BBR-MD5:CoPiPe-35e3cb577168e0c7dd81ef5af0b8b654(NEW)
BBS_COPIPE=Lv:0
PID: 75691
[0.194481 sec.]
This is Original

0042†Mango Mangüé(ガラプー KKf9-/v34)
垢版 |
2018/06/14(木) 22:35:08.650630ID:46+txUJcK
合流した29騎のケンタウルスは負傷した16騎を回収して、撤退しようとする。
死体も18騎。

「数が合わないな、列車の中か・・・」

証拠は残したくないが長居は危険だった。
どうせ東部地域にケンタウルスの集落は無い。
列車の中のケンタウルスの素性を洗っても自治伯との繋がりを思わせる物は持たせていない。
流れのケンタウルスが勝手にやったと言い逃れが出来る。
遠ざかる列車を尻目に引き換えそうとすると、奇怪な羽音が上空から聞こえてきた。

「なんだ、この音は?」

同時に森の中からこちらを囲むように斑模様の緑の服を着た集団が現れる。
木々の間から銃を構えているのが判る。

「バカな日本兵だと、どっから現れたのだ。」

日本軍が駐屯する主要な町には見張りを置いてあったはずだ。
例え日本の車がどんなに早くてもケンタウルスの伝令に勝てるはずがない。
たが現実に目の前にいるのは・・・


困惑するトルイ達の前に低空をホバリングするMi−8TB、ヒップEの機首の備え付けられた12.7mm機銃が火を噴いた。
族長トルイは一瞬にして、真っ先に肉塊となった。
同時に列車から七号車両以降が切り離された。
ケンタウルス達は車両に向かって逃げ出す。
そこなら攻撃を受けないと考えたからだ。
だが半包囲していた陸上自衛隊の第4分遣隊の隊員達が前進しながら銃撃を開始する。

「ケンタウルスの指揮官以外の生死を問わない。
まあ、無理に捕まえる必要も無いがな。」

隊長の進藤一等陸尉の命令のもと、ケンタウルス達は一騎、また一騎と駆られていく。
そこに切り離された車両が線路で止まっているが乗客はとうにいない。
そのことは『よさこい3号』から連絡を受けている。
ケンタウルス達はそんなことは知らないので車両に集まっていく。

「いいカモだな、馬か?撃滅しろ。」

切り離された列車の中にいたケンタウルス達は先頭車両から飛び出し、遠ざかっていた列車に追い付いていく。
一匹が手摺を掴もうとしたところで、ヒルダのレイピアがドアの隙間からケンタウルスの手の甲を貫く。

「しつこいですわよ。」

反対側の手摺に掴もうとした一匹も浅井が鉈で手首ごと切り落とす。
残りの3頭は斉藤が転がしたてつはうの餌食となった。


ケンタウルス達が掃討され、再び汽車が停車する。
隊員達によって、乗客が外に出てきて治療や事情聴取を受けている。

「おやっさんしっかり!!」
「いやだよお、おやっさん、いかないでよう!!」

泣き叫ぶ機関助手達を尻目に、浅井と斉藤達はケンタウルスの荷物を漁る。
大半はケンタウルスの肉体ごとミンチに混じっていたが、車両近くのケンタウルス達は背後から銃弾を受けただけだ。

「あった!!」
BBR-MD5:CoPiPe-642b53d6919d7747f8baa7a43e1692d6(NEW)
BBS_COPIPE=Lv:0
PID: 77455
[0.203014 sec.]
This is Original

■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています

ニューススポーツなんでも実況